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「山陰連邦設立。そして九州へ」
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「山陰連邦設立。そして九州へ」
翌日の全国紙と朝のワイドショーは、「出雲独立」のニュース一色だった。何度もニコニコ動画とユーチューブ動画がテレビ画面に映し出された。ニコニコとユーチューブの「独立宣言」の動画は、一晩で再生回数一千万回を超えた。コメント数も十万を超えている。
大国主命は、「出雲神連合協議会」を組織し、天照大神を協議会長として、全国の各都道府県から三名ずつの評議員を各都道府県ごとに協議で選出した。あえて、現社会の人口比による議員定数設定へのアンチテーゼとして神々が独自に決めたとの事だった。神々の行うことに対しては、人間側からは特段、口を出さないことにしていたが、ともに連携しないといけないことが多数あることから、何人かの「連絡官」が双方より選ばれた。岩本もそのひとりとなった。県庁の一課長職が受けるには大きすぎる仕事であったが、徹三も選ばれているので、そこは安心した。
朝一番より、東京からの大手マスコミが島根県庁と出雲大社に詰めかけた。出雲大社では、一般の参拝客に迷惑をかけないように境内での撮影の自粛を求め、「午後から県との共同会見を県庁で行う」旨の張り紙がされたA型看板が「勢溜の大鳥居(せいたまりのおおとりい)」と「銅鳥居」と「社務所」の前に置かれているにもかかわらず、手水舎で手も洗わず、多数の社のカメラマン、音声、照明、ADを引き連れて、ディレクターとリポーターが境内を闊歩した。
(こいつらには神に対する何の尊敬や畏れはないのか…。こんな奴らが今の日本ではエリートだと…。嘆かわしいことじゃ…。)その行儀の悪さには、大国主命や素戔嗚尊だけでなく、出雲に残った多くの神々もげんなりした。
午後一時、県庁の第一会議室で独立会見が開催された。約百名の報道陣が集まった。島根県としては、石見銀山遺跡の世界遺産登録が認められた時以来の賑わいとなった。あの時は、祝福ムード一色だったが、今回は空気感が全く違う。まるで、色物を見に来た野次馬のような雑然とした雰囲気が報道陣の中にあった。まともな新聞社の政治記者も見られるが、まるでバラエティの撮影に来たかというようなふざけた会話をするスタッフが大勢目についた。
岩本の司会で会見が始まった。報道陣に、A4で10枚のレジュメが配られた。無駄な質問を避けるため、まず、五分間でレジュメを読んでもらい、知事からの説明の後、質問を受けつける方式をとった。半数は真剣に読み込み、半数は薄ら笑いを浮かべ小バカにした表情で読んでいた。
午後一時五分、県知事がスクリーンに映し出されたパワーポイントをレーザーポインターで指し示しながら説明に入った。
「中央政府が推し進める「道州制」とは違った形の地方再生策の一環としての独立であり、一般的な独立国のように、関税や入国管理局を置くことはなく、EU型の地域連携経済体制と旧ソビエトのような連邦制のハイブリッドモデルを目指すことで自立を目指します。
日本からの地方交付税は受けない代わりに、所得税、消費税等はすべて県内で各市区町村に分割再分配することで財政は賄います。
郵貯の財源については、島根県民及び島根県に本社を置く、または事業所を置く企業、協同組合等の法人の貯金等の財源によって分割する方向で試案を提出します。
年金財源については、現在の被保険者の納付財源および人数シェアにより、将来的に分割を希望します。
国民健康保険は、他県で使用している者については、現状料率および点数で処理を継続し、いずれは、財源については運用も含め、島根県内で処理をするようにする予定です。続いて、鉄道および道路の・・・」
と約九十分にわたり解説が行われた。
