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④
13-2 目覚めた後……
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「……ん」
目を覚ます。ここは……どこだ? 俺は机の上で寝ていたのか?
周りを見渡すと、利莉花や関羽たちが俺を見守っていた。各々、よかった~だの、「ったく、やれやれだぜ」だのと安心したようにもらしている。
それを聞いていると、少しずつ思い出してきた。俺はなんやかんやで気を失ったのだ。その理由は……色々と思い出したくないからやっぱりなんやかんやだ。
しかし、だとすると迷惑をかけたな。申し訳ない気持ちが湧いてきた。
「悪かったな、心配かけて」
「いえ、巧人君に何ともないならそれで十分です。……あ、こういうときって聞かないと大丈夫か確認できませんよね。えっと……あなたの名前は?」
……俺は馬鹿にされているのか。いや、確かに脳震盪とかそう言うのがあった時に、こういうの聞くのは知ってるし、ドラマとかでも見たことある。でも実際にされてみると、いらつくな。
「島抜巧人、17歳。高校2年生。A型の2月3日生まれだ」
俺は何度も聞かれるのも面倒だったので、その場で思いつく限りのことを全部言った。聞いた利莉花のほうも、「大丈夫みたいですね」と再び安心したように一つ息を吐いた。
「まぁ、私は巧人君の誕生日とかは知りませんけどね」
「そうか?」
あ、いやそりゃそうか。言う機会なんてそうそうないしな。それにずっと一緒に居たようなくらいにこの部に馴染んでいる利莉花だが、まだ2ヶ月しか経ってないし。
……透には昔聞かれたな。それにケータイのロックが俺の誕生日だったくらいだし。後、伊久留には自己紹介として教えたか。絵夢にも付き合っていた時ので「彼氏の誕生日くらい当然知っているよね?」とか言われたらしく教えたな。それくらいだな。
……おお、ここでも関羽は仲間はずれだったか。年齢判別の時と同じだな。
しかし、改めて辺りを見渡すが、みんな元に戻ってるな。やる気がなかったりテンションがおかしかったのがいつも通りになっている。もちろん俺も。
そう言えば、利莉花の胸元は……あ、戻ってる。少し残念。
(なはずはないだろ! ほら、俺のだって元通り、また海底深くに沈んでいるじゃないか!)
これで嬉しく思わないはずがないじゃないか! まったく、最高の気分だぜ!
あ、でもそういえば、俺が気を失っているときの山はまだ……でてたんだよな。……気にしないでおこう。誰も何も言わないし。
俺はその自分の中で湧いた疑問を振り切ることも含めて、話を変えるために「けど」と言葉をつづけた。
「よく俺が急に気を失ったのに、机の上に寝かせたな」
「いや、最初は保健室に運ぼうとしたんだ。巧人の身に何かあったらと思うと、気が気でなかったしな。それに、白瀬も自分の腕の中でそんなことになったから、取り乱していたし」
「えへへ……さすがにあれは驚きましたから」
ぐっ……想像がつくぞ。利莉花も透の反応も。あのときは頭がおかしかったから、もっとやばかったかもしれないけど。透は少なくとも人工呼吸とか言い出してるだろうな。
「それでなんですが、そうして騒ぎつつも保健室に連れて行こうとしたところで、伊久留ちゃんが言ったんです。たぶんすぐに目を覚ますだろうから、あんまり気にしない方がいいって」
「それに、そこまでするとヌッキーのほうが気にするから、とも言ってたよね」
なに、伊久留の判断だと?
俺はその名前に、視線を変える。……特に変わらず、本を読んでるな。強いて言うなら、今日は漫画だという事か。
にしても、意外なところから出てきたな。
でもな、伊久留。これはどういうことだ。そんなに俺のことが心配じゃなかったと言う事か? それとも俺のことは何でもわかってるぜってことか?
