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①
3-2 暴走する腐女子
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昼休みになった。唯愛は律儀に俺の分の弁当を作っていたので、それを食べる。食べ終えたら早速、みんなを探しに行った。
まずは全部の教室だな。昼休みだし、学食に行っている、中庭で遊んでいるとか移動している可能性はあるが、一番の可能性はやはり教室だからな。
だが、俺は全員の教室を知らない。と言っても、まだクラス替えから一か月もたってないうえ、元から部活以外ではそうそう合わない。だから知らないというのも仕方がないと分かるだろう。
「しらみ潰ししかないか」
というわけでまずは、一組から見ていく。
「……ってここは俺の教室だ」
このクラスにあいつらはいない。でも一応確認する。友達と一緒に食べるのはあり得るから、この教室に来ているかもしれない。
……いないな。まぁ、いたら弁当食べてるときに気づいている。次だ。隣の二組を覗き込む。
「こっちには……おお、関羽と透がいるな」
二人は何やら話しながら食事していた。俺が二人の元に寄ると、俺に気づき、まず関羽が声をかけてきた。
「おお。巧、どうした?」
「いや、ちょっとな」
「まさか、巧人。俺に会いに来てくれたのか? ふ、巧人とは休み時間には会ったりしないからな。寂しくさせてしまったかな」
「いや、これっぽっちも寂しくないし、お前に会いに来た……っていうのは間違ってないのか」
そういや透って、唯愛みたいに休み時間になるたびに俺のところに来たりはしないな。なんでだろう? ……いや、唯愛と比べるっていう基準がおかしいのか。気にしないでおこう。
「で? 何の用だよ」
「今日、ちょっと部室に集まってくれ」
「なんで?」
「昨日の続きだ。俺がどうやったら元に戻れるのか話し合いをな」
「なんだ、そのことかよ。それ言って昨日は結構、勝手やったよな。挙句には心配してやったのに、『うるせー!』とか言うし」
関羽のくせに細かいことをグチグチと……器の小さいやつだ。まぁ、いい。ここは下手に出てやるか。
「それは悪かったな。でも、お願いだ。これは俺にとって、とても重要なことなんだ」
「……重要なことだってのは分かってるけどさ」
そこで関羽は悩みの唸りを上げる。透は横から付け加えるように言った。
「巧人。なんでも関羽は今日、伏緒さんという方と、放課後デートするそうだ。だからたぶん、関羽は無理だぞ。ああ、もちろん俺はOKだ。巧人のためだからな」
「そうか、ありがとうな。透」
でも、きもいぞ。
「けど、関羽。予定があるなら最初から言えよな」
「あ、いやそれは……」
「大丈夫だって。俺だって、そこまでしてお前を止めたりしないさ。お前は楽しんで来いよ。……俺は失ったその楽しさを手に入れるために、頑張ってるからさ」
「う……わ、わーったよ。行くよ。行けばいいんだろ! くそぅ……俺の予定が……」
ふ、計画通り。こんな風に言えば、お前なら罪悪感で断り切れず、その選択をすると思ったぜ。
これでお前の予定を狂わせられた。いい気味だな。
「そういやお前ら、何を話していたんだ?」
目的は達成し、時間も十分にあったため、純粋に気になったことを聞いてみた。
「別に……ただ雑談していただけだが。なぁ? 峰内」
「ああ。これと言っては。それこそ、さっき話した伏緒さんとデートするということとかだな」
「お前らって、そんな雑談とかするほど仲良かったのか?」