一通りのレジュメ内容に対する説明が終わった時点で、質問状作成のための時間として二十分の小休憩を挟んだ。マスコミ各社は、本部のデスクや制作局に連絡を入れ、質問内容をそれぞれ手書きやパソコンやタブレットで作成するところと本部からのメールから打ち出すところと多岐にわたった。
時を同じくして、東京では首相と関連大臣による会見が行われていた。そちらは、多くの仕込み記者が次々と発言を行い、あたかも島根県そのものが無謀なアナーキストで、そのアナーキストが狂信的に起こしたクーデターのようなものという雰囲気になっていた。
島根での会見がそうはならなかったのは、質疑応答の席には、大国主命と神の代表として天照大神が出席したことが原因だった。まず、神であることを証明するために、いくつかの超常現象を起こして見せたのだ。窓の外の天候を自由に操り、地震を起こして見せると、それまで小バカにしていたマスコミ各社も真剣になった。
質疑応答は国営放送を皮切りに、大手新聞社、地上波民放放送局、経済紙、週刊誌等十五社で二時間半に及んだが、これといったトラブルはなく、会見は終了した。
今後のスポークスマンとして、岩本が指名され、マスコミ取材の窓口となった。電話によるアポイント取りは原則禁止とし、メールでのみの受付とした。
翌日のマスコミの取り上げ方は、島根県を熱く擁護する番組と冷ややかに批判する番組が半々だった。島根県太田市出身の宮根誠司氏が司会を務める「情報ライブミヤネ屋」は、連日島根のニュースに時間を割いていた。
新聞、テレビ等の大手メディア以上に大盛り上がりしていたのは、ネットの世界だった。軒並み、地方出身を売りにしているタレントやブロガーは、積極的に島根県の決断を推したものが多く、多くの「いいね」を獲得していたし、「#島根いらない」を拡散した東京のタレントは炎上していた。
それとは別に「#初詣どうなるの」、「#神様COMEBACK」、「#合格祈願」、「#神頼みできない」、「#神様独占」、「#次の独立県はどこ」、「#神不在」等がトレンド入りし、いろいろな論調が巻き起こっていた。
岩本の元に、21日に帰郷した神の公開を求める要望が多数届いたが、「神の個人的な意思による帰郷、滞在」の事情があることと、神社等で神が不在であることが間接的にわかることで不利益が発生することを鑑み「非公開」とHP上で通知した。
残った神たちは、おおむね島根県と島根県民に対して好印象を持っていた。かつて神々と人間が共生していたころを思い出し、永らく閉ざされていた神と人間の交流を復活させた島根県の行動を善意に捉えていた。
出雲ドームでは、十日に渡る県民との交流会の継続が決まり、神々も県民も大いに喜んだ。神の中には、参拝者がほとんどいない神社の祭神や、金儲けのための宗教法人の神社の祭神などは、「戻ったところで蔑ろ。この先戻らず、ずっと出雲に居たい。」と公言していた。その中には、年間参拝者数が百万人を超える有名神社の祭神が多数含まれていたが、島根県民はそれをむやみにSNS等で拡散することは自主的に控えていたし、神々に出雲での滞在を無理強いすることはなかった。それが結果的に、神々の「出雲滞在最高!」との評価に繋がっていくきっかけとなった。
日本政府が島根県に対して、「帰属」の要請をしないとの総理の会見があった。「独立を容認する」とは言わなかったが、実質、「日本に島根県はいらない」と言ったも同然だった。
その翌日から、全国の神社は、推薦入試を前にして、学問成就のお参りが激減、受験生や親、学校、予備校から文部科学省へクレームのデモも次々と起こった。
続いて岩本による、出雲国暫定政府としての島根県からの発表で、日本国が島根県独立に関して全くのシカトを続けていることが全国に知られることとなり、「神々の「出雲滞在承認」を1月8日までの延長する」との予告が内閣と全国のマスコミに流された。
