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①
1-5 現れる変態たち――部員
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「ただいま~」
と、俺はドアノブを回す。しかし開かなかった。
「なんだ、唯愛のやつ。まだ寝てんのか?」
仕方ないな。俺は、財布に入れていた鍵を使って、家に入る。そしてそのまま、荷物を取りに部屋にいく。
すると俺の部屋のなかから声が聞こえた。今、家にいるのなんて唯愛しかいない。
俺は溜息を吐いてから、ドアを少しだけ開けて、中を覗き見る。
「ん……あっ……ふ……」
…………
「たっくん……たっくん~……」
…………
「うぅ……やばいよぉ……もう少しでたっくん……んっ……帰ってきちゃうよぉ~……」
…………
「でも……でもやめられない!」
…………
「ごめんね。たっくん。こんなお姉ちゃんで……あ……でも、でも私はたっくんのこと大好き!」
…………
「ああ……ダメ! ふゎ……この部屋たっくんの匂いが溢れていて……私たっくんに包まれてる……」
…………
「あん! ダメ! ダメだよ、たっくん! そんなところ……」
…………
「いや……あっ、あっ、ふっ、や……んあっ! ん~!」
…………
「たっくん……やっ! ……それ……はげ……しいよ……」
…………
「ああ……ダメ! 本当にダメだよ! たっく……イっちゃう! イっちゃうから~!」
…………
「あ、あ……私たっくんに……弟にイカされちゃう! 見られながら、イっちゃう!」
…………
「う、うぁ、あん!! い……いっくぅぅぅううう!!!!」
…………
「はぁ……はぁ……はぁ……」
…………
「あう……シーツがびしょ濡れだよ」
「本当だな。どうしてくれるんだ? この年中発情淫乱姉」
息絶え絶えに、呟いた唯愛に向かい、布団を捲って確認して答える。
「きゃ! た、た、た、たっくん!? いつからそこに!?」
「結構前から」
「あう……」
「あながち、弟に見られていくっていうのは間違ってなかったな」
「はずかしい……」
枕を抱いて口に押し付け呟く。きもい。それで寝る俺の気持ちにもなれ。
ちなみにさっきの状況は、ドアからだと声しか聞こえなかった。布団の中でもぞもぞと動く何かは確認できるが。向き的にも顔も見えないし。
まぁ、布団で隠れているから何をしているのかなんてわからないし大丈夫だろう。これをもっとくわしく描写したら、完全にアウトになるのでしないが。
つーか、なんだこの部屋? すごいニオイだ。唯愛のメスの匂いがぷんぷんするぜ。早く換気しないと、これに染まりきってしまうな。いやそれよりも前に……
「でてけ」
部屋から唯愛をつまみ出す。唯愛はTシャツを着ているだけで後は何も身につけていなかった……ってそれ俺のじゃん。いや、もういいけどさ。そのくらいは。
俺は唯愛に向かって忠告をする。
「今日から五日、俺の部屋には絶対に入るな。一生っていいたい所だけど無理だろうし。いいか? もし入ったら、そのときは俺、お前と二度と口聞かないし、この家出ていくから」
「!? わ、わかったよ!」
唯愛は頷く。これでひとまずは大丈夫だろう。あの時と違って、今はまだ常識がないこともないはずだ。たぶん、俺の言葉を素直に聞いてくれる。
ドアを閉め、ベッドに目を移す。
「うわ……すごいな。本当におもらししたみたいだぞ」
シーツ以外は……大丈夫だな。ってなんだこれ?
