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①
一年生 4月-4
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――そんな日々を過ごし、数日経つ。
すると、部活の仮入部期間になった。この期間中に、自分の入る部を決めなくてはいけない。
この学校は、必ず一つ、どこかの部に所属しないといけないらしい。
俺としては、部活なんてしている場合ではないので、全然活動していないところがいい。
そう思っていると、噂で聞いたことによると『現代文化研究部』と言う部がまさにそれらしい。何でも、この学校の部に全員が入るということで、俺のように帰宅部に入りたいやつは、その部に入ることが暗黙の了解となっているようだ。
これで、部活の件はどうでもよくなった。他に何かあるとすれば、委員会とかだろうが、生憎俺はどこにも入る気はない。
大体こういうのはクラスにつき二人とかだろうが、その計算でいけば、十人近くは余るしな。
委員会などということよりも、俺には、なみちゃん(6)の姿を眺めたり、その写真を撮ったり、ネットで画像集めたり、と毎日が忙しいのだ。
もちろん、それは今日だって例外ではない。
俺はそうそうに片づけを済ませて、鞄を持ち、小学校へと向かうために教室から出ていこうとする。
その時に、俺は後ろから声をかけられた。
「待って」
その声はとても儚げで、今にも消え入りそうなほど小さかった。それでも、俺がその声に気付き、かつその言葉が自分に向けられたものだと分かったのは、その声の主であろう人物が、俺の服を掴んできたからだった。
俺は振り返り、その人物を確認する。
見ると、その姿はなるほどと納得してしまうほどに、さっきの声と一致した。
俺は一体何の用なのかを尋ねる。すると、
「伊久留と一緒に現代文化研究部に入ってほしい」
伊久留――と聞いて、一瞬それが自分のことを言っていると理解できなかった。
だが、よく考えるとやはり、そこもまたこの人物に似合っていると感じた。
その顔立ちは、身長の低さも相まって、幼さを感じさせる。
また、自らの身長の膝辺りまで伸びた白の髪と、その半開きの目には、何とも形容しがたい儚さが現れている。
俺はひとまず、聞き返す。
「何でだ?」
「伊久留は巧人と一緒に活動したいから」
俺はまだ名前を言っていないのに、いつ名前を知ったんだ――と考えてから、クラスみんなで自己紹介をしたこと思い出す。そして、この人物……承全寺伊久留のことも、思い出した。
承全寺は俺の一つ後ろの席の人物だ。別に周りを気にしていなかったせいか、真後ろにいても知らなかった。それに、こいつ自身影を薄くしている気がするしな。あんまり目立ちたくないたちなんだろう。
しかし、いきなり巧人とは……馴れ馴れしいやつだな。
「では、承全寺。何故、俺と活動したい?」
「巧人とは……気が合いそうだから」
「そうか? 俺はそんな気はしないが。というか、どこでそう判断した?」
「今までの行動。巧人は授業が終わるとすぐに教室を出て、どこかへ向かっていった。その時の巧人の顔が、とても晴れやかで、一生懸命さがあった」
何故かいきなり褒められて、変な気分なんだが……。それに、なんなんだ、こいつ。俺のことそんなにしっかりと見て。変な奴だな。
「で? それだとまだ理由になってないんだが?」
「伊久留は、そういう一つのことに一生懸命になれる巧人を見て、すごい人だと思った。伊久留はそんな巧人と何かをしたい」
承全寺は、真剣な眼差しで俺に伝えてくる。
だが、正直俺にはよくわからん。なんで一生懸命な俺の姿を見て、俺と何かしたいと思うのか。その時点で、理解できない。
それに、一生懸命とか言うなら、俺以外にだっているはずなんだ。たった一つのことに、真剣に打ち込むってことは、相当量の覚悟が必要になるが、そんなものは、部活をするものなら、大抵は持っている。
だからこそ、わからない。それが俺に限定されてきた理由が。
「承全寺、俺は現代文化研究部に入るつもりだ。でもな、俺は活動する気はない」
「どうして?」
「承全寺も知ってるだろ? あの部は、暗黙の了解ってやつで、帰宅部扱いなんだ。そこに自分から入ろうとしているんだから、つまりはそういうことだ」
俺は、承全寺自身に悟らせるように、少しだけ遠回しに話す。
「それに、承全寺も言ったように、俺には一生懸命になって取り組むべきことがある。活動なんてしていたら、それが疎かになってしまうだろ?」
そう、今だってそうだ。こんな場所で時間を食っている場合じゃない。早く承全寺との会話を終わらせて、なみちゃんのもとへ行かねば。
俺が承全寺にもう帰っていいか聞こうとしたとき、承全寺は意外なことを喋った。
「確かに、あそこまでのロリコンだと暇はないかもしれない」
「ちょ、ちょっと待て、承全寺! お前、なんでそれを……」
「巧人のこと、つけた」
なんだと……? この俺が、つけられた? いつだ? どこから?
