【完結!】『山陰クライシス!202X年、出雲国独立~2024リライト版~』 【こども食堂応援企画参加作品】

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「出雲の願い」

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「出雲の願い」

 物静かに2021年の年明けを迎えた。昨年までの新型ウイルス騒ぎもいくらか鎮静化し、出雲大社は、「密」にならないよう気をつけながらではあるが、新型ウイルス前の2019年の正月に近い人数が、新年のお参りで訪れていた。そのほとんどは、今年が島根県にとってどういう年になるか、予想だにしていなかった。
 初詣で賑わう出雲大社の本殿裏では、宮司が何枚もの書状を手書きで書き続けていた。全国の出雲大社の分祠、分院と教会、講社に宛てたものであった。
北海道・東北では、網走、函館、新十津川、弘前、信達の五か所。
関東では、東京、朝霞、相模、上総、常陸の五か所。
中部では、富士、佐久之宮、飛騨、浜松、愛知日の出、福井の六か所。
近畿では、京都、近江、紫野、巌、大阪の五か所。
中国では、石見、岡山、広島、福山、周防の五か所。
九州・沖縄では、唐津、熊本、庄内、高千穂、沖縄の五か所と国内で三十六か所ある系列のうち、既に直接話をしている浜田市にある石見を除く三十五の宮司宛てに、来るべき神在月に向けた大社としての行動の可能性についてしたためていたのだ。
 海外では、出雲大社の系列としては、ハワイとマレーシアにもあるのだが、そのふたつの分院と講社には送っていない。

 文書の内容については、宮司のみに閲覧を許可し、一切の相談は本院以外には禁ずることが文頭に記されていた。(この状況を三十五か所の宮司たちは理解してもらえるだろうか…。ただ、たかが三十五の宮司を納得させられないようでは、日本全国の多系列の宮司を説得できるはずもない…。とにかく、私ひとりではとても賄いきれない事業である以上、私に変わり動いてくれる最初の三十六人がキーになるはずだ。とにかく時間がない…。この三が日には、書状を発送しないと…。)真冬にもかかわらず、額に汗が流れた。
 そんな宮司の気持ちは、誰も知る由なく、社務所も本殿も忙しく多くの神官、巫女と参拝者が出たり入ったりを繰り返していた。
 岩本は、県知事、松江市長と共に、早々に出雲大社を参り、大国主大神に、二礼四拍一礼を行い、十月に向けた決意を宣言するとともに、66万4千人の島根県民の幸せを願った。宮司とは、目礼だけだった。しかし、言葉は交わさずとも心は通じ合っていた。

 松の内があけると、島根県知事と総務課長の岩本、そして県内の市長連合会の団体が、細〇衆議院議員の仲介で首相官邸を訪れ、再び島根県の日本国内での発言の場の確保できる制度の維持と、将来的に計画されている道州制導入の際の複数県の国主導による合併計画に対し、島根県としての意見を上申した。
メガネの総理に書面で渡した要望以外にも、議員会館に寄り、中国地方選出の議員や他の選挙区の合併予定区、また、将来的に選挙区が縮小・合併が見込まれる地方議員にも水面下で内閣・政府に、衆議院議員の定数削減中止の共同行動を願い出た。

 しかし、その対応の反応は冷ややかなものであった。県知事は、(所詮、総理は、同じ中国地方の仲間という感覚はない「広島」の人なのか…。それと、他の人口減少中のエリアの国会議員というのは、選出してもらった地方に対する愛情というものは薄く、自分の選挙のことしか考えていないものなのか…。)と落胆して、帰りの羽田空港発、出雲空港着の日本航空のボーイング787に乗り込んだ。岩本も知事と同じ気持であった。
 島根県からの陳情グループが永田町を離れたのち、動向をうかがっていた「背中から味方を撃つ男」が、島根県知事たちが訪れた議員に、「今の立場を守りたければ、地元より中央のことをしっかりと考えるべきですよ…。選挙費用の割り振りの査定に入りますよ…。」と含み笑いで電話をかけていた。官邸としては、島根県側の要求を無視することを決め込んだ。

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