22 / 115
①
4-3 判明するストライク・ゾーン
しおりを挟む
時間は過ぎ、既に約一週間、水曜日にまでなっていた。
そして、水曜日は再び集まって話をしようと決めていた。さらに、ついに今日、分かったことがあった。
「ふむ……なるほど」
俺は、透が集めてくれていた画像を眺めながら呟いた。
透の集めていた画像は、先週に出てきた、唯愛と白瀬の身体的特徴の共通点。
背が高く、胸が大きいというもの。その二つの特徴が被った画像だ。
画像は五十枚近くあった。そして俺は一通り、すべての画像を見て、一人頷いていたのだ。ズボンの上にテントを張りながら。
俺の様子を見て、関羽は話しかけてくる。
「何が、なるほどなんだよ」
「俺のナニが何に反応しているのか分かったのなるほどだ」
「ヌッキー! ナニとか言わないでよ! 卑猥だよ!」
「事実は事実としてしか伝えることはできない」
「それって今の状況を認めてることになんねー? 否定したいんじゃねーのかよ、お前」
「ふん。認める認めないじゃないのさ。これは原理、ルールと同じだ」
関羽は「?」を浮かべる。頭の悪いやつだな。
「つまりだ。今俺に起こってる現象には法則があるんだ。だから、その法則に則って俺の体は反応する。それだけ。意志は関係ないの」
「まだよく分かんねー……」
「巧人が言いたいのは結局、おかしくなった自分が何に反応してるのかってこと」
「ああー。普通じゃないからどうでもいいってことね。何となく分かった」
何となくかよ。まぁそんなことはどうでもいいんだ。関羽のことなんかどうでもいい。
「で、ヌッキー。その法則って言うのは?」
「ああ。簡単に言ってしまえば、ストライク・ゾーンが変わったってことだな」
「ストライク・ゾーンって……いつもは小学生だから、六歳から十二歳ってこと?」
「大体な」
「けど、巧人。変わったとして、どう変わったんだ?」
「俺も、この画像を見ての憶測だが、年の差二歳ってところだと思う」
「なんで、んなこと分かんだよ」
「関羽……俺は残念に思うぞ。お前とは、仲間になれたと思っていたのに」
俺は頭に手を当てて、わざとらしく首を振る。
「え!? ちょっと、どういうことだよ!」
「どうもこうもない。……はぁ、白瀬とはあんなに絆を深めあうことができたのに、お前というやつは……」
「ちょ……!? なんで、落ち込んでんだよ! てか、また俺のこと仲間はずれにしようとしてんの!?」
「しようじゃなくて、現になってるんだよ」
「そんな! お前ら理解できてんのかよ!」
関羽は、透と絵夢に話を求める。
「その前に関羽は、今の話が何故起きているのか理解しているのか?」
「いや、実際なんで呆れられたのか分かってない」
馬鹿だからな。
「巧人は、年の差が二歳だと言って、お前が『なんで?』と返したから、がっかりしたんだ」
「だって分かるわけね―じゃんか」
「……流石に、弁護のしようもないな」
「私もだよ」
「ええ!?」
「ほらな。お前は、仲間じゃないんだ」
「嘘だろ……。リリーに、『これからお前も、俺たちの仲間だぜ』って、上から目線の態度をとったのに……いや、それならリリーだけが俺の仲間!?」
「でも白瀬は俺らの仲間でもあるがな」
「リリーもそっち側!?」
うざいな。このリアクション。関羽を白い目で見ていると、透たちが話しかけてきた。
「巧人、関羽のために話してやってくれ」
「えー」
「私からもお願い。完熟かわいそうだし」
「えー」
「お願いしやすで巧の旦那! どうか、この私めにご慈悲を!」
「えー」
つーか、関羽のはきもいって。
「まぁ、いいだろう。お人好しなあいつらのために、今回だけは特別に言ってやる」
「おお! ありがとうございます! エロ大魔人様!」
……急激に、言う気が失せたんだが。
「俺は二十歳までの女性なら見ただけで年齢が分かるんだよ」
「知ってるけど?」
「写真からでも分かるんだよ」
「それは忘れてたぜ!」
胸張って言うことか。
「あー、画像見て年齢を判別、そして差が二歳までの女性を見て、ナニが反応したっつーことね。なーる」
「またナニって言った! そういう表現は慎むべきだよ」
「じゃあ、佐土原。逆に聞くが、なんていやーいんだよ」
「え? それは……下半身に走る衝撃とか?」
「同じようなもんだろ、それ」
「そうだね……。でも、年の差二歳ってことは、ヌッキーって私にも反応……」
「しないな。それは今までが、そうだったのもあるし、何より背が高くて胸が大きいの両方の条件が当てはまり、かつこの条件が当てはまったときだ。心配するな」
