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第62話

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高校生探索者全国闘技会
決勝戦

試合場に入り、改めて長塚君と対峙する
体格は良く鍛えて引き締まった中量級の格闘家といった感じ、但し…もみあげのせいでどうしても猿かゴリラを連想してしまう
昇竜拳て言ってるけど…〇ュウ、つーか…スマートになったブラ〇カ?かなあ

得物はグローブに袖のない空手着のみ…こんな装備で勝ち残って来たのは普通なら有り得ないお話で…
それを補う何かある…はずだよねー


礼を取って戦闘開始

魔力感知と万象予測を発動させて最大限に警戒しつつ、こちらから仕掛ける………つもりでしたが、敵さんの方が既に僕の懐で笑ってました

咄嗟に身体をひねって逃げるも、腹にそこそこきつい一発をもらい…少し吐きそう、続けて来た頭へのパンチは無事に避け戦戈で牽制して立て直す

万象予測が移動スキルが使用された可能性を示唆、「縮地」の可能性大と訴えてくる

「縮地」…地面の距離を一瞬で縮めると言われる移動系レアスキルだったか?

僕は慌てて武器をやたらに振り回しながら逃げ出す…様に見せかけて裂空斬で空間異常をばらまく

慌てる僕にあきれたような顔をして止めを刺すつもりなのか襲って来る

甘めえよ猿が…

「ガッ!」
トラップの空間異常に突っ込んで叫び声をあげる長塚君

…あ、空間異常に突っ込むと、肉がねじれる感じでかなり不快になんだよね~w

左手に隙が出来たので連撃を喰らわせる。骨折まではいかなかったが、かなりのダメージなので数分ぐらいは動かないだろう
…そう思ったのが大きな間違いだった事に後で気付くが…

僕は魔力感知で空間異常の場所を把握しながら、隙間を縫って攻撃を続ける

途中、長塚君の右手に強い魔力が集中している事に気付き咄嗟に距離を開ける
すると、
「ソニックブーム!」
長塚君は右腕を横に振り抜き衝撃波を放った

思わず「昇竜拳ちゃうんかい!?」と突っ込んでしまったが、衝撃波で相殺されていく空間異常を見てかなり焦る

「やばッ…」裂空斬を放とうとしたが少し遅く、また潜り込まれ顔面に一発、きついのをもらう
さらに頭の中がツーンとする中、隙を見せてしまい大技を喰らってしまう

「竜巻旋風脚!!」

ガードの上から回転蹴りが来た。取り敢えず防御は成功したが、かなりふらつく状態

仕方なく戦戈を振り回して空間異常をばらまきながら後退する

逃げながら対策を考える…さっきから懐に潜り込まれて対処出来なくなってるから、いっその事…



足元がおぼつかない僕は長塚君から離れて膝をつく。くらくらする頭を振って戦戈を杖に立ち上がる
うつろな目で辺りを見回すとソニックブームで空間異常を消しながらこちらへ向かってくる長塚君を見付ける

ふらつき肩で息をする僕、そして余裕の見える長塚君
最後の打ち合いになるだろう

僕は焦点の定まらない虚ろな眼差しで長塚君に2本の戦戈を向ける
「君はよくやったよ、これで終わらせよう!!」長塚君はそう言いながら瞬時に姿を消し、僕の懐に現れた

…そして…


武器を捨てた僕の右フックを顔面に喰らった
得物が邪魔でインサイド攻撃できないならさあ、いっそ武器捨てて相手の土俵でやればよくね?


凍りつく会場…誰もが長塚君の勝利を確信していたのだろう

だがそうは問屋が卸さない

疲れ?ふらつき?しらね~よ、ば~かw
あんなもん演技だボケ、スキル「内養功」持ってるから累積ダメージなんてほとんど回復してますからwww



油断しまくってた長塚君をそのまま徒手空拳でどつき続ける。格闘家だろうが、片手の野郎ならなんとでもなるがなwww
そのままいけると思ったのも束の間、青筋を浮かべた笑顔で長塚君が立ち上がる

「楽しませてくれるなあ、決勝まで来た甲斐があったよw」

そして…ほんとの最終ラウンドが開始した

万象予測である程度攻撃は避けられるものの、相手の捌き方が上手くて如何せんダメージが通らない
身体強化を使ってこのざまとかもうね、あほかと…

3分以上のどつきあいでお互いボコボコになりながら試合はまだ捨てていない

だがそれももう無理だった、奴の左手が回復したのだ
…じり貧になる僕

そして…
「最後だぁ!歯ぁくいしばれえぇ!!昇りゅ…「お前の代名詞なんざやらせねえ」」

鉄山靠で吹き飛ばし阻止したものの、飛ばし際に強烈な裏拳を喰らって僕は気を失った









僕が負けていたのを知ったのは、しばらくして救護室で目が覚めた後になる
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