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「英雄伝」
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「英雄伝」
「はいはい、桃太郎さん、泣かないでねー。おっと、泣いてる桃太郎さんに追い打ちをかけるようですが、総選挙得票シェアが、60対25対15に縮まりましたねー。子供の票が金太郎さんと浦島太郎さんに移ったようですねー。しかしまだ、桃太郎さんのシェアは6割。がっちりトップをキープしていますねー。
では、次のテーマは、視聴者からの質問にもあった、電話会社のCMのテーマにもなっている「英雄」について、「我こそは!」と発言のある方は、挙手お願いしますねー!はい、金太郎さん!」
「私は、「実在の人物なのか?」の質問の時に話しましたが、どうも多くの人に20歳で足柄山を下りるまでしか知られていないみたいなんですよ。」
「すみませーん。私も毎日、足柄山で鉞(まさかり)で木を切りまくって、熊と相撲ばっかりとってたイメージですねー。そんで、京都の偉いお侍さんの家来になって「めでたし、めでたし」って思ってましたからねー。」
「そうなんですよ。ほとんどの方が、その認識だと思います。少し、その後のことを話させてもらっていいでしょうか?」
「わかりました、金太郎さんちょっと待ってくださいねー!桃太郎さん、元気出してくださいよー、何か発言有りますかー?」
先ほどのダメージが抜けきらず首を振るだけ。
「浦島太郎さんはどうですか?」
「わしは、サメを倒したわけでもなく、鬼を倒したわけでもない。ただ、絶世の美女に惚れられて契りを交わし、飲んで食べて歌って踊ってただけや。ただ、ひとりの女を生涯の伴侶としたところだけは認めてほしい。わしの女は、後にも先にも一人だけや。女房にとっての「英雄」であればわしはそれでええんや。
後日、作られた話にしても「亀を助けただけ」じゃ「英雄」ではないわな。この時点で、わしは「英雄」でも「三太郎」でもないんやからな。
ほんま、今日をきっかけに、電話屋のCMは、マンガ日本昔話のオープニングを飾った「龍の子太郎」、欲のない英雄の「力太郎」か、灌漑工事に尽力した「三年寝太郎」、島根民話の「火太郎と長太郎(ながたろう)」、それに犬やけど信州駒ケ根の「早太郎」か長岡の「悉平(しっぺい)太郎」でもええし、人やなくて「壷」やけど「ずいすいずっころばし」の元ネタになった磐田の「太郎五郎茶壷」くらいで、わしの後任探してもろたら助かんねんけどなぁ…。まあ、「英雄伝」は、さっきのネコババ話で「桃」の線は無いやろうから金さんの活躍でも聞こうや。」
「そうですかー、では、金太郎さん、お話うかがっていいですかー?」
金太郎は、カメラに向かって落ち着いた声でゆっくり話しだした。
「はい、では、私が足柄山で源頼光様に認められて、京の都に上洛してからの話をさせてもらおう。わずかな、人にしか知られてはおりませんが、京に上り、もともと頼光様の部下であった父方の姓の「坂田」を引き継ぎ、「坂田金時」となりました。本来、「金太郎」の方が成人名として当時はふさわしかったのだが、殿に「金時」との名をいただいたので、当時としては遅い20歳での元服と同時に名を変えたのです。
ちなみに、父は私が母のお腹の中にいるときに死去し、母は、彫刻細工職人だった祖父を頼り足柄山付近の今の静岡県の駿東郡小山町に引っ越したのです。いま、金時神社がある場所ですね。私は、3歳になるとこの赤い腹かけをつけ、彫り物師の祖父のために木を切りに毎日のように足柄山に上がりました。決してやみくもに鉞(まさかり)で木を切りまくってたわけではありません。
そして、山で知り合った、森の主(ぬし)の熊に相撲で勝つと、シカやウサギとかけっこをしたり、熊が「いずれ都に出ることになるのだから」と馬の練習をさせてくれたり、いつか都に出た際に備えて「詩(うた)」の一つも読めないと、女にもてないと言われ、博識な熊から秋になると森で仲間の動物たちとあけび食べながら、「女性相手の詩会(うたかい)で使えば「必殺」の効果がある」という詩(うた)を教わりました。
「童貞」のまま、都に出て、相手の女性の前で私が恥を書かぬよう、シカやウサギが相手をしてくれました。ですから、初めて女性を相手にした時も失敗することなくうまく「へげへげ」できました。
みんな、いい仲間でした。おかげさまで、20歳の時、頼光様に認められ、都に行ってもこれといって不自由はありませんでした。
都に出てからは、頼光様と四天王の仲間と鬼や都の治安を乱す悪党成敗に奮闘する毎日でした。幸い山の中で20年近く鍛えたこの身体と体力のおかげで「チーム頼光」の一員として都の民を守ってきました。あえて「英雄」というのであれば、それは、私、「坂田金時」個人ではなく、「チーム頼光」の五人が「英雄」であると思います。私からは、以上です。」
一気に、三太郎総選挙の戦力分布が変わった。「わしは「英雄」でも無ければ「三太郎」でも無い。」との発言が、「いさぎ良くってかっこいい。」、「嶋子、見直した!」、「俺が女だったら、嶋子を夫にしたい!」と肯定的なコメントが次々と来ると同時に投票シェアも上がっていく。金太郎の投票もぐんぐん伸びている。「必殺の詩(うた)ってどんなのですか?」、「金時様の「うた」で口説かれたい。」、「シカやウサギがってどういうこと?」とコメントが食いついてくる。