「別に、峰内とは同じクラスで会話してるだけだけど」
「なんだ? 巧人も混ざりたいのか?」
「誰が好き好んで、お前らと休み時間まで一緒に居なきゃならないんだ」
「ひでーな! おい!」
「いや、想像してみろよ。俺とおまえが一緒にいるところ。絶対、喧嘩してるぞ」
「……否定できねーな」
「それに、今度は置き換えてみろ。透が、お前に言い寄ってくるんだ。関羽のことが好きだ、関羽の笑顔は夕日に染まったあの景色より美しい。関羽、俺はどんなお前でも愛せるぞ……どうだ?」
「やめてくれ……それを言われただけで想像もしたくない。食欲まで失せたぜ」
そうして顔を青くして、げんなりとする。それに、心なしか透と少し距離を取った。
「心配するなよ、巧人。俺はお前以外の人間には絶対になびかないさ」
そんな心配は全くしていない。というか、誰かになびいてほしい。
「ところで、なんかさっきから見られてる気がするんだが……」
辺りを見回すと、いくつかの女子のグループがこちらを見て、ひそひそと話をしている。やっぱり、こういうのはいい気がしない。
だが透はそれをさして気にした様子もなく、言葉を返す。
「さぁな、俺にはわからない。いや、そんなもの見えていない。そう……。今、俺の瞳に映るのはお前だけだよ、巧人」
透は右手の指で俺の首筋を撫でるように下から上に動かし、そして顎をくいっと持ち上げた。すると必然的に、俺よりも少し背の高い透と見つめ合うような形となる。
(うえぇ……気持ち悪い)
俺はすぐさまその透の手を叩き、どける。
気分を害し、青ざめていると外野からきゃーという声が聞こえた。それで理解する。
(そうか、わかったぞ! あいつら……腐女子ってやつだな!)
知ってるぞ。『ホモが嫌いな女子なんかいません!』とかいう、ある意味で全女子を敵に回すような言葉を提唱する変態どもだ。さっきのひそひそ話もこれで納得いったぜ。
そんな変態どもは興奮しているのか、教室中に聞こえる程の大声で喋りだす。
「やっぱり透×巧人は最高! ベストカップリング!」
「クールな感じだけど巧人君のことに関してだけは熱いところも見せる透様。それに、透様には全く興味がないけど、その押しの強さに負けて流されていく巧人君……それだけで小食の私でもご飯三杯はいけちゃう!」
「ああ、でも透×巧人もいいけど、巧人×透も捨てがたい!」
「『お前が俺のこと、本当に好きだって言うなら……お前のすべてを俺に任せることができるよな?』って感じ? きゃー! もう、そんなこと言われて、惚れない人なんていないって~!」
「それよりも早く、この光景を写真に残さないと! こんなレアシーン、早々拝めないよ!」
うわ~……。なんか、色々と俺の理解の範疇を越えてる。頭が痛くなってきた。
白瀬が『現代文化研究部は変態の集まりだ』って言ってたけど、それ以前にこの学校のやつらからして、変態ばっかなんじゃねーのか? 『類は友を呼ぶ』は学校全体のことだろ、もう。
「はぁはぁ……な、なにあれ? 桃源郷? ちょ……私得すぎ! 涎が止まらない……」
(待て、おい。何してんだあんた。教師だろ。何故こんなところにいる)
よく見ると近くには女子生徒がいる。どうやら、その女子生徒と話をしていたようだ。それで、ちょうどこの現場に居合わせってことか。
その女子生徒は、「ふふん!」、と自慢げに胸を張って、先生に説明を始める。
「先生は今年からの赴任ですから、知らないようですが、あの二人はこの学校では言わずと知れたカップルなんですよ!」
「言わずと知れた!? そんなに有名なの!?」
(本当に、その通りだ! そんな有名なのか!?)