……ダメだ。わからない。
俺が気づかないほどの尾行術とは……こいつ、なんてやつだ。
「これで、伊久留が興味を持った理由はわかった?」
承全寺が聞いてくる。
確かに、何となくはわかる。俺がロリコンだとわかってなお、一切引かずに話しかけるのは、普通の人間ではありえないからな。
俺からも聞き返す。
「お前もロリコンなのか?」
「そういうわけではないけど、似たようなもの」
なるほど……。だが、そういうことなら……。
「……わかった、承全寺。お前と活動してもいい」
俺と同じような存在。そんな人物は今まで会ったことなかった。
そういうやつらがいれば情報交換やら、なにやら特有のやることができる。今まで一人では気づけなかったことや、できなかったことが、仲間の存在で変わることができる。
ずっと、俺がほしいと望んでいた、求めていた存在だ。
「なぁ、承全寺」
俺には、過ごす居場所がある。大切な場所がある。それが、小学校のみんなと過ごす時間であり、俺にとっての幸せだ。
「俺と友達になってくれるか?」
でも俺は、それと同じくらいに友達って存在と仲間って存在と、大切だって、そう思える時間を過ごしたいんだ。
少なくてもいい。それでも、友達が欲しいと思った。
「うん。だから伊久留は声をかけた」
そんな友達を承全寺は俺に与えてくれようと……いや、一緒になってくれようとしてくれている。だから――
「そっか……」
じゃあ、俺も――
「これからよろしくな。伊久留」
*****
というわけで、伊久留と話をして、まず部室に来たわけだが。
「……誰もいないんだな」
部活紹介パンフレットには、体裁上、火曜日と木曜日が活動日になっているはずだが。木曜日の今日でさえも、誰もいないのか。
それに、誰もいないということは、部室の中には入れないわけで。
「伊久留、どうする?」
「ここにいても仕方ないし、顧問の先生の所へ行く」
「わかった」
しかし、この行動力、すごいな。この小さな体の中に、どこにそんな原動力が。
職員室へと向かうために二人して歩き出す。
そして、この移動中、俺はまだ聞いていなかったことを伊久留に質問する。
「ずっと、気になってたんだが入って何をするんだ?」
俺の疑問も当然だろう。なんせ、俺や伊久留には『現代文化』なんてものは、何の関わりもないんだ。それなのに、活動するといったってことは、たぶん内容はまるっきり関係ないことをするはず。では、何をする気なのか。そう考えていくのが普通だろう。
伊久留は俺の質問に、一言で返す。
「部を乗っ取る」
「乗っ取るって……」
大きく出たな。
「せっかく部室があるんだから、使わないのはもったいない。だから、部に入って個人的に使う」
「お前、顔に似合わず、すごいこと考えてんな」
さっきからのこの行動力もだが、まだ一年生のしかも入学二週間も経ってないのに、そんなことを考えるなんて。大物だな。
「で? 乗っ取った後には、何をするんだ?」
実際聞きたいのは、こっちのほうがメインだし。
だが、伊久留の返答に俺は肩透かしをくらう。
「別に特にやることはない。ただ、部室でお話でもしてればいい」
「……それ、部としてどうなんだ?」
「さっきも言ったように、個人的に使うだけだから、内容なんてどうでもいい」
おいおい……と、心の中で呆れたように突っ込む。まぁ別に、俺も特別何かしたいわけでもないし、いいんだが。それだと少しだけ俺の良心が痛む。
そんなことを考えていると、ようやく職員室につく。あの部室からだと結構距離があったな。いや、伊久留の歩幅に合わせて歩いたからか? まぁ、どっちも要因だろう。
「じゃあ、行ってくる」
「え? 別に俺も行くが?」
「いい」
何故かそう言われるだけで、それ以上何も言い返せなかった。
そして、職員室に入っていった伊久留を見送って、手持無沙汰になりながらも、帰ってくるのを待った。
*****
しばらくして、伊久留が戻ってくる。
「どうだった?」
俺がそう聞くと、今までほとんど表情を変えなかった伊久留が、少しだけ難しい顔をする。
「顧問の先生に会って、部について聞いたけど、自分は何も知らないって」
「うわ……」
