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1章 ギルドでの日々
第二十三話 幕開け
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『ゴァァア!!』
全身が何かの鉱石で構築された化け物が両腕を振り回しながら襲いかかってくる。
「来るな!来るなー!!」
「くそっ!!」
EやDランクのような低ランクのギルド団員では歯が立たない。
鹿と狐の団員は奇声にも近い悲鳴をあげながら魔法を連射するが、魔獣は怯むこと無く突進してくる。
普通ではすぐに逃げる場面であるが、彼等には引くに引けない理由があった。
「早く!こっちから逃げてください!!」
彼らの背後では懸命な避難活動が行われていたのだ。一般人が列をなしてその場から退避しようとしている。
すると、
『ゴォ……』
唐突に魔獣がうずくまるようにして動きを止めたのだ。
「…なんだ…?」
鹿獣人は警戒から身体を固める。
しかし、
「…チャンスだ!行くぞ!」
狐獣人はそれを見た瞬間、得物の槍を構えてスタートを切った。
「おい!待て!!」
その瞬間、猛烈な悪寒を感じ制止をかける。
だが、それは数秒遅かった。
『ゴォ…ガァァァァア!!』
次の刹那、魔力を纏った大量の石片が彼らめがけて発射された。
「なっっ…ぐぁぁぁぁあ!」
そして、突進した狐獣人は全身にその石片を浴びた。
そのまま後ろに吹き飛ばされ、鹿獣人の足元に転がる。
「グ…ハ……」
一瞬で全身が血まみれになった。口からは短い呼吸が吐かれ、身体がビクビクと痙攣している。
致命傷だ。経験が浅い彼にもそれは見ただけでわかった。
『グゥ……』
「ヒィッ!!」
魔獣の目線がこちらに移る。
逃げろ、逃げろ!逃げろ!!
頭がひたすらそう警鐘を鳴らすが、足が凍り付いたように動けなくなってしまう。
「あ……あ…」
頭の上で拳が振り上げられる。
(終わった…)
彼の脳内が絶望一色に染まる。
その時、
「『風車』!!」
『グウッ!?』
刺すような鋭い声と共に、弾丸のような速度で風の塊が魔獣を撃ち抜いた。
「…格上の敵の気を引く…よくやってのけたな。」
「シアン上官!」
両手に逆手持ちでクリスタルナイフを構えるシアンがそう声をかける。
『ガァァア!!!』
「危ない!」
その真後ろに迫った魔獣が強烈なパンチを放つ。
しかし、
ブォン!
『ガッ!?』
拳を振るった場所にはシアンの残像だけが残されていた。
「力と固さはあるが速度はまだまだだな。」
今度はシアンが魔獣の背後をとる。
「散れ。『断ち風』!!」
その声と共に、ものすごい速度で風を纏った刃を振り抜く。
スパン!
そして、その時刃はいとも簡単に魔獣の身体を真っ二つにしてしまった。
『ガ…』
そのまま魔獣は動かぬ鉱石の塊と化した。
「…ここは私に任せてそいつを連れて逃げろ。まだ息があるみたいだからな。」
活動停止を確認したシアンは、倒れた狐獣人を一瞥して呟く。
「はっ…はい!」
鹿獣人は狐獣人を担ぎ走り去っていった。
「…さて、この量は少し骨が折れるな」
シアンはゆっくりと振り向き、うごめく数々の魔獣と対峙する。
すると、
「シアン!」
そんな声が聞こえたと思うと、魔力で浮いたサーフボードに乗っているオッターが姿を現した。
「オッターか。」
「流石にこの量はお前でもキツイだろ!手を貸すぜ!」
そう言いながら両手に魔力を纏わせる。
「よし。後ろではまだ避難が続いている。決してここを突破させるなよ。」
「そんなんわかってるって!さっさと片付けるぞ!」
そして、マリンシアギルドの最高戦力の一角達は魔獣の群れに猛進した。
◇◆◇◆
「まったく…せっかくの祭りがこんなんになるとはのう…」
魔獣達が暴れ、ボロボロになった街の中を1人の老人…ルーフ達の師匠である翡翠元十郎が細い路地を歩いていた。
口に食べきった団子の串をくわえ、よたよたと歩いている。
マリンシアギルド本部へ向かおうと角を曲がり大通りに出る。
すると、
「『グラン・ブレイド』!!」
「『雷刃』!!」
『グウッ!』
そこではブラン達が魔獣の対処に追われていた。
元十郎がそれを眺めていると、
「…おじいさん?何やってるんです!?」
フータがそれに気付き駆け寄る。
「ここは危険です!早く逃げてください!!」
そう言って彼に逃げるよう促す。
しかし、
「なぁに。心配するでない。ワシを誰だと思っとるんじゃ?」
「…はい?」
予想しなかった返答に思わず声が出てしまう。
「フータ!なにやってんだ!」
その声に反応したブランが怒鳴る。
「いや…それが…」
フータがわけを説明しようとする。
次の瞬間、
『ゴォオ!!』
「なっ!?」
フータの背後から魔獣の拳が襲いかかってきた。
「しまっ…」
フータは魔力を溜めるが間に合わない。
そのまま岩の拳がフータの背骨をとらえようとした瞬間、
「少年、捕まれぃ!」
「へっ!?」
元十郎がフータの腕を掴む。
そして、
「ほっと!」
フーアを抱えたまま宙返りでその一撃をかわしたのだ。
「これでも食らっとけぃ。」
さらに、そう言って口から団子の串を飛ばす。
『ガァァア!』
その串は木製にかかわらず、魔獣の目に突き刺さった。魔獣はのけぞり膝をつく。
(何が…起きたの…?)
フータは突然の出来事に呆然としてしまった。
「お主、何か切れる物持っとらんか?」
そんなフータに元十郎が声をかける。
「え……切れる物…これで良ければ…」
そう言ってフータはギルドから支給されたナイフを渡す。
「うむ。十分じゃな。」
そう呟いた次の瞬間、
「腹ごなしの運動を始めようかのう。」
その声と共に、目にも止まらぬ早さで魔獣の懐へと突進した。
そして、
スパン!
『ガ?』
たった一降りで目の前の魔獣を両断した。
「さっさと終わらせるぞい。」
そこからの猛攻は、圧巻の一言に尽きるものであった。
『ギッ!』
『グッ!』
『ガッ!』
ブラン達が1体を相手にしただけでも苦戦した魔獣が、まるで豆腐のようにいとも簡単に切り捨てられていく。
「フータ…お前ナイフになんかしたのか?」
「いや…なんにもしてない…」
「すごいな…」
3人は元十郎の剣舞に魅入ってしまう。
そして、
「お主で最後じゃな…」
元十郎が最後の1体をに切っ先を向ける。
そして、猛進しようと姿勢を低くしたその時、
ゴキッ!
