カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

文字の大きさ
28 / 30

転生者は何かとやらかす その3

しおりを挟む
「結界の聖女さんと、あなたの言うフェンリルと契約し損ねた少年。彼らにカプセルを渡したことを知らせるのが遅くなったのは申し訳なく思います」
 ゲームマスターがすまなそうに言う。

「いえいえ、もともとカプセルを持つ全員の詳細な情報は必要ないと言っていたのは俺ですから」

「それでも彼らについては事前に情報を共有しておくべきでした。情報の入手や整理に時間がかかり、遅れをとったのはわたしの失策です……」

 そして情報共有に取り掛かったわけだが何かとややこしい。

「前提として前任者の駄女神は、自分の分身みたいな者をこの世界に配置する趣味があったということですか」
「はい。それも一世代に複数人を。浄化の聖女の婚約者を横取りした魅了の聖女もそうですし、二股浮気男と婚約していた聖国の王女も、フェンリルとの契約を少年と争っていた王太子妃もそうです」

 駄女神は分身を通して、自分が主人公の物語を楽しんでいたそうだ。
 浄化の聖女を蹴落として瘴気の大陸の王の妻となる物語。
 結界の聖女と彼女の夫となるはずだった男を傀儡にして聖国の女王となる物語。
 本来の使役者の予定だった弟になり変わって聖獣の使役者となる物語。

「結界の聖女については二股浮気男の公爵子息が婚約者になる予定でした。正式に婚約する前に王女が横取りした形となります」

 結界の聖女は言っていた。
——王太女様の女神の石が砕かれましたよね。あれで魅了が解けて正気に返ったと
  おっしゃっているのです。

「うーむ、ピンクの宝石が砕かれて魅了が解けたという話ですが、それで『本当に愛しているのはステラ、君だけだ』なんて言いつつ、仲間に聖女を攻撃させるとは二股浮気男の考えはよくわかりません」
 と俺が言えば、ゲームマスターも額に手をやりながら言う。
「理解に苦しんでいるのはわたしも同じですが、聖女への攻撃や狼の魔物を使った襲撃は彼の仲間の暴走によるものだと言っています。女神の石が砕かれても王女に心酔したままである者たちが混じっていて、意思の不統一が悲劇を呼んだという話です」

「そう言えば、狼の魔物に襲われた神殿の人たちはどうなりましたか?」と俺。
「幸いにも死者はでませんでした。治癒が間に合ったおかげですが、本当にぎりぎりのところでした。
 とりあえずは神殿の防御を強化するしかないとして、もうあの建物ごと完全に破壊して建て直すべきかとも考えています。何がどう仕込まれているか把握しきれないためです」

「前任者の本拠地だったわけですからねぇ。
 誘拐された少年が監禁されていた塔みたく、魔法陣が仕込まれていたりして」
「狼の魔物の召喚に使われていたのは魔法陣というより壁に埋め込まれていた魔道具でしたけど、探せば魔法陣もあるかもしれません……」

「ええと、何だか少しお疲れのようですが」
「あなたと屍竜が破壊してくれた塔と同様に処理するべきか迷っています。
 塔の方は完全に破壊され、駄女神の分身だった王太子妃を含め関係者が全員死亡してくれましたから、後顧の憂いはあらかたなくなっています。
 あの塔と神殿との違いは、塔は駄女神の作品であるのに対し、神殿は駄女神の前任者が創ったものであり、代替物なしの状況で削除するのもどうかと思われます」

「となると、もしも次に俺が神殿に呼び出されたとして、神殿を破壊しないように気を付けるべきですね」
「そのときの状況に応じて臨機応変に対応してくれて構いません。
 空間に裂け目を作ったり神殿に狼の魔物を召喚したり、とにかく何をしでかすかわからない者たちが相手ですから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

処理中です...