例えそうだとしても、仮にもぶっ倒れたんだから、もう少し慎重に扱ってくれてもよかったんじゃないのか? まぁ、このほうがありがたかったけど。
そんなことを考えていると、利莉花は弾んだ声で言った。
「けど、これでまた伊久留ちゃんが喋ってくれました! 巧人君さまさまですよ!」
……感謝された。すげー笑顔で。
利莉花はただ、伊久留が喋ったことが嬉しいだけで、そんなに深く考えずに言ってるんだろうけど。
そうなったのは俺が突然気を失ったからで。
気を失ったのは……こう気持ちが高ぶったからで。
そうなったのは、利莉花の体が原因で……。
こういうの全部ひっくるめて考えると、ものすごく複雑な気分だ。いや、単純に気を失って感謝されたっていうのでも困るけど。
「さてと、巧も回復したところで……帰っていいか?」
関羽が全員にそう話しかける。俺はそれに呆れたように返す。
「お前って隙あらば帰ろうっていうよな」
「実際、やることもなくこんな場所で時間なんて潰してらんねーだろ。俺は暇じゃねーんだ」
「私は伊久留ちゃんがいれば、それで十分ですけどね!」
「俺も巧人がいればそれで十分だ」
そう言って利莉花は伊久留をうっとりと眺め、透は俺を目を細めて見てきた。やめろ。
関羽はそれを聞いて不満たらしく答えた。
「お前らはそうだろうけど、ここには来夏さん(57)もいないし、俺の欲望は満たされねーんだよ」
またババアの話か。いや、関羽だしな。それしかありえないか。
ただ、欲望とか言ってこいつって単純つーか、忠実だよな。
「それに、まだあちーことには変わりねーしよ。わざわざここにいる必要もねーだろ?」
そうして関羽は顔を手で仰ぐ。確かにそうだ。寝起きであんまり気にしてなかったが、まだまだここは暑い。俺の汗も引いてないし。関羽たちもまだほんのりと汗はかいている。関羽に言う事は当然ちゃ当然だ。
けれど、その案に対して利莉花は興奮した様子で答えた。
「わかってないですね、関羽さんは。暑いからこそいいんですよ! 上気した頬! その肌にある汗! 光の反射なども伴い、それは妖艶さを増すんです!」
ものすごい勢いで語る利莉花にうんうんと頷く透。
やめろ変なこと思うな……と否定できない自分が悔しい。さっきまで同じこと思っていたわけだからな。でもだからこそ、ここは――
「まぁ、今回は俺も関羽に賛成だ。悔しいことだけど、俺あんなことなったし。ゆっくり休みたい。同じ意見なのは本当に嫌だけど」
「わざわざそれを強調すんなよ!」
「でも、事実だし。それこそ強調しないと、俺やっぱ暑さでどこかでやられたんじゃね? って他のやつに思われそうだったから」
「思わねーよ! んなこと思うなんて、薄情なやつすぎんだろ!」
「ごめん完熟……私なら絶対思ったよ」
「ひでー!」
絵夢の一言に適当なリアクションをする関羽。
ああ……いつも通りだ。すごく懐かしく感じる。これでこそ現代文化研究部だぜ。
今日の活動内容は『普段の何気ない身近にあるよく考えると独特の文化について』で決まりだな。
「ま、というわけで俺は帰らせてもらうな」
俺はそう言うと、鞄を持って立ち上がる。……立ちくらみとかはないな。
それが分かれば十分だ。後は家に還ってゆっくり休むとしよう。……休めたらの話だが。
(唯愛がうるさそうだ)
俺がちょっと風邪をひいただけで、私も休むとか言い出すくらいだし。少し熱があると、休めっていうし。もちろん、熱なんて測ってないのにだ。どんな感覚してんだ。
まぁ、この時間ならあいつはまだ学校だろうし、最近は勝手に部屋に入ってくることも(少)なくなった。部屋にいれば夕飯までは休めるだろう。
俺はじゃあな、と改めて言うと、ドアを開けて部屋を出て行った。
目を覚ます。ここは……どこだ? 俺は机の上で寝ていたのか?
周りを見渡すと、利莉花や関羽たちが俺を見守っていた。各々、よかった~だの、「ったく、やれやれだぜ」だのと安心したようにもらしている。
それを聞いていると、少しずつ思い出してきた。俺はなんやかんやで気を失ったのだ。その理由は……色々と思い出したくないからやっぱりなんやかんやだ。
しかし、だとすると迷惑をかけたな。申し訳ない気持ちが湧いてきた。
「悪かったな、心配かけて」
「いえ、巧人君に何ともないならそれで十分です。……あ、こういうときって聞かないと大丈夫か確認できませんよね。えっと……あなたの名前は?」
……俺は馬鹿にされているのか。いや、確かに脳震盪とかそう言うのがあった時に、こういうの聞くのは知ってるし、ドラマとかでも見たことある。でも実際にされてみると、いらつくな。
「島抜巧人、17歳。高校2年生。A型の2月3日生まれだ」
俺は何度も聞かれるのも面倒だったので、その場で思いつく限りのことを全部言った。聞いた利莉花のほうも、「大丈夫みたいですね」と再び安心したように一つ息を吐いた。
「まぁ、私は巧人君の誕生日とかは知りませんけどね」
「そうか?」
あ、いやそりゃそうか。言う機会なんてそうそうないしな。それにずっと一緒に居たようなくらいにこの部に馴染んでいる利莉花だが、まだ2ヶ月しか経ってないし。
……透には昔聞かれたな。それにケータイのロックが俺の誕生日だったくらいだし。後、伊久留には自己紹介として教えたか。絵夢にも付き合っていた時ので「彼氏の誕生日くらい当然知っているよね?」とか言われたらしく教えたな。それくらいだな。
……おお、ここでも関羽は仲間はずれだったか。年齢判別の時と同じだな。
しかし、改めて辺りを見渡すが、みんな元に戻ってるな。やる気がなかったりテンションがおかしかったのがいつも通りになっている。もちろん俺も。
そう言えば、利莉花の胸元は……あ、戻ってる。少し残念。
(なはずはないだろ! ほら、俺のだって元通り、また海底深くに沈んでいるじゃないか!)
これで嬉しく思わないはずがないじゃないか! まったく、最高の気分だぜ!