「はうぁ!」
元十郎が情けない声を上げ膝から崩れ落ちたのだ。
「…なんだ?」
ブランが怪訝そうな目線を送る。
「こ…腰が…」
元十郎は身体をプルプルと震えさせながら蚊の鳴くような声でそう言った。
『ゴォォォオ!!』
すると、魔獣がその隙を逃がさんとばかりに拳を振り上げた。
「ヤバイ!!」
すぐさま動き出したのはライトだった。
身体に電気を纏うと、電光石火の早さで魔獣へと飛んでいく。
「『飛雷脚』!!」
強力な電力を纏った足が魔獣の拳に突き刺さる。
『グオッ!?』
その一撃は魔獣の拳を弾き返した。
「ブラン!」
「わかってる!」
そして一瞬のけ反った魔獣の懐へブランが飛び込む。
「『フォルス・ブロウ』!!」
振るった戦槌が魔獣の身体の中心に叩き込まれた。
そのまま魔獣は大きく後ろへと飛ばされる。
その時、
「『ゴォォォ…』」
魔獣が前傾姿勢になり動きを止める。
「兄さん達!来るよ!!」
フータは次に来る魔法攻撃に気付き2人に警鐘を鳴らした。
「兄さん!1体をだけならアレが使える!」
「あぁ!」
そして、すぐに後退したライトにフータが声をかけると、ライトがフータの背中に両手をかざす。
「『パラライズ・ウェアー』!」
すると、彼の電気魔力がフータに流れ込んだ。
「『逆流する風の陣よ、剛の力を絡めとり、柔に返し滅却せん!』」
それを確認したフータが素早く詠唱する。
『ゴォ…アァア!!』
次の刹那、魔獣から解き放たれた魔力が石片と共にフータを襲う。
だが、それがフータに着弾することはなかった。
「『風陣・逆巻き』!!」
フータを中心に雷を纏った渦が出現する。
「はぁぁあ!」
両手を突きだし力を込めると、渦が石片を絡めとり巻き込んでいく。
「君の攻撃…全部返すよ!!」
そう言ってフータは両腕を広げ渦を解放した。
そこから電撃と風の刃を纏った石片が術の主へと返っていく。
『ゴァァァァア!!!』
強化された自らの術に魔獣は叫び声を上げる。
『ゴ…オ…』
そして、全身から煙を上げその機能を永遠に止めたのだ。
「止まった…」
「はぁ…はぁ…やっと終わった…」
フータ達はその場でゼェゼェと肩で息をする。
「…おーいじいさん大丈夫か?」
その傍らでブランは寝そべる元十郎に声をかけていた。
「…老体に鞭打つのはやはりキツイのう…」
それを見たライトとフータもその側に駆け寄った。
「元十郎さん、助かりましたよ。早く避難しましょう。」
そう言いながらライトが肩を貸す。
「兄さん知ってる人なの?」
「後で話すさ。取り敢えずここから離れるぞ。」
そのままライトがゆっくりと歩き出す。
「しっかし…こんなじいさんが強いなんて世界は広いな。」
「こんなとはなんじゃ若造め!」
「んだとぉ!?」
少し言い争いをしながら、歴戦の老兵と若い精鋭達は戦場を後にした。
◇◆◇◆
「『パワーナックル』!!」
「『翡翠流技・霞斬り』!!」
「『花炎・鳳仙火』!!」
その頃、ルーフ達は依然魔獣達に手を焼いていた。
「いい加減倒れろ!!」
ルーフが叫びながら拳を連打する。彼の口の中には鉄の味が広がっていた。
戦いが始まってから既に1時間以上経っている。彼等の回りの店は無惨な姿になり、原型を保っている物はほとんどなかった。舗装された地面も所々にヒビが入ってしまっている。
「ハァ…ハァ…」
「くそっ…」
ルナと海外も体力の限界を迎えていた。
だが、彼等の回りに散らばる石片が表しているように、残りの魔獣の数は減り残り数体となっていた。
「あともう少しや!押しきるで!」
海斗が刀を掲げいきりたつ。
その時であった。
ビリッ!
「ツッ!?」
ルナが急に頭を抱える。
「ルナ!?」
ルーフがルナの異常に気付く。
「…すごい魔力が…上から…」
ルナは震えながら指を空に向る。
「上……ってあれ!?」
「まさか…」
空を見上げたルーフと海斗の顔色が真っ青になる。
空には新たな魔方陣がまばゆい光を放っていた。
数は1つだけだが、それが放つ魔力は他のものに比べて段違いであった。
そして、
ドォォォン!!
「うわぁぁあ!」
「ぐうっ!?」
「キャァァァア!!」
彼等の目の前に、紫色の太い光が降り注いだ。
「……ここがマリンシアですか…」
立ち込める土煙の中から微かに声が聞こえる。
「ターゲットも見つけましたし速やかに終わらせましょう。」
『ゴォォォア!!!』
土煙が晴れると、そこには他の魔獣よりも一回り大きく、身体の中心の魔方陣の真ん中に“D”の文字が不気味な光を放つ魔獣がいた。その肩には慎重が100cmあるのか怪しいような身長で、口の上に髭を蓄えたフェネックの男がいる。
「ツッ…何者や!?」
その姿に海斗が叫ぶ。
「ほぉ…人に名前を聞くときは自分から名乗るのですよ?…まぁいいです。貴方達のデータはありますからね。」
そう呟くと彼の口がゆっくりと動き出す。
「私は『デウス団』の幹部…ゼルグイと申します。」
「デウス団やって!?」
海斗の顔が驚愕に染まる。
「知ってるの?」
「あぁ……最近になって判明した違法魔術具の流通元の1つの組織や…。噂では魔獣の研究もしとると聞いたが…本当やったみたいやな…。」
海斗の頬を脂汗が伝う。
「……そんな組織のやつが何でこんなことするのよ!」
ルナがゼルグイに噛みつかんばかりの剣幕で迫る。
「目的は1つですよ…」
そしてゆっくりとルーフの方へ目をやる。
「私は貴方に用があります。抵抗せずに大人しく着いてきてください。」
「なに?」
彼の言葉にルーフは困惑する。
「貴方の力を私達の組織は欲しています。我らが“理想郷”のためにね…」
そう言って魔獣の肩から降りるとゆっくりとルーフに手を伸ばす。
「ツッ…どういうことだよ!?」
目的のわからない誘いにルーフは警戒心を剥き出しにした。
「……では少しお話をしますかね…」
セルグイがルーフを見つめながら話し出す。
「貴方は『キカイシン』の神話を知っていますか?」
「なっ!?」
彼の口からは出てきた言葉はルーフに強い衝撃を与えた。
キカイシンはルーフが人間界に戻るための鍵である。故に唐突に出てきたその名にルーフは動揺を隠せなくなる。
「簡単に言いますと『キカイシン』を呼び出すのに貴方が必要なんですよ…。」
「…呼び出してどうするつもりなんや?」
「それはさっき言ったでしょう?私達の“理想郷”創造のためです。…とにかく、」
ゼルグイがルーフを見つめる。
「貴方がいればこの世界はより良くなります。私と共に来てください。」
しかし、
「…断る!」
ルーフは即答する。
「そんな訳わかんない話に乗るわけないだろ!?それに俺は犯罪組織に肩を貸すこともしない!」
彼は強い言葉でゼルグイを睨み付けた。
「…そうですか…」
するとゼルグイがゆっくりと片手を上げる。
「なら、力ずくでいきましょう!」
『ゴァァァァァア!!!』
その瞬間、魔獣が咆哮を上げた。
「まず貴方達は邪魔です。」
ゼルグイがルナと海斗を指す。
『ゴォッ!!』
「なっ!?」
(速い!!)
