3 / 34
第三話 VS牙熊
しおりを挟む
それはずんぐりとした体躯をした、大柄な生き物。
その輪郭から判断するに、前世で言う熊だろうか。
しかし、口にはサーベルタイガー並みの鋭い牙が生えていた。
とりあえず勝手に牙熊と名付けることにしよう。
その牙熊だが、ちょっといい穴があったからここで休憩しよう、という雰囲気じゃない。
数では勝るゴブリンたちだが、明らかに怯えていた。
お前、先に行けよ! いやいや、ここは武勲をお主に譲ろうではないか。レディーファーストだ! みたいなやり取りをしている。(勝手な吹き替えです。ゴブリンはしゃべりません)
って、冗談言ってる場合じゃない。
あの熊に核を破壊されたら俺も死んでしまうのだ。たぶん。
おい、全員で一斉にかかれ!
そうすれば多少は勝率が上がる!
伝わるかどうか定かではなかったが、俺は内心で叫ぶ。
するとゴブリンたちは、なるほど! という顔をした。
どうやら俺の考えが伝わるらしい。
これならいけるかもしれない。
そう思ったのだが、ゴブリンたちは穴の左右に身体を寄せた。
どうぞ、お通り下さいませ、という雰囲気だ。
おいこら何やってんだよ!
全然俺の考えは伝わっていなかったようだ。
だがさすがに牙熊はゴブリンを素通りするつもりはないらしかった。
牙を剝き、一番近くにいた一匹に襲いかかろうとする。
そのゴブリンは意外にも身軽な動きで辛くもそれを回避すると、そのまま牙熊の脇を通り過ぎてダンジョンの外へと逃げ出した。
他のゴブリンたちも我先にとその後を追う。
ちょ、戦えよ。逃げんなよ。
牙熊はしばし後を追うかどうか悩んでいたようだったが、すぐに興味を失ったようにのしのしと歩き始めた。
もはやその歩みを妨害する者などいない。
無人となったダンジョンの中、その最奥にある〝核″に向かってくる。
あれ、もしかして俺のダンジョンライフ、これで終わり……?
と思ったが、逃げたゴブリンたちが戻ってきた。
牙熊の後を、気が付かれないようこっそりと付いてきている。
そうか、逃げたと思わせておいて、背後からの奇襲作戦か。
ゴブリンにしてはなかなか賢い作戦だ。
しかし明らかにビクついていて、成功するようには思えないんだが……。
そもそもゴブリンたちは丸腰だ。
せめて武器でもあれば……。
『スキル〈武器作成〉を獲得しました』
何だ?
いきなり俺の頭の中に響いたのは、やけに無機質な女性の声だった。
誰? もしかして女神?
問いかけるが、返事は返ってこない。
ステータスが見えることと言い、不思議なことばかりだ。
それはともかく、〈武器生成〉だって?
なんという渡りに船!
俺は早速、新しく手に入れたこのスキルを試してみることにした。
ちなみにスキルを使う方法は、脳内(脳なんてないけどな)でイメージするだけ。
なんとも簡単だ。
ただ、必ずしもイメージ通りになるとは限らない。
〈魔物生成〉だって、俺のイメージではワイバーンとかマンティコアとか、かなり強力な奴だったんだが、生み出せたのは貧弱なゴブリンだけだったからな。
まぁでも、イメージするのは自由だ。
せっかくだし、なんかかっちょ良い武器を想像してみよう。
出でよ、聖剣デストロイ!
いやこの名前だと魔剣の方がいいか?
出でよ、魔剣デストロイ! 大地を斬り、海を割り、空間を断絶させる、何かとんでもなくヤバい剣だ!
そんな俺の小学生みたいな呼びかけに答え、ダンジョンの地面に異変が起こった。
棒状の物体が生えてきたのだ。
剣――というより、まんま棒だな……。
全部で五本生成する。
しかしさすがは魔剣(笑)だ。たった五本作っただけで、どっと疲労が押し寄せてきたぜ。
ゴブリンたちはすぐにその使い道を察したのか、魔剣デストロイ(笑)を地面から引き抜いた。
ぶっちゃけ心許ない武器だが、無いよりはマシだろう。
ゴブリンたちは一斉に牙熊に襲いかかった。
気配を察し、すぐに振り返ろうとした牙熊だったが、それより早く、魔剣デストロイ(笑)がその身体に突き刺さっていた。
あれ?
