吸血鬼の血に目覚めた悪役令嬢は、別の世界の扉を開いて変態聖女にキスをする。

タヌオー

文字の大きさ
89 / 90
第2章

37 smash out

しおりを挟む
私は自分の耳と目を疑った。

人格データが消されたはずのセリナが、アイナに肩を支えられて立ち上がろうとしている。
私を『ボス』と呼んで。

「ポッド!アタシと同期しろ!」
「了解シマシタ、セリナ様。同期ヲ開始シマス」

セリナの身体がアイナのオーバードライブのように激しい光を放ってポッドと共鳴するように甲高い音を響き渡らせる。
その隣りでアイナが左腕を銃に変えてアンドロイド兵たちにビームを連射する。

「リリアス!セリナの人格データは私の中のバックアップデータで復旧完了した!ネットワークの分断に成功したらマザーを破壊してくれ!」

私は地に伏せたままアンドロイド兵やスクアッド・ゼロたちの銃弾の雨に打たれ、アイナとセリナを見つめている。

――――そうか。

私が見た記憶の中でセリナが言っていた。

『これからは毎日、時間があれば何回でも、アタシたちは記憶を共有しよう』

それでアイナの中にはセリナの記憶と感情のほとんどが残っていた。
さっき唇を重ねていたのは、空っぽのセリナの中にそれを移し入れるため。

アイナとの絆で、セリナは戻ってきたんだ。

「よかった…」

銃撃を受けて肉片を飛び散らしながら私がそう呟くと、ローザが「太陽の光の矢サンライトアロー!」と叫んでアンドロイド兵たちを撃ち抜く。

「さあリリアス様!寝てる場合ではありませんわよ!」

私の顔が無意識に微笑み、銃撃を受けながら私は立ち上がる。
肉片が吹っ飛んでいくけど、同じ速度で再生し続ける私は直立して両手を左右に広げる。

「超音波!!!」

両手から強力な音波を放ち、アンドロイド兵の何人かを痺れさせて機能を停止させる。
これも、アイナとセリナの血を吸って得た能力だ。

ケイトとアンズも銃でアンドロイド兵たちと交戦している。
ライラはツタを伸ばして巨大なマザー本体のまわりを飛び回りながら撹乱している。

私は闇に消えて移動し、アイナとセリナの前に立つ。

あとはここで2人を守れば、セリナがマザーをネットワークから分断してくれる。
そうすればマザーを力任せにぶっ壊すだけ。
アンドロイド兵やスクアッド・ゼロたちが次々と銃弾やレーザーを撃ち込んでくるが、すべて私のバリアでかき消されていく。

私の背後でセリナがより一層強い光と金属音を放つ。

「ボス…」

私は振り向く。

「どうしたの?」

セリナが微笑みを浮かべて言う。

「…マザーの隔離、完了だ」

私も微笑みを返して言う。

「よくやったわ!さすが私の侍女よ!」

マザーのほうに向き直ると、司令官の身体を借りたマザーが呟いた。

「まさか、このマザーAIに読み抜けがあるとは思いませんでしたよ…」

私は全身から魔力を解き放ちながら言う。

「誰にでも間違いはあるわ…観念するのね…」

私がそう言うと「ふふふ…投了にはまだ早いですね」と言って司令官の身体がメキメキメキと崩れ、笑みを浮かべる頭部を残して機械の部品に変わっていく。残っていたアンドロイド兵たちも機械の部品に変わり、スクアッド・ゼロたちはドロドロと溶けて液体のようになる。
それらが宙に浮いてマザーの本体に吸い込まれていく。
同時にゴゴゴゴゴ…と地面が揺れ、マザーの本体がせり上がり、パラパラと天井から金属片が落ち、私たちのいる空間が崩壊していく。

「さあ…クライマックスはこれからですよ」

マザーがそう言うとガラガラガラと天井が崩落し始めて、ローザが「危険ですわ!脱出しましょう!」と言い、ライラもその横で頷く。
私は天井に手のひらを向け、「レーザー!」と光線を撃ち放つ。

「みんな!飛ぶわよ!」

私は雷竜の翼を広げてローザとライラを抱えたまま飛び立つ。
アイナとセリナ、ケイトとアンズもバシュッ!と私に続いて飛ぶ。

天井の穴を抜けると満天の星空。

眼下に広がるのは広大な基地。
それがズズズズズ…とマザーのいた場所に飲み込まれていき、生き物のようにうごめいて膨れ上がっていく。
基地の様々な建物がベキベキベキと音を立てて形を変え、マザーの本体を包み込むように巨大な人間の形を作っていく。