初詣ができなくなる島根県以外の1都1道2府42県の神社と日本国民から「正月も営業している業者は、営業時間外の数時間しか参拝時間が取れない為、出雲参拝は不可能」、「去年のお札は、島根まで返しに行くなら、その交通費は国が負担するのか!」、「今のお伊勢参りは、意味がないのか?」、「えべっさんも無くなるの?」、「1908年生まれの通天閣の「ビリケンさん」は、フローレンス・プレッツデザインでカナダ生まれだから御利益は継続するのか?」、「経営の神様、代打の神様、神様仏様バース様の扱いはどうなるんだ?」等の問い合わせと、日本三大お賽銭収入を誇る某神社、某大社、某稲荷から宮内庁と内閣に苦情と質問が相次いだ。
その状況に業を煮やした日本国政府は、歩み寄りの姿勢とは逆に島根県が望む共同事業や郵貯、年金、健康保険、JR、高速道路、国道等の使用権に圧力をかけてきた。11月30日の時点で、各マスコミは「出雲の乱、いよいよ全面戦争か!」との見出しが躍った。
政府は、更に「島根と同様の動きを他の道府県が行った場合には、島根と同様の扱いとし、年度末の臨時国会で地方交付税の大幅な削減または撤廃を行う」と脅しを打ってきた。
予想を超える島根県と日本国政府との激突に、山口県も山陰連邦として島根県に同調の意を示した。山口県はかつての吉田松陰率いる松下村塾出身で幕府討伐を成しえた「長州藩士の末裔の血が騒ぐ」と、「日本国を支えてきたのは、山口県民(長州人)だ」、「卑弥呼の墓は長門にある」、「福岡と広島の間は辛い」と独自の観点から、山口県知事は、島根県の動向に賛同した。
鳥取は、独自に岡山併合工作、福井併合策に奔走するものも、中央政府から、「このまま島根県と同様に、日本国中央政府に反旗を掲げるなら、青森県の「猿ヶ森砂丘」の自衛隊使用地扱いを解放し、「真の日本一の砂丘」と広報し、鳥取県が言う「日本一の砂丘」の広告を詐欺罪で告発すると予告してきた。千葉県舟橋市の未公認キャラで全国区で人気をかもす「ふなっしー」を農林水産省の参与として迎え、「日本の梨は「千葉の梨」だなっしー!」と世界に売り出し、「二十世紀梨」を「前世紀の過去の遺物化」にしてやると恫喝され、岡山、福井との連邦構想から離脱した。その背景には、選出区の有権者すら「背後から撃つ」あの男の影があった。
12月1日、島根県は、国連に対し「出雲国」の名称で独立国家としての承認を申請すると発表すると同時に、山口県からの申し出により「島根・山口連邦構想」の検討に入ったことを県民に伝えた。
山口が味方に付いたことにより関門海峡の権利を抑えた連邦準備委員である岩本はは、島根の動向に友好的な長崎、佐賀、熊本、宮崎との連携を目指すために、西日本で唯一の人口増加を維持している福岡県に特使を送った。
「福岡を首都」、「出雲連邦の都を島根」とする連邦参加の提案を行った。その内容は、「合併後の出雲連邦の首都を福岡とし「西京都」とすること」を条件提示し、九州各県の連邦参入を前提とし、実質的な経済、政治の中央になってもらえないかと低姿勢に出た。その中には、出雲にとどまる「菅原道真」は定期的に大宰府に戻すことも含まれていた。
福岡市内に東京の地名を多数使用する福岡県民は、「都」になることを支持し、「福岡県庁」を国会議事堂に、「福岡空港」を出雲国国際ハブ空港に、「アビスバ福岡」を国立競技場に、「福岡ソフトバンクホークスを侍ジャパンから分離し、単一でのWBC出場へ!」と盛り上がった。
長州藩士の末裔と八百万の神を背景に、福岡の連邦参加構想と並行して、人口減による、中央政府内での発言権減少の憂き目にあうことが予想される「佐賀」、「長崎」、「熊本」、「宮崎」への働きかけにより福岡を間に挟んで出雲連邦への合流に前向きになる。
その中、鹿児島は令和の薩長同盟として福岡を出し抜き、九州の出雲連邦併合の主導的立場を取ろうと画策してきた。その動きを察知した福岡はやむを得ず、出雲連邦参加の方向に舵を切った。そのとたんに、今までノーコンタクトだった大分も寄り付いてきた。
12月半ばまでに出雲連邦に前向きな姿勢となった九州の各県の神社の祭神に対しては、大国主命達神々の幹部が年末からの帰郷を促し、それに従う方向であることが発表された。