「パンツ……」
唯愛のだな……。うわ、これもすげービチョビチョだな。水分を吸って、随分と重くなってる。ってやばっ! 手についた! しかもなんかネットリとして、糸を引いてやがる……。不潔だ。
「学校に行く前に洗濯しとかないとな……」
俺は服を着替え、窓を開け、シーツとパンツを洗濯機に詰め込み、部屋に戻った後、鞄を持ち、キッチンにいた唯愛(制服を着ている)に声をかけた。
「それじゃ、先行くからー」
「え? たっくん、朝ご飯は?」
「その辺で買って、学校に行ってから食べるからいいよ」
「そ、そういってらっしゃい。たっくん!」
「いってきまーす」
そうして俺は家を出た。
さっきの感じ、朝食作ってたんだろうな。唯愛には悪いが食べないぞ。
別にまずいとかそんなことはない。むしろ美味しいと思う。けど、今日はあんなことがあったんだ。いつもよりも冷たいくらいじゃないとダメだ。意識してやっていかないとな。
今日はひさびさに、昼は学食になるな。そんなことを考えながら、俺は学校へと向かった。
*****
補足しておくと唯愛と俺は学校が違う。唯愛は俺の一つ年上で、唯愛が先に高校へと入学したので俺は別の学校を選んだのだ。
これには理由があって、唯愛が中学二年生のときが、一番ひどい時期で――それ以前はそれほどでもなかったが――あのときから唯愛に特別な苦手意識をするようになったのだ。もしかしたら、俺が小さな女の子を好きな原因は、そこにもあるのかもしれない。
とにかく、学校にいる間は唯愛と出会うことはないということだ。
いたら大変だろうな。休み時間になるたびに俺の所に来ては、人目も憚らず、抱きついてきたり(体験談)、昼ご飯はあーんさせてきたり(体験談)、それだけじゃなく、俺達のことをよく知らないやつらが、二人は恋人同士だとか噂をしたり(体験談)が起こるだろう。
特に最後のは、真面目にやめてほしい。最悪だ。最悪すぎる。しかも横で、照れて顔を赤らめる唯愛の姿が目に浮かぶ。殴りたくなる。
あいつは妖艶な体を持っているから、そういう勘違いをされれば喜ぶものは多いだろう。しかしそれは一般論であり、俺はあれはダメだ。
そういった点から、俺が学校を変えたことは必然と言えるだろう。
*****
学校に着いた。
「おはよう」
「おはよう」
大輝にあいさつをして席につく。そのあと、大輝は他のやつらとお喋りを再開した。このクラスには大輝以外に話せる人がいない。俺は何となく、この先のことを考えた。
……ああ、そういえば今日は部活があったな、とふと俺の脳裏をよぎる。だが、そんなことは特に気にも止めず、俺は残りの時間は考えることもやめ、ただ過ごした。
そうして、退屈な授業も終え、放課後になった。
*****
俺が所属しているのは『現代文化研究部』。
しかしそれは名だけで、現在は実質、帰宅部と化している。もちろん、公言はされていないが、暗黙の了解として理解し、幽霊部員として入部してくるものも多い。
この学校は、絶対に一つ、部活に所属しなければならない。真面目に部活をしないやつらが、部活に所属しているのはいろいろと困るのだろう。だから、その生徒たちはこの部が一手に引き受けているのだ。
帰宅部と化してはいるが俺は違い、部活をしている人間である。俺の他にも数人いて、基本は週に二回、火曜と木曜に活動している。そのメンバーについての説明は、今にできるだろう。
俺は目の前にあるドアの前に立つ。着いた。ここが部室だ。俺はドアを開ける。
「今こそ勝利を我が手に!」
「ふふふ……貴様などにこの私が倒せるか!」
「トランプごときに何を熱くなってるんだよ……」
部室となっている教室の中に入ると、既に俺以外のメンバーは揃っていた。そして三人は何故かトランプをしていた。
あの一瞬の場面だけでも分かるように、変人の集まりでもある。例えば、あの二人の反応に気だるそうにしているやつ。そいつは俺が来たことに気づくと、トランプを辞め、俺の元へ駆け寄ってくる。そいつは
