最強クラスの双子がゲームの攻略を目指す物語

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一章

第1話 妹

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 フェアリーガーディアンを狩り終えた樹はクーラの塔から最も近い街へと向かう。
 街の名前も同様にクーラの街と呼ぶ。設定上は街ができる前からあるクーラの塔の方が先にその名前を貰っており、そのクーラの塔に一番近い街としてこの街の名前はクーラとなったらしい。
 そんなクーラの街の外見は一言で言えば良くない。建物の造りが木造であり、どこか古びたさを感じさせる。道など整備されていないし、街頭がないため夜は暗黒に支配される。街というよりも町である。樹の父方の実家を彷彿とさせる田舎町である。
 ただ宿は幾分マシである。
 いや、幾分ではなく相当マシな部類なのだろうか。あまり宿に泊まらない樹はその辺り、このゲームにおける一般常識に疎いが、今まで泊って来た宿の中でも上位に入る。クーラの塔同様に、外見に似合わず内装は素晴らしく、食事も豪華である。そうでもしないと、こんな田舎町に客が来ないのだろうが。

「NPCがそこまで考えるかは分からないけども」

 NPCの数は決して多くない。巨大な都市でも、NPCの数は良くて千人である。クーラの街に至っては十数人程度なのだが、数が少ない一番の理由はNPCすべてが自ら考えて行動するからである。
 そのため接している分は人らしく、違和感なく会話をすることができる。その代わり、それぞれのNPCとの間には好感度があり、否応なしにクエストが受けられるゲームと違い、好かれていないと受けられないクエストがある。これが厄介で、クエストを受注するだけの下準備に日にちとお金が掛かってしまう。
 樹は街に無事到着すると、一直線にその宿へと向かう。

「約束の時刻過ぎているし、怒っているだろうなぁ」

 時刻はすでに午後六時を過ぎていた。約束の時刻が五時半だったが、予想以上にドロップ運が悪く、時間が掛かってしまった。
 待たせている仲間にして、実の妹の怒りの表情が目に浮かび、樹は身震いをする。
 恐る恐る宿の扉を開けると、初めに出迎えてくれたのは宿の主人であった。

「おかえりなさいませ。樹様。茜様はすでにお帰りになっておられます」
「茜は怒っている?」
「そうですね。あまり良い表情はされていませんでした」
「ありがとう」

 樹は宿の主人にそうお礼をして、早歩きで借りている部屋へと向かう。
 部屋は寝室二つのそこそこ良い部屋を借りた。小学校低学年の頃は同じ部屋だったが、さすがに高学年に上がる頃には別々の部屋となった。家族でも、性別が異なる以上、寝室は別けたいのが二人の共通認識である。
 そう妹。
 双子の妹である一ノ瀬茜は樹を笑顔で向かい入れた。

「おかえり、樹」
「ただいま、茜」
「とりあえず、正座」
「…………はい」

 このゲームの世界で再会を果たした実の双子の妹。生まれる順番から樹が兄をしているが、茜の方が姉に向いている、それほど力関係がはっきりしている。
 樹は部屋に入ってすぐに地べたに正座をする。皮鎧だが、座る行為はし難い。腰から下げていた剣がガチャリと音を立てながら床とぶつかる。

「さて、話を聞こうか。どうして遅れた?」
「ドロップ運が酷かったからです」
「欲しい個数があったのは分かるけども、私は樹に一人で行くことを許可する代わりに五時半までに戻ってくるよう約束したよね? 約束は破って良いの?」
「いけないことです」
「昔から毎度のように、樹は何かしらの約束を破って来たから。もう慣れたけども」
「なら、正座を解いても」
「ダメ」
「はい」

 正座が苦手な樹の足が徐々に痺れて来る。わけではない。流石にそこまでは再現されたゲームの世界ではない。
 だからいくらでも正座ができるのだが。

「それならそれで、せめて連絡が欲しかった。もしかしたら他プレイヤーに襲われて死んでしまったのかもと思ったじゃない。もうお別れは嫌だから」

 茜の怒りはすべて心配からである。心配をかけるような行為、あるいは下手したら死んでしまうかもしれないような行為に対して茜は怒るのだ。

「流石にこの辺りで死ぬようなレベルはしてないよ」
「慢心。ダメ。ゼッタイ。この世界は現実世界よりもはるかに危険なんだから。環境も人も」
「仰る通りです」
「今回だけだからね」

 樹は茜の内心を理解している。過去に信じていた仲間との別れを経験した茜はもう一人になりたくないのである。
 それは樹も同様。
 樹は安心させるように、茜の言葉に返事をする。

「イエッサー」
「返事は、はい」
「はい」
「もうしないと約束するなら正座解いても良いよ」

 その言葉で樹は正座を解く。
 やっとで解放されたと内心ホッとしながら、樹はステータス画面を開く。今装備している防具、武器をすべて解除し、部屋着に変更する。
 他にもプレイヤーが存在するこの世界では、プレイヤーキルが可能である。しかしそれは基本的に街の外に限り、街の中、さらに部屋の中になるとその安全性は保障されたようなものである。

