8 / 60
第8話 そいつはオレの幼馴染だが
しおりを挟む
十二年前。
【農民】という天職を授かったルイスは、夢だった戦士としての道を断たれた。
そのショックがあまりにも大きかったせいで、正直あまり街のことは覚えていない。
二度と来ることもないだろうと思っていたが、
「……またこの街に来ることになるなんてな」
領都は周囲を分厚い城壁で取り囲まれた、円形の都市だ。
そのちょうど中心に立つアルトレウ侯爵の居城から、放射状に幾つもの道が伸びている。
領都の賑やかさは、ルイスが生まれ育った村とは比較にもならなかった。
街を歩く人たちも華やかで、村で農作業ばかりしていたルイスが、酷く場違いに見えてしまう。
なにせ今ルイスが身に着けている服は、その農作業用のものなのだ。
すれ違った人たちが、チラチラと視線を向け、クスクスと笑い声を零している。
もっとも、当の本人はあまり気にしてはいないが……。
「もしかしてあれか?」
それらしい建物が見えてきた。
立派な入り口の門に、『バルセール冒険者ギルド』という大きな文字が書かれた銘板が張り付けられているので、間違いないだろう。
ちなみにバルセールというのは、この街の名前である。
建物の中に入ると、広々としたエントランスが出迎えてくれた。
所属する冒険者たちだろう、汗臭い男たちが騒いでいたりはするが、まだ建物自体が新しいためか、全体的に小奇麗な印象を受ける。
「ええと、サブギルドマスターってどこにいるんだ?」
受付があったが、世間の常識に疎いルイスはそれをスルーして建物の奥へ。
職員しか入ることのできない場所にまで入り込んでしまったルイスだが、幸か不幸か、作業員のような服装のお陰で、誰にも咎められることなく、二階にあったサブギルドマスターの部屋まで辿り着いてしまった。
「ここだな。ちゃんとドアプレートに書いてある」
「うおっ、何だ!?」
ノックもせずにドアを開けると、中にいた禿頭の男が驚きの声を上げた。
筋骨隆々の巨漢だが、年齢は五十代ぐらいだろうか。
「おいおい、びっくりしたぞ。ノックぐらいしてから入ってきてくれ。……しかし、見慣れない顔だな? その格好、もしかして清掃員か?」
「いえ、違います。ええと、あなたがバルクさん?」
部屋にはその大男の他にもう一人、二十歳ほどの若い女性がいたが、名前からして男の方だろうと当たりをつけるルイス。
「ああ、オレがバルクだが」
「これ、代官のミハイルさんからです」
「なに? ミハイルだと? そいつはオレの幼馴染だが……そういや最近またやらかして、地方の代官をやらされることになったって言ってたな。そのミハイルがオレに手紙を?」
訝しそうに首を傾けつつも、大男――バルクが手紙を受け取る。
「確かにあいつの筆跡だな。なになに?」
読み進めていくにつれ、途中でだんだんと顔が強張っていった。
「ああ、ダメだ! 読めねぇ! あいつ、難しい単語ばっかり使いやがって!」
隣にいた若い女性が溜息をつく。
「それほど難しい単語は使われていないように思いますけど?」
「オレは読むのが苦手なんだよっ。代わりに読んでくれっ」
「……サブギルドマスターなら、これくらいは読んでもらいたいですね」
呆れたように言いながら、その女性が手紙を代読した。
「――ということで、彼がこの冒険者ギルドで働けるよう、便宜を図ってほしいとのことです」
彼女が読み終わると、バルクは「マジか」と呟く。
「天職が【農民】だと? 初めて聞いたぞ。確かに、明らかに戦士に向いていなさそうな天職だが……ワイバーンを瞬殺できるようになるやつを、どこもかしこも門前払いしちまうとはな」
それから面白そうにニヤリと笑って断言する。
「いいじゃねぇか! 採用決定だ! ミハイルが言うなら間違いねぇしよ!」
「ほんとですかっ?」
あっさりと認められて、喜ぶルイス。
だがそれも束の間、若い女性の方がきっぱりと告げたのだった。
「ダメです、サブギルドマスター。認められません」
