氷の魔女の二度目の人生は落ちこぼれ聖女〜今度は愛されるために魔法を極めたら、神獣たちと最強の家族に溺愛されました〜

平山和人

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 エルサが平和な(?)学園生活を送る裏で、王国の国境を越えた先にある「バルザス帝国」が動き出していた。  帝国の宮廷魔導師長、通称「黒の賢者」ゼノス。彼は、アデレイド公爵家から放たれた規格外の魔力波動を感知し、それを「世界を滅ぼす禁忌の兵器」だと誤認していた。


「……あれは、人間の力ではない。神の領域、あるいは……かつて世界を凍らせた『千年魔女』の再来か」  暗い研究室で、ゼノスは禍々しい髑髏の杖を振るった。 「もしアデレイドの娘がその力を宿しているなら、目覚める前に摘み取らねばならん。あるいは、私の『呪い』で傀儡に変えてくれる」


 ゼノスは、禁断の召喚術式を起動した。呼び出されたのは、影から影へ移動し、対象の心臓に直接呪いを植え付ける暗殺魔獣「シャドウ・ストーカー」。 「行け。公爵令嬢を暗殺、叶わねばその家族を呪い殺せ。彼女が絶望した瞬間に、その魔力を奪い取るのだ」


 その夜。学園の女子寮に潜むエルサの部屋へ、一筋の影が滑り込んだ。  シャドウ・ストーカーは音もなくベッドへ近づく。そこには、無防備に眠る少女の姿があった。  魔獣が鋭い鍵爪を振り上げ、彼女の胸元に突き立てようとした、その刹那。


「……あら。夜更かしは肌に悪いわよ?」  暗闇の中で、エルサの金色の瞳がカッと見開かれた。  次の瞬間、魔獣は動けなくなった。いや、空間そのものが「固着」したのだ。  エルサは欠伸をしながら、枕元に置いてあったシロを撫でた。 「シロ、起きて。変なお客様が来ているわ」 『……フン。このような雑魚、我の息だけで消滅するものを。主、我を枕にするのは良いが、少し寝相が悪かったぞ』


 シャドウ・ストーカーは、目の前の少女から放たれる「深淵」のような魔力に、自分が捕食対象であることすら忘れて絶叫を上げようとした。  しかし、声は出ない。 「【因果反転】」  エルサが指をパチンと鳴らす。  魔獣がエルサに向けようとした殺意と呪いは、そのまま送り主であるゼノスへと「百倍の威力」で突き返された。



 数百キロ離れた帝国の研究室で、ゼノスは凄まじい衝撃と共に壁に叩きつけられた。 「がはっ……!? な、なんだ、この……圧倒的な、重圧は……!」  彼が放った暗殺魔獣が、ゴミ屑のように圧縮され、代わりに「純白の魔力の奔流」が通信経路を逆流して彼を襲ったのだ。  ゼノスの自慢だった魔力回路は一瞬で焼き切れ、彼は魔導師としての力を完全に失った。それどころか、研究室全体が「エルサの魔力」によって浄化され、禍々しい実験器具がすべて綺麗なヒマワリの花へと変化してしまった。


「ば、化け物……。あんな少女が、これほどの術式を無造作に……」  ゼノスは花に囲まれながら、失禁して気絶した。帝国最強の魔導師は、戦う前に「更生」させられたのである。


 翌朝、エルサは清々しい顔で登校した。 「おはよう、エルサ! 昨晩はよく眠れたか?」  学園の正門で待っていたシグルドが、エルサの頭を撫でる。 「ええ、とてもよく眠れました。少し、悪い虫を掃除したくらいで」 「虫? 寮に害虫が出たのか! 即座に害虫駆除の専門家を派遣しよう、いや、いっそ寮を建て替えるか!」 「いえ、お兄様。もういなくなったので大丈夫ですよ」


 エルサは微笑みながら、背後の影で縮こまっている「浄化されて真っ白になった元・影の魔獣(現在はエルサに懐いて、雑巾のような姿で足元を拭いている)」を見つめた。  彼女の「家族を守るための魔法」は、本人も気づかないうちに、国家間の戦争すら未然に防いでいた。  しかし、この一件がきっかけで、エルサの力はついに「隣国」や「教会」の知るところとなり、さらなる波乱――そしてさらなる「もふもふの増殖」を招くことになるのだが、それはまた別の話である。
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