「じゃあ、夕食にしようか」

 部屋着になった樹を見て、茜はそんなことを提案する。
 リビングのテーブルに食料アイテムを並べる。こんな世界に来たからこそ、茜は一緒に食事を取るという、まるで普通の日常のような行為をしたいらしく、それに賛同したい樹も同様に宿の主人から貰った食料アイテムを幾つか取り出す。
 この宿は食堂がなく、本来出されるであろう食事はすべてアイテムとして出され、何時でもどこでも食事ができるようになっている。
 内容はパンとシチュー、ローストビーフにサラダ。

「それで明日からどうする? ある程度アイテムの回収はできたから、ここにとどまる必要はないでしょう? また前線に戻る?」
「いや、一度、最初の大陸に戻ろうかなと思う」
「どうして?」
「最上級モンスター討伐のクエストをしようかな、と。他にも、全然クエストクリアしてなかったから一度、クエストクリアの時間を作りたい」
「ああ、そっか」

 パンをほおばりながら茜が納得する。
 このゲームの世界のステータスは基本的にレベルアップ時に貰えるポイントを振り分ける形で上昇する。
 ポイントを振り分けることができる項目は十。

 HP。体力。ヒットポイントの略。これが0になると死亡する。
 MP。魔力。マジックポイントの略。スキルの使用に必要となる。
 ATK。物理攻撃力。物理的な攻撃の与えるダメージに関係する。
 DEF。物理防御力。物理的な攻撃の受けるダメージに関係する。
 MAK。魔法攻撃力。魔法的な攻撃の与えるダメージに関係する。
 MDF。魔法防御力。魔法的な攻撃の受けるダメージに関係する。
 ATKS。物理攻撃速度。物理的な攻撃速度に関係する。
 MAKS。魔法攻撃速度。魔法的な攻撃速度に関係する。
 LUK。運。回避や命中、状態異常などに対する耐性に関係する。
 SPD。速度。回避や命中、移動速度に関係する。

 これらは、レベルアップ以外に、装備だったり、あるいはクエストクリア時に貰えるボーナスで上昇する。
 そうクエストをクリアしただけでステータスは上昇する。すべてのクエストに値が決まっており、クリアによってその恩恵を受けることができる。その上昇値はクエストによって高低差が激しく、千差万別である。
 その中でも高い上昇が期待できるのが、最上級モンスター討伐系のクエストである。
 すべてのモンスターは下級、中級、上級、最上級の四つに分けられ、同レベルでも下級モンスターと中級モンスターで大きく強さが異なる。基本的に遭遇するモンスターは中級までであり、上級モンスターからはボス級モンスターと呼ばれる。
 そのボス級モンスターよりもはるかに強く、一つの大陸に一体しか存在しないのが最上級モンスターである。

「じゃあ、今後の予定はそうしようか。ちなみに、NPCは誰か分かっているの?」
「もちろん」
「よろしい」

 茜は小さく微笑んだ。
 このNPCとは最上級モンスター関係のクエストを受注できるNPCのことである。

「行動は今日の夜からにする? それとも明日?」
「そうだね。明日の朝に到着させたかったら、夜の内に移動した方が良いか」
「転移アイテム使えば簡単に移動できるけども、大陸間の移動ができる転移アイテムは個数が少ないから、なるべく使いたくないし」

 貧乏性な二人は目を合わせ、言葉なく意思疎通する。
 転移アイテム使わずして、ペットを使用したオーソドックスな移動。大陸間の移動は転移アイテムか港で船に乗るか、ペットである。
 このペットとは捕獲したモンスターのことである。一部モンスターは捕獲可能として、特定のクエストをクリアすればあと、倒すことで捕獲することができる。それは従順なしもべとして、一緒に戦ってくれたり、あるいは乗り物の変わりになる。
 このペットにもプレイヤー同様にレベルがあり、上げることで強くなっていく。

「ガーラで良いか?」
「そうだね」

 樹のペットの一匹、モンスター名ガーラ。ワイバーンのような見た目の飛行モンスターである。樹が良く使うペットとしてレベルは高い方である。

「そう言えば、いい加減ガーラに名前つけてあげたら、どう?」

 茜がそんなことを言う。
 それに樹は考え込むふりをして、あらかじめ決めていたかのように答える。

「本命じゃないし、それに名づけのセンスがないからさ」
「その辺り、樹は愛情がないよね」
「茜がペットに対して愛情持ちすぎなんだよ」
「私がつけてあげようか?」
「フルーツの名前で?」

 樹が持つモンスターの数は50匹にも及ぶが茜はわずか13匹。プレイヤーレベルが高い樹の方が持つペットの最大レベルは高いが、すべてのペットをバランスよく育てている茜の方がペットの平均レベルは高い。
 そんな茜の持つペットすべてフルーツの名前が当てられている。

「さすがにガーラにフルーツの名前はつけないよ。似合わないじゃん」
「確かにそうだな」

 茜と樹はそう言って笑った。
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