教師と一緒に驚いていると、さっきまで俺たちを見て黄色い声を出していたやつらも、その説明に加わる。
「しかも、透様ファンクラブという透様の恋の成就を願うものもあります! もちろん、私も会員です! Nо.0064!」
自慢するように会員証を見せつける。
(いや、多すぎだろ。どうなってんだ)
やっぱり腐ってるぜ、この学校。
恐怖を感じつつも呆れていると、透が声をかけてくる。
「まったく、恥ずかしがり屋だな。巧人は」
「恥ずかしいんじゃない、気持ち悪いんだ。てか、やめろよな。他のやつらに変な目で見られてんだろうが」
俺は腐女子どもに警戒の視線を送る。だがさっきまでの言葉を聞いていなかったのかというほどに透は表情を変えない。つーか、視線がずっと俺を向いている。
「周りなんて関係ない。愛を育むのに必要なのは二人きりの世界だけ……。それに……みせてやればいいじゃないか。俺たちの愛は純粋。どこにも不純なところはない。恥じることもないだろう?」
透はそう言うと、さっきと同じ態勢を再び作る。さらに透は目を細め、俺を慈しむような目で見つめてくる。
そして次第に顔を近づけてきて、今にもお互いの肌が触れると言うその時――
「透……これ以上は怒るぜ?」
「!!」
俺の凄まじい怒気に気づくと、透はさっと離れる。その後、軽く笑って透は答えた。
「すまないな。どうにも俺は、お前のことになると自制が効かなくなってしまうんだ。巧人のことを想うだけで、心がふつふつと暖かくなって……愛しいお前の夕日に染まった景色より美しい笑顔をみたいと、そう思ってしまうんだ」
思うな、気持ち悪い。そしてそれは俺がさっき言った言葉だ。現実でも言うな。
俺は辟易していると、腐女子どもはまたしても大声で話し始める。
「興奮しすぎた透を諌める巧人……。くぅ~! こういう何気ない部分の絡みもたまらない!」
「それに最後の透様の捨てられた子犬のような反応とか……やっぱり巧人×透も最高!」
「てか、この後二人で絶対何かするよね? ううんナニする! 確定事項!」
「ちょ、ナニとか言わないでよ! 想像しちゃうじゃない!」
「先生はもう想像しちゃいました。自分を抑えられる気がしません。午後はさっさと早退して、家で妄想にふけります」
もうダメだ……。こいつらの変態度はある意味で透や絵夢たちを超えてる。
それと最後、職務怠慢だ。ちゃんと仕事しろ。大人。
俺はため息をつき、時間を確認する。……そろそろ行くか。
「じゃあな。俺、絵夢たちにも声をかけないといけないから」
「ああ、また放課後に」
その声を聞いて、また周りでは「放課後に会う約束ってデートの予感……!」とか意味不明なことをぬかしていたが、俺はもう気にせず、教室を出て行った。
ちなみにこのとき関羽は……目の前で見せられた光景のせいで、完全に食欲をなくし青ざめた顔で口を押えていた。
次は三組……を飛ばして四組か。
(三組には白瀬がいるからな)
白瀬に知られるわけにはいかないから飛ばそう。そうして四組の教室へと向かった。
まずは全部の教室だな。昼休みだし、学食に行っている、中庭で遊んでいるとか移動している可能性はあるが、一番の可能性はやはり教室だからな。
だが、俺は全員の教室を知らない。と言っても、まだクラス替えから一か月もたってないうえ、元から部活以外ではそうそう合わない。だから知らないというのも仕方がないと分かるだろう。
「しらみ潰ししかないか」
というわけでまずは、一組から見ていく。
「……ってここは俺の教室だ」
このクラスにあいつらはいない。でも一応確認する。友達と一緒に食べるのはあり得るから、この教室に来ているかもしれない。
……いないな。まぁ、いたら弁当食べてるときに気づいている。次だ。隣の二組を覗き込む。
「こっちには……おお、関羽と透がいるな」
二人は何やら話しながら食事していた。俺が二人の元に寄ると、俺に気づき、まず関羽が声をかけてきた。
「おお。巧、どうした?」