まず狙われたのは海斗だった。高速のタックルにより一瞬で距離がゼロになる。
「くっ!」
咄嗟に防御体制をとるが、その速度では間に合わない。
ドガァァァン!!!
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!」
大きな爆発音と共に海斗がまるで砲弾のような速度で壁に叩きつけられた。
「ゴハッ!」
(ヤバイ…骨が…)
海斗が激しく血を吐く。
「海斗!!」
ルナが叫ぶ。
その時、
「他人の心配してる場合ですか?」
「しまっ…」
既にルナの背後に魔獣の拳が迫っていた。
「キャァァァア!!」
そして、無情にもその拳はルナの身体の中心を捉える。
そのまま彼女は出店に叩きつけられた。出店は彼女を中心に爆発したようにバラバラになってしまう。
「グ…」
動けなくなってしまうほどの激痛に喘いでしまい、そのまま彼女の意識は闇に落ちた。
「海斗!ルナ!!」
「呆気ないものですね…」
戦慄するルーフと対照的にゼルグイは余裕の表情を浮かべる。
「さて…あとは貴方だけですよ?」
ゼルグイがどす黒い瞳をルーフに向ける。
「くそ!!」
ルーフは棍棒を構える。
「俺はお前らに力を貸したりしない!!」
ルーフは一気にスタートを切った。
「ハァァァア!!」
ハドウで青く染まった棍棒を魔獣の脳天に振り下ろす。
ドォォン!!
周りには激しい激突音が響く。
だが、
『…ゴオ?』
魔獣は一切ひるまず赤い目でルーフに視線を突き刺した。
「なにっ!?」
(今までのヤツなら今のでひるんだぞ!?)
『ゴラァ!!』
「うわっ!?」
そのまま容赦ない拳がルーフを襲う。
「ツッ!」
しかしルーフも負けじと宙返りで何とかその一撃をかわす。
『ゴォォォォォオ!!』
すると、今度は魔獣から仕掛けてきた。竜巻のようなラッシュがルーフの眼前に迫っていた。
「負けるかぁぁぁあ!!」
ルーフは棍棒を振り回しいなそうとする。
魔獣とルーフの間に激しい火花が散る。
「く…そ……」
だが力の差がありすぎる。ルーフは次第に押され後退していく。
そして、ルーフの体力よりも先に限界を迎えるものがあった。
ピシッ
ルーフの棍棒からこんな音が出始めたのだ。
『ゴォ!ゴァ!ゴラァァア!!』
段々と魔獣の打ち込みも激しくなっていく。
それにつれ棍棒からの音も大きくなっていった。
(まずい…このままじゃ!!)
だが、そう思ったときにはもう遅かった。
『ラァ!!!』
「ぐおっ!?」
ラッシュのフィニッシュが力強くねじ込まれる。
その刹那、
バキン!!!
「嘘だろ!?」
ルーフの棍棒が、粉々に砕けてしまったのだ。
「やってしまいなさい!!」
それを見たゼルグイが叫ぶ。
『グラァァァア!!!』
魔獣が拳を振るう。
防御手段を失ったルーフには防ぐ手段がない。
「ガァァア!!!」
そして、拳がルーフの身体を捉えルーフは海斗達のように地面へと吹き飛ばされた。
「ガハッ…」
腹だけではなく頭にもグワングワンと衝撃が響く。
(ヤバイ…意識が…)
「んー?まだ息ありますよねぇ?今死なれると困るのでね…」
ゼルグイがルーフの顔を覗き込む。
「さぁ、任務完了です。プラチナゴーレム、ターゲットを運んでください。」
呼ばれたゴーレムが大きな腕を伸ばしてくる。
(…ダメだ…身体が動かない…)
ルーフは意識を繋ごうとするが、次第に瞼が降りてくきてしまう。
(ちく……しょう…)
巨大な手のひらが視界を満たす。
その時であった。
「お前ら!!」
そんな声が意識が混濁するルーフの耳に届いた。
「…誰です!?」
ゼルグイが振り向く。
そこにいたのは、
「……お前…アタシの店の常連になにやってんだ?」
鬼の形相をしたイサベルであった。
「イサベル…さん…?」
「ルーフ!」
イサベルはルーフに駆け寄る。
「イサベルさん…危ない…逃げて…」
彼はかすれた声でイサベルに警鐘をならす。
しかし、
「こんなになっても他人の心配すんのか…まぁいい。ここは任せて寝てろ。」
イサベルは優しい声でそう言った。
非戦闘員であるイサベルではここは切り抜けられない。ルーフはそう確信していたが、何故かその声に安心感を覚えてしまう。
そして、彼の意識の糸が切れた。
「…さてと…」
それを確認したイサベルが立ち上がり周りを見渡す。
彼女の視界には壊された数々の店と散らばりグシャグシャになった料理や食材が写る。
「アンタ…食べ物の恨みは恐ろしいって知ってるか?」
「はい?」
そして、
「…アンタはアタシの逆鱗に触れた…。」
「ツッ!?」
絶対零度の視線がゼルグイを射抜いた。
(何ですかこの圧…こんな獣人がいたとは…)
ゼルグイの身体を冷や汗が伝う。
だが、
「そんなもの知りませんよ!邪魔をするなら容赦しません!」
『『ゴォォ!』』
その声と共に残っていた内の2体の魔獣を突進させる。
「フゥ……」
すると、イサベルは深く息を吐くと拳を引く。
次の瞬間、
「ハァァァア!!!」
イサベルの拳が、爆発した。
『『ガァァァァァァア!!!!』』
その拳は、2体の魔獣を貫く。
そして魔獣一瞬で瓦礫と化してしまった。
「は?」
ゼルグイの表情が消える。
「アンタら邪魔くさいよ!!」
爆発する炎を纏った拳が魔獣を次々と破壊していく。
その様子はまさに一方的。虐殺に他ならなかった。
(何ですかこれは…)
ゼルグイは目の前の光景が信じられないと目をパチクリさせる。
「…なんだ、つまんないな。」
最後の1体の顔に拳をねじ込むと、そう呟きながらプラチナゴーレムに目をやる。
(なんなんだコイツは!!)
