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転生者は何かとやらかす その4
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「今日はよろしくお願いします」
フェンリルと契約し損ねた少年がペコリと頭を下げる。
「こちらこそよろしくな、タビー。
じゃあ、フェンリル召喚!」
場所は聖国の神殿。召喚したフェンリルの背に乗ったタビー少年と俺は、これから神殿に仕込まれた遺物を破壊してまわる。
ちなみに少年をタビーと愛称で呼ぶのは、自分のオクタウィウスという名前が気に入らない少年本人の希望による。僕は八番目の子供ではないからと主張するが、いろいろ事情があるのかな。
さて俺とタビーとフェンリルの組み合わせで神殿内を走り回ることになったのはなぜかと言うと、駄女神の遺物の探知と破壊に向いてる者が他にいないからだ。
この前の結界の聖女襲撃でとっ捕まえた転生者たちから、怪しい設備の情報を搾り取ることはできたけれど、それらをぶち壊すことができる人材が神殿内には不足している。いくら駄女神由来といっても神殿の一部を破壊するのは心理的抵抗が大きいようだし、そもそも物理的な破壊が得意でない者が多い。
俺は神殿にはメイスをぶん回して壁や扉を壊すのもお手の物の僧侶が常駐しているもんだと誤解していた。前に俺が所属していた勇者パーティーの僧侶とか、瘴気大陸で会った暁の狩人パーティーの僧侶とかを念頭においていたのだが、そんな僧侶など滅多にいないと呆れられた次第である。解せぬ。
そこで俺とフェンリルが適任と判断された。前任の駄女神を軽蔑する思いこそあれ尊敬の気持ちなど欠片もないから、遠慮のない破壊活動が可能だ。塔を破壊したときは屍竜を騎獣にしたけど、聖国の神殿はあの塔と違って上から下まで瘴気まみれというわけではない。部分的に瘴気が濃いところがあれば破壊対象として察知できるように、瘴気に敏感なフェンリルに頑張ってもらいたいと思う。
さらにタビー少年がカプセルを割る役割だけではなく俺たちの手伝いもしたいと名乗りでた。
平たく言えば、彼はフェンリルが好きだし神殿も好き。瘴気は嫌いで駄女神の気配がするものも嫌い。神殿全体の破壊に至らぬようにするための部分的な破壊には積極的に協力したいし、何よりもフェンリルと一緒に行動できたら幸せだと言う。
『本当にフェンリルが大好きなんですね。駄女神の分身だった彼の姉のちょっかいがなければ、タビー少年がすんなり使役者になってたんでしょうか』
『我の使役者になるには十年早い。魔力の量がもっと増えないと遠慮なく魔力を引き抜くことができぬし、あっさり誘拐される体たらくでは弱すぎる』
『まだ十一歳ですからね。十年後に期待ということで』
俺とフェンリルのかわす念話はタビー少年には聞こえない。
「ここです。右から二番目の窓のガラスを割ってください」
と少年が言い、
「立派なステンドグラスだな」
と俺は剣先から光のビームを出す。
少しだけ抵抗を感じたが、ガラスはすぐに割れ破片が床に落ちていく。
「どの窓も新しい。恐らくどれも世界の担当が駄女神になってから作られた窓だ。
念のため全部割ってしまえ」とフェンリルが言い出した。
「全部ですか。芸術作品として保護の対象になったりしてないでしょうね」
「いいえ、こんなもの全部なくした方がすっきりして美しいと思います。
僕もお手伝いします!」
少し躊躇う俺に構うことなく、元気よく光の矢を繰り出す少年がいる。
ガラスの割れていく音が彼の笑顔を誘っているようだ。楽しそうだな、おい。
窓のガラスが全て割れ、俺は床に落ちた破片を闇の属性を使い粉々にしておく。
「それと天井画には魔法陣が隠されています」
「ええと光の矢はいいんだけど天井が落ちてこないように力を加減する方が……。