「いや、ちょっとな」
「まさか、巧人。俺に会いに来てくれたのか? ふ、巧人とは休み時間には会ったりしないからな。寂しくさせてしまったかな」
「いや、これっぽっちも寂しくないし、お前に会いに来た……っていうのは間違ってないのか」
そういや透って、唯愛みたいに休み時間になるたびに俺のところに来たりはしないな。なんでだろう? ……いや、唯愛と比べるっていう基準がおかしいのか。気にしないでおこう。
「で? 何の用だよ」
「今日、ちょっと部室に集まってくれ」
「なんで?」
「昨日の続きだ。俺がどうやったら元に戻れるのか話し合いをな」
「なんだ、そのことかよ。それ言って昨日は結構、勝手やったよな。挙句には心配してやったのに、『うるせー!』とか言うし」
関羽のくせに細かいことをグチグチと……器の小さいやつだ。まぁ、いい。ここは下手に出てやるか。
「それは悪かったな。でも、お願いだ。これは俺にとって、とても重要なことなんだ」
「……重要なことだってのは分かってるけどさ」
そこで関羽は悩みの唸りを上げる。透は横から付け加えるように言った。
「巧人。なんでも関羽は今日、伏緒さんという方と、放課後デートするそうだ。だからたぶん、関羽は無理だぞ。ああ、もちろん俺はOKだ。巧人のためだからな」
「そうか、ありがとうな。透」
でも、きもいぞ。
「けど、関羽。予定があるなら最初から言えよな」
「あ、いやそれは……」
「大丈夫だって。俺だって、そこまでしてお前を止めたりしないさ。お前は楽しんで来いよ。……俺は失ったその楽しさを手に入れるために、頑張ってるからさ」
「う……わ、わーったよ。行くよ。行けばいいんだろ! くそぅ……俺の予定が……」
ふ、計画通り。こんな風に言えば、お前なら罪悪感で断り切れず、その選択をすると思ったぜ。
これでお前の予定を狂わせられた。いい気味だな。
「そういやお前ら、何を話していたんだ?」
目的は達成し、時間も十分にあったため、純粋に気になったことを聞いてみた。
「別に……ただ雑談していただけだが。なぁ? 峰内」
「ああ。これと言っては。それこそ、さっき話した伏緒さんとデートするということとかだな」
「お前らって、そんな雑談とかするほど仲良かったのか?」
「別に、峰内とは同じクラスで会話してるだけだけど」
「なんだ? 巧人も混ざりたいのか?」
「誰が好き好んで、お前らと休み時間まで一緒に居なきゃならないんだ」
「ひでーな! おい!」
「いや、想像してみろよ。俺とおまえが一緒にいるところ。絶対、喧嘩してるぞ」
「……否定できねーな」
「それに、今度は置き換えてみろ。透が、お前に言い寄ってくるんだ。関羽のことが好きだ、関羽の笑顔は夕日に染まったあの景色より美しい。関羽、俺はどんなお前でも愛せるぞ……どうだ?」
「やめてくれ……それを言われただけで想像もしたくない。食欲まで失せたぜ」
そうして顔を青くして、げんなりとする。それに、心なしか透と少し距離を取った。
「心配するなよ、巧人。俺はお前以外の人間には絶対になびかないさ」
そんな心配は全くしていない。というか、誰かになびいてほしい。
「ところで、なんかさっきから見られてる気がするんだが……」
辺りを見回すと、いくつかの女子のグループがこちらを見て、ひそひそと話をしている。やっぱり、こういうのはいい気がしない。
だが透はそれをさして気にした様子もなく、言葉を返す。
「さぁな、俺にはわからない。いや、そんなもの見えていない。そう……。今、俺の瞳に映るのはお前だけだよ、巧人」
透は右手の指で俺の首筋を撫でるように下から上に動かし、そして顎をくいっと持ち上げた。すると必然的に、俺よりも少し背の高い透と見つめ合うような形となる。
(うえぇ……気持ち悪い)
俺はすぐさまその透の手を叩き、どける。
気分を害し、青ざめていると外野からきゃーという声が聞こえた。それで理解する。
(そうか、わかったぞ! あいつら……腐女子ってやつだな!)