相対的に増えた二人の得票は、桃太郎の投票シェアを侵食していった。
「はいはい、桃太郎さん、泣かないでねー。おっと、泣いてる桃太郎さんに追い打ちをかけるようですが、総選挙得票シェアが、60対25対15に縮まりましたねー。子供の票が金太郎さんと浦島太郎さんに移ったようですねー。しかしまだ、桃太郎さんのシェアは6割。がっちりトップをキープしていますねー。
では、次のテーマは、視聴者からの質問にもあった、電話会社のCMのテーマにもなっている「英雄」について、「我こそは!」と発言のある方は、挙手お願いしますねー!はい、金太郎さん!」
「私は、「実在の人物なのか?」の質問の時に話しましたが、どうも多くの人に20歳で足柄山を下りるまでしか知られていないみたいなんですよ。」
「すみませーん。私も毎日、足柄山で鉞(まさかり)で木を切りまくって、熊と相撲ばっかりとってたイメージですねー。そんで、京都の偉いお侍さんの家来になって「めでたし、めでたし」って思ってましたからねー。」
「そうなんですよ。ほとんどの方が、その認識だと思います。少し、その後のことを話させてもらっていいでしょうか?」
「わかりました、金太郎さんちょっと待ってくださいねー!桃太郎さん、元気出してくださいよー、何か発言有りますかー?」
先ほどのダメージが抜けきらず首を振るだけ。
「浦島太郎さんはどうですか?」
「わしは、サメを倒したわけでもなく、鬼を倒したわけでもない。ただ、絶世の美女に惚れられて契りを交わし、飲んで食べて歌って踊ってただけや。ただ、ひとりの女を生涯の伴侶としたところだけは認めてほしい。わしの女は、後にも先にも一人だけや。女房にとっての「英雄」であればわしはそれでええんや。
後日、作られた話にしても「亀を助けただけ」じゃ「英雄」ではないわな。この時点で、わしは「英雄」でも「三太郎」でもないんやからな。
ほんま、今日をきっかけに、電話屋のCMは、マンガ日本昔話のオープニングを飾った「龍の子太郎」、欲のない英雄の「力太郎」か、灌漑工事に尽力した「三年寝太郎」、島根民話の「火太郎と長太郎(ながたろう)」、それに犬やけど信州駒ケ根の「早太郎」か長岡の「悉平(しっぺい)太郎」でもええし、人やなくて「壷」やけど「ずいすいずっころばし」の元ネタになった磐田の「太郎五郎茶壷」くらいで、わしの後任探してもろたら助かんねんけどなぁ…。まあ、「英雄伝」は、さっきのネコババ話で「桃」の線は無いやろうから金さんの活躍でも聞こうや。」
「そうですかー、では、金太郎さん、お話うかがっていいですかー?」
金太郎は、カメラに向かって落ち着いた声でゆっくり話しだした。
「はい、では、私が足柄山で源頼光様に認められて、京の都に上洛してからの話をさせてもらおう。わずかな、人にしか知られてはおりませんが、京に上り、もともと頼光様の部下であった父方の姓の「坂田」を引き継ぎ、「坂田金時」となりました。本来、「金太郎」の方が成人名として当時はふさわしかったのだが、殿に「金時」との名をいただいたので、当時としては遅い20歳での元服と同時に名を変えたのです。
ちなみに、父は私が母のお腹の中にいるときに死去し、母は、彫刻細工職人だった祖父を頼り足柄山付近の今の静岡県の駿東郡小山町に引っ越したのです。いま、金時神社がある場所ですね。私は、3歳になるとこの赤い腹かけをつけ、彫り物師の祖父のために木を切りに毎日のように足柄山に上がりました。決してやみくもに鉞(まさかり)で木を切りまくってたわけではありません。
そして、山で知り合った、森の主(ぬし)の熊に相撲で勝つと、シカやウサギとかけっこをしたり、熊が「いずれ都に出ることになるのだから」と馬の練習をさせてくれたり、いつか都に出た際に備えて「詩(うた)」の一つも読めないと、女にもてないと言われ、博識な熊から秋になると森で仲間の動物たちとあけび食べながら、「女性相手の詩会(うたかい)で使えば「必殺」の効果がある」という詩(うた)を教わりました。
「童貞」のまま、都に出て、相手の女性の前で私が恥を書かぬよう、シカやウサギが相手をしてくれました。ですから、初めて女性を相手にした時も失敗することなくうまく「へげへげ」できました。
みんな、いい仲間でした。おかげさまで、20歳の時、頼光様に認められ、都に行ってもこれといって不自由はありませんでした。
都に出てからは、頼光様と四天王の仲間と鬼や都の治安を乱す悪党成敗に奮闘する毎日でした。幸い山の中で20年近く鍛えたこの身体と体力のおかげで「チーム頼光」の一員として都の民を守ってきました。あえて「英雄」というのであれば、それは、私、「坂田金時」個人ではなく、「チーム頼光」の五人が「英雄」であると思います。私からは、以上です。」
一気に、三太郎総選挙の戦力分布が変わった。「わしは「英雄」でも無ければ「三太郎」でも無い。」との発言が、「いさぎ良くってかっこいい。」、「嶋子、見直した!」、「俺が女だったら、嶋子を夫にしたい!」と肯定的なコメントが次々と来ると同時に投票シェアも上がっていく。金太郎の投票もぐんぐん伸びている。「必殺の詩(うた)ってどんなのですか?」、「金時様の「うた」で口説かれたい。」、「シカやウサギがってどういうこと?」とコメントが食いついてくる。
相対的に増えた二人の得票は、桃太郎の投票シェアを侵食していった。
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