「巧人! どこいたんだよ。今日は随分と遅いじゃないか」
「別に……トイレに行っていただけだよ。ほら鞄がそこにあるだろ?」
「なんだよ、それなら……」
ホモだ。
「俺の中で吐き出してしまえばよかったじゃないか」
「きもいからな。透」
さわやかなほどの笑顔で答えてきた透を、適当にあしらうとトランプを続けていた二人のほうから高笑いが聞こえた。
「ふはははは! やはり貴様では私を倒すことなど不可能なのだ!」
「くそ……だが、まだだ! 俺に残された力よ!」
「ぐっ! なに? 私の力が阻まれただと!」
ああ、あっちの二人は遊んでいるだけで、普段はあんなんじゃないからな。いつもならもっとひどいし。
「おい。そろそろやめろよ。巧人も来たことだしな」
透が呼びかけると、二人は演技をやめ、俺のほうに目を向ける。
「え? エロ大魔人いつ来たの?」
「その名前で呼ぶな。関羽」
「あ、ヌッキー! おひさ~」
「それもやめてくれ、絵夢」
まぁこいつらは言っても聞かないが。
俺は席につく。四つの机をくっつけて、テーブルのようにしているものを囲んでだ。するとそこで関羽が話を始める。
「あ、そうそう。昨日見た動画でさ~」
「話すな。誰も聞いてない。どうせ五十代、六十代のエロ動画だろう?」
「違う! 今回は四十代のナイスバディの茶髪の人妻だ!」
否定してくる。いや、その部分はどうでもいいんだよ。
「そこはどうでもいいんだよ。とりあえず、そんなものに興味があるのはお前ぐらいだ。大体あんなののどこがいいんだよ。ババアだろうが」
「何! おいそれはどういうことだよ!」
関羽は突然激昂し、言いがかりをつけてくる。
「はん! なんだよ。お前なんてロリコンだろうが。犯罪だろうがそれ」
「俺は紳士だ。その辺のロリコンと一緒にするな。それに、ロリコンとは俺にとって、最高の褒め言葉だしな。というか、お前人妻はダメだろ。NTRとかそれのほうが犯罪だろうが」
「ちげーよ! あれは奥さんのストレスを発散させてんだよ。お互いに幸せだろうが! だから、セーフだ!」
「そんな理論が通じるか!」
「ああ!? なんだと!?」
俺達は二人して睨み合う。そこへ絵夢が止めに入る。
「まぁまぁ、二人ともやめなって」
『うるせー黙れ! あばずれクソババア(乳臭せー雌餓鬼)が!! 邪魔すんな!』
「……へーー……そう。そういうこと言うんだ」
絵夢は笑っているが笑ってなかった。
ああ……やばいと素に戻った時には既に遅い。
「ふん!」
「うわっ!」
「いてっ!」
絵夢は俺達の腹をおもいっきり殴った。そして俺たちは、倒れた。そのあと追い撃ちをかけるように、俺の息子と関羽の愚息を踏みつけてきた。
『ぎゃ――!』
やばい……。このままじゃ、俺のモノが関羽と同じような愚息に……
「やめろー! 関羽はともかく俺には、未来がかかっているんだ!」
「何だよそれ! どういう意味だ!」
「お前のは既に愚かだから、これ以上はならないって意味だよ!」
「んだと俺のやつのどこが愚かだ!」
「黙りなさい! この変態ども!」
『ぎゃ――!』
俺は思った。死んだと。俺の子孫、島抜家はここで途絶えるのだと。
「おい! 佐土原! 俺の巧人に何をするんだ!」
「俺は……おまえのじゃねー……ぞ」
「そして俺のことは心配してくれないのな」
痛みに涙目になりながらぴくぴくと震えた。
「くそ!」
「きゃ!」
関羽は絵夢を蹴り返した。……馬鹿。俺は声に出すこともできない痛みと失望で、心の中だけでそう言う。
関羽もしまったと顔に出す。つーか、あれだけされてお前……元気だな。
「ああ……それいいです! もう一度、私を蹴ってください!」
絵夢はSでありM。一人でSMプレイが完結するびっくり人間なのだ。
「うわ! 寄るな! こっち来るな! 変態!」
「やばい……! 興奮する! もっと……もっと私を貶して 罵って! そして雌奴隷のように扱ってください!」
「きもい! やめろ! 足に顔を擦りつけるな!」