「キッ…キサマ!!何者なんだ!!」
ゼルグイが悲鳴に近い叫びをあげる。
「何者か…か…」
イサベルは少し考え込む。
そして、
「アタシはカフェの店長だ!!」
そんな言葉をゼルグイにぶつけた。
(カフェの店長!?どうしてそんな者がこんな力を持っているのだ!!)
それは更にゼルグイの頭を混乱させる。
「くそっ!プラチナゴーレム!!やってしまいなさい!!」
ゼルグイは自棄になりながら指示を飛ばす。
『ゴラァァア!!』
イサベルの頭上に拳が振り下ろされる。
だが、
パァン!!
「ん?思ったより軽いな?」
「んなぁ!?」
その拳は片手で軽々と止められてしまった。
「飯食ってないヤツの力なんてたかが知れてる。」
『ゴ…オ…』
ゴーレムは拳を引こうとするが、イサベルの握力がそれを許さない。
「いいか?パンチってのはな…」
イサベルの左手に炎が集まる。
「こうやって打つんだよ!!」
ドォォォン!!
『ゴァァァァア!!』
業火を纏った拳はいとも簡単にゴーレムの巨体を吹き飛ばした。
『グウ…ラァ!』
しかし、すぐに体勢を整えると巨石を魔法でいくつも飛ばしてきた。
「ハン!いいじゃないか!“調理”のしがいがある!!」
そう言いながらイサベルは指先に力を込める。
「『グリルファイア』!!」
そして、指を鳴らすと巨大な火玉が放たれた。
それは飛ばされた巨石を一瞬で飲み込んだ。
「…な…」
もうゼルグイは声も出なかった。
先程まで勢い良く飛んでいた巨石は全て灰となっていた。
「ほらほらどうした!?」
イサベルは指を鳴らし続けありったけの炎を撃ち込む。
『ゴ…ガ…』
両手で顔と身体を守るが、次第にそれも意味を成さなくなる。両手が少しずつ溶けていったのだ。
「それじゃあトドメといこうか!!」
それを確認したイサベルがそう叫ぶと、彼女は指を鳴らすのをやめ両手を地面についた。
「中まで火を入れてやるよ!」
すると、手をついた所から火柱が上がり、それがゴーレムを囲むように噴き出していく。
『ゴ…』
先程の攻撃で両腕が溶けてしまったゴーレムた抵抗する力は残っていなかった。
「ハァァ…」
段々と炎が広がると、ゴーレムは炎の檻に囚われてしまった。
「派手に燃えな!『スカーレット・オーブン!!』」
ゴォォォォォォ!!
『ガァァァァァァァァア!!!』
深紅の極炎がゴーレムを包み激しく焼く。
『ゴ…』
激しい炎の中で、次第にゴーレムが灰になるのが見えた。
「な………」
「フゥ…」
絶句するゼルグイにイサベルが歩み寄る。
「アンタらがなに企んでんのか知らないが…アタシの常連に手を出そうってもんなら許さないよ!!」
「クッ!?」
そして、溢れんばかりの圧でゼルグイを威嚇した。
しかし、
「くそっ!!」
ボン!!
「ツッ!?」
唐突にイサベルの視界が白に染まる。
ゼルグイが煙玉を投げたのだ。
「このっ!」
イサベルは腕を振り回し煙幕を晴らす。
だが、
「逃がしたか…」
目の前にいたはずのゼルグイの姿はどこにも見えなかった。
デラフィエスで盛り上がるマリンシアを突如として襲った災害は、この戦闘を最後に幕を閉じた。
◇◆◇◆
その日の夜、
ギルド本部にあるミーティングルーム、そこでオッターは椅子に座りとある来訪者を待っていた。
部屋の中心にある机には、マリンシアの街の地図が広げれられている。
すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
オッターが扉のむこうの人物にそう声をかける。
ゆっくりと扉が開くと、
「失礼するぞ」
イサベルの姿がそこにあった。
「すみません…急にこんなこと頼んで…」
オッターが頭を下げる。
「気にするな。街のために協力するのは当たり前だからな。」
それにイサベルは優しい声でそう返した。
「ほら、頼まれてたやつだ。」
そしてオッターに数枚の資料を渡す。
そこには、イサベルが戦った魔獣の詳細が事細かに書かれていた。
「今回アタシが戦った魔獣は完全に新種だ。今まであんなの見たことがなかったからな。そのデウス団ってヤツらがなんらかの魔獣の研究をしている可能性は高いな。」
「やはり…」
イサベルの報告書を見ながらオッターは思考を巡らせる。
「今回の犯人の目的はなんだったのでしょうか…?」
オッターが聞く。
「さぁな。ただデウス団のヤツがルーフ達の班の前にのみ姿を現したと考えると…あいつらに用があったのかもな。」
「彼らに…ですか…」
そのルーフ達は現在病室のベットで寝ている。幸いにも全員の命に別状はなかった。
「わかりました。目を覚ましたら聞いてみます。」
「おう。ただあいつらも疲れてるみたいだから無理はさせるなよ。」
そう言うとイサベルは扉に手をかける。
「…取り敢えず頼まれたことはやったからな。あとはそっちでなんとかしてくれ。」
そのまま彼女は部屋を出ようとする。
その時、
「…こっちに戻る気はないんですか?“先輩”。」
オッターがイサベルの背中にそう声を投げかけた。
「なに?」
イサベルが動きを止め、振り返り怪訝そうな視線を向ける。
「今のギルドには少しでも強力な力が必要です。今回の事件や白の大陸での戦争のようなことがマリンシアで今後起こらないとは言えませんし…」
そして、いつにもなく真剣な目付きになりイサベルを見つめる。
「もう一度、ギルドで活動をする気はないのですか?」
だが、それに返ってきたのは
「ツッ!」
オッターを縮み込ませるような強烈な殺気だった。
「…何度も言ったが私はもうそちら側にはならない。」
その声はいつもの快活な声とは正反対の、聞く者を凍てつかせるような迫力があるようなものであった。
「……すいません。」
オッターはその迫力に押されうつむいてしまう。
「…そういうことだ。あとは頑張れよ。」
その声を最後に、ミーティングルームの扉は静かに閉ざされた。
「…先輩…」
オッターはうつむいたままそう呟く。
彼には、今閉ざされた扉がイサベルとギルドの間を隔てる開かずの扉に見えていた。
全身が何かの鉱石で構築された化け物が両腕を振り回しながら襲いかかってくる。
「来るな!来るなー!!」
「くそっ!!」
EやDランクのような低ランクのギルド団員では歯が立たない。
鹿と狐の団員は奇声にも近い悲鳴をあげながら魔法を連射するが、魔獣は怯むこと無く突進してくる。
普通ではすぐに逃げる場面であるが、彼等には引くに引けない理由があった。
「早く!こっちから逃げてください!!」
彼らの背後では懸命な避難活動が行われていたのだ。一般人が列をなしてその場から退避しようとしている。
すると、
『ゴォ……』
唐突に魔獣がうずくまるようにして動きを止めたのだ。
「…なんだ…?」
鹿獣人は警戒から身体を固める。
しかし、
「…チャンスだ!行くぞ!」
狐獣人はそれを見た瞬間、得物の槍を構えてスタートを切った。
「おい!待て!!」
その瞬間、猛烈な悪寒を感じ制止をかける。
だが、それは数秒遅かった。
『ゴォ…ガァァァァア!!』
次の刹那、魔力を纏った大量の石片が彼らめがけて発射された。
「なっっ…ぐぁぁぁぁあ!」
そして、突進した狐獣人は全身にその石片を浴びた。
そのまま後ろに吹き飛ばされ、鹿獣人の足元に転がる。
「グ…ハ……」
一瞬で全身が血まみれになった。口からは短い呼吸が吐かれ、身体がビクビクと痙攣している。
致命傷だ。経験が浅い彼にもそれは見ただけでわかった。
『グゥ……』
「ヒィッ!!」
魔獣の目線がこちらに移る。
逃げろ、逃げろ!逃げろ!!