知ってるぞ。『ホモが嫌いな女子なんかいません!』とかいう、ある意味で全女子を敵に回すような言葉を提唱する変態どもだ。さっきのひそひそ話もこれで納得いったぜ。
そんな変態どもは興奮しているのか、教室中に聞こえる程の大声で喋りだす。
「やっぱり透×巧人は最高! ベストカップリング!」
「クールな感じだけど巧人君のことに関してだけは熱いところも見せる透様。それに、透様には全く興味がないけど、その押しの強さに負けて流されていく巧人君……それだけで小食の私でもご飯三杯はいけちゃう!」
「ああ、でも透×巧人もいいけど、巧人×透も捨てがたい!」
「『お前が俺のこと、本当に好きだって言うなら……お前のすべてを俺に任せることができるよな?』って感じ? きゃー! もう、そんなこと言われて、惚れない人なんていないって~!」
「それよりも早く、この光景を写真に残さないと! こんなレアシーン、早々拝めないよ!」
うわ~……。なんか、色々と俺の理解の範疇を越えてる。頭が痛くなってきた。
白瀬が『現代文化研究部は変態の集まりだ』って言ってたけど、それ以前にこの学校のやつらからして、変態ばっかなんじゃねーのか? 『類は友を呼ぶ』は学校全体のことだろ、もう。
「はぁはぁ……な、なにあれ? 桃源郷? ちょ……私得すぎ! 涎が止まらない……」
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その女子生徒は、「ふふん!」、と自慢げに胸を張って、先生に説明を始める。
「先生は今年からの赴任ですから、知らないようですが、あの二人はこの学校では言わずと知れたカップルなんですよ!」
「言わずと知れた!? そんなに有名なの!?」
(本当に、その通りだ! そんな有名なのか!?)
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(いや、多すぎだろ。どうなってんだ)
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恐怖を感じつつも呆れていると、透が声をかけてくる。
「まったく、恥ずかしがり屋だな。巧人は」
「恥ずかしいんじゃない、気持ち悪いんだ。てか、やめろよな。他のやつらに変な目で見られてんだろうが」
俺は腐女子どもに警戒の視線を送る。だがさっきまでの言葉を聞いていなかったのかというほどに透は表情を変えない。つーか、視線がずっと俺を向いている。
「周りなんて関係ない。愛を育むのに必要なのは二人きりの世界だけ……。それに……みせてやればいいじゃないか。俺たちの愛は純粋。どこにも不純なところはない。恥じることもないだろう?」
透はそう言うと、さっきと同じ態勢を再び作る。さらに透は目を細め、俺を慈しむような目で見つめてくる。
そして次第に顔を近づけてきて、今にもお互いの肌が触れると言うその時――
「透……これ以上は怒るぜ?」
「!!」
俺の凄まじい怒気に気づくと、透はさっと離れる。その後、軽く笑って透は答えた。
「すまないな。どうにも俺は、お前のことになると自制が効かなくなってしまうんだ。巧人のことを想うだけで、心がふつふつと暖かくなって……愛しいお前の夕日に染まった景色より美しい笑顔をみたいと、そう思ってしまうんだ」
思うな、気持ち悪い。そしてそれは俺がさっき言った言葉だ。現実でも言うな。
俺は辟易していると、腐女子どもはまたしても大声で話し始める。
「興奮しすぎた透を諌める巧人……。くぅ~! こういう何気ない部分の絡みもたまらない!」
「それに最後の透様の捨てられた子犬のような反応とか……やっぱり巧人×透も最高!」
「てか、この後二人で絶対何かするよね? ううんナニする! 確定事項!」
「ちょ、ナニとか言わないでよ! 想像しちゃうじゃない!」
「先生はもう想像しちゃいました。自分を抑えられる気がしません。午後はさっさと早退して、家で妄想にふけります」
もうダメだ……。こいつらの変態度はある意味で透や絵夢たちを超えてる。
それと最後、職務怠慢だ。ちゃんと仕事しろ。大人。
俺はため息をつき、時間を確認する。……そろそろ行くか。
「じゃあな。俺、絵夢たちにも声をかけないといけないから」
「ああ、また放課後に」
その声を聞いて、また周りでは「放課後に会う約束ってデートの予感……!」とか意味不明なことをぬかしていたが、俺はもう気にせず、教室を出て行った。
ちなみにこのとき関羽は……目の前で見せられた光景のせいで、完全に食欲をなくし青ざめた顔で口を押えていた。
次は三組……を飛ばして四組か。
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