「それは女として喜んででいいのか……」
「だから、透の推測は惜しかったんだよな。あと一歩及ばずってところで」
あの日に見た画像は一枚きりだったし、その画像からは年齢の判別はできなかった。
つまり、画像の女性は二十歳以上だったってこと。だから、ストライク・ゾーンでもないし、反応はしなかった。
「ひとまず、今日は区切りいいし、ここまででいんじゃね?」
関羽はそう持ち掛ける。
「お前のせいで、話が進まなかったんだがな」
「そうだね。完熟の理解が遅いせいで、時間を食ったよね」
「やっぱり、関羽がいないほうが話し合いは進むよな」
「酷いって!」
大体この話し合いは、『俺が何に反応するのか』じゃなくて、『どうやったら元にもどれるのか』を話すためのものなんだが。たぶん、関羽はその辺も理解してない。
いや、それ以前に……。
「お前、早々と話を切り上げて、また何か企んでるだろ」
「え!? た、企むってなんだよ」
リアクションがあからさますぎるぞ。俺は透に視線を向ける。
「そういえば、『今日は酒池肉林、血沸き肉躍るパーティーだ! 早く家に帰って夜に備えないとな。ふふふ……明日の朝までフィーバーだ!』とか言ってたもんな」
「あ、おい!」
「なんだ。夜通しパーティーか。じゃあ明日はお前学校休みだな? ワーサビシイナ―」
「んだよ、その棒読みな片言は! 大体、休まねーよ! 普通に学校行くよ!」
「なんだよ。来るのかよ。寂しがって損した。百円よこせ」
「やらねーよ!? つーか、寂しがってねーだろ! 絶対喜んでただろ!」
「大丈夫だって。お前に会いたくないって気持ちは、透の次くらいだから」
「待ってくれ、巧人。その言葉はどういう……」
「収集つかなくなるから、そろそろやめてよね」
絵夢に突っ込まれたので、俺はやめることにした。透も俺の言葉の真意(そのままの意味だけど)を気にしていたようだが、ぐっと堪えて、その話はしなかった。代わりに、違う話をしてきた。
「でも、話し合いは着実に進んでいるし、元に戻るためのきっかけは掴めたんじゃないか?」
「ああ。そうだな。この調子で、早く元に戻りて―よ」
そうすればきっと、こんなことで悩むことはないんだし。
そうしてその後は解散となり、一日は終わった。ちなみに、このときちゃんと伊久留もいた。
そして、水曜日は再び集まって話をしようと決めていた。さらに、ついに今日、分かったことがあった。
「ふむ……なるほど」
俺は、透が集めてくれていた画像を眺めながら呟いた。
透の集めていた画像は、先週に出てきた、唯愛と白瀬の身体的特徴の共通点。
背が高く、胸が大きいというもの。その二つの特徴が被った画像だ。
画像は五十枚近くあった。そして俺は一通り、すべての画像を見て、一人頷いていたのだ。ズボンの上にテントを張りながら。
俺の様子を見て、関羽は話しかけてくる。
「何が、なるほどなんだよ」
「俺のナニが何に反応しているのか分かったのなるほどだ」
「ヌッキー! ナニとか言わないでよ! 卑猥だよ!」
「事実は事実としてしか伝えることはできない」
「それって今の状況を認めてることになんねー? 否定したいんじゃねーのかよ、お前」
「ふん。認める認めないじゃないのさ。これは原理、ルールと同じだ」
関羽は「?」を浮かべる。頭の悪いやつだな。
「つまりだ。今俺に起こってる現象には法則があるんだ。だから、その法則に則って俺の体は反応する。それだけ。意志は関係ないの」
「まだよく分かんねー……」
「巧人が言いたいのは結局、おかしくなった自分が何に反応してるのかってこと」
「ああー。普通じゃないからどうでもいいってことね。何となく分かった」
何となくかよ。まぁそんなことはどうでもいいんだ。関羽のことなんかどうでもいい。
「で、ヌッキー。その法則って言うのは?」
「ああ。簡単に言ってしまえば、ストライク・ゾーンが変わったってことだな」
「ストライク・ゾーンって……いつもは小学生だから、六歳から十二歳ってこと?」
「大体な」
「けど、巧人。変わったとして、どう変わったんだ?」
「俺も、この画像を見ての憶測だが、年の差二歳ってところだと思う」
「なんで、んなこと分かんだよ」
「関羽……俺は残念に思うぞ。お前とは、仲間になれたと思っていたのに」
俺は頭に手を当てて、わざとらしく首を振る。
「え!? ちょっと、どういうことだよ!」
「どうもこうもない。……はぁ、白瀬とはあんなに絆を深めあうことができたのに、お前というやつは……」
「ちょ……!? なんで、落ち込んでんだよ! てか、また俺のこと仲間はずれにしようとしてんの!?」