頭がひたすらそう警鐘を鳴らすが、足が凍り付いたように動けなくなってしまう。
「あ……あ…」
頭の上で拳が振り上げられる。
(終わった…)
彼の脳内が絶望一色に染まる。
その時、
「『風車』!!」
『グウッ!?』
刺すような鋭い声と共に、弾丸のような速度で風の塊が魔獣を撃ち抜いた。
「…格上の敵の気を引く…よくやってのけたな。」
「シアン上官!」
両手に逆手持ちでクリスタルナイフを構えるシアンがそう声をかける。
『ガァァア!!!』
「危ない!」
その真後ろに迫った魔獣が強烈なパンチを放つ。
しかし、
ブォン!
『ガッ!?』
拳を振るった場所にはシアンの残像だけが残されていた。
「力と固さはあるが速度はまだまだだな。」
今度はシアンが魔獣の背後をとる。
「散れ。『断ち風』!!」
その声と共に、ものすごい速度で風を纏った刃を振り抜く。
スパン!
そして、その時刃はいとも簡単に魔獣の身体を真っ二つにしてしまった。
『ガ…』
そのまま魔獣は動かぬ鉱石の塊と化した。
「…ここは私に任せてそいつを連れて逃げろ。まだ息があるみたいだからな。」
活動停止を確認したシアンは、倒れた狐獣人を一瞥して呟く。
「はっ…はい!」
鹿獣人は狐獣人を担ぎ走り去っていった。
「…さて、この量は少し骨が折れるな」
シアンはゆっくりと振り向き、うごめく数々の魔獣と対峙する。
すると、
「シアン!」
そんな声が聞こえたと思うと、魔力で浮いたサーフボードに乗っているオッターが姿を現した。
「オッターか。」
「流石にこの量はお前でもキツイだろ!手を貸すぜ!」
そう言いながら両手に魔力を纏わせる。
「よし。後ろではまだ避難が続いている。決してここを突破させるなよ。」
「そんなんわかってるって!さっさと片付けるぞ!」
そして、マリンシアギルドの最高戦力の一角達は魔獣の群れに猛進した。
◇◆◇◆
「まったく…せっかくの祭りがこんなんになるとはのう…」
魔獣達が暴れ、ボロボロになった街の中を1人の老人…ルーフ達の師匠である翡翠元十郎が細い路地を歩いていた。
口に食べきった団子の串をくわえ、よたよたと歩いている。
マリンシアギルド本部へ向かおうと角を曲がり大通りに出る。
すると、
「『グラン・ブレイド』!!」
「『雷刃』!!」
『グウッ!』
そこではブラン達が魔獣の対処に追われていた。
元十郎がそれを眺めていると、
「…おじいさん?何やってるんです!?」
フータがそれに気付き駆け寄る。
「ここは危険です!早く逃げてください!!」
そう言って彼に逃げるよう促す。
しかし、
「なぁに。心配するでない。ワシを誰だと思っとるんじゃ?」
「…はい?」
予想しなかった返答に思わず声が出てしまう。
「フータ!なにやってんだ!」
その声に反応したブランが怒鳴る。
「いや…それが…」
フータがわけを説明しようとする。
次の瞬間、
『ゴォオ!!』
「なっ!?」
フータの背後から魔獣の拳が襲いかかってきた。
「しまっ…」
フータは魔力を溜めるが間に合わない。
そのまま岩の拳がフータの背骨をとらえようとした瞬間、
「少年、捕まれぃ!」
「へっ!?」
元十郎がフータの腕を掴む。
そして、
「ほっと!」
フーアを抱えたまま宙返りでその一撃をかわしたのだ。
「これでも食らっとけぃ。」
さらに、そう言って口から団子の串を飛ばす。
『ガァァア!』
その串は木製にかかわらず、魔獣の目に突き刺さった。魔獣はのけぞり膝をつく。
(何が…起きたの…?)
フータは突然の出来事に呆然としてしまった。
「お主、何か切れる物持っとらんか?」
そんなフータに元十郎が声をかける。
「え……切れる物…これで良ければ…」
そう言ってフータはギルドから支給されたナイフを渡す。
「うむ。十分じゃな。」
そう呟いた次の瞬間、
「腹ごなしの運動を始めようかのう。」
その声と共に、目にも止まらぬ早さで魔獣の懐へと突進した。
そして、
スパン!
『ガ?』
たった一降りで目の前の魔獣を両断した。
「さっさと終わらせるぞい。」
そこからの猛攻は、圧巻の一言に尽きるものであった。
『ギッ!』
『グッ!』
『ガッ!』
ブラン達が1体を相手にしただけでも苦戦した魔獣が、まるで豆腐のようにいとも簡単に切り捨てられていく。
「フータ…お前ナイフになんかしたのか?」
「いや…なんにもしてない…」
「すごいな…」
3人は元十郎の剣舞に魅入ってしまう。
そして、
「お主で最後じゃな…」
元十郎が最後の1体をに切っ先を向ける。
そして、猛進しようと姿勢を低くしたその時、
ゴキッ!
