ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

文字の大きさ
47 / 115

7-5 きょうだい事情と巧人の力と昨日の行動

しおりを挟む
 定位置へと座り直したところで関羽が一息をつく。

「ふぅ……やっぱこの位置が一番落ち着くぜ。……で、巧? さっきは聞き流したけどよ、お前姉なんていたのかよ、初耳だぜ?」
「あ、それは私も知りませんでした」

 ああ、そうか。透に話したときには、利莉花も関羽もいなかったんだったな。

「悪かったな。でも、あんな姉、誰にも紹介したくなかっただけだ」
「ひでーいいようだな、おい」
「ダメですよ、自分のお姉さんを悪く言うなんて」

 二人はなにやら不満ありげに言ってくるが、絵夢は事情を知っているだけに、少し苦笑い。

「透の妹とも会う約束してるわけだしよ、お前の姉にも会わせろよな!」
「そのうちな」

 俺は適当にそう返す。紹介したくないってのもあるが、あいつは生徒会とかで忙しいし、そうでなくても高校三年生。受験を控えた身である。それが終わるまではできれば邪魔はしたくないな。

「んで? まだこん中に、兄弟いるやつっていんの?」

 関羽が尋ねると、利莉花が小さく手を上げる。

「はい、私も一人、妹がいますね」

 なん……だと……? 妹……だと?
 何故だ……何故俺だけ姉なんだ……。

「へぇ~……リリーって妹いたんだ~。今何年生?」
「中学三年生ですね」
「じゃあ受験か~大変そうだね~」
「はい、だからあんまり邪魔はしたくないので、会わせることはできないと思います」

 くそ、利莉花……お前に対して殺意が湧いたのは、これが初めてだ。
 恋をしている相手に殺意を抱くとは……これがヤンデレってやつか? いや、違うな。殺意の理由とデレの理由が違っている。いやまず、デレがないけどな!

「ただ、この学校を受けると言っていたので、来年になったら会えると思いますよ」
「へぇ~じゃあ来年が楽しみだね~。今は六月だから、まだまだ先だけど」
「ところで、利莉花。まさかとは思うが……その妹ってシスコンじゃないよな?」

 俺の問いかけに、微妙な顔をした後、渇いた笑いをする。

「あはは……その通りです」

 おいおい。間近に兄弟愛(違う意味で)を感じているやつらが三人もいたぞ。
 そして、俺だけ姉からのもの……ジェラシー!

「と、ところで! 巧人君は透さんの妹さんにあって何かしたいことってあるんですか?」

 利莉花が少し強引に話を変える。たぶん、利莉花の妹も相当の変り種なのだろう。俺も聞いていると、少し自分の境遇に悲しみを感じてくるので利莉花の話に乗ることにした。

「特にないが……しいて言うなら、話を聞くだな」
「それはどういうことですか?」
「別に、『君のことを聞かせてくれないか?』程度に」
「え? それだけなの? もっと、身長とか、体重とか、好きな食べ物とか聞いてくんだと思ってたよ」
「いや、だって、それは本気出せばわかる」

 俺がそう答えると、場の空気が一瞬固まる。

「……何故、距離を取る。絵夢」
「いや、ヌッキー……さすがにそれはドン引きだよ……」
「おぉ……巧そこまで行ってんのかよ、お前」
「確かに凄いってことを通り越してますよね」
「巧人、急激に紗弥に会わせたくなくなったんだが」
「なんだよ、俺は匂いで人を判別とかはできないぞ。マシだろ」
「どんな基準か、全然わかんないよ~」

 あれ? 匂いで人を判別することが一番あれなんじゃないのか? 伊久留と唯愛、それにたぶん、透も。それができるから、俺は比べたらマシなんじゃ……。

「というか、だとすると私の体重とかわかってるってこと!? ヌッキーの変態!」
「いや、これが使えるのは十二歳までだ。安心しろ」

 お前の体重なんて知りたいとも思わないし。

「それに、さっきも言ったように、本気を出せば、だからな。普通に使わねーよ」

 年齢ならもう、その人の頭の上に載ってるレベルだけど。

「えー……じゃあさ、それってどんなことが分かるの?」
「え? 身長、体重、スリーサイズ、血液型、それに精神状態、基礎代謝。運動量とか。
 それだけでなく、好きな食べ物や嫌いな食べもの、朝食に食べたものだってわかる。他にも趣味とか、誕生日も何時何分何秒で特定できるな」
「ヌッキー! それはやっぱりやばいよ! 個人情報も何もあったもんじゃないよ!」