呆気なく倒しちゃった。
その輪郭から判断するに、前世で言う熊だろうか。
しかし、口にはサーベルタイガー並みの鋭い牙が生えていた。
とりあえず勝手に牙熊と名付けることにしよう。
その牙熊だが、ちょっといい穴があったからここで休憩しよう、という雰囲気じゃない。
数では勝るゴブリンたちだが、明らかに怯えていた。
お前、先に行けよ! いやいや、ここは武勲をお主に譲ろうではないか。レディーファーストだ! みたいなやり取りをしている。(勝手な吹き替えです。ゴブリンはしゃべりません)
って、冗談言ってる場合じゃない。
あの熊に核を破壊されたら俺も死んでしまうのだ。たぶん。
おい、全員で一斉にかかれ!
そうすれば多少は勝率が上がる!
伝わるかどうか定かではなかったが、俺は内心で叫ぶ。
するとゴブリンたちは、なるほど! という顔をした。
どうやら俺の考えが伝わるらしい。
これならいけるかもしれない。
そう思ったのだが、ゴブリンたちは穴の左右に身体を寄せた。
どうぞ、お通り下さいませ、という雰囲気だ。
おいこら何やってんだよ!
全然俺の考えは伝わっていなかったようだ。
だがさすがに牙熊はゴブリンを素通りするつもりはないらしかった。
牙を剝き、一番近くにいた一匹に襲いかかろうとする。
そのゴブリンは意外にも身軽な動きで辛くもそれを回避すると、そのまま牙熊の脇を通り過ぎてダンジョンの外へと逃げ出した。
他のゴブリンたちも我先にとその後を追う。
ちょ、戦えよ。逃げんなよ。
牙熊はしばし後を追うかどうか悩んでいたようだったが、すぐに興味を失ったようにのしのしと歩き始めた。
もはやその歩みを妨害する者などいない。
無人となったダンジョンの中、その最奥にある〝核″に向かってくる。
あれ、もしかして俺のダンジョンライフ、これで終わり……?
と思ったが、逃げたゴブリンたちが戻ってきた。
牙熊の後を、気が付かれないようこっそりと付いてきている。
そうか、逃げたと思わせておいて、背後からの奇襲作戦か。
ゴブリンにしてはなかなか賢い作戦だ。
しかし明らかにビクついていて、成功するようには思えないんだが……。
そもそもゴブリンたちは丸腰だ。
せめて武器でもあれば……。
『スキル〈武器作成〉を獲得しました』
何だ?
いきなり俺の頭の中に響いたのは、やけに無機質な女性の声だった。
誰? もしかして女神?
問いかけるが、返事は返ってこない。
ステータスが見えることと言い、不思議なことばかりだ。
それはともかく、〈武器生成〉だって?
なんという渡りに船!
俺は早速、新しく手に入れたこのスキルを試してみることにした。
ちなみにスキルを使う方法は、脳内(脳なんてないけどな)でイメージするだけ。
なんとも簡単だ。
ただ、必ずしもイメージ通りになるとは限らない。
〈魔物生成〉だって、俺のイメージではワイバーンとかマンティコアとか、かなり強力な奴だったんだが、生み出せたのは貧弱なゴブリンだけだったからな。
まぁでも、イメージするのは自由だ。
せっかくだし、なんかかっちょ良い武器を想像してみよう。
出でよ、聖剣デストロイ!
いやこの名前だと魔剣の方がいいか?
出でよ、魔剣デストロイ! 大地を斬り、海を割り、空間を断絶させる、何かとんでもなくヤバい剣だ!
そんな俺の小学生みたいな呼びかけに答え、ダンジョンの地面に異変が起こった。
棒状の物体が生えてきたのだ。
剣――というより、まんま棒だな……。
全部で五本生成する。
しかしさすがは魔剣(笑)だ。たった五本作っただけで、どっと疲労が押し寄せてきたぜ。
ゴブリンたちはすぐにその使い道を察したのか、魔剣デストロイ(笑)を地面から引き抜いた。
ぶっちゃけ心許ない武器だが、無いよりはマシだろう。
ゴブリンたちは一斉に牙熊に襲いかかった。
気配を察し、すぐに振り返ろうとした牙熊だったが、それより早く、魔剣デストロイ(笑)がその身体に突き刺さっていた。
あれ?
呆気なく倒しちゃった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
206
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる