その推理、死者が「違う」と言ってます。~崖っぷち探偵の相棒は、イタコでした~

ズボンハクオ

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第19話 最強タック復活 前編

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カッ!!  まばゆい光が葵の左目へと吸い込まれていく。  
光が収束した瞬間、葵は糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  
同時に、ぼくが押さえつけていた橙花の体からもみるみる力が抜けていく。
ぼくは重くなった彼女の体を、ゆっくりと床に横たえた。それはまるで、静かに眠っているようだった。

「終わったのか? いったいどうなったんだ?」  

ぼくは荒い息を整えるために、ゆっくりと深呼吸をした。 

「そうだ! 葵くんは!?」  

ぼくは慌てて葵の方へと駆け寄ろうとした。  成功したはずだ。橙花の魂は葵に移った。これで戦いは終わったのか?

 ぼくが状況を把握しようとした、その時だった。

 ガタッ!!

 背後から異質な音が聞こえた。  
振り返ったぼくは、信じられない光景を目にして凍りついた。  
魂が抜けたはずの橙花の体が、ゆらりと立ち上がっていたのだ。  
その瞳に光はなく、ただ殺意だけを宿した「兵器」そのものに見えた。

「おいおい! これはどういうことだ!! もう動けないぞ!」

 ぼくが困惑している隙を突き、その兵器は人間離れした速度で飛びかかってきた。  ドゴォッ!!  重く鋭い一撃が、ぼくの腹部に突き刺さる。

「ぐはっ!」  

ぼくは数メートル後方へ吹き飛ばされ、無様に地面を転がった。 

「重っ! なんなんだいったい さっきまでとは威力が違うぞ!」

 ぼくは混乱した。葵くんは失敗したのか? あれはいったい何なんだ?  頭の整理が追いつかない中、あの兵器は無機質な動きで、ゆっくりとぼくに近づいてくる。

(ぼくもこれで終わりなのかな。ごめんな、みんな。橙花、葵くん……)

 ぼくは死を覚悟した。走馬灯のように浮かぶのは、大切な仲間たちの顔。
 
(最後に、凛のお尻触りたかったな)
  
ぼくは最後の最後まで、邪なことを考えていた。

 兵器は隠し持っていたナイフを取り出し、ぼくの心臓めがけて振り上げた。  ぼくはゆっくりと目を閉じた。  全てを諦めかけた、その時。

 頭の中に、懐かしい声が響いた。

『おい! なにヘタレてんだよ! こんなとこでくたばるなよ!』

 誰かが必死に呼びかけている。だが、ぼくにはもう関係ない。ぼくは幻聴だと思って無視しようとした。

『おい! 無視するなよ! このポンコツ! 前を向け!』  

声の主は、さらにぼくを煽り、罵り始めた。

「誰だよ。前を向けって、偉そうになんか懐かしいなぁ」  

あまりの剣幕に、ぼくはゆっくりと目を開けた。

 ガキンッ!!

 目の前で、火花が散っていた。  意識が朦朧とする中で見えたのはあの小さな背中。  

葵が、兵器(橙花)の腕を片手でガッチリと受け止めていた。

「やっと目が覚めたか。早く立ち上がれ、相棒」

 葵からは想像もつかない、荒々しい喋り方。  葵からは想像もつかない、不敵な態度。  けれど、その響きはなんだか死ぬほど懐かしかった。

「もしかしてお前、橙花なのか?」

 彼女はニヤリと笑い、力強く言い放った。 

「当たり前だろ! 私は橙花だ。いいから立て! こいつを止めるぞ!」

ぼくは橙花の言葉を受け取り、傷だらけの体に鞭を打って立ち上がった。  

最強のバディが、ここに復活した。
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