吸血鬼の血に目覚めた悪役令嬢は、別の世界の扉を開いて変態聖女にキスをする。

タヌオー

文字の大きさ
64 / 90
第2章

12 no attention

しおりを挟む
かっこよく『ついてきなさい!』と言った矢先だったけど、金属蝿の大群をひとしきり粉砕するとその先の東の空が白んできて私を強烈な眠気が襲った。

アイナとセリナは「また休憩か」「急ぐんじゃなかったのかよ」とぶつくさ言ったけど、ローザとライラも消耗していたのでみんなで説得して、ライラが植物魔術で木と草のドームを作るとそれにローザが隠蔽シールを唱えて敵から見つからないようにして、私はその中に入ってアルミラの血を吸って得た固有能力の底なしの棺フィニスアルカで左手から故郷の土が入ったマットを出してそれを敷いて寝転がって5秒で寝た。

目を覚ますともう夕方。

木と草のドームの外で警戒にあたっていたアイナが「睡眠というものか。不便だな人間は」と言い、セリナは「無防備にぐっすり寝てたよなぁ。リリアスは。もしローザに気付かれなかったら逃げ出してミッションに戻っちまおうかと思ったんだぜ?」と言った。

ローザは「ふふ、睡眠中でもわたくしの結界からは逃れられませんわ」と言ってあくびをした。

「そういえば、ローザの聖術って一体どういうものなの?」

長い黒髪をかきあげてライラが尋ねると、ローザは「う~ん」と少し唸ってから答えた。

「魔術の四元素論はご存知ですわよね?」

ライラが当然ように頷いて「あたしの植物魔術もベースは土系統だからね」と言ったが、私は腕を組んで首をひねる。
頭の上に「?」マークが浮かぶ。

「え、リリアス様は王立学園で習ったでしょう…?」
「いやぁ…」
「魔術の基礎中の基礎ですわよ!?」
「…えへへ」
「笑って誤魔化さないでくださいまし…!よく進級できましたわね…!」

ローザがため息をついて説明を始める。

「そもそも世界の物質は火・風・水・土の4つの元素で構成されているのです。その四元素を魔力で自在に操るのが魔術。聖術は魔術と対となる概念。魔力を…厳密には魔力の源となるエネルギーをですが、便宜上『魔力』と呼んでしまうことが一般的ですわね…それを体内で聖なる力に変換し、四元素にさらに聖属性を与えて操るのが聖術ですわ。消耗は激しいですがその分アンデッドに対しては絶大な威力を発揮しますし防御系や回復系の術も通常の魔術より大幅に効果が増幅されて…」

私はもう、ちょっとよくわからない。
『べんぎじょう』とか言い出した時点でよくわからない。
でもとりあえず質問をした本人であるライラが「なるほどね~」と納得しているみたいなので私も「うんうん」と頷いておく。

「絶対リリアス様は理解していませんわ…」

ローザにそう言われてギクリとして私は「と、とにかく先を急ぐわよ!」と言う。

早くシェナ連邦とかいう国に行って『梵天』とかいうのがあればぶっ壊して、なければメルカ共和国の司令部に殴り込んで、ゲートを開けてもらうんだから!

長ったらしい説明を聞いてるヒマはない!


******


ここから先、シェナ連邦に近付くほどに機械装甲兵たちの襲撃が増えるだろうというアイナとセリナの話を受けて、ローザが私たち全員に隠蔽シールをかけてくれた。

アイナとセリナは低空飛行で空を飛び、私とローザとライラはフェンリルの背中に乗ってそれに続いた。

途中、たくさんの機械の兵隊たちや金属蝿がうろついていたけど、ローザの隠蔽シールのおかげで私たちの姿は見えないらしく、まったく戦うことなく進むことができた。

ただ問題はローザの魔力残量。

5人に隠蔽シールをかけ続けていられるのは4日が限度とのことで、まさにちょうど4日後の夕方。

ローザの魔力が底をつく寸前、私たちはシェナ連邦の首都らしき場所に着いた。

首都と言っても、とてもそうは見えない。
どう見てもただの瓦礫の山。それも見渡す限りの瓦礫の山。
鉄クズや石などの破片が夕焼けのオレンジ色に染まっている。

「こ、これがシェナ連邦の首都…トゥジーン…」
「ウソだろ…こんな壊滅状態だなんて、データにないぜ…?」

アイナとセリナが愕然とそう呟いたから、街になんか見えないその場所で私は《あ、ここが首都なのね》と思うことができた。

「よかった…着いたのですね…」

ローザは青白い顔に脂汗を浮かべてそう呟いた。

「この辺は敵もいなさそうだし、もう隠蔽シールは大丈夫だよ…!」

ライラに言われてローザは隠蔽シールを解く。

私の聴覚や嗅覚、熱感知でも周囲に怪しい機械の存在は感じられない。

「アイナ、セリナ。少し休憩にするわよ」

私がそう声をかけると、セリナだけが振り向く。

「ちょっと待ってくれ…せめてアタシのサーチで調べさせてくれ…」

アイナはその横でわなわなと震えている。

「いいわ。でも私たちはローザを休ませるわ。セリナの警護はアイナだけでやってよね」

私はそれだけ言うと、ぐったりしたローザをフェンリルの背中から降ろして、瓦礫の山の中で安定している平べったい石の床の上に寝かせる。ライラが「ちょっと待ってて、魔力草を出すからね…」と言って手のひらからザワザワと紫色の草を伸ばし、それでローザの身体を覆った。

「たぶん、しばらくすれば動けるくらいには回復するはずだよ…」

ライラはそう言ってから「ごめんね、もっとこまめに回復してあげればよかった」とローザの髪を撫でたが、きっと悪いのは私だ。「先を急ぐわよ」と何度言ったことか。それでローザに無理をさせてしまったのだ。

背後から金属を引っ掻くような甲高い音が大音量で聴こえてくる。私はそれで耳を塞いでしまうがライラは何ともなさそうなところを見ると、セリナがサーチモードとかいうやつで機械の反応を探っているのだろう。

「くそっ!なんでないんだ!どういうことだよ!」
「ほ、本当にないのか…シェナのマザーAI『梵天』は…」
「信じられねえ!もう一度やってみる!サーチモード、起動!」

それからしばらくの間、何度も何度もセリナはサーチモードを起動し、その度に私は耳を塞いで激しい雑音に耐えた。ライラが「ローザ、ごめんね」と言う横で「悪いのは私だよ…」と呟くと、ライラは首を振って「でもリリアスも耳、大丈夫?」と気遣ってくれた。

私が「うん、何とか…」と答えた時、セリナが放つ甲高い音が突如として途切れ、「な!なんだお前は!」というアイナの声が響いた。

振り向くとそこには地に伏せるアイナとセリナ。
それを見下ろすようにして瓦礫の山の頂上に立つのは、真っ黒な服で赤い長髪を風になびかせる男。

「おいおい無防備すぎるぜ…!5回は殺せたぞ、リリアス・エル・エスパーダ…!」

赤い髪をかきあげて男が微笑うと、その口の中から鋭い犬歯が覗いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

処理中です...