氷の魔女の二度目の人生は落ちこぼれ聖女〜今度は愛されるために魔法を極めたら、神獣たちと最強の家族に溺愛されました〜

平山和人

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空中都市から帰還したエルサを待っていたのは、休学中に溜まった課題……ではなく、学園を揺るがす「七不思議」の暴走だった。エルサの溢れ出した魔力が学園の土地を活性化させすぎた結果、眠っていた古の精霊や未練を残した霊体たちが、あまりの居心地の良さに実体化してしまったのだ。


「エルサ様! 大変です、開かずの図書室から、千年前の『呪いの魔導書』が這い出してきて、生徒たちを知識の濁流に飲み込もうとしています!」  学園に戻るなり、涙目で駆け寄ってきたのはカイル王子(現在は浄化され、エルサの忠実な僕兼、犬モードの散歩担当)だった。


「あらあら、それは大変ね。シロ、ちょっと様子を見てきましょうか」 『……フン。主が通るだけで、あのような紙屑、恐怖で白紙に戻るだろうにな』  エルサが図書室へ足を踏み入れると、そこには黒い霧を放ち、奇怪な呪文を叫び散らす巨大な魔導書が浮かんでいた。生徒たちはその威圧感に腰を抜かしている。


「【静かに】」  エルサが人差し指を口に当てて微笑んだ。  瞬間、図書室を満たしていた呪詛の叫びが、物理的に「消音」された。魔導書はエルサの瞳を見た瞬間、ページをガタガタと震わせ、あろうことか自らエルサの足元に平伏した。 「あら、あなたはただ、誰かに読んで欲しかっただけなのね。でも、意地悪はダメよ」  エルサがその表紙を優しく撫でると、禍々しい装丁は一瞬で可愛らしい「猫の絵本」へと浄化された。


「……はい、これで解決ね。次は『動く鎧』かしら?」  その後、エルサが廊下を散歩するたびに、血塗られた壁は「イチゴ味のジャム」に、夜な夜な彷徨う首なし騎士は「お辞儀の練習をする親切な案内係」へと次々に変貌していった。  学園の七不思議は、わずか一時間で「エルサの散歩コースにある癒やしスポット」へと成り果てたのである。


 学園が平和(?)を取り戻した頃、正門前に一人の男が現れた。  北の軍事大国バルザードの若き英雄、龍騎士アッシュ。彼は数々の戦場を生き抜き、どんな魔法も通じない「龍の鱗」をその身に宿す、世界最強の戦士の一人だ。  彼は世界会議の報告を聞き、「自分よりも強い女でなければ妻にしない」という家訓に従い、エルサに「決闘(という名の求婚)」を申し込むために来たのだ。


「エルサ・ヴァン・アデレイド! 貴殿の力、このアッシュが確かめさせてもらう! 我に勝てば、私は貴殿の剣となり、盾となろう!」  アッシュが巨大な龍斬り刀を引き抜くと、周囲の生徒たちは悲鳴を上げて逃げ惑った。  そこへ、エルサの護衛として控えていたシグルドとレナードが、音もなく現れる。


「……私の妹に剣を向けたな。それだけで、貴様の国を滅ぼす理由には十分だ」 「兄貴、こいつは俺がやるよ。エルサの昼寝を邪魔する奴は、分子レベルで分解してやる」  兄たちの殺気が爆発しようとしたその時、エルサが横からひょいと顔を出した。


「アッシュさん、でしたっけ? 決闘は受けられませんが……そんなに力比べをしたいのなら、これを持っていてくださる?」  エルサが手渡したのは、彼女が魔法の練習で作り出した「重力石」だった。 「……ん? なんだこの小石は。こんなもの――っ!? ぬおぉぉぉぉっ!?」


 アッシュが受け取った瞬間、彼の自慢の筋肉が悲鳴を上げ、地面がクレーターのように陥没した。エルサが渡したのは、一千万倍に圧縮された「地脈の重み」を封じ込めた結晶だったのだ。  龍をも凌駕する力を持つアッシュが、顔を真っ赤にして小石を支えるのが精一杯の状態。 「あ、ごめんなさい。少し重すぎました?」 「……は、はぁ……はぁ……。ま、参った……。貴殿は、神か……」  最強の英雄アッシュは、戦う前に「石を持たされただけ」で完敗を認め、その場でエルサに永遠の忠誠を誓う「五匹目の下僕」へと成り下がった。
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