あ、でもそういえば、俺が気を失っているときの山はまだ……でてたんだよな。……気にしないでおこう。誰も何も言わないし。
俺はその自分の中で湧いた疑問を振り切ることも含めて、話を変えるために「けど」と言葉をつづけた。
「よく俺が急に気を失ったのに、机の上に寝かせたな」
「いや、最初は保健室に運ぼうとしたんだ。巧人の身に何かあったらと思うと、気が気でなかったしな。それに、白瀬も自分の腕の中でそんなことになったから、取り乱していたし」
「えへへ……さすがにあれは驚きましたから」
ぐっ……想像がつくぞ。利莉花も透の反応も。あのときは頭がおかしかったから、もっとやばかったかもしれないけど。透は少なくとも人工呼吸とか言い出してるだろうな。
「それでなんですが、そうして騒ぎつつも保健室に連れて行こうとしたところで、伊久留ちゃんが言ったんです。たぶんすぐに目を覚ますだろうから、あんまり気にしない方がいいって」
「それに、そこまでするとヌッキーのほうが気にするから、とも言ってたよね」
なに、伊久留の判断だと?
俺はその名前に、視線を変える。……特に変わらず、本を読んでるな。強いて言うなら、今日は漫画だという事か。
にしても、意外なところから出てきたな。
でもな、伊久留。これはどういうことだ。そんなに俺のことが心配じゃなかったと言う事か? それとも俺のことは何でもわかってるぜってことか?
例えそうだとしても、仮にもぶっ倒れたんだから、もう少し慎重に扱ってくれてもよかったんじゃないのか? まぁ、このほうがありがたかったけど。
そんなことを考えていると、利莉花は弾んだ声で言った。
「けど、これでまた伊久留ちゃんが喋ってくれました! 巧人君さまさまですよ!」
……感謝された。すげー笑顔で。
利莉花はただ、伊久留が喋ったことが嬉しいだけで、そんなに深く考えずに言ってるんだろうけど。
そうなったのは俺が突然気を失ったからで。
気を失ったのは……こう気持ちが高ぶったからで。
そうなったのは、利莉花の体が原因で……。
こういうの全部ひっくるめて考えると、ものすごく複雑な気分だ。いや、単純に気を失って感謝されたっていうのでも困るけど。
「さてと、巧も回復したところで……帰っていいか?」
関羽が全員にそう話しかける。俺はそれに呆れたように返す。
「お前って隙あらば帰ろうっていうよな」
「実際、やることもなくこんな場所で時間なんて潰してらんねーだろ。俺は暇じゃねーんだ」
「私は伊久留ちゃんがいれば、それで十分ですけどね!」
「俺も巧人がいればそれで十分だ」
そう言って利莉花は伊久留をうっとりと眺め、透は俺を目を細めて見てきた。やめろ。
関羽はそれを聞いて不満たらしく答えた。
「お前らはそうだろうけど、ここには来夏さん(57)もいないし、俺の欲望は満たされねーんだよ」
またババアの話か。いや、関羽だしな。それしかありえないか。
ただ、欲望とか言ってこいつって単純つーか、忠実だよな。
「それに、まだあちーことには変わりねーしよ。わざわざここにいる必要もねーだろ?」
そうして関羽は顔を手で仰ぐ。確かにそうだ。寝起きであんまり気にしてなかったが、まだまだここは暑い。俺の汗も引いてないし。関羽たちもまだほんのりと汗はかいている。関羽に言う事は当然ちゃ当然だ。
けれど、その案に対して利莉花は興奮した様子で答えた。
「わかってないですね、関羽さんは。暑いからこそいいんですよ! 上気した頬! その肌にある汗! 光の反射なども伴い、それは妖艶さを増すんです!」
ものすごい勢いで語る利莉花にうんうんと頷く透。
やめろ変なこと思うな……と否定できない自分が悔しい。さっきまで同じこと思っていたわけだからな。でもだからこそ、ここは――
「まぁ、今回は俺も関羽に賛成だ。悔しいことだけど、俺あんなことなったし。ゆっくり休みたい。同じ意見なのは本当に嫌だけど」
「わざわざそれを強調すんなよ!」
「でも、事実だし。それこそ強調しないと、俺やっぱ暑さでどこかでやられたんじゃね? って他のやつに思われそうだったから」
「思わねーよ! んなこと思うなんて、薄情なやつすぎんだろ!」
「ごめん完熟……私なら絶対思ったよ」
「ひでー!」
絵夢の一言に適当なリアクションをする関羽。
ああ……いつも通りだ。すごく懐かしく感じる。これでこそ現代文化研究部だぜ。
今日の活動内容は『普段の何気ない身近にあるよく考えると独特の文化について』で決まりだな。
「ま、というわけで俺は帰らせてもらうな」
俺はそう言うと、鞄を持って立ち上がる。……立ちくらみとかはないな。
それが分かれば十分だ。後は家に還ってゆっくり休むとしよう。……休めたらの話だが。
(唯愛がうるさそうだ)
俺がちょっと風邪をひいただけで、私も休むとか言い出すくらいだし。少し熱があると、休めっていうし。もちろん、熱なんて測ってないのにだ。どんな感覚してんだ。
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