山口だけでなく、一気に沖縄を除く九州が連邦合流の流れになったことは、シミュレーションの中では、ほとんどされておらず、岩本たちを悩ませた。しかし九州大学が協力を申し出てくれたおかげで、大学のスーパーコンピュータを使い今までの数百倍のスピードで新連邦の経済、社会福祉、インフラ等の予算計画が出来上がった。福岡が参入することで、連邦全体での黒字化も見えてきた。如何に、今までの縦割り行政と中央集権による各県の連携が機能していなかったかがあらわになり、経済学者や経済紙は、今回の県主導による道州制の到達の理想点が今回の連邦制にあると同時に、この三十年の日本政府の地方政策を否定したと発表されると、アメリカのフォーブス紙やCNN等の海外メディアも注目してきた。
岩本たちも寝不足の毎日が続いた。12月の後半に入ると、勢いに乗る山陰九州連邦案は、四国も合併にむけた調査、シミュレーションに入った。
翌日の全国紙と朝のワイドショーは、「出雲独立」のニュース一色だった。何度もニコニコ動画とユーチューブ動画がテレビ画面に映し出された。ニコニコとユーチューブの「独立宣言」の動画は、一晩で再生回数一千万回を超えた。コメント数も十万を超えている。
大国主命は、「出雲神連合協議会」を組織し、天照大神を協議会長として、全国の各都道府県から三名ずつの評議員を各都道府県ごとに協議で選出した。あえて、現社会の人口比による議員定数設定へのアンチテーゼとして神々が独自に決めたとの事だった。神々の行うことに対しては、人間側からは特段、口を出さないことにしていたが、ともに連携しないといけないことが多数あることから、何人かの「連絡官」が双方より選ばれた。岩本もそのひとりとなった。県庁の一課長職が受けるには大きすぎる仕事であったが、徹三も選ばれているので、そこは安心した。
朝一番より、東京からの大手マスコミが島根県庁と出雲大社に詰めかけた。出雲大社では、一般の参拝客に迷惑をかけないように境内での撮影の自粛を求め、「午後から県との共同会見を県庁で行う」旨の張り紙がされたA型看板が「勢溜の大鳥居(せいたまりのおおとりい)」と「銅鳥居」と「社務所」の前に置かれているにもかかわらず、手水舎で手も洗わず、多数の社のカメラマン、音声、照明、ADを引き連れて、ディレクターとリポーターが境内を闊歩した。
(こいつらには神に対する何の尊敬や畏れはないのか…。こんな奴らが今の日本ではエリートだと…。嘆かわしいことじゃ…。)その行儀の悪さには、大国主命や素戔嗚尊だけでなく、出雲に残った多くの神々もげんなりした。
午後一時、県庁の第一会議室で独立会見が開催された。約百名の報道陣が集まった。島根県としては、石見銀山遺跡の世界遺産登録が認められた時以来の賑わいとなった。あの時は、祝福ムード一色だったが、今回は空気感が全く違う。まるで、色物を見に来た野次馬のような雑然とした雰囲気が報道陣の中にあった。まともな新聞社の政治記者も見られるが、まるでバラエティの撮影に来たかというようなふざけた会話をするスタッフが大勢目についた。
岩本の司会で会見が始まった。報道陣に、A4で10枚のレジュメが配られた。無駄な質問を避けるため、まず、五分間でレジュメを読んでもらい、知事からの説明の後、質問を受けつける方式をとった。半数は真剣に読み込み、半数は薄ら笑いを浮かべ小バカにした表情で読んでいた。
午後一時五分、県知事がスクリーンに映し出されたパワーポイントをレーザーポインターで指し示しながら説明に入った。
「中央政府が推し進める「道州制」とは違った形の地方再生策の一環としての独立であり、一般的な独立国のように、関税や入国管理局を置くことはなく、EU型の地域連携経済体制と旧ソビエトのような連邦制のハイブリッドモデルを目指すことで自立を目指します。
日本からの地方交付税は受けない代わりに、所得税、消費税等はすべて県内で各市区町村に分割再分配することで財政は賄います。
郵貯の財源については、島根県民及び島根県に本社を置く、または事業所を置く企業、協同組合等の法人の貯金等の財源によって分割する方向で試案を提出します。