「はうぁ!」
元十郎が情けない声を上げ膝から崩れ落ちたのだ。
「…なんだ?」
ブランが怪訝そうな目線を送る。
「こ…腰が…」
元十郎は身体をプルプルと震えさせながら蚊の鳴くような声でそう言った。
『ゴォォォオ!!』
すると、魔獣がその隙を逃がさんとばかりに拳を振り上げた。
「ヤバイ!!」
すぐさま動き出したのはライトだった。
身体に電気を纏うと、電光石火の早さで魔獣へと飛んでいく。
「『飛雷脚』!!」
強力な電力を纏った足が魔獣の拳に突き刺さる。
『グオッ!?』
その一撃は魔獣の拳を弾き返した。
「ブラン!」
「わかってる!」
そして一瞬のけ反った魔獣の懐へブランが飛び込む。
「『フォルス・ブロウ』!!」
振るった戦槌が魔獣の身体の中心に叩き込まれた。
そのまま魔獣は大きく後ろへと飛ばされる。
その時、
「『ゴォォォ…』」
魔獣が前傾姿勢になり動きを止める。
「兄さん達!来るよ!!」
フータは次に来る魔法攻撃に気付き2人に警鐘を鳴らした。
「兄さん!1体をだけならアレが使える!」
「あぁ!」
そして、すぐに後退したライトにフータが声をかけると、ライトがフータの背中に両手をかざす。
「『パラライズ・ウェアー』!」
すると、彼の電気魔力がフータに流れ込んだ。
「『逆流する風の陣よ、剛の力を絡めとり、柔に返し滅却せん!』」
それを確認したフータが素早く詠唱する。
『ゴォ…アァア!!』
次の刹那、魔獣から解き放たれた魔力が石片と共にフータを襲う。
だが、それがフータに着弾することはなかった。
「『風陣・逆巻き』!!」
フータを中心に雷を纏った渦が出現する。
「はぁぁあ!」
両手を突きだし力を込めると、渦が石片を絡めとり巻き込んでいく。
「君の攻撃…全部返すよ!!」
そう言ってフータは両腕を広げ渦を解放した。
そこから電撃と風の刃を纏った石片が術の主へと返っていく。
『ゴァァァァア!!!』
強化された自らの術に魔獣は叫び声を上げる。
『ゴ…オ…』
そして、全身から煙を上げその機能を永遠に止めたのだ。
「止まった…」
「はぁ…はぁ…やっと終わった…」
フータ達はその場でゼェゼェと肩で息をする。
「…おーいじいさん大丈夫か?」
その傍らでブランは寝そべる元十郎に声をかけていた。
「…老体に鞭打つのはやはりキツイのう…」
それを見たライトとフータもその側に駆け寄った。
「元十郎さん、助かりましたよ。早く避難しましょう。」
そう言いながらライトが肩を貸す。
「兄さん知ってる人なの?」
「後で話すさ。取り敢えずここから離れるぞ。」
そのままライトがゆっくりと歩き出す。
「しっかし…こんなじいさんが強いなんて世界は広いな。」
「こんなとはなんじゃ若造め!」
「んだとぉ!?」
少し言い争いをしながら、歴戦の老兵と若い精鋭達は戦場を後にした。
◇◆◇◆
「『パワーナックル』!!」
「『翡翠流技・霞斬り』!!」
「『花炎・鳳仙火』!!」
その頃、ルーフ達は依然魔獣達に手を焼いていた。
「いい加減倒れろ!!」
ルーフが叫びながら拳を連打する。彼の口の中には鉄の味が広がっていた。
戦いが始まってから既に1時間以上経っている。彼等の回りの店は無惨な姿になり、原型を保っている物はほとんどなかった。舗装された地面も所々にヒビが入ってしまっている。
「ハァ…ハァ…」
「くそっ…」
ルナと海外も体力の限界を迎えていた。
だが、彼等の回りに散らばる石片が表しているように、残りの魔獣の数は減り残り数体となっていた。
「あともう少しや!押しきるで!」
海斗が刀を掲げいきりたつ。
その時であった。
ビリッ!
「ツッ!?」
ルナが急に頭を抱える。
「ルナ!?」
ルーフがルナの異常に気付く。
「…すごい魔力が…上から…」
ルナは震えながら指を空に向る。
「上……ってあれ!?」
「まさか…」
空を見上げたルーフと海斗の顔色が真っ青になる。
空には新たな魔方陣がまばゆい光を放っていた。
数は1つだけだが、それが放つ魔力は他のものに比べて段違いであった。
そして、
ドォォォン!!
「うわぁぁあ!」
「ぐうっ!?」
「キャァァァア!!」
彼等の目の前に、紫色の太い光が降り注いだ。
「……ここがマリンシアですか…」
立ち込める土煙の中から微かに声が聞こえる。
「ターゲットも見つけましたし速やかに終わらせましょう。」
『ゴォォォア!!!』
土煙が晴れると、そこには他の魔獣よりも一回り大きく、身体の中心の魔方陣の真ん中に“D”の文字が不気味な光を放つ魔獣がいた。その肩には慎重が100cmあるのか怪しいような身長で、口の上に髭を蓄えたフェネックの男がいる。
「ツッ…何者や!?」
その姿に海斗が叫ぶ。
「ほぉ…人に名前を聞くときは自分から名乗るのですよ?…まぁいいです。貴方達のデータはありますからね。」
そう呟くと彼の口がゆっくりと動き出す。
「私は『デウス団』の幹部…ゼルグイと申します。」
「デウス団やって!?」
海斗の顔が驚愕に染まる。
「知ってるの?」
「あぁ……最近になって判明した違法魔術具の流通元の1つの組織や…。噂では魔獣の研究もしとると聞いたが…本当やったみたいやな…。」
海斗の頬を脂汗が伝う。
「……そんな組織のやつが何でこんなことするのよ!」
ルナがゼルグイに噛みつかんばかりの剣幕で迫る。
「目的は1つですよ…」
そしてゆっくりとルーフの方へ目をやる。
「私は貴方に用があります。抵抗せずに大人しく着いてきてください。」
「なに?」
彼の言葉にルーフは困惑する。
「貴方の力を私達の組織は欲しています。我らが“理想郷”のためにね…」
そう言って魔獣の肩から降りるとゆっくりとルーフに手を伸ばす。
「ツッ…どういうことだよ!?」
目的のわからない誘いにルーフは警戒心を剥き出しにした。
「……では少しお話をしますかね…」
セルグイがルーフを見つめながら話し出す。
「貴方は『キカイシン』の神話を知っていますか?」
「なっ!?」
彼の口からは出てきた言葉はルーフに強い衝撃を与えた。
キカイシンはルーフが人間界に戻るための鍵である。故に唐突に出てきたその名にルーフは動揺を隠せなくなる。
「簡単に言いますと『キカイシン』を呼び出すのに貴方が必要なんですよ…。」
「…呼び出してどうするつもりなんや?」
「それはさっき言ったでしょう?私達の“理想郷”創造のためです。…とにかく、」
ゼルグイがルーフを見つめる。
「貴方がいればこの世界はより良くなります。私と共に来てください。」
しかし、
「…断る!」
ルーフは即答する。
「そんな訳わかんない話に乗るわけないだろ!?それに俺は犯罪組織に肩を貸すこともしない!」
彼は強い言葉でゼルグイを睨み付けた。
「…そうですか…」
するとゼルグイがゆっくりと片手を上げる。
「なら、力ずくでいきましょう!」
『ゴァァァァァア!!!』
その瞬間、魔獣が咆哮を上げた。
「まず貴方達は邪魔です。」
ゼルグイがルナと海斗を指す。
『ゴォッ!!』
「なっ!?」
(速い!!)
