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転生者は何かとやらかす その3
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「結界の聖女さんと、あなたの言うフェンリルと契約し損ねた少年。彼らにカプセルを渡したことを知らせるのが遅くなったのは申し訳なく思います」
ゲームマスターがすまなそうに言う。
「いえいえ、もともとカプセルを持つ全員の詳細な情報は必要ないと言っていたのは俺ですから」
「それでも彼らについては事前に情報を共有しておくべきでした。情報の入手や整理に時間がかかり、遅れをとったのはわたしの失策です……」
そして情報共有に取り掛かったわけだが何かとややこしい。
「前提として前任者の駄女神は、自分の分身みたいな者をこの世界に配置する趣味があったということですか」
「はい。それも一世代に複数人を。浄化の聖女の婚約者を横取りした魅了の聖女もそうですし、二股浮気男と婚約していた聖国の王女も、フェンリルとの契約を少年と争っていた王太子妃もそうです」
駄女神は分身を通して、自分が主人公の物語を楽しんでいたそうだ。
浄化の聖女を蹴落として瘴気の大陸の王の妻となる物語。
結界の聖女と彼女の夫となるはずだった男を傀儡にして聖国の女王となる物語。
本来の使役者の予定だった弟になり変わって聖獣の使役者となる物語。
「結界の聖女については二股浮気男の公爵子息が婚約者になる予定でした。正式に婚約する前に王女が横取りした形となります」
結界の聖女は言っていた。
——王太女様の女神の石が砕かれましたよね。あれで魅了が解けて正気に返ったと
おっしゃっているのです。
「うーむ、ピンクの宝石が砕かれて魅了が解けたという話ですが、それで『本当に愛しているのはステラ、君だけだ』なんて言いつつ、仲間に聖女を攻撃させるとは二股浮気男の考えはよくわかりません」
と俺が言えば、ゲームマスターも額に手をやりながら言う。
「理解に苦しんでいるのはわたしも同じですが、聖女への攻撃や狼の魔物を使った襲撃は彼の仲間の暴走によるものだと言っています。女神の石が砕かれても王女に心酔したままである者たちが混じっていて、意思の不統一が悲劇を呼んだという話です」
「そう言えば、狼の魔物に襲われた神殿の人たちはどうなりましたか?」と俺。
「幸いにも死者はでませんでした。治癒が間に合ったおかげですが、本当にぎりぎりのところでした。
とりあえずは神殿の防御を強化するしかないとして、もうあの建物ごと完全に破壊して建て直すべきかとも考えています。何がどう仕込まれているか把握しきれないためです」
「前任者の本拠地だったわけですからねぇ。
誘拐された少年が監禁されていた塔みたく、魔法陣が仕込まれていたりして」
「狼の魔物の召喚に使われていたのは魔法陣というより壁に埋め込まれていた魔道具でしたけど、探せば魔法陣もあるかもしれません……」
「ええと、何だか少しお疲れのようですが」
「あなたと屍竜が破壊してくれた塔と同様に処理するべきか迷っています。
塔の方は完全に破壊され、駄女神の分身だった王太子妃を含め関係者が全員死亡してくれましたから、後顧の憂いはあらかたなくなっています。
あの塔と神殿との違いは、塔は駄女神の作品であるのに対し、神殿は駄女神の前任者が創ったものであり、代替物なしの状況で削除するのもどうかと思われます」
「となると、もしも次に俺が神殿に呼び出されたとして、神殿を破壊しないように気を付けるべきですね」
「そのときの状況に応じて臨機応変に対応してくれて構いません。
空間に裂け目を作ったり神殿に狼の魔物を召喚したり、とにかく何をしでかすかわからない者たちが相手ですから」
ゲームマスターがすまなそうに言う。
「いえいえ、もともとカプセルを持つ全員の詳細な情報は必要ないと言っていたのは俺ですから」
「それでも彼らについては事前に情報を共有しておくべきでした。情報の入手や整理に時間がかかり、遅れをとったのはわたしの失策です……」
そして情報共有に取り掛かったわけだが何かとややこしい。
「前提として前任者の駄女神は、自分の分身みたいな者をこの世界に配置する趣味があったということですか」
「はい。それも一世代に複数人を。浄化の聖女の婚約者を横取りした魅了の聖女もそうですし、二股浮気男と婚約していた聖国の王女も、フェンリルとの契約を少年と争っていた王太子妃もそうです」
駄女神は分身を通して、自分が主人公の物語を楽しんでいたそうだ。
浄化の聖女を蹴落として瘴気の大陸の王の妻となる物語。
結界の聖女と彼女の夫となるはずだった男を傀儡にして聖国の女王となる物語。
本来の使役者の予定だった弟になり変わって聖獣の使役者となる物語。
「結界の聖女については二股浮気男の公爵子息が婚約者になる予定でした。正式に婚約する前に王女が横取りした形となります」
結界の聖女は言っていた。
——王太女様の女神の石が砕かれましたよね。あれで魅了が解けて正気に返ったと
おっしゃっているのです。
「うーむ、ピンクの宝石が砕かれて魅了が解けたという話ですが、それで『本当に愛しているのはステラ、君だけだ』なんて言いつつ、仲間に聖女を攻撃させるとは二股浮気男の考えはよくわかりません」
と俺が言えば、ゲームマスターも額に手をやりながら言う。
「理解に苦しんでいるのはわたしも同じですが、聖女への攻撃や狼の魔物を使った襲撃は彼の仲間の暴走によるものだと言っています。女神の石が砕かれても王女に心酔したままである者たちが混じっていて、意思の不統一が悲劇を呼んだという話です」
「そう言えば、狼の魔物に襲われた神殿の人たちはどうなりましたか?」と俺。
「幸いにも死者はでませんでした。治癒が間に合ったおかげですが、本当にぎりぎりのところでした。
とりあえずは神殿の防御を強化するしかないとして、もうあの建物ごと完全に破壊して建て直すべきかとも考えています。何がどう仕込まれているか把握しきれないためです」
「前任者の本拠地だったわけですからねぇ。
誘拐された少年が監禁されていた塔みたく、魔法陣が仕込まれていたりして」
「狼の魔物の召喚に使われていたのは魔法陣というより壁に埋め込まれていた魔道具でしたけど、探せば魔法陣もあるかもしれません……」
「ええと、何だか少しお疲れのようですが」
「あなたと屍竜が破壊してくれた塔と同様に処理するべきか迷っています。
塔の方は完全に破壊され、駄女神の分身だった王太子妃を含め関係者が全員死亡してくれましたから、後顧の憂いはあらかたなくなっています。
あの塔と神殿との違いは、塔は駄女神の作品であるのに対し、神殿は駄女神の前任者が創ったものであり、代替物なしの状況で削除するのもどうかと思われます」
「となると、もしも次に俺が神殿に呼び出されたとして、神殿を破壊しないように気を付けるべきですね」
「そのときの状況に応じて臨機応変に対応してくれて構いません。
空間に裂け目を作ったり神殿に狼の魔物を召喚したり、とにかく何をしでかすかわからない者たちが相手ですから」
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