あの状態になったら長いよなぁ~。可愛そう……いや自業自得か。
「ヤり終わったら、捨ててしまって構いませんから! お願いです!」
「な、なら待て!」
関羽はそういって手で押し退ける。
「いいか、そのまま……俺がいいというまでそのままだぞ? 俺に近づいたり、触ったりしたらダメだからな」
「はい! 放置プレイですね! 分かりました!」
二人のほうはなんだかんだで解決すると、透が話し掛けてきた。
「大丈夫か? 巧人? 人口呼吸したほうがいいか?」
「ああ大丈夫だ……そして意識があるんだから、人口呼吸はしなくていい」
と、俺はドアノブを回す。しかし開かなかった。
「なんだ、唯愛のやつ。まだ寝てんのか?」
仕方ないな。俺は、財布に入れていた鍵を使って、家に入る。そしてそのまま、荷物を取りに部屋にいく。
すると俺の部屋のなかから声が聞こえた。今、家にいるのなんて唯愛しかいない。
俺は溜息を吐いてから、ドアを少しだけ開けて、中を覗き見る。
「ん……あっ……ふ……」
…………
「たっくん……たっくん~……」
…………
「うぅ……やばいよぉ……もう少しでたっくん……んっ……帰ってきちゃうよぉ~……」
…………
「でも……でもやめられない!」
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「ごめんね。たっくん。こんなお姉ちゃんで……あ……でも、でも私はたっくんのこと大好き!」
…………
「ああ……ダメ! ふゎ……この部屋たっくんの匂いが溢れていて……私たっくんに包まれてる……」
…………
「あん! ダメ! ダメだよ、たっくん! そんなところ……」
…………
「いや……あっ、あっ、ふっ、や……んあっ! ん~!」
…………
「たっくん……やっ! ……それ……はげ……しいよ……」
…………
「ああ……ダメ! 本当にダメだよ! たっく……イっちゃう! イっちゃうから~!」
…………
「あ、あ……私たっくんに……弟にイカされちゃう! 見られながら、イっちゃう!」
…………
「う、うぁ、あん!! い……いっくぅぅぅううう!!!!」
…………
「はぁ……はぁ……はぁ……」
…………
「あう……シーツがびしょ濡れだよ」
「本当だな。どうしてくれるんだ? この年中発情淫乱姉」
息絶え絶えに、呟いた唯愛に向かい、布団を捲って確認して答える。
「きゃ! た、た、た、たっくん!? いつからそこに!?」
「結構前から」
「あう……」
「あながち、弟に見られていくっていうのは間違ってなかったな」
「はずかしい……」
枕を抱いて口に押し付け呟く。きもい。それで寝る俺の気持ちにもなれ。
ちなみにさっきの状況は、ドアからだと声しか聞こえなかった。布団の中でもぞもぞと動く何かは確認できるが。向き的にも顔も見えないし。
まぁ、布団で隠れているから何をしているのかなんてわからないし大丈夫だろう。これをもっとくわしく描写したら、完全にアウトになるのでしないが。
つーか、なんだこの部屋? すごいニオイだ。唯愛のメスの匂いがぷんぷんするぜ。早く換気しないと、これに染まりきってしまうな。いやそれよりも前に……
「でてけ」
部屋から唯愛をつまみ出す。唯愛はTシャツを着ているだけで後は何も身につけていなかった……ってそれ俺のじゃん。いや、もういいけどさ。そのくらいは。
俺は唯愛に向かって忠告をする。
「今日から五日、俺の部屋には絶対に入るな。一生っていいたい所だけど無理だろうし。いいか? もし入ったら、そのときは俺、お前と二度と口聞かないし、この家出ていくから」
「!? わ、わかったよ!」
唯愛は頷く。これでひとまずは大丈夫だろう。あの時と違って、今はまだ常識がないこともないはずだ。たぶん、俺の言葉を素直に聞いてくれる。
ドアを閉め、ベッドに目を移す。
「うわ……すごいな。本当におもらししたみたいだぞ」
シーツ以外は……大丈夫だな。ってなんだこれ?