それは顧問として、どうなんだ? 顧問だって立派な教師の仕事だろうに。職務怠慢だろ。
「部室の鍵については聞いたか?」
「うん。部長が持ってるって。だから、今の部長が誰か聞いてきた」
さすがにそれは分かっていたのか。いや、そんなもの部の名簿を見ればいいだけだから、簡単にわかるのか。
「じゃあ次は、その人に会いに行くのか?」
俺が聞くと伊久留は頷く。
そして歩き出した伊久留の後を、俺も追いかけるように歩いて行った。
*****
「いなかったな……」
俺がそう呟くが、伊久留は何の反応も示さない。
伊久留とともに、その部長の教室まで来たわけだが、やはりというか放課後なのこともあり、既にその人物はいなかった。それに、教室内にいた人たちにも聞いた話によると、学校に残っているとも思えない。
でも、考えれ当たり前ではある。『帰宅部』なのだから。そういう意味では、部長としては立派だと言える。
しかし、これだと今日は他にやれることもないな。
「これは、また明日だな」
「うん」
今度の呟きには伊久留が言葉を返してくる。
その後はお互いに言葉もなく、自然と別れた。
*****
「ふぅ……」
家に帰り、自分の部屋で一息つく。
今日は帰りの時間帯のせいもあり、小学生を見れなかった。そのためか、テンションが低い。だが、悪い意味ではない。
今日はそれに見合うといえば見合う、そんな大切な時間を過ごせたのだ。そして、これは新しい居場所で、消えることはない。それが無性に嬉しく感じる。
「さてと……」
俺はそう言って、一度背伸びをすると
「ロリ画像収集にかかるか!」
と、ネットサーフィンをするのだった。……俺はいつも通りです。
すると、部活の仮入部期間になった。この期間中に、自分の入る部を決めなくてはいけない。
この学校は、必ず一つ、どこかの部に所属しないといけないらしい。
俺としては、部活なんてしている場合ではないので、全然活動していないところがいい。
そう思っていると、噂で聞いたことによると『現代文化研究部』と言う部がまさにそれらしい。何でも、この学校の部に全員が入るということで、俺のように帰宅部に入りたいやつは、その部に入ることが暗黙の了解となっているようだ。
これで、部活の件はどうでもよくなった。他に何かあるとすれば、委員会とかだろうが、生憎俺はどこにも入る気はない。
大体こういうのはクラスにつき二人とかだろうが、その計算でいけば、十人近くは余るしな。
委員会などということよりも、俺には、なみちゃん(6)の姿を眺めたり、その写真を撮ったり、ネットで画像集めたり、と毎日が忙しいのだ。
もちろん、それは今日だって例外ではない。
俺はそうそうに片づけを済ませて、鞄を持ち、小学校へと向かうために教室から出ていこうとする。
その時に、俺は後ろから声をかけられた。
「待って」
その声はとても儚げで、今にも消え入りそうなほど小さかった。それでも、俺がその声に気付き、かつその言葉が自分に向けられたものだと分かったのは、その声の主であろう人物が、俺の服を掴んできたからだった。
俺は振り返り、その人物を確認する。
見ると、その姿はなるほどと納得してしまうほどに、さっきの声と一致した。
俺は一体何の用なのかを尋ねる。すると、
「伊久留と一緒に現代文化研究部に入ってほしい」
伊久留――と聞いて、一瞬それが自分のことを言っていると理解できなかった。
だが、よく考えるとやはり、そこもまたこの人物に似合っていると感じた。
その顔立ちは、身長の低さも相まって、幼さを感じさせる。
また、自らの身長の膝辺りまで伸びた白の髪と、その半開きの目には、何とも形容しがたい儚さが現れている。
俺はひとまず、聞き返す。
「何でだ?」
「伊久留は巧人と一緒に活動したいから」
俺はまだ名前を言っていないのに、いつ名前を知ったんだ――と考えてから、クラスみんなで自己紹介をしたこと思い出す。そして、この人物……承全寺伊久留のことも、思い出した。
承全寺は俺の一つ後ろの席の人物だ。別に周りを気にしていなかったせいか、真後ろにいても知らなかった。それに、こいつ自身影を薄くしている気がするしな。あんまり目立ちたくないたちなんだろう。