まず狙われたのは海斗だった。高速のタックルにより一瞬で距離がゼロになる。
「くっ!」
咄嗟に防御体制をとるが、その速度では間に合わない。
ドガァァァン!!!
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!」
大きな爆発音と共に海斗がまるで砲弾のような速度で壁に叩きつけられた。
「ゴハッ!」
(ヤバイ…骨が…)
海斗が激しく血を吐く。
「海斗!!」
ルナが叫ぶ。
その時、
「他人の心配してる場合ですか?」
「しまっ…」
既にルナの背後に魔獣の拳が迫っていた。
「キャァァァア!!」
そして、無情にもその拳はルナの身体の中心を捉える。
そのまま彼女は出店に叩きつけられた。出店は彼女を中心に爆発したようにバラバラになってしまう。
「グ…」
動けなくなってしまうほどの激痛に喘いでしまい、そのまま彼女の意識は闇に落ちた。
「海斗!ルナ!!」
「呆気ないものですね…」
戦慄するルーフと対照的にゼルグイは余裕の表情を浮かべる。
「さて…あとは貴方だけですよ?」
ゼルグイがどす黒い瞳をルーフに向ける。
「くそ!!」
ルーフは棍棒を構える。
「俺はお前らに力を貸したりしない!!」
ルーフは一気にスタートを切った。
「ハァァァア!!」
ハドウで青く染まった棍棒を魔獣の脳天に振り下ろす。
ドォォン!!
周りには激しい激突音が響く。
だが、
『…ゴオ?』
魔獣は一切ひるまず赤い目でルーフに視線を突き刺した。
「なにっ!?」
(今までのヤツなら今のでひるんだぞ!?)
『ゴラァ!!』
「うわっ!?」
そのまま容赦ない拳がルーフを襲う。
「ツッ!」
しかしルーフも負けじと宙返りで何とかその一撃をかわす。
『ゴォォォォォオ!!』
すると、今度は魔獣から仕掛けてきた。竜巻のようなラッシュがルーフの眼前に迫っていた。
「負けるかぁぁぁあ!!」
ルーフは棍棒を振り回しいなそうとする。
魔獣とルーフの間に激しい火花が散る。
「く…そ……」
だが力の差がありすぎる。ルーフは次第に押され後退していく。
そして、ルーフの体力よりも先に限界を迎えるものがあった。
ピシッ
ルーフの棍棒からこんな音が出始めたのだ。
『ゴォ!ゴァ!ゴラァァア!!』
段々と魔獣の打ち込みも激しくなっていく。
それにつれ棍棒からの音も大きくなっていった。
(まずい…このままじゃ!!)
だが、そう思ったときにはもう遅かった。
『ラァ!!!』
「ぐおっ!?」
ラッシュのフィニッシュが力強くねじ込まれる。
その刹那、
バキン!!!
「嘘だろ!?」
ルーフの棍棒が、粉々に砕けてしまったのだ。
「やってしまいなさい!!」
それを見たゼルグイが叫ぶ。
『グラァァァア!!!』
魔獣が拳を振るう。
防御手段を失ったルーフには防ぐ手段がない。
「ガァァア!!!」
そして、拳がルーフの身体を捉えルーフは海斗達のように地面へと吹き飛ばされた。
「ガハッ…」
腹だけではなく頭にもグワングワンと衝撃が響く。
(ヤバイ…意識が…)
「んー?まだ息ありますよねぇ?今死なれると困るのでね…」
ゼルグイがルーフの顔を覗き込む。
「さぁ、任務完了です。プラチナゴーレム、ターゲットを運んでください。」
呼ばれたゴーレムが大きな腕を伸ばしてくる。
(…ダメだ…身体が動かない…)
ルーフは意識を繋ごうとするが、次第に瞼が降りてくきてしまう。
(ちく……しょう…)
巨大な手のひらが視界を満たす。
その時であった。
「お前ら!!」
そんな声が意識が混濁するルーフの耳に届いた。
「…誰です!?」
ゼルグイが振り向く。
そこにいたのは、
「……お前…アタシの店の常連になにやってんだ?」
鬼の形相をしたイサベルであった。
「イサベル…さん…?」
「ルーフ!」
イサベルはルーフに駆け寄る。
「イサベルさん…危ない…逃げて…」
彼はかすれた声でイサベルに警鐘をならす。
しかし、
「こんなになっても他人の心配すんのか…まぁいい。ここは任せて寝てろ。」
イサベルは優しい声でそう言った。
非戦闘員であるイサベルではここは切り抜けられない。ルーフはそう確信していたが、何故かその声に安心感を覚えてしまう。
そして、彼の意識の糸が切れた。
「…さてと…」
それを確認したイサベルが立ち上がり周りを見渡す。
彼女の視界には壊された数々の店と散らばりグシャグシャになった料理や食材が写る。
「アンタ…食べ物の恨みは恐ろしいって知ってるか?」
「はい?」
そして、
「…アンタはアタシの逆鱗に触れた…。」
「ツッ!?」
絶対零度の視線がゼルグイを射抜いた。
(何ですかこの圧…こんな獣人がいたとは…)
ゼルグイの身体を冷や汗が伝う。
だが、
「そんなもの知りませんよ!邪魔をするなら容赦しません!」
『『ゴォォ!』』
その声と共に残っていた内の2体の魔獣を突進させる。
「フゥ……」
すると、イサベルは深く息を吐くと拳を引く。
次の瞬間、
「ハァァァア!!!」
イサベルの拳が、爆発した。
『『ガァァァァァァア!!!!』』
その拳は、2体の魔獣を貫く。
そして魔獣一瞬で瓦礫と化してしまった。
「は?」
ゼルグイの表情が消える。
「アンタら邪魔くさいよ!!」
爆発する炎を纏った拳が魔獣を次々と破壊していく。
その様子はまさに一方的。虐殺に他ならなかった。
(何ですかこれは…)
ゼルグイは目の前の光景が信じられないと目をパチクリさせる。
「…なんだ、つまんないな。」
最後の1体の顔に拳をねじ込むと、そう呟きながらプラチナゴーレムに目をやる。
(なんなんだコイツは!!)