【農民】という天職を授かったルイスは、夢だった戦士としての道を断たれた。
そのショックがあまりにも大きかったせいで、正直あまり街のことは覚えていない。
二度と来ることもないだろうと思っていたが、
「……またこの街に来ることになるなんてな」
領都は周囲を分厚い城壁で取り囲まれた、円形の都市だ。
そのちょうど中心に立つアルトレウ侯爵の居城から、放射状に幾つもの道が伸びている。
領都の賑やかさは、ルイスが生まれ育った村とは比較にもならなかった。
街を歩く人たちも華やかで、村で農作業ばかりしていたルイスが、酷く場違いに見えてしまう。
なにせ今ルイスが身に着けている服は、その農作業用のものなのだ。
すれ違った人たちが、チラチラと視線を向け、クスクスと笑い声を零している。
もっとも、当の本人はあまり気にしてはいないが……。
「もしかしてあれか?」
それらしい建物が見えてきた。
立派な入り口の門に、『バルセール冒険者ギルド』という大きな文字が書かれた銘板が張り付けられているので、間違いないだろう。
ちなみにバルセールというのは、この街の名前である。
建物の中に入ると、広々としたエントランスが出迎えてくれた。
所属する冒険者たちだろう、汗臭い男たちが騒いでいたりはするが、まだ建物自体が新しいためか、全体的に小奇麗な印象を受ける。
「ええと、サブギルドマスターってどこにいるんだ?」
受付があったが、世間の常識に疎いルイスはそれをスルーして建物の奥へ。
職員しか入ることのできない場所にまで入り込んでしまったルイスだが、幸か不幸か、作業員のような服装のお陰で、誰にも咎められることなく、二階にあったサブギルドマスターの部屋まで辿り着いてしまった。
「ここだな。ちゃんとドアプレートに書いてある」
「うおっ、何だ!?」
ノックもせずにドアを開けると、中にいた禿頭の男が驚きの声を上げた。
筋骨隆々の巨漢だが、年齢は五十代ぐらいだろうか。
「おいおい、びっくりしたぞ。ノックぐらいしてから入ってきてくれ。……しかし、見慣れない顔だな? その格好、もしかして清掃員か?」
「いえ、違います。ええと、あなたがバルクさん?」
部屋にはその大男の他にもう一人、二十歳ほどの若い女性がいたが、名前からして男の方だろうと当たりをつけるルイス。
「ああ、オレがバルクだが」
「これ、代官のミハイルさんからです」
「なに? ミハイルだと? そいつはオレの幼馴染だが……そういや最近またやらかして、地方の代官をやらされることになったって言ってたな。そのミハイルがオレに手紙を?」
訝しそうに首を傾けつつも、大男――バルクが手紙を受け取る。
「確かにあいつの筆跡だな。なになに?」
読み進めていくにつれ、途中でだんだんと顔が強張っていった。
「ああ、ダメだ! 読めねぇ! あいつ、難しい単語ばっかり使いやがって!」
隣にいた若い女性が溜息をつく。
「それほど難しい単語は使われていないように思いますけど?」
「オレは読むのが苦手なんだよっ。代わりに読んでくれっ」
「……サブギルドマスターなら、これくらいは読んでもらいたいですね」
呆れたように言いながら、その女性が手紙を代読した。
「――ということで、彼がこの冒険者ギルドで働けるよう、便宜を図ってほしいとのことです」
彼女が読み終わると、バルクは「マジか」と呟く。
「天職が【農民】だと? 初めて聞いたぞ。確かに、明らかに戦士に向いていなさそうな天職だが……ワイバーンを瞬殺できるようになるやつを、どこもかしこも門前払いしちまうとはな」
それから面白そうにニヤリと笑って断言する。
「いいじゃねぇか! 採用決定だ! ミハイルが言うなら間違いねぇしよ!」
「ほんとですかっ?」
あっさりと認められて、喜ぶルイス。
だがそれも束の間、若い女性の方がきっぱりと告げたのだった。
「ダメです、サブギルドマスター。認められません」
13
あなたにおすすめの小説
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる