カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

文字の大きさ
6 / 30

瘴気に汚染された大陸からの脱出 その3

しおりを挟む
「親族同士で大喧嘩?」
「このようなことで銀の騎士様を呼び出して申し訳ありませんっ。
 しかし辺境伯を連れ戻そうとしている前辺境伯が強過ぎるんです」
「騎士って、俺は馬にも何にも騎乗してないんだけど」

「自分のっ、母親をっ、見捨てて先にっ、逃げ出そうとはーっ!」
 あの爺さんが前辺境伯か。凄いな。戦っている相手は多分息子の辺境伯なんだろうけど、筋肉の量は爺さんの方が勝っているぞ。うわっ、後ろにいるのが辺境伯の奥さんみたいだけど、赤ん坊抱いているよ。なのに大暴れ? はい、ジジイは悪者決定。

「捕縛!」
 鉄っぽい金属の鎖が現れてジジイに巻きつき縛りあげる。
「ちょこざいなーっ!」
 ジジイは鎖を引きちぎる——ことはできなかった。
 信じられないという表情をしている。二度三度と試みているようだが駄目。
 その程度の太さの鉄の鎖は、いつもだったら化け物じみた身体強化でぶち切っていたんだろうけど、こちとら正真正銘の化け物、それも上位種を相手に日々戦っていたんだよねぇ。つまり力比べなら負けるはずがない。
「ぐがっ!」
 ちょいと近づいたら頭突きをかましてきた。けど、俺の鎧は物理攻撃を反射するので、額から血を流してのけぞることになったのはジジイの方。

「貴様が噂の銀の騎士か? お前には関係ないであろう。わしはこの親不孝者にだなあ——」
「黙れ。
 必死で自分の妻子を守る息子を攻撃する人でなしには発言の権利はない。
 若ければ若いほど、瘴気の害を受ける。人の心があるなら一日でも早くと移住を後押しするだろうに、逆に妨害するとはな」

 俺は振り返って、カプセルを割った男に聞いた。
「ここから転移門まで何日くらいだ?」
「五日ほどです」
 俺は自分の剣に闇の属性を纏わせ、ジジイの額に軽く触れる。
「眠れ。十日の間」
 後はジジイの従者らしき者たちが何とか運んでいくだろう。
 賞金首の引き渡しのときと同じような処理をして俺は消えた。





「銀の騎士様を呼び出せと言われましたので」
「騎士って、俺は馬にも何にも騎乗してないんだけど。
 ていうか、もしかしてアレが魅了の聖女とやら?」

 カプセル割り女は答える代わりに飛び掛かってきやがった。
 俺の鎧や盾は物理攻撃も反射するんだけど、今回はその前に足が出た。身体的な条件反射というか。
 魅了の聖女(仮)の周囲に侍る兵士たちや怪物たちからの攻撃は鎧と盾と剣の自動反射に任せて、移民やその護衛の皆さんからの肉弾攻撃は、俺に触れる前に蹴り倒して対処した。
「あなたは自分が守るはずの民を傷つけても平気なの!?」
 魅了の聖女(仮)が喚く。お前が言うな。

 多分こいつには人や怪物を意のままに操る能力があって、俺の味方であるはずの移民の人たちに攻撃させることにより、俺を弱体化させる狙いがあったのだろう。彼女たちの計画の中では、俺の側に味方を攻撃することへの心理的葛藤や躊躇いがもっとあったに違いない。
 ところが俺は、致命傷さえ与えなければオーケーだろうってのが身についてしまっていて……そう言えば勇者パーティー時代とは違い、癒しの聖女は同行していないんだっけ。ま、まあ治癒能力者の用意くらいあるだろう、きっと。

 魅了の聖女(仮)は蓮の花のような形の台座に乗って、すーっと俺の近くに寄ってきた。ピンクブロンドに女神風ファッション。女神バージョンのゲームマスターの劣化版って感じだ。

「わたしを見て。わたしの声を聞いて。そして、わたしの言うことを聞きなさい」

 恐らく、俺に魅了をかけようとしたんだろう。
 だが、俺の鎧は攻撃を反射する。
 さらに、攻撃を呪いと判定したら倍返しすることもある。
 女の目が潤み、怒りに染まっていた頬が別の熱を帯びる。

「うわっ、気持ち悪い。どこかに引きこもってくれないかな、一年ばかり」
 さて、俺の言葉を聞いてくれるかどうか。確かめる間もなく俺は消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

処理中です...