「パンツ……」
唯愛のだな……。うわ、これもすげービチョビチョだな。水分を吸って、随分と重くなってる。ってやばっ! 手についた! しかもなんかネットリとして、糸を引いてやがる……。不潔だ。
「学校に行く前に洗濯しとかないとな……」
俺は服を着替え、窓を開け、シーツとパンツを洗濯機に詰め込み、部屋に戻った後、鞄を持ち、キッチンにいた唯愛(制服を着ている)に声をかけた。
「それじゃ、先行くからー」
「え? たっくん、朝ご飯は?」
「その辺で買って、学校に行ってから食べるからいいよ」
「そ、そういってらっしゃい。たっくん!」
「いってきまーす」
そうして俺は家を出た。
さっきの感じ、朝食作ってたんだろうな。唯愛には悪いが食べないぞ。
別にまずいとかそんなことはない。むしろ美味しいと思う。けど、今日はあんなことがあったんだ。いつもよりも冷たいくらいじゃないとダメだ。意識してやっていかないとな。
今日はひさびさに、昼は学食になるな。そんなことを考えながら、俺は学校へと向かった。
*****
補足しておくと唯愛と俺は学校が違う。唯愛は俺の一つ年上で、唯愛が先に高校へと入学したので俺は別の学校を選んだのだ。
これには理由があって、唯愛が中学二年生のときが、一番ひどい時期で――それ以前はそれほどでもなかったが――あのときから唯愛に特別な苦手意識をするようになったのだ。もしかしたら、俺が小さな女の子を好きな原因は、そこにもあるのかもしれない。
とにかく、学校にいる間は唯愛と出会うことはないということだ。
いたら大変だろうな。休み時間になるたびに俺の所に来ては、人目も憚らず、抱きついてきたり(体験談)、昼ご飯はあーんさせてきたり(体験談)、それだけじゃなく、俺達のことをよく知らないやつらが、二人は恋人同士だとか噂をしたり(体験談)が起こるだろう。
特に最後のは、真面目にやめてほしい。最悪だ。最悪すぎる。しかも横で、照れて顔を赤らめる唯愛の姿が目に浮かぶ。殴りたくなる。
あいつは妖艶な体を持っているから、そういう勘違いをされれば喜ぶものは多いだろう。しかしそれは一般論であり、俺はあれはダメだ。
そういった点から、俺が学校を変えたことは必然と言えるだろう。
*****
学校に着いた。
「おはよう」
「おはよう」
大輝にあいさつをして席につく。そのあと、大輝は他のやつらとお喋りを再開した。このクラスには大輝以外に話せる人がいない。俺は何となく、この先のことを考えた。
……ああ、そういえば今日は部活があったな、とふと俺の脳裏をよぎる。だが、そんなことは特に気にも止めず、俺は残りの時間は考えることもやめ、ただ過ごした。
そうして、退屈な授業も終え、放課後になった。
*****
俺が所属しているのは『現代文化研究部』。
しかしそれは名だけで、現在は実質、帰宅部と化している。もちろん、公言はされていないが、暗黙の了解として理解し、幽霊部員として入部してくるものも多い。
この学校は、絶対に一つ、部活に所属しなければならない。真面目に部活をしないやつらが、部活に所属しているのはいろいろと困るのだろう。だから、その生徒たちはこの部が一手に引き受けているのだ。
帰宅部と化してはいるが俺は違い、部活をしている人間である。俺の他にも数人いて、基本は週に二回、火曜と木曜に活動している。そのメンバーについての説明は、今にできるだろう。
俺は目の前にあるドアの前に立つ。着いた。ここが部室だ。俺はドアを開ける。
「今こそ勝利を我が手に!」
「ふふふ……貴様などにこの私が倒せるか!」
「トランプごときに何を熱くなってるんだよ……」
部室となっている教室の中に入ると、既に俺以外のメンバーは揃っていた。そして三人は何故かトランプをしていた。
あの一瞬の場面だけでも分かるように、変人の集まりでもある。例えば、あの二人の反応に気だるそうにしているやつ。そいつは俺が来たことに気づくと、トランプを辞め、俺の元へ駆け寄ってくる。そいつは
「巧人! どこいたんだよ。今日は随分と遅いじゃないか」
「別に……トイレに行っていただけだよ。ほら鞄がそこにあるだろ?」
「なんだよ、それなら……」
ホモだ。
「俺の中で吐き出してしまえばよかったじゃないか」
「きもいからな。透」
さわやかなほどの笑顔で答えてきた透を、適当にあしらうとトランプを続けていた二人のほうから高笑いが聞こえた。