年金財源については、現在の被保険者の納付財源および人数シェアにより、将来的に分割を希望します。
国民健康保険は、他県で使用している者については、現状料率および点数で処理を継続し、いずれは、財源については運用も含め、島根県内で処理をするようにする予定です。続いて、鉄道および道路の・・・」
と約九十分にわたり解説が行われた。
一通りのレジュメ内容に対する説明が終わった時点で、質問状作成のための時間として二十分の小休憩を挟んだ。マスコミ各社は、本部のデスクや制作局に連絡を入れ、質問内容をそれぞれ手書きやパソコンやタブレットで作成するところと本部からのメールから打ち出すところと多岐にわたった。
時を同じくして、東京では首相と関連大臣による会見が行われていた。そちらは、多くの仕込み記者が次々と発言を行い、あたかも島根県そのものが無謀なアナーキストで、そのアナーキストが狂信的に起こしたクーデターのようなものという雰囲気になっていた。
島根での会見がそうはならなかったのは、質疑応答の席には、大国主命と神の代表として天照大神が出席したことが原因だった。まず、神であることを証明するために、いくつかの超常現象を起こして見せたのだ。窓の外の天候を自由に操り、地震を起こして見せると、それまで小バカにしていたマスコミ各社も真剣になった。
質疑応答は国営放送を皮切りに、大手新聞社、地上波民放放送局、経済紙、週刊誌等十五社で二時間半に及んだが、これといったトラブルはなく、会見は終了した。
今後のスポークスマンとして、岩本が指名され、マスコミ取材の窓口となった。電話によるアポイント取りは原則禁止とし、メールでのみの受付とした。
翌日のマスコミの取り上げ方は、島根県を熱く擁護する番組と冷ややかに批判する番組が半々だった。島根県太田市出身の宮根誠司氏が司会を務める「情報ライブミヤネ屋」は、連日島根のニュースに時間を割いていた。
新聞、テレビ等の大手メディア以上に大盛り上がりしていたのは、ネットの世界だった。軒並み、地方出身を売りにしているタレントやブロガーは、積極的に島根県の決断を推したものが多く、多くの「いいね」を獲得していたし、「#島根いらない」を拡散した東京のタレントは炎上していた。
それとは別に「#初詣どうなるの」、「#神様COMEBACK」、「#合格祈願」、「#神頼みできない」、「#神様独占」、「#次の独立県はどこ」、「#神不在」等がトレンド入りし、いろいろな論調が巻き起こっていた。
岩本の元に、21日に帰郷した神の公開を求める要望が多数届いたが、「神の個人的な意思による帰郷、滞在」の事情があることと、神社等で神が不在であることが間接的にわかることで不利益が発生することを鑑み「非公開」とHP上で通知した。
残った神たちは、おおむね島根県と島根県民に対して好印象を持っていた。かつて神々と人間が共生していたころを思い出し、永らく閉ざされていた神と人間の交流を復活させた島根県の行動を善意に捉えていた。
出雲ドームでは、十日に渡る県民との交流会の継続が決まり、神々も県民も大いに喜んだ。神の中には、参拝者がほとんどいない神社の祭神や、金儲けのための宗教法人の神社の祭神などは、「戻ったところで蔑ろ。この先戻らず、ずっと出雲に居たい。」と公言していた。その中には、年間参拝者数が百万人を超える有名神社の祭神が多数含まれていたが、島根県民はそれをむやみにSNS等で拡散することは自主的に控えていたし、神々に出雲での滞在を無理強いすることはなかった。それが結果的に、神々の「出雲滞在最高!」との評価に繋がっていくきっかけとなった。
日本政府が島根県に対して、「帰属」の要請をしないとの総理の会見があった。「独立を容認する」とは言わなかったが、実質、「日本に島根県はいらない」と言ったも同然だった。
その翌日から、全国の神社は、推薦入試を前にして、学問成就のお参りが激減、受験生や親、学校、予備校から文部科学省へクレームのデモも次々と起こった。
