ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

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3-4 試行錯誤の話し合い

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「さて……こうやって集まったわけだが」

 そこで止めて、俺は全員の顔を見る。そんな俺に、関羽が疑問を投げかける。

「なんだよ。人の顔見て」
「いやな。まずは、何から話せばいいかと思って」
「話すことが決まってないってことに怒りを感じるが、そこは置いておくとしてだ。なんで俺たちの顔を見ていたのか説明になってないぞ」

 確かに、今のでは答えになってはないか。

「深い意味はない。全員がいることを確認しただけだ」
「そうかい……んじゃ本題に入ってくれ」
「で? 何から話せばいいんだろうか」
「自分で考えろよ!」

 突っ込まれた俺に、絵夢がフォローを入れる。

「ともかく、昨日の続きから話すのが一番だと思うけど……あれ? どこで終わったんだっけ?」

 やるならもっと完璧にフォローしろよ。そしてそのフォローを透がした。

「白瀬がどういう人物であったか……という説明だな。とは言え、その後に実際の人物を確認したから、情報はさらに増えたが」
「おお! ……で、そこから先どう、繋げるの?」
「それが分からないから聞いたんだよ」
「だから、それくらいは自分で考えろと」

 お前は文句ばっかだな関羽。黙ってろ。

「そうだな……巧人、白瀬と実際に会ってみてどうだった? またあの、変な感じというのはしたのか?」
「ああ。したな」
「というかそれって、好きって気持ちでしょ! ヌッキー!」

 おい。それは既に否定しただろ。掘り返すな。つーかテンション高いな。
 いや……でも、そうだな。あの時とは違うものもあるか。

「まぁ……恋はしてるんだろうな」
「!? まさか、ヌッキーが認めるなんて……!」
「逆に、あの感情をそれ以外に表現するのも変だろ」
「いや、俺たちはその感情を知らないんだが」
「とにかく俺は認める。白瀬に恋をしているとな」

 繰り返した俺の言葉に全員が一度、黙り込む。

「それで、ヌッキーはどうするの?」
「どうするって?」
「いや、告白する……とかあるでしょ?」
「する気はないが」

 俺がそういうと、また黙り込む。

『え!?』

 そして、一拍おいてから皆が一斉に驚いた。

「反応遅」
「だ、だって恋してるんだよね?」
「ああ」
「それなのに、告白はしないの?」
「結構、普通じゃね?」
「ああ確かに……って! そうじゃなくて~!」

 絵夢は頭を抱え込む。何なんだよ。

「佐土原が言いたいのは、巧人が恋しているという割には、そのことをどうでもいいかのように話しているからだと思うぞ」

 ああ。なんだ。そういうことか。

「だって実際どうでもいいからな」
「どうでもいいって、なんで?」
「恋しているって認めはするが、別にロリコンに戻りたくないってわけじゃないし。つーか早く戻りたいし。戻ったら戻ったで、天使達の元にいくだけだし」
「つまり恋はしているが、今までと変わらずロリコンには戻りたい……ということか?」
「ああ」
「……それって、恋しているっていうのかな?」

 絵夢から疑問を投げかけられる。いや、聞かれても困るし。つーか、

「こんなところで時間を食ってる暇はないんだよ」

 正直、恋しているとか本当にどうでもいいし。それよりどうやったら元に戻れるかだ。

「さぁ、どうやったら『ロリコンマスター島抜』に戻れるのか話し合おうぜ」
「いや、もうリリーに告れよ。そっちのほうが早くね?」

 お前も大輝と同じこと言うのか。流石、関羽。他人と同じことしかできない、使えねー存在だな。

「嫌だ。嘘でも告白なんてしたくない」
「めんどくせーな」
「そういえば、白瀬に何かされたという話だったが」
「その可能性はもうねーだろ? だってあいつ百合だし。巧人に、自分を好きにさせる理由はないだろ……」

 そこで、関羽は考える素振りを見せる。似合わな。

「そうか、分かったぞ!」
「なんだ? 何が分かった。自分が馬鹿だってことか?」
「ちげーよ! つーかお前のために考えてやってんのに、茶々入れるな!」
「で? 何が分かったの?」

 絵夢に聞かれると、関羽はふふふと不気味に笑い声をあげる。早く話せよ。

「リリーは部長が好きになっただろ? 中一……いや、小学生と言っても何ら遜色はない! そんな合法ロリとかいう部類に属す存在をだ」

 まて。合法ロリってなんだ。ロリが合法でないとでもいうのか。大体そんなもの、ロリでも何でもない。ただの年取った、精神年齢の低い背の小さな人だろ。

「つまり……リリーはロリコン百合なんだ!」
「!? な、なん……だと?」

 俺はあまりの衝撃に、それだけ言って、言葉を失う。

「だからリリーは、お前に自分を好きになるようにしたんだ。そうすれば、お前がいつも見ていた小学生達から、お前を離すことができる。リリーは巧から奪うつもりなんだよ! 巧の居場所をさ!」
「いや、流石にそれはないんじゃないかな」

 絵夢は呆れながら、関羽に返す。しかし俺のほうは……

「白瀬の野郎……許すマジ!」
「信じちゃってる!? というか、せめて女なんだから女郎とか言おうよ」
「佐土原……どうでもいい部分を突っ込むんだな」
「くそ、なんてことだ。やはり俺は、あいつにマインド・コントロールを……」
「巧人、常識で考えて、それはないと思うが」
「常識でものを測るな! 現に俺はロリコンではなくなったんだぞ!」
「う……なんだか、異様に説得力があるよ」
「これはもう、強引にでもリリーに詰め寄ったほうがいいんじゃないか、巧」
「完熟はヌッキーを煽るな!」
「とりあえず俺は、白瀬を一発殴ってくる。そのあとで、また話し合おう。じゃあな!」
「あ、待ってよヌッキー!」