 いや、でもこういう能力……って、これ本当に『念』のレベルだな。ビノー○トかよ。

「それと、ビ○ールトさん以上に使い勝手良すぎるよ! どんな制約したらそうなるの!」

 ああ、絵夢も俺と同じことを考えたか。しかし、俺と絵夢にしか分からない話で、全員が「ビノ〇ルト? なにそれおいしいの?」みたいな顔で固まっていた。

「とにかく、大丈夫だって。基本的に使わないんだから……で? さやちゃんはヤンデレとかいったけど、実際どんな感じなんだ? 詳しく話してくれよ」

 俺も利莉花がやった時と同じように、強引に話を変えた。

「詳しくと言われても……そうだな、俺が親と話すことも嫌がるレベルだな」

 マズすぎだろ。

「流石に俺も、これはどうかと思っているんだがな、どうにかしてほしいものだ」
「任せろ! この俺が、ブラコンなんてダメだ! って更生させてやる!」
「……本当に、そうなってくれたらいいんだがな」

 っち。その物言い。治せるもんなら治してみろってか? 余裕のあるやつだぜ。
 まぁ、いい。それは今度会ったときに、ゆっくりと時間をかけてやればいいだけだ。
 今はまた、別の話でもしよう。

「そういや、透。昨日尾行していたが、お前の行動でよくわからないところがあったんだが」
「どこがだ?」
「まず、本屋に入ったと思ったら、道を逆走してコンビニへ。その後同じ道を通って、帰っていった。どういうことだ?」
「ああ、あれは本屋にいる時に、親からメールがあってな。今日は遅くなるから、適当に食事をとって置いてと。それで、急遽コンビニで買うことにしたんだ」

 なるほどな。

「しかもそのおかげで、俺の買いたかった本は、買えなくなったんだよ」

 一体どんなBLだ。……って、あれ?

「でも確か、何かは買ってたよな?」

 出てきた透が、本の袋を入れるシーンを、俺は目撃している。

「ああ、買ったのは紗弥に頼まれていた本だな。俺はよく知らないが」

 年齢的に考えて、普通に少女漫画だろうな。しかも、兄妹もの。
 けど最近は規制が厳しくて、実の兄妹とか書れてないと思うんだがな。一体どんな本だったんだ?
 俺はそれを考える前に、一度時計を見た。すると、結構な時間が経っていて、いつもの部活の日の解散時間と、ほぼ同じ時刻になっていた。
 他のみんなもそれに気づき、帰る準備を始めた。

「集まる日だか……正確な日時は、後でメールで送ろう」

 それが一番だろうな。会わせるなら、さやちゃんのほうにも一度、話を通しておかないといけないし。
 透の言葉に、帰る支度をしつつ、そう考える。

「あ、ではアドレス交換しましょう」

(なに!?)

 利莉花のその言葉に、今度は手を止める。視線も利莉花へと向いた。

「そう言えば、まだ白瀬のアドレスは知らなかったか」
「あ、私も、リリーとは交換してなかったよね? しよ~」
「俺も俺も!」

(なんてことだ……これでついに、全員が利莉花のアドレスを……べ、別に、悲しくなんてないんだからね!?)

 俺は心の中でそう否定する。そうしている間にも、利莉花たちは着々と交換を済ませた。

「じゃあな、あんまり遅くなると紗弥がうるさいんでな」

 そう言って、透は一番先に帰っていった。残った俺たちも、後を続くように一人一人、部室を出ていく。
 そして誰もいなくな――いや、伊久留だけは俺が帰った後も残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...