しかし、いきなり巧人とは……馴れ馴れしいやつだな。
「では、承全寺。何故、俺と活動したい?」
「巧人とは……気が合いそうだから」
「そうか? 俺はそんな気はしないが。というか、どこでそう判断した?」
「今までの行動。巧人は授業が終わるとすぐに教室を出て、どこかへ向かっていった。その時の巧人の顔が、とても晴れやかで、一生懸命さがあった」
何故かいきなり褒められて、変な気分なんだが……。それに、なんなんだ、こいつ。俺のことそんなにしっかりと見て。変な奴だな。
「で? それだとまだ理由になってないんだが?」
「伊久留は、そういう一つのことに一生懸命になれる巧人を見て、すごい人だと思った。伊久留はそんな巧人と何かをしたい」
承全寺は、真剣な眼差しで俺に伝えてくる。
だが、正直俺にはよくわからん。なんで一生懸命な俺の姿を見て、俺と何かしたいと思うのか。その時点で、理解できない。
それに、一生懸命とか言うなら、俺以外にだっているはずなんだ。たった一つのことに、真剣に打ち込むってことは、相当量の覚悟が必要になるが、そんなものは、部活をするものなら、大抵は持っている。
だからこそ、わからない。それが俺に限定されてきた理由が。
「承全寺、俺は現代文化研究部に入るつもりだ。でもな、俺は活動する気はない」
「どうして?」
「承全寺も知ってるだろ? あの部は、暗黙の了解ってやつで、帰宅部扱いなんだ。そこに自分から入ろうとしているんだから、つまりはそういうことだ」
俺は、承全寺自身に悟らせるように、少しだけ遠回しに話す。
「それに、承全寺も言ったように、俺には一生懸命になって取り組むべきことがある。活動なんてしていたら、それが疎かになってしまうだろ?」
そう、今だってそうだ。こんな場所で時間を食っている場合じゃない。早く承全寺との会話を終わらせて、なみちゃんのもとへ行かねば。
俺が承全寺にもう帰っていいか聞こうとしたとき、承全寺は意外なことを喋った。
「確かに、あそこまでのロリコンだと暇はないかもしれない」
「ちょ、ちょっと待て、承全寺! お前、なんでそれを……」
「巧人のこと、つけた」
なんだと……? この俺が、つけられた? いつだ? どこから?
……ダメだ。わからない。
俺が気づかないほどの尾行術とは……こいつ、なんてやつだ。
「これで、伊久留が興味を持った理由はわかった?」
承全寺が聞いてくる。
確かに、何となくはわかる。俺がロリコンだとわかってなお、一切引かずに話しかけるのは、普通の人間ではありえないからな。
俺からも聞き返す。
「お前もロリコンなのか?」
「そういうわけではないけど、似たようなもの」
なるほど……。だが、そういうことなら……。
「……わかった、承全寺。お前と活動してもいい」
俺と同じような存在。そんな人物は今まで会ったことなかった。
そういうやつらがいれば情報交換やら、なにやら特有のやることができる。今まで一人では気づけなかったことや、できなかったことが、仲間の存在で変わることができる。
ずっと、俺がほしいと望んでいた、求めていた存在だ。
「なぁ、承全寺」
俺には、過ごす居場所がある。大切な場所がある。それが、小学校のみんなと過ごす時間であり、俺にとっての幸せだ。
「俺と友達になってくれるか?」
でも俺は、それと同じくらいに友達って存在と仲間って存在と、大切だって、そう思える時間を過ごしたいんだ。
少なくてもいい。それでも、友達が欲しいと思った。
「うん。だから伊久留は声をかけた」
そんな友達を承全寺は俺に与えてくれようと……いや、一緒になってくれようとしてくれている。だから――
「そっか……」
じゃあ、俺も――
「これからよろしくな。伊久留」
*****
というわけで、伊久留と話をして、まず部室に来たわけだが。
「……誰もいないんだな」
部活紹介パンフレットには、体裁上、火曜日と木曜日が活動日になっているはずだが。木曜日の今日でさえも、誰もいないのか。
それに、誰もいないということは、部室の中には入れないわけで。
「伊久留、どうする?」
「ここにいても仕方ないし、顧問の先生の所へ行く」