「キッ…キサマ!!何者なんだ!!」
ゼルグイが悲鳴に近い叫びをあげる。
「何者か…か…」
イサベルは少し考え込む。
そして、
「アタシはカフェの店長だ!!」
そんな言葉をゼルグイにぶつけた。
(カフェの店長!?どうしてそんな者がこんな力を持っているのだ!!)
それは更にゼルグイの頭を混乱させる。
「くそっ!プラチナゴーレム!!やってしまいなさい!!」
ゼルグイは自棄になりながら指示を飛ばす。
『ゴラァァア!!』
イサベルの頭上に拳が振り下ろされる。
だが、
パァン!!
「ん?思ったより軽いな?」
「んなぁ!?」
その拳は片手で軽々と止められてしまった。
「飯食ってないヤツの力なんてたかが知れてる。」
『ゴ…オ…』
ゴーレムは拳を引こうとするが、イサベルの握力がそれを許さない。
「いいか?パンチってのはな…」
イサベルの左手に炎が集まる。
「こうやって打つんだよ!!」
ドォォォン!!
『ゴァァァァア!!』
業火を纏った拳はいとも簡単にゴーレムの巨体を吹き飛ばした。
『グウ…ラァ!』
しかし、すぐに体勢を整えると巨石を魔法でいくつも飛ばしてきた。
「ハン!いいじゃないか!“調理”のしがいがある!!」
そう言いながらイサベルは指先に力を込める。
「『グリルファイア』!!」
そして、指を鳴らすと巨大な火玉が放たれた。
それは飛ばされた巨石を一瞬で飲み込んだ。
「…な…」
もうゼルグイは声も出なかった。
先程まで勢い良く飛んでいた巨石は全て灰となっていた。
「ほらほらどうした!?」
イサベルは指を鳴らし続けありったけの炎を撃ち込む。
『ゴ…ガ…』
両手で顔と身体を守るが、次第にそれも意味を成さなくなる。両手が少しずつ溶けていったのだ。
「それじゃあトドメといこうか!!」
それを確認したイサベルがそう叫ぶと、彼女は指を鳴らすのをやめ両手を地面についた。
「中まで火を入れてやるよ!」
すると、手をついた所から火柱が上がり、それがゴーレムを囲むように噴き出していく。
『ゴ…』
先程の攻撃で両腕が溶けてしまったゴーレムた抵抗する力は残っていなかった。
「ハァァ…」
段々と炎が広がると、ゴーレムは炎の檻に囚われてしまった。
「派手に燃えな!『スカーレット・オーブン!!』」
ゴォォォォォォ!!
『ガァァァァァァァァア!!!』
深紅の極炎がゴーレムを包み激しく焼く。
『ゴ…』
激しい炎の中で、次第にゴーレムが灰になるのが見えた。
「な………」
「フゥ…」
絶句するゼルグイにイサベルが歩み寄る。
「アンタらがなに企んでんのか知らないが…アタシの常連に手を出そうってもんなら許さないよ!!」
「クッ!?」
そして、溢れんばかりの圧でゼルグイを威嚇した。
しかし、
「くそっ!!」
ボン!!
「ツッ!?」
唐突にイサベルの視界が白に染まる。
ゼルグイが煙玉を投げたのだ。
「このっ!」
イサベルは腕を振り回し煙幕を晴らす。
だが、
「逃がしたか…」
目の前にいたはずのゼルグイの姿はどこにも見えなかった。
デラフィエスで盛り上がるマリンシアを突如として襲った災害は、この戦闘を最後に幕を閉じた。
◇◆◇◆
その日の夜、
ギルド本部にあるミーティングルーム、そこでオッターは椅子に座りとある来訪者を待っていた。
部屋の中心にある机には、マリンシアの街の地図が広げれられている。
すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
オッターが扉のむこうの人物にそう声をかける。
ゆっくりと扉が開くと、
「失礼するぞ」
イサベルの姿がそこにあった。
「すみません…急にこんなこと頼んで…」
オッターが頭を下げる。
「気にするな。街のために協力するのは当たり前だからな。」
それにイサベルは優しい声でそう返した。
「ほら、頼まれてたやつだ。」
そしてオッターに数枚の資料を渡す。
そこには、イサベルが戦った魔獣の詳細が事細かに書かれていた。
「今回アタシが戦った魔獣は完全に新種だ。今まであんなの見たことがなかったからな。そのデウス団ってヤツらがなんらかの魔獣の研究をしている可能性は高いな。」
「やはり…」
イサベルの報告書を見ながらオッターは思考を巡らせる。
「今回の犯人の目的はなんだったのでしょうか…?」
オッターが聞く。
「さぁな。ただデウス団のヤツがルーフ達の班の前にのみ姿を現したと考えると…あいつらに用があったのかもな。」
「彼らに…ですか…」
そのルーフ達は現在病室のベットで寝ている。幸いにも全員の命に別状はなかった。
「わかりました。目を覚ましたら聞いてみます。」
「おう。ただあいつらも疲れてるみたいだから無理はさせるなよ。」
そう言うとイサベルは扉に手をかける。
「…取り敢えず頼まれたことはやったからな。あとはそっちでなんとかしてくれ。」
そのまま彼女は部屋を出ようとする。
その時、
「…こっちに戻る気はないんですか?“先輩”。」
オッターがイサベルの背中にそう声を投げかけた。
「なに?」
イサベルが動きを止め、振り返り怪訝そうな視線を向ける。
「今のギルドには少しでも強力な力が必要です。今回の事件や白の大陸での戦争のようなことがマリンシアで今後起こらないとは言えませんし…」
そして、いつにもなく真剣な目付きになりイサベルを見つめる。
「もう一度、ギルドで活動をする気はないのですか?」
だが、それに返ってきたのは
「ツッ!」
オッターを縮み込ませるような強烈な殺気だった。
「…何度も言ったが私はもうそちら側にはならない。」
その声はいつもの快活な声とは正反対の、聞く者を凍てつかせるような迫力があるようなものであった。
「……すいません。」
オッターはその迫力に押されうつむいてしまう。
「…そういうことだ。あとは頑張れよ。」
その声を最後に、ミーティングルームの扉は静かに閉ざされた。
「…先輩…」
オッターはうつむいたままそう呟く。
彼には、今閉ざされた扉がイサベルとギルドの間を隔てる開かずの扉に見えていた。
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