「ふはははは! やはり貴様では私を倒すことなど不可能なのだ!」
「くそ……だが、まだだ! 俺に残された力よ!」
「ぐっ! なに? 私の力が阻まれただと!」
ああ、あっちの二人は遊んでいるだけで、普段はあんなんじゃないからな。いつもならもっとひどいし。
「おい。そろそろやめろよ。巧人も来たことだしな」
透が呼びかけると、二人は演技をやめ、俺のほうに目を向ける。
「え? エロ大魔人いつ来たの?」
「その名前で呼ぶな。関羽」
「あ、ヌッキー! おひさ~」
「それもやめてくれ、絵夢」
まぁこいつらは言っても聞かないが。
俺は席につく。四つの机をくっつけて、テーブルのようにしているものを囲んでだ。するとそこで関羽が話を始める。
「あ、そうそう。昨日見た動画でさ~」
「話すな。誰も聞いてない。どうせ五十代、六十代のエロ動画だろう?」
「違う! 今回は四十代のナイスバディの茶髪の人妻だ!」
否定してくる。いや、その部分はどうでもいいんだよ。
「そこはどうでもいいんだよ。とりあえず、そんなものに興味があるのはお前ぐらいだ。大体あんなののどこがいいんだよ。ババアだろうが」
「何! おいそれはどういうことだよ!」
関羽は突然激昂し、言いがかりをつけてくる。
「はん! なんだよ。お前なんてロリコンだろうが。犯罪だろうがそれ」
「俺は紳士だ。その辺のロリコンと一緒にするな。それに、ロリコンとは俺にとって、最高の褒め言葉だしな。というか、お前人妻はダメだろ。NTRとかそれのほうが犯罪だろうが」
「ちげーよ! あれは奥さんのストレスを発散させてんだよ。お互いに幸せだろうが! だから、セーフだ!」
「そんな理論が通じるか!」
「ああ!? なんだと!?」
俺達は二人して睨み合う。そこへ絵夢が止めに入る。
「まぁまぁ、二人ともやめなって」
『うるせー黙れ! あばずれクソババア(乳臭せー雌餓鬼)が!! 邪魔すんな!』
「……へーー……そう。そういうこと言うんだ」
絵夢は笑っているが笑ってなかった。
ああ……やばいと素に戻った時には既に遅い。
「ふん!」
「うわっ!」
「いてっ!」
絵夢は俺達の腹をおもいっきり殴った。そして俺たちは、倒れた。そのあと追い撃ちをかけるように、俺の息子と関羽の愚息を踏みつけてきた。
『ぎゃ――!』
やばい……。このままじゃ、俺のモノが関羽と同じような愚息に……
「やめろー! 関羽はともかく俺には、未来がかかっているんだ!」
「何だよそれ! どういう意味だ!」
「お前のは既に愚かだから、これ以上はならないって意味だよ!」
「んだと俺のやつのどこが愚かだ!」
「黙りなさい! この変態ども!」
『ぎゃ――!』
俺は思った。死んだと。俺の子孫、島抜家はここで途絶えるのだと。
「おい! 佐土原! 俺の巧人に何をするんだ!」
「俺は……おまえのじゃねー……ぞ」
「そして俺のことは心配してくれないのな」
痛みに涙目になりながらぴくぴくと震えた。
「くそ!」
「きゃ!」
関羽は絵夢を蹴り返した。……馬鹿。俺は声に出すこともできない痛みと失望で、心の中だけでそう言う。
関羽もしまったと顔に出す。つーか、あれだけされてお前……元気だな。
「ああ……それいいです! もう一度、私を蹴ってください!」
絵夢はSでありM。一人でSMプレイが完結するびっくり人間なのだ。
「うわ! 寄るな! こっち来るな! 変態!」
「やばい……! 興奮する! もっと……もっと私を貶して 罵って! そして雌奴隷のように扱ってください!」
「きもい! やめろ! 足に顔を擦りつけるな!」
あの状態になったら長いよなぁ~。可愛そう……いや自業自得か。
「ヤり終わったら、捨ててしまって構いませんから! お願いです!」
「な、なら待て!」
関羽はそういって手で押し退ける。
「いいか、そのまま……俺がいいというまでそのままだぞ? 俺に近づいたり、触ったりしたらダメだからな」
「はい! 放置プレイですね! 分かりました!」
二人のほうはなんだかんだで解決すると、透が話し掛けてきた。
「大丈夫か? 巧人? 人口呼吸したほうがいいか?」
「ああ大丈夫だ……そして意識があるんだから、人口呼吸はしなくていい」
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