【完結!】『山陰クライシス!202X年、出雲国独立~2024リライト版~』 【こども食堂応援企画参加作品】

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「フェーズ3 11・21八百万の神、所属国に戻らず」

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「フェーズ3 11・21八百万の神、所属国に戻らず」

 11月19日午前十時、「神在祭」の二回目の神議と「縁結大祭」が同時に始まった。「縁結大祭」とは、大国主大神の「むすびの御力」をいただかれ、「幸栄さきはええにし」に結ばれるよう祈る儀式である。今回は、島根県と将来的な横連携を検討している山口、長崎、佐賀、熊本、高知、香川、徳島、愛媛の県知事が島根県知事と共に出席していた。
 上宮では、大国主命を主宰として、今回の出雲独立について、全国の神々にその詳細が議題として挙がっていた。昨日までの懇親会と一転し、気難しく重たいオーラが上宮の社から漏れ伝わってきた。事前の神々への通知や工作があったにもかかわらず、この日の神議では過半数の同意は得られたものの、100%同意には程遠い結果に終わった。(思いのほか、うまく事が進んでおらんな…。)大国主命の表情は晴れなかった。

 20日の出雲大社外の会場でのイベントで予期しないトラブルが起こった。明らかに神々の気分を意図的に害する行為を行う者が、各会場に発生したのである。いくつかの会場では、交流会は、途中閉会し、また、午後の部の開催を取りやめた会場も少数発生した。
 妨害を行った参加者は、人込みに紛れ、タスクフォースの面々が会場に到着した際には、既に姿を消しておりその詳細は闇の中となった。(まさか、そんな不遜なことを島根県民がやったとは思えないが…。会場を増やし我々の目が届かなくなってしまっていた…。我々の責任だ。)と岩本は、立腹している神に頭を下げ、詫びを入れて回った。怒りが収まらない神が複数いたことも、明日の行事はキャンセルして「今すぐ、所属の国に帰る。」と言い出す神もおり、岩本の気持ちに重くのしかかった。
 重い気持ちで出雲大社に戻った。出雲大社では、大国主命の声掛けで神々の緊急の総会が御本殿で開かれることになっており、大国主命に詫びを入れるつもりだったのだがお目通りはかなわなかった。
 八足門の前で神々の緊急総会が終わるのを県知事と共に岩本が待っていると徹三が現れた。
「おい、徹六、何ちゅう暗い顔してんだ。ここは出雲大社じゃ。そんな顔しとったら、神様たちも困ってしまうじゃないか。」
「いや、その神様たちにすごい迷惑をかけてしまって…。お詫びしようと思って会議が終わるのを待っているんです。」
「なんじゃい、今日のトラブルのことか?」
「はい、参加者が神様に多数迷惑をかけたみたいで…。最初の三日間ですっかりゆるんでしまっていました…。」
「そうだな、過去の大戦と同じじゃな。戦線をキャパシティ以上に広げると哨戒に穴ができるちゅうところは、俺らが闘っていたころと同じじゃのう。ただ、徹六、お前はよおやってる。それは、心配せんでいい。」
「でも、おじいさん…。」
「徹六、俺がなんで生き残ってきたか話したな。見敵必殺!先に危険を察知するのがやられないコツじゃ。先に敵を見つければ、まずやられることはない。今日の状況を鑑みて、俺らなりに先に警備をしてたんじゃい。そこで見たことを、社の中の神さんたちに報告してきたところや。」
「報告って何を…。」
「俺の周りにも神様になったもんがいっぱいおるっちゅうこっちゃ。いわゆる軍神ってやつやな。先輩で言えば、加藤隼戦闘隊で有名な陸軍航空隊の加藤健夫少将、支那事変の撃墜王の海軍航空隊の南郷茂章大尉。後輩で言えば、神風特攻隊の先駆けの関行男大尉じゃ。
昨晩のうちに彼らに頼んで怪しい会場を索敵してもらっとたんじゃ。そしたら、俺の予想通り、怪しいやつが紛れ込んどった。どうせ、みそぎもきちんとして来てへん奴や、俺らの姿は見えんじゃろ、今風に言うと「ステルス」と言うやつだな。
こっちが見えんとなれば、追跡は簡単じゃい。事件の後、俺らみんな、各々の敵をつけていったんじゃい。」
「えっ?」
「そしたら、思った通り、徹六たちの敵じゃった。現政府の密偵じゃ。官邸から送り込まれたスパイと言うか破壊工作員と言った方が適当かのう。奴らの出所と命令した奴らを神様たちに報告してきたところじゃい。
安心せい、出雲の民も普通の日本の民も決して悪くない。悪いのは一部の自分の利益と利権と立場の為に他人を陥れる奴じゃい。
 靖国神社の神様も、国を護った英霊を自分都合で参拝したりせんかったりするようなやつは守ってやる必要は無い!って味方してくれてな。それで、今はすっかり徹六や大国主命が思った方向に纏まりつつある。だから、安心せい。ほれ、泣いておらんと笑わんかい。」
 岩本は涙が止まらなかった。知事も横で泣いている。
「おじいさん、ありがとうございました。後で、時間があれば、加藤さん、南郷さん、関さんにもお礼させてください。」
「まあまあ、そんなん気にせんでいい。みんな、俺の戦友じゃい。おっ、会議は終わったみたいじゃぞ。後は、知事とうまく話を進めてくれな。」
徹三は「すーっ」と消えていった。

