カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

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瘴気に汚染された大陸からの脱出 その2

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「まあゲームマスターと言っても通じにくいでしょうから、上司と呼ぶのは良い考えかもしれません。直属の部下のダンさん」

 俺はこの前と同じ左肩のみ留めた膝上丈のキトンでふよふよと浮いているが、上司ことゲームマスターは部分鎧の上に花を散りばめた絵柄の真っ赤な着物ガウンを羽織っている。

「あなたと浄化の聖女の報告を受けて、転移門の周囲には防御壁を追加しました。人間の襲撃のみを想定していたものを魔物の大群が来ても大丈夫なように。
 それから浄化の聖女を説得して、彼女を新天地の方に移動させました。これまでは転移門に入る直前に移民および彼らの持ち物に浄化をかけていましたが、これからは同じ作業を新大陸側の転移門付近で実行してもらいます」

「聖女が敵の手の届かないところに行くのは、実にめでたいことですね」

「本当にそう。彼女によると、命の危険を感じたからという以上に、最後まで逃げずに残らなければならないと思っていたのは、結局は王に踊らされていたからではないかと疑問を持ち始め、それで吹っ切れたそうです」

「やっぱアレですか、皆が王様の話を聞く機会がなくなれば、いくら王様が演説の権能持ちでも宝の持ち腐れになるんでしょうね」

「略奪女の持つ魅了の力も、放送を封じた今、有効なのはごく狭い範囲内でのみ。
 この前はしてやられましたけど、王家伝来の魔道具を使おうが、彼らはもう二度と放送を使って民に呼びかけることはできません。
 一方、こちらは、『民の半数以上が残れば大陸は存続』だなんて根拠のないデマですよと、移住済みの人数と一緒に毎日宣伝しています。ちなみに語り手は、わたしと浄化の聖女が交代で務めています」

「へえ。じゃあ次の俺のカプセルの持ち主は浄化の聖女様以外になりますか?」

「そうですね、転移門への道中の護衛を担当する者、十人ほどに配ろうかと思います。転移門自体の防衛が強固になったので、今度は移動途中を狙ってくる恐れがあるためです」

「十人って……俺は十分割されるんですか? それとも十倍に複製?」

「いいえ。
 まさか小さくなったあなたがカプセルの中に入っているわけではあるまいし」

「……そんな感じに思っていました。すみません」

 カプセルを割る行為は狼煙のようなもので、そこに俺が顕現する理屈や、非活動時間の俺がどこでどうなっているかについては、「よろしければ技術担当者に直接聞いてみますか?」とのこと。「そうですね、機会があれば」と答えておいた。
 知識階級でもない俺が理解できそうな話ではないだろう多分。




「もう半日以上も足止めされているんです。
 道を封鎖している相手に抗議しているのですが、退いてくれません。
 体調を崩した者のための救護テントも設置できない状況で……」

 抗議している者たちと通せんぼしている者たちとで論戦になっている模様だが、三分間しか時間のない俺が議論に参加しても役に立たない。いや、たとえ一時間もらっても説得は無理だろうな。前いた世界の勇者パーティーだったら、王太子に聖女に僧侶、どいつも説得は得意だったけど。魔術師——あいつは駄目だ。即実力行使したがるさまは俺より酷い。

「強行突破すればいいんだな?」
「はい」

 俺は言い争いをしている者たちに割って入り、剣の属性を風に変更する。
「風よ、道をつくれ!」
 道を塞いでいた人間たちはもちろん、土嚢のような障害物も魔術的な障壁も一気に吹っ飛ばす。ついでに、道の幅を狭めていた左右の壁も。
 後は残り時間を使って、休息が取れそうな場所まで全速で移動する。
 移民の皆さんと荷車に馬車、全てを風の道に乗せて高速移動だ。

「あ、ここが広場みたいになっていていいんじゃね?」
「そ、そうですね」
「進む方向はあちらか?」
「はい、そうです」
「じゃあ進む方向以外の地面は水浸しにしておくわ。
 風で吹っ飛ばしただけだから回復して追ってくるかもしれないし」

 周囲をずぶずぶの泥状態にして俺は消えた。
 俺が消えた後でも水がなくなるわけではないから、少しは保つだろう。
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