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婚約破棄はパーティーで その3
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「フェンリル、だと?
あれを召喚しても空間の裂け目は消せないと思うけど」
契約の際に、契約書と取扱説明書の内容は俺の頭に叩き込まれている。
「聖なる山からの道は通すことができた。
後は聖なる獣がいれば女神は復活する」
何だ、このやたら高そうな格好をしている男。
おや、そいつの隣には、この前の結婚パーティーでフェンリルと契約し損ねた少年が。
俺は怒鳴った。
「待て、こら! てめぇらが瘴気火山からの大量化け物ロードの原因か?
女神の復活って、まさか今の女神の前任者を復活させるつもりじゃあるまいな。
駄女神の復活なんて上位存在が絶対に許さんけどなっ」
それから俺は今度は浄化の聖女に向かって言う。
「まさかあんたも駄女神復活のためにフェンリルを召喚して欲しいと?」
「違います!
そもそも女神の復活についての話など転生者の彼らの思い込みに過ぎません。
このようなことで呼び出すのは申し訳ないのですが、ご自分がどのような存在であるかフェンリルご自身にお言葉をいただきたいのです……」
なるほど。フェンリルと念話で意思疎通できるのは契約者の俺だけだが、通常音声による会話は俺以外の相手でもできる。三分間が過ぎても前回と同様に適当に魔力を引っこ抜いてもらえば、俺と同時に消えることはないはず。
それに俺の直観がフェンリルの召喚を是と告げている。ならば呼び出そう。
「神獣フェンリルよ、我が召喚に応じよ」
長ったらしい詠唱は不要。何なら「フェンリル召喚!」てな程度でもいい。
そして円柱状の青白い光と共にフェンリル顕現。
前回よりもサイズが小さめなのは騎乗できるようにするため? 乗らないけど。
それにしても神獣だけあって神々しい感じだし存在感が凄い。
「神獣様! あなたを創造した女神フローレンスの復活を願う者への助力を!」
フェンリルと契約し損ねた少年が前に出てきて叫ぶ。いい度胸だな。
何だこいつ、てな感じでフェンリルが俺の方を向く。
「前任者の駄女神を復活させたくて、瘴気火山から化け物を大量発生させ、あそこ にある空間の裂け目と道をつなぎやがったみたいです。
俺はそろそろ時間切れで消えますが、魔力は好きなだけ引っこ抜いていいんで、迷惑転生者へのご説明をお願いします」
「ふむ。我を創造したのが女神フローレンスなどと聞き捨てならぬことを抜かしておったな。ふざけるな! 我を創造した男神はそれよりも古き神。あのような駄女神とは格の違う神であった」
神獣の怒りにビリビリと震える空気の中、俺は消えた。
フェンリルの召喚を是とした俺の直観は、話は長引きそうだとも告げていた。
「待たせたか? 裂け目の向こうに行ってたんだ」
瘴気の大陸再び。俺は空間の裂け目を守るピートに声を掛ける。
「こちらは一進一退の状況でした。屍竜が魔物を狩ってくれているのですが、その分、新しく湧いて出てきているようです」とピートは言う。
「やはりあの瘴気火山が発生源なのかね」
魔物を攻撃していた屍竜が俺に向かって、文字通り飛んでくる。何だろう、このまるで懐いてるような感じ。ゲームマスターの言ってた、騎獣に向くように屍竜を調整したとかいう研究機関、恐るべし。地面にペタッと伏せて、さあ乗れと言わんばかりだ。
ピートは言う。
「そうですね。聖なる山の麓から魔物が湧き出ていると暁の狩人のメンバーも報告してきました。ほら、以前、あなたと共闘した五人パーティーですよ」
屍竜にまたがりながら俺は警告する。
「俺は今から発生源を叩きに行くけど、あいつらに連絡が取れるなら、邪魔だから退いてろと伝えてくれ」
あれを召喚しても空間の裂け目は消せないと思うけど」
契約の際に、契約書と取扱説明書の内容は俺の頭に叩き込まれている。
「聖なる山からの道は通すことができた。
後は聖なる獣がいれば女神は復活する」
何だ、このやたら高そうな格好をしている男。
おや、そいつの隣には、この前の結婚パーティーでフェンリルと契約し損ねた少年が。
俺は怒鳴った。
「待て、こら! てめぇらが瘴気火山からの大量化け物ロードの原因か?
女神の復活って、まさか今の女神の前任者を復活させるつもりじゃあるまいな。
駄女神の復活なんて上位存在が絶対に許さんけどなっ」
それから俺は今度は浄化の聖女に向かって言う。
「まさかあんたも駄女神復活のためにフェンリルを召喚して欲しいと?」
「違います!
そもそも女神の復活についての話など転生者の彼らの思い込みに過ぎません。
このようなことで呼び出すのは申し訳ないのですが、ご自分がどのような存在であるかフェンリルご自身にお言葉をいただきたいのです……」
なるほど。フェンリルと念話で意思疎通できるのは契約者の俺だけだが、通常音声による会話は俺以外の相手でもできる。三分間が過ぎても前回と同様に適当に魔力を引っこ抜いてもらえば、俺と同時に消えることはないはず。
それに俺の直観がフェンリルの召喚を是と告げている。ならば呼び出そう。
「神獣フェンリルよ、我が召喚に応じよ」
長ったらしい詠唱は不要。何なら「フェンリル召喚!」てな程度でもいい。
そして円柱状の青白い光と共にフェンリル顕現。
前回よりもサイズが小さめなのは騎乗できるようにするため? 乗らないけど。
それにしても神獣だけあって神々しい感じだし存在感が凄い。
「神獣様! あなたを創造した女神フローレンスの復活を願う者への助力を!」
フェンリルと契約し損ねた少年が前に出てきて叫ぶ。いい度胸だな。
何だこいつ、てな感じでフェンリルが俺の方を向く。
「前任者の駄女神を復活させたくて、瘴気火山から化け物を大量発生させ、あそこ にある空間の裂け目と道をつなぎやがったみたいです。
俺はそろそろ時間切れで消えますが、魔力は好きなだけ引っこ抜いていいんで、迷惑転生者へのご説明をお願いします」
「ふむ。我を創造したのが女神フローレンスなどと聞き捨てならぬことを抜かしておったな。ふざけるな! 我を創造した男神はそれよりも古き神。あのような駄女神とは格の違う神であった」
神獣の怒りにビリビリと震える空気の中、俺は消えた。
フェンリルの召喚を是とした俺の直観は、話は長引きそうだとも告げていた。
「待たせたか? 裂け目の向こうに行ってたんだ」
瘴気の大陸再び。俺は空間の裂け目を守るピートに声を掛ける。
「こちらは一進一退の状況でした。屍竜が魔物を狩ってくれているのですが、その分、新しく湧いて出てきているようです」とピートは言う。
「やはりあの瘴気火山が発生源なのかね」
魔物を攻撃していた屍竜が俺に向かって、文字通り飛んでくる。何だろう、このまるで懐いてるような感じ。ゲームマスターの言ってた、騎獣に向くように屍竜を調整したとかいう研究機関、恐るべし。地面にペタッと伏せて、さあ乗れと言わんばかりだ。
ピートは言う。
「そうですね。聖なる山の麓から魔物が湧き出ていると暁の狩人のメンバーも報告してきました。ほら、以前、あなたと共闘した五人パーティーですよ」
屍竜にまたがりながら俺は警告する。
「俺は今から発生源を叩きに行くけど、あいつらに連絡が取れるなら、邪魔だから退いてろと伝えてくれ」
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