 御本殿の扉が開き、大国主命を先頭に先ほど怒り狂っていた神々も八足門へ出てきた。岩本と知事に気付いた大国主命が駆け寄ってきた。
「徹三君から、事の顛末は聞いたよ。纏まりきっていなかった神々の意思はひとつになったよ。明日は、予定通り、「神等去出祭」開始前に、こちらから今の内閣に宣戦布告だな!」
「はい、何から何までありがとうございました。」
岩本と県知事は、深々と頭を下げた。
 
 21日、いよいよ出雲の神々の宴も最終日を迎えた。午前十時からの「神在祭」での「神議」と「縁結大祭」が終われば、午後四時からの「神等去出祭」で神々に謝恩の祈りを捧げ、宮司の「お立ちー!」の高声と共に神々が出雲大社をお立ちになられるのが通常だ。
 昨日のトラブルで、神々の意思もほぼ統一化され、「神議」は、現在建設中の建物を見守っている「建築の神」や、病気の人を見守っている「健康の神」や、神社ではなく山や川に宿る神など、継続案件や特殊な守護を賄う事情がある一部の神を除いては、大国主命に従うことで最後の「神議」は短時間で纏まった。余った時間は、この一週間で体験した今までにない一般人との交流の思い出話で盛り上がっていた。
 「縁結大祭」も19日に参列した、他県の関係者が改めて、「むすびの御力」を戴き、集まった県の「幸栄の縁」を再確認した。

 いよいよ「神等去出祭」が始まる一時間前。満を持して島根県知事が動いた。ニコニコ動画とユーチューブの生中継が始まった。首相官邸にもアクセスアドレスをつけた招待のメールを前日に送付している。(さあ、いよいよ大詰めだべ。おじいさんのおかげでここまで来ることができたべ。大国主命様も先ほど「99%の成功率だ。」と言ってくれて、後は俺たちの仕事だ。おじいさん、見守っててください…。)岩本は武者震いをした。
 県知事は、銅鳥居の奥の拝殿の前に置かれた会見台の前に立った。その前に設置されたマスコミ席には地元の放送局、地元新聞社、神仏系ユーチューバー等がカメラやスマホを構えて待っている。大手マスコミの姿はない。
 午後三時、県知事がカメラを通しネットの先の視聴者に向けて話し始めた。
「皆さま、島根県知事から全国の皆様へご通達がございます。今から、ニコニコ動画とユーチューブを使って生会見を行わせていただきます。本日、午後四時から行われます「神等去出祭」を持ちまして、本年の「神在祭」は終了いたしますが、本年は送りの儀式の後、神々が出雲滞在を望まれた場合、島根県としては無期限で滞在を認める決定を行いました。神々の自由意思で元の所属配置に戻る、戻らないは決めていただくということです。」

ニコニコ動画に「えっ?どういうこと?」、「神様拉致?」、「うちの神社、無神になっちゃうの?」、「俺、来月受験のお参りまだしてないんだけどどうすればいいの」、「出雲、神独占!」と一気にコメントが画面を流れた。(ここまでは、想定内だべ。問題はここから…。県知事頼むべな。)岩本はノートパソコンのモニターに集中した。
知事は、会見台の上に置かれた「奥出雲の仁多水」を一気にあおると大きく息を吸い声を一オクターブあげて宣言した。
「令和5年1月1日を持ちまして、島根県は、「出雲国」として独立の手続きに入ります。詳細につきましては、県ホームページにアップしておりますので、そちらでご確認ください。現状、日本国および他の都道府県との交流は、EUと同様に何ら制限を設けることはございませんので県民の皆様におかれましては、不要な心配等なされないようにしてください。転入転出も年内は従来通り行い、何ら制限を設けるものではございません。また本年中の納税等は従来通りとします。
 国際法上の独立国としての申請は12月1日に予備申請を行い、早期に国際法上の独立国となることを目指します。」

 「出雲国?まじかる?」、「独立って草草草!」、「関所復活!」、「この知事「基地外」?」、「明日から出雲国民」、「神様が人口の十倍以上!www!」。ニコニコ動画のコメントが画面いっぱいに広がり、知事の顔が見えないくらいになった。会見開始五分で、ユーチューブのコメント数は十万を超えた。
「驚かれた方が多いと思われますが、島根県としては十分時間をかけて準備をしてまいりました。県民の皆様には、県職員全員で最大限努力させていただきますので、この先もよろしくお願いします。以上を持ちまして、県からのご報告を終わらせていただきます。」
県知事は、マスコミ席にお辞儀をした。広報部の女性職員が、数少ないマスコミからの質問を受け付け始めた。事前に、資料を配布していたこともあり、地元マスコミからは好意的な質問が続いた。ニコニコ動画とユーチューブコメント欄は、相変わらず荒れまくっている。
午後四時を迎え、カメラは拝殿へと切り替わった。宮司が神々に「謝恩の祈り」を捧げ、クライマックスの送りの言葉になった。
「お立ちー!」
 声高に宮司が叫んだ。神々は一斉に立ち上がった。神々はお互い握手や抱擁を交わしあい、一部の神は帰郷したが、ほとんどの神はその場に残った。岩本は「ほっ」とため息をついた。知事も安心した顔で胸をなでおろしている。岩本の横で徹三が「良かったな。でも、これからが大変だぞ。」と岩本の肩をたたいた。
 知事の携帯に、細〇から電話があった。「よくやってくれた。ありがとう。」と漏れ伝わる声は、明らかに泣いていた。

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