 絵夢の抑制の言葉も聞かずに、部室を出ていこうとする。そこで、もう一つの声が上がった。

「そう。絵夢の言う通り。待って巧人」

『は! 部長が……喋った!』

 関羽と絵夢は同時に驚く。何回やるんだ、そのネタ。いや、それよりも

「なんだよ、伊久留! 俺は急いでいるんだ! 止めるな!」
「あれ? 私の時は無視したのに、なんで部長だと止まるの?」

 絵夢がどうでもいいところで突っかかる。俺は、その質問には何も返さない。

「もし、利莉花がマインド・コントロールなんて力を使えるなら、最初から伊久留を自分のことが好きになるようにしてる」
「その辺は、よく分からないプライドとかがあったんだろう」
「それなら、巧人にも何もしてないと思う」
「いや、複雑な感情が入り組んでるからな。俺にならいいと思ってたかもしれない」

 と言うか、もう、そうとしか考えられない。

「それに、もしかしたら、伊久留も、自分では気づいてないだけで、マインド・コントロールされてるかも……」

 そこで俺は気づく。

「そうだ! 実はもう、伊久留は白瀬の手に落ちていて、俺を引き止めるように言っていたんだな……なんて策士なんだ!」

 くそ。危うく、騙されるところだったぜ。伊久留まで巻き込むとは……なんて卑怯なやつだ。
 だが、そうとわかった今、俺を止めるものはいない! さぁ待ってろ! 今から俺がお前に制裁を下しに……

「えい」
「いて!」

 な……何だ今の? 誰がやった?

「落ち着く」
「伊久留?」

 手には本(ハードカバー)を持っている。さっきの痛みの原因はこいつか? 通りで後頭部の下あたりが痛いと思った。

「真実に辿り着くには柔軟な発想が必要。今みたいに、決めつけや興奮した状態では逆に遠ざかってしまう」
「うぐっ……」

 確かに伊久留の言うとおりだな。

『白瀬が俺にマインド・コントロールをした』

 俺はそう決めつけてしまっていた。それが事実であるのかも分からずに。関係ないことで傷つき、悲しむ必要はない。
 今必要なことは考察だ。もしさっきの仮説が正しければ、必ず辿り着ける。真実に……。

「それに巧人は気づいているか知らないけど。完全に関羽に乗せられているだけ」
「え?」

 俺は関羽を見る。

「あれ? ばれた?」
「少なくとも、巧人以外は全員分かってた。だって、巧人の行動は全部、関羽の仮説に基づているから」

 ……本当だ。思い返すと、関羽に言われたことから始まって俺は……。
 俺は関羽を睨みつける。

「お前……」
「そう怒んなよ。お前だって納得してたじゃん。それにその場の思いつきにしてはなかなかの考えだっただろう?」
「もうお前帰れよ。邪魔だ!」
「んだよ。ちょっと遊んでみただけだろ」
「『俺のために考えてるんやってんだから変な茶々いれるな』とお前は言ったんだが? それなのに遊びか! 自分のためじゃねーか!」
「俺だってお前にデート潰されたんだ。これくらいの報復させろよ」
「知るか。リア充が!」
「おっと……今現在、非リア充のお前には酷な話題だったか」

 こいつ……。

「……なぁ、絵夢」
「何?」
「あいつ……ヤってくんない?」
「もちろん、いいよ!」
「はぁ!?」

 関羽の仰天とした表情とは裏腹に絵夢は笑顔で、俺の要望を受け取る。

「え? なんで?」
「え~だって、自分が楽しむためだけに私たち全員が巻き込まれたんだよ? しかも一歩間違えばリリーにも相当迷惑がかかったし……逆に普通でしょ?」

 そう言いながら、端のほうに寄せられた段ボールの中をがさごそとする。

「ちょ……なに漁ってんの!?」
「う~んこれかな……いや、こっちのほうがいいかな? 迷うなぁ~」
「やばい! 今のうちに逃げなければ……」

 関羽は部室から逃げ出そうとする。

「透、頼む」
「ああ。巧人の頼みとあらば、断るわけにはいかないな」

 そんな関羽を、透は羽交い絞めにする。

「あ、おい! 離せ、峰内!」

 関羽は透の腕の中でジタバタと暴れる。けれど、その拘束から逃れることはできない。そうしている間に絵夢のほうの準備が整う。

「さてと……こっちの準備はできたよ完熟」
「はぁ……な、なんだよ、それ……」
「ああ、これは『アイアン・メイデン』と言ってね。中世の拷問具として知られていて……」
「それは知ってるつーの! つーかそれSM関係ねーだろ! いや、それ以前に何故持ってるんだよ!」
「まだ、あの段ボールからどうやって絵夢が取り出したのか疑問が残ってる」
「あ、しまった! ってそれはどうでもいいぜ、部長!」
「大丈夫だよ。本物と違って釘とかはついてない模造品だから。ただ、窮屈だし、外界とは完全にシャットダウンされて、酸素の保証はできないけどね」
「え? それって死ぬじゃん……」
「その前には助けるって! 少し遅くなって死んだら……ドンマイ!」
「俺が死んでもどうでもいいってことかよ! 嫌だ! 死にたくない~!」
「ふふふ……お前が悪いんだぜ、関羽。だから、その中で……反省するんだな!」
「う……うわ――――――――!!」
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