続いて岩本による、出雲国暫定政府としての島根県からの発表で、日本国が島根県独立に関して全くのシカトを続けていることが全国に知られることとなり、「神々の「出雲滞在承認」を1月8日までの延長する」との予告が内閣と全国のマスコミに流された。
初詣ができなくなる島根県以外の1都1道2府42県の神社と日本国民から「正月も営業している業者は、営業時間外の数時間しか参拝時間が取れない為、出雲参拝は不可能」、「去年のお札は、島根まで返しに行くなら、その交通費は国が負担するのか!」、「今のお伊勢参りは、意味がないのか?」、「えべっさんも無くなるの?」、「1908年生まれの通天閣の「ビリケンさん」は、フローレンス・プレッツデザインでカナダ生まれだから御利益は継続するのか?」、「経営の神様、代打の神様、神様仏様バース様の扱いはどうなるんだ?」等の問い合わせと、日本三大お賽銭収入を誇る某神社、某大社、某稲荷から宮内庁と内閣に苦情と質問が相次いだ。
その状況に業を煮やした日本国政府は、歩み寄りの姿勢とは逆に島根県が望む共同事業や郵貯、年金、健康保険、JR、高速道路、国道等の使用権に圧力をかけてきた。11月30日の時点で、各マスコミは「出雲の乱、いよいよ全面戦争か!」との見出しが躍った。
政府は、更に「島根と同様の動きを他の道府県が行った場合には、島根と同様の扱いとし、年度末の臨時国会で地方交付税の大幅な削減または撤廃を行う」と脅しを打ってきた。
予想を超える島根県と日本国政府との激突に、山口県も山陰連邦として島根県に同調の意を示した。山口県はかつての吉田松陰率いる松下村塾出身で幕府討伐を成しえた「長州藩士の末裔の血が騒ぐ」と、「日本国を支えてきたのは、山口県民(長州人)だ」、「卑弥呼の墓は長門にある」、「福岡と広島の間は辛い」と独自の観点から、山口県知事は、島根県の動向に賛同した。
鳥取は、独自に岡山併合工作、福井併合策に奔走するものも、中央政府から、「このまま島根県と同様に、日本国中央政府に反旗を掲げるなら、青森県の「猿ヶ森砂丘」の自衛隊使用地扱いを解放し、「真の日本一の砂丘」と広報し、鳥取県が言う「日本一の砂丘」の広告を詐欺罪で告発すると予告してきた。千葉県舟橋市の未公認キャラで全国区で人気をかもす「ふなっしー」を農林水産省の参与として迎え、「日本の梨は「千葉の梨」だなっしー!」と世界に売り出し、「二十世紀梨」を「前世紀の過去の遺物化」にしてやると恫喝され、岡山、福井との連邦構想から離脱した。その背景には、選出区の有権者すら「背後から撃つ」あの男の影があった。
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「福岡を首都」、「出雲連邦の都を島根」とする連邦参加の提案を行った。その内容は、「合併後の出雲連邦の首都を福岡とし「西京都」とすること」を条件提示し、九州各県の連邦参入を前提とし、実質的な経済、政治の中央になってもらえないかと低姿勢に出た。その中には、出雲にとどまる「菅原道真」は定期的に大宰府に戻すことも含まれていた。
福岡市内に東京の地名を多数使用する福岡県民は、「都」になることを支持し、「福岡県庁」を国会議事堂に、「福岡空港」を出雲国国際ハブ空港に、「アビスバ福岡」を国立競技場に、「福岡ソフトバンクホークスを侍ジャパンから分離し、単一でのWBC出場へ!」と盛り上がった。
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その中、鹿児島は令和の薩長同盟として福岡を出し抜き、九州の出雲連邦併合の主導的立場を取ろうと画策してきた。その動きを察知した福岡はやむを得ず、出雲連邦参加の方向に舵を切った。そのとたんに、今までノーコンタクトだった大分も寄り付いてきた。
12月半ばまでに出雲連邦に前向きな姿勢となった九州の各県の神社の祭神に対しては、大国主命達神々の幹部が年末からの帰郷を促し、それに従う方向であることが発表された。
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