「しようじゃなくて、現になってるんだよ」
「そんな! お前ら理解できてんのかよ!」
関羽は、透と絵夢に話を求める。
「その前に関羽は、今の話が何故起きているのか理解しているのか?」
「いや、実際なんで呆れられたのか分かってない」
馬鹿だからな。
「巧人は、年の差が二歳だと言って、お前が『なんで?』と返したから、がっかりしたんだ」
「だって分かるわけね―じゃんか」
「……流石に、弁護のしようもないな」
「私もだよ」
「ええ!?」
「ほらな。お前は、仲間じゃないんだ」
「嘘だろ……。リリーに、『これからお前も、俺たちの仲間だぜ』って、上から目線の態度をとったのに……いや、それならリリーだけが俺の仲間!?」
「でも白瀬は俺らの仲間でもあるがな」
「リリーもそっち側!?」
うざいな。このリアクション。関羽を白い目で見ていると、透たちが話しかけてきた。
「巧人、関羽のために話してやってくれ」
「えー」
「私からもお願い。完熟かわいそうだし」
「えー」
「お願いしやすで巧の旦那! どうか、この私めにご慈悲を!」
「えー」
つーか、関羽のはきもいって。
「まぁ、いいだろう。お人好しなあいつらのために、今回だけは特別に言ってやる」
「おお! ありがとうございます! エロ大魔人様!」
……急激に、言う気が失せたんだが。
「俺は二十歳までの女性なら見ただけで年齢が分かるんだよ」
「知ってるけど?」
「写真からでも分かるんだよ」
「それは忘れてたぜ!」
胸張って言うことか。
「あー、画像見て年齢を判別、そして差が二歳までの女性を見て、ナニが反応したっつーことね。なーる」
「またナニって言った! そういう表現は慎むべきだよ」
「じゃあ、佐土原。逆に聞くが、なんていやーいんだよ」
「え? それは……下半身に走る衝撃とか?」
「同じようなもんだろ、それ」
「そうだね……。でも、年の差二歳ってことは、ヌッキーって私にも反応……」
「しないな。それは今までが、そうだったのもあるし、何より背が高くて胸が大きいの両方の条件が当てはまり、かつこの条件が当てはまったときだ。心配するな」
「それは女として喜んででいいのか……」
「だから、透の推測は惜しかったんだよな。あと一歩及ばずってところで」
あの日に見た画像は一枚きりだったし、その画像からは年齢の判別はできなかった。
つまり、画像の女性は二十歳以上だったってこと。だから、ストライク・ゾーンでもないし、反応はしなかった。
「ひとまず、今日は区切りいいし、ここまででいんじゃね?」
関羽はそう持ち掛ける。
「お前のせいで、話が進まなかったんだがな」
「そうだね。完熟の理解が遅いせいで、時間を食ったよね」
「やっぱり、関羽がいないほうが話し合いは進むよな」
「酷いって!」
大体この話し合いは、『俺が何に反応するのか』じゃなくて、『どうやったら元にもどれるのか』を話すためのものなんだが。たぶん、関羽はその辺も理解してない。
いや、それ以前に……。
「お前、早々と話を切り上げて、また何か企んでるだろ」
「え!? た、企むってなんだよ」
リアクションがあからさますぎるぞ。俺は透に視線を向ける。
「そういえば、『今日は酒池肉林、血沸き肉躍るパーティーだ! 早く家に帰って夜に備えないとな。ふふふ……明日の朝までフィーバーだ!』とか言ってたもんな」
「あ、おい!」
「なんだ。夜通しパーティーか。じゃあ明日はお前学校休みだな? ワーサビシイナ―」
「んだよ、その棒読みな片言は! 大体、休まねーよ! 普通に学校行くよ!」
「なんだよ。来るのかよ。寂しがって損した。百円よこせ」
「やらねーよ!? つーか、寂しがってねーだろ! 絶対喜んでただろ!」
「大丈夫だって。お前に会いたくないって気持ちは、透の次くらいだから」
「待ってくれ、巧人。その言葉はどういう……」
「収集つかなくなるから、そろそろやめてよね」
絵夢に突っ込まれたので、俺はやめることにした。透も俺の言葉の真意(そのままの意味だけど)を気にしていたようだが、ぐっと堪えて、その話はしなかった。代わりに、違う話をしてきた。
「でも、話し合いは着実に進んでいるし、元に戻るためのきっかけは掴めたんじゃないか?」
「ああ。そうだな。この調子で、早く元に戻りて―よ」
そうすればきっと、こんなことで悩むことはないんだし。
そうしてその後は解散となり、一日は終わった。ちなみに、このときちゃんと伊久留もいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる