氷の魔女の二度目の人生は落ちこぼれ聖女〜今度は愛されるために魔法を極めたら、神獣たちと最強の家族に溺愛されました〜

平山和人

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 空中都市がエルサの力で「神域」へと昇華されたことで、ついに地上だけでなく、高い次元に住まう「天界」の存在が動き出した。  会議場の天井が割れ、光の柱の中から、白い翼を持つ「天使」を自称する男が降臨した。


「地上の人間共よ。この少女の力は、もはや人間の域を超えている。我ら天界が彼女を回収し、神の僕(しもべ)として教育し直してやろう。感謝して彼女を差し出せ」  またしても現れた「管理したがる者」。エルサはうんざりした顔で、シロを撫でた。  だが、今回は兄たちよりも先に、シロ(フェンリル)が動いた。


『……下等な鳥人が。主を「回収」だと? その汚い口を二度と開けぬよう、我の氷で永遠に閉ざしてやろう』  シロが牙を剥いた瞬間、会場の温度が氷点下百度まで急降下した。  天使は嘲笑った。 「フェンリルか。かつての神獣も、人間に飼われて牙が抜けたか。我が聖なる光の前では――」  天使が手を掲げようとした瞬間、シロの咆哮が空間を粉砕した。


 ドォォォォォン!!  シロの背後に、エルサが魔法で具現化させた「銀色の宇宙」が広がった。  シロはエルサの魔力を借りることで、かつて神々を喰らったとされる「終焉を司る狼」の真の姿へと回帰していたのだ。 『主が優しくしているからといって、図に乗るな。主の力は、お前たちが奉る「神」とやらが、数千年かけても辿り着けなかった深淵なのだぞ』


 天使は、シロの瞳に映る「エルサという名の無限」を見て、絶叫しながら天界へと逃げ帰った。  その光景を見ていた各国の王たちは、確信した。  エルサを敵に回すということは、天界を滅ぼすことよりも恐ろしい事態を招くのだと。 「エルサ、怖かっただろう。さあ、私の胸で泣いていいぞ」  シグルドがここぞとばかりに抱きつこうとしたが、シロに鼻先で押し返された。



 結局、世界会議は「エルサ・ヴァン・アデレイドを世界の共有財産とする」という当初の案をすべて破棄し、「エルサ様の機嫌を損ねないよう、各国が全力で彼女の平和な生活をサポートする」という、人類史上最も甘い条約を締結して閉幕した。


 エルサは帰路の馬車の中で、窓の外を流れる雲を眺めていた。 「ねえ、お兄様。私、何か特別なことをしたのかしら? ただ、皆さんにコンポートを配って、お部屋の修理をしただけなのに」 「いいんだ、エルサ。お前はただ、お前でいればいい。……世界がお前に合わせる、それだけの話だ」  レナードが、エルサの膝の上で丸まっているクロ(元魔王)の頭を小突きながら言った。


 公爵邸に戻ると、父ヴィルフリートが「祝杯だ!」と、領地中の住民にタダで酒と肉を振る舞うお祭りを開催していた。  しかし、エルサにはまだやりたいことがあった。 「お父様、私、やっぱり学園に戻りたいです。あそこの図書室、まだ読んでいない本がたくさんあるんですもの」 「……ああ、わかった。だが、学園の防衛設備をさらに十倍に強化させてもらうぞ。それと、お前のクラスメイト全員を、我が公爵家の騎士団が二十四時間体制で見張るが、いいな?」 「それは、お友達がいなくなっちゃうのでダメです……」


 エルサの日常は、これからも「無自覚な神域」と「過保護な愛」が衝突し続け、とんでもない奇跡を量産していくことになる。  学園に戻ったエルサを待っていたのは、彼女を「女神」として拝む全校生徒の行列と、さらに巨大化した「もふもふ」たちの熱烈な歓迎だった。


 孤独な魔女だった前世。  愛されることを知らなかった少女。  今、彼女の周りには、彼女の微笑み一つで世界を滅ぼしかねない、危うくて温かい最強の「家族」たちが揃っている。  物語は、さらに加速する。次にエルサが「無自覚」に救ってしまうのは、一体どの次元の存在なのだろうか。
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