「わかった」
しかし、この行動力、すごいな。この小さな体の中に、どこにそんな原動力が。
職員室へと向かうために二人して歩き出す。
そして、この移動中、俺はまだ聞いていなかったことを伊久留に質問する。
「ずっと、気になってたんだが入って何をするんだ?」
俺の疑問も当然だろう。なんせ、俺や伊久留には『現代文化』なんてものは、何の関わりもないんだ。それなのに、活動するといったってことは、たぶん内容はまるっきり関係ないことをするはず。では、何をする気なのか。そう考えていくのが普通だろう。
伊久留は俺の質問に、一言で返す。
「部を乗っ取る」
「乗っ取るって……」
大きく出たな。
「せっかく部室があるんだから、使わないのはもったいない。だから、部に入って個人的に使う」
「お前、顔に似合わず、すごいこと考えてんな」
さっきからのこの行動力もだが、まだ一年生のしかも入学二週間も経ってないのに、そんなことを考えるなんて。大物だな。
「で? 乗っ取った後には、何をするんだ?」
実際聞きたいのは、こっちのほうがメインだし。
だが、伊久留の返答に俺は肩透かしをくらう。
「別に特にやることはない。ただ、部室でお話でもしてればいい」
「……それ、部としてどうなんだ?」
「さっきも言ったように、個人的に使うだけだから、内容なんてどうでもいい」
おいおい……と、心の中で呆れたように突っ込む。まぁ別に、俺も特別何かしたいわけでもないし、いいんだが。それだと少しだけ俺の良心が痛む。
そんなことを考えていると、ようやく職員室につく。あの部室からだと結構距離があったな。いや、伊久留の歩幅に合わせて歩いたからか? まぁ、どっちも要因だろう。
「じゃあ、行ってくる」
「え? 別に俺も行くが?」
「いい」
何故かそう言われるだけで、それ以上何も言い返せなかった。
そして、職員室に入っていった伊久留を見送って、手持無沙汰になりながらも、帰ってくるのを待った。
*****
しばらくして、伊久留が戻ってくる。
「どうだった?」
俺がそう聞くと、今までほとんど表情を変えなかった伊久留が、少しだけ難しい顔をする。
「顧問の先生に会って、部について聞いたけど、自分は何も知らないって」
「うわ……」
それは顧問として、どうなんだ? 顧問だって立派な教師の仕事だろうに。職務怠慢だろ。
「部室の鍵については聞いたか?」
「うん。部長が持ってるって。だから、今の部長が誰か聞いてきた」
さすがにそれは分かっていたのか。いや、そんなもの部の名簿を見ればいいだけだから、簡単にわかるのか。
「じゃあ次は、その人に会いに行くのか?」
俺が聞くと伊久留は頷く。
そして歩き出した伊久留の後を、俺も追いかけるように歩いて行った。
*****
「いなかったな……」
俺がそう呟くが、伊久留は何の反応も示さない。
伊久留とともに、その部長の教室まで来たわけだが、やはりというか放課後なのこともあり、既にその人物はいなかった。それに、教室内にいた人たちにも聞いた話によると、学校に残っているとも思えない。
でも、考えれ当たり前ではある。『帰宅部』なのだから。そういう意味では、部長としては立派だと言える。
しかし、これだと今日は他にやれることもないな。
「これは、また明日だな」
「うん」
今度の呟きには伊久留が言葉を返してくる。
その後はお互いに言葉もなく、自然と別れた。
*****
「ふぅ……」
家に帰り、自分の部屋で一息つく。
今日は帰りの時間帯のせいもあり、小学生を見れなかった。そのためか、テンションが低い。だが、悪い意味ではない。
今日はそれに見合うといえば見合う、そんな大切な時間を過ごせたのだ。そして、これは新しい居場所で、消えることはない。それが無性に嬉しく感じる。
「さてと……」
俺はそう言って、一度背伸びをすると
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と、ネットサーフィンをするのだった。……俺はいつも通りです。
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