エンドマイルで戦った超大型機械装甲兵の何倍も巨大な金属の人間。
それが司令官の音声を夜空に響き渡らせる。

「この私が研究を続けてきたナノテクノロジーと『梵天』が磨き上げた機械生命工学、それがひとつに合わさったこの究極体に勝てるはずがありませんよ!」

大音量が空気を震わせて、宙に浮いた私たちにビリビリと響いてくる。

「あなたたちを廃棄処分してゲームオーバーです!」

私は抱きかかえたローザに言う。

「ねえローザ、マザーを倒すまでライラと一緒に光の盾でそこにいてくれる?」
「ええ、わかりましたわ…。でもリリアス様、どうやってあんな巨体を?」

ローザは「聖なる光の盾ホーリーシールド」と唱えて光の盾を横向きに展開し、その上に飛び乗る。ライラも私の腕の中からそこに続く。

「どれだけ大きくても関係ないわ。でも一応そうね…ライラ、解析眼であいつの弱点とか見えるかしら」

ライラは左右に首を振る。

「その必要はないよ、リリアス。実はさっきもう仕込んでおいたんだ」

首をかしげる私に構わずライラは続ける。

「解き放て…魔蒼麗樹マソウレイジュ!」

ライラがそう言うと、巨大化したマザーの胸の中心を巨木が突き破った。

「な!こ、これは!」

マザーは胸から生えてくる木の枝をむしり取るが、そのたびに次から次に生えてきてなくならない。ライラが拳を握りしめて言う。

「さあリリアス!あそこにマザーの本体があるよ!」

私は頷いて「さすがライラね!」と言ってマザーに向き直る。
マザーはまだ胸から生えてくる木々を引き抜き続けている。

「こ、こんなもの!こんな!お、玩具の分際で…!」

私は全身の魔力を燃え上がらせ、身体の前に突き出した両手の手のひらに集中させる。
ギィィィィィィィィ…!と手のひらに眩い光が集まる。

「私たちは、玩具じゃないわ…!」

私の背後でケイトが「頼む…リリアス」と呟き、アンズも祈るように「お願い…!」と言い、アイナとセリナが「やってくれ!」「このくだらないゲームを終わらせてくれ!」と叫ぶ。

「全力で行くわ!吹き飛びなさい!!!」

私の両手から太く強大な光線が放たれ、一直線にマザーの胸の中心へと向かう。
それに気付いたマザーがバリアを展開するが、私の怒りを乗せたレーザーはバリアを貫通し、マザーの本体のある胸もそのまま突き破る。

「そんな…そんな…!」

胸に巨大な風穴を開けたマザーがそう呟いてよろめいて倒れそうになるがその動きが止まる。すぐにメキメキと音を立てて修復し胸の風穴が塞がれる。

「…ふふ、まだ終わりませんよ」

驚く私たちを嘲笑うかのようにマザーは続ける。

「掻き集めたスクアッド・ゼロやアンドロイド兵のコア、基地中の機械…それらを繋ぎ合わせ、もはやこの身体そのものが巨大な思考回路となっているのです」

ローザが「なんですって!」と驚きの声を上げ、ライラが「そんなのって…!」と落胆の声を漏らす。だけど私は再び身体中の魔力を燃え上がらせ「それなら話は早いわ!」と飛び出す。

全身に電流を纏い、稲妻そのものになりながら私は右腕の腕輪に語りかける。
エンドマイルの街中のアンデッドを集めた腕輪。

「エンドマイル!変形しなさい!」

数え切れないほど大量のアンデッドの結晶が私の右腕から形を変えて天を衝くような巨大な剣になる。私はマザーに飛びかかりながらそれを振りかざす。
マザーは再びバリアを張るが私にはそんなもの関係ない。

「これで!!!」

ザンッ!
マザーの頭から一気に下まで振り抜いて一刀両断にする。

「終わりよっ!!!!!」

ザザザザザザザザザンッ!!!

稲妻の速度でマザーのまわりを飛び回って次々に斬撃を浴びせ、マザーの巨体を微塵切りにしていく。街そのもののような大きさだったマザーを家くらいの大きさの破片にして、まだ斬り続けて馬車くらいの大きさに、もっと斬り続けて人間くらいの大きさに。まだ斬る。もっと細かく。私の目の前の破片のひとつが司令官の顔に変わる。

「長いゲームも、ようやく…エンディングですね…」

寂しそうに、でもどこか嬉しそうに微笑んだ顔。
私は身体の中で自分の魔力をケルベロスの炎に変化させながら言う。

「ゲームなら、あの世で勝手にやってなさい」

私は全身から地獄の業火を爆発させ、マザーの破片のすべてを一気に焼き尽くした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

皇女激愛戦記

克全
恋愛
アルファポリスに先行投稿します。史実の春齢女王を主人公に空想した仮想戦記恋愛小説です。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...