神殿のある場所を更地にしたいわけじゃないんだよね?」
フェンリルと契約し損ねた少年がペコリと頭を下げる。
「こちらこそよろしくな、タビー。
じゃあ、フェンリル召喚!」
場所は聖国の神殿。召喚したフェンリルの背に乗ったタビー少年と俺は、これから神殿に仕込まれた遺物を破壊してまわる。
ちなみに少年をタビーと愛称で呼ぶのは、自分のオクタウィウスという名前が気に入らない少年本人の希望による。僕は八番目の子供ではないからと主張するが、いろいろ事情があるのかな。
さて俺とタビーとフェンリルの組み合わせで神殿内を走り回ることになったのはなぜかと言うと、駄女神の遺物の探知と破壊に向いてる者が他にいないからだ。
この前の結界の聖女襲撃でとっ捕まえた転生者たちから、怪しい設備の情報を搾り取ることはできたけれど、それらをぶち壊すことができる人材が神殿内には不足している。いくら駄女神由来といっても神殿の一部を破壊するのは心理的抵抗が大きいようだし、そもそも物理的な破壊が得意でない者が多い。
俺は神殿にはメイスをぶん回して壁や扉を壊すのもお手の物の僧侶が常駐しているもんだと誤解していた。前に俺が所属していた勇者パーティーの僧侶とか、瘴気大陸で会った暁の狩人パーティーの僧侶とかを念頭においていたのだが、そんな僧侶など滅多にいないと呆れられた次第である。解せぬ。
そこで俺とフェンリルが適任と判断された。前任の駄女神を軽蔑する思いこそあれ尊敬の気持ちなど欠片もないから、遠慮のない破壊活動が可能だ。塔を破壊したときは屍竜を騎獣にしたけど、聖国の神殿はあの塔と違って上から下まで瘴気まみれというわけではない。部分的に瘴気が濃いところがあれば破壊対象として察知できるように、瘴気に敏感なフェンリルに頑張ってもらいたいと思う。
さらにタビー少年がカプセルを割る役割だけではなく俺たちの手伝いもしたいと名乗りでた。
平たく言えば、彼はフェンリルが好きだし神殿も好き。瘴気は嫌いで駄女神の気配がするものも嫌い。神殿全体の破壊に至らぬようにするための部分的な破壊には積極的に協力したいし、何よりもフェンリルと一緒に行動できたら幸せだと言う。
『本当にフェンリルが大好きなんですね。駄女神の分身だった彼の姉のちょっかいがなければ、タビー少年がすんなり使役者になってたんでしょうか』
『我の使役者になるには十年早い。魔力の量がもっと増えないと遠慮なく魔力を引き抜くことができぬし、あっさり誘拐される体たらくでは弱すぎる』
『まだ十一歳ですからね。十年後に期待ということで』
俺とフェンリルのかわす念話はタビー少年には聞こえない。
「ここです。右から二番目の窓のガラスを割ってください」
と少年が言い、
「立派なステンドグラスだな」
と俺は剣先から光のビームを出す。
少しだけ抵抗を感じたが、ガラスはすぐに割れ破片が床に落ちていく。
「どの窓も新しい。恐らくどれも世界の担当が駄女神になってから作られた窓だ。
念のため全部割ってしまえ」とフェンリルが言い出した。
「全部ですか。芸術作品として保護の対象になったりしてないでしょうね」
「いいえ、こんなもの全部なくした方がすっきりして美しいと思います。
僕もお手伝いします!」
少し躊躇う俺に構うことなく、元気よく光の矢を繰り出す少年がいる。
ガラスの割れていく音が彼の笑顔を誘っているようだ。楽しそうだな、おい。
窓のガラスが全て割れ、俺は床に落ちた破片を闇の属性を使い粉々にしておく。
「それと天井画には魔法陣が隠されています」
「ええと光の矢はいいんだけど天井が落ちてこないように力を加減する方が……。
神殿のある場所を更地にしたいわけじゃないんだよね?」
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