農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾

文字の大きさ
32 / 60

第32話 どう見ても棒なんだが

しおりを挟む
 過去最速の門前払いをしてきた女鍛冶師は、どうやらルイスの持つ鍬の性能に驚き、慌てて戻って来たらしい。

「いや、それが本当に壊れるんだよ。今朝も土を耕していたら曲がってしまったし」
「嘘を吐くんじゃねぇ! 土を耕したくらいで折れるわけねぇだろ! つーか、土を耕すって何だよ!? それは武器じゃねぇのかよ!?」
「いや、武器でもあるぞ」
「というか、鍬が武器って意味不明なんだが……」

 女鍛冶師は頭痛がするのか、こめかみ付近を指で揉んだ。

「だが逆に興味が湧いちまったぜ。鍬を打てとか言われたときはぶん殴ってやろうかと思ったが……とりあえず中に入りな」

 彼女に案内され、工房内に立ち入るルイス。
 あちこちに素材などが散乱していて、お世辞にも整理されているとは言い難い。

「オレの名はゼタ。テメェは?」
「俺はルイス。Cランク冒険者だ」

 せっかく手に入れた冒険者証があるので、ルイスはそれを提示した。

「確かに本物みてぇだが……Cランク、ねぇ? で、天職は?」
「【農民】」
「は?」
「【農民】だ」
「……だからそんな作業着で、鍬を武器にしてるのか?」
「そういうことになるな」

 ルイスが頷くと、女鍛冶師ゼタはいきなり大声で笑い出した。

「ぶっ……ぶはははははははははははっ!」

 ひとしきり肩を揺らして笑った後、疲れたのかハァハァと呼吸を整えてから、

「ヤベェな、テメェ。面白過ぎじゃねぇか。初めて聞いたぜ、そんな天職。んで、その鍬がすぐに壊れちまう、と」
「ああ、そうだ。信じられないなら、今からここで見せてやろうか?」
「そうしてくれ。嘘を言ってるようには思えねぇが、さすがにこの目で見ないと信じ切れねぇ。そこに要らない盾があるからよ、地面に置いてそれを狙え」

 壁に立てかけられていた大きな盾を言われた通り地面に置き、ルイスはそこに鍬を叩きつけた。

 ザグァンッ!!

 金属音混じりの掘削音が響き渡る。

「……へ?」

 ゼタの口から頓狂な声が漏れた。
 なにせ盾が真っ二つに割れたどころか、刃はその下の硬い床にまで深々と突き刺さってしまっていたのだ。

 ルイスが鍬を上げると、刃の先端が僅かに欠けただけだった。

「さすがに一回じゃまだ壊れないな。よし、じゃあもう一回」
「ちょっ、ちょっと待てえええええええええええっ!」

 再び鍬を振り下ろそうとしたルイスを、ゼタが慌てて止めた。

「は、鋼の盾をっ……幾ら使い古して摩耗してるからといって……ま、真っ二つにしちまいやがった!? 信じらんねぇ!?」
「まぁ普通の鍬よりも、よく地面に刺さる鍬だからな」
「その鍬もヤバいが、それよりヤバいのはどう考えてもテメェの方だっ!」

 ゼタは興奮したようにツッコんでから、大きく息を吐く。

「はぁ……出鱈目にもほどがあるだろ……。だが面白れぇ。鍬なんて今まで作ったこともねぇが、テメェみてぇな戦士のためなら、遣り甲斐もあるってもんだ」
「本当かっ?」
「ああ。テメェ専用に、オレがミスリル製の鍬を作ってやるよ。問題はその柄の方だが……」
「こっちは別に困ってないぞ」

 鍬の柄の方は今のところ一度も壊れたことがないのだ。

「? その刃が壊れるんだ。柄だけ何ともねぇなんて……ん? てか、それ、何でできてやがる? 木製じゃねぇよな? こんな素材、オレも見たことねぇ……」
「ゴボウだ」
「ゴボウ!?」

 ルイスは鍬にしていないゴボウを取り出し、ゼタに見せる。

「ゴボウっていうか、どう見ても棒なんだが!? しかもめちゃくちゃ硬ぇ!」
「棒じゃなくて、ゴボウだって。品種改良で、真っ直ぐで硬いゴボウを作ってみたんだ。普通の棒だと、握っただけでぽっきり折れてしまうこともあるからな」
「ダメだ、説明されても意味が分からねぇ……。けどまぁ、これなら確かにオレの知るどの木材よりも硬いかもしれねぇな……」
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...