最強クラスの双子がゲームの攻略を目指す物語

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一章

第6話 受注

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 茜はこの世界に来て、何も知らない時。ある人物と出会った。
 その人物、雫と名乗ったプレイヤーに助けられ、今の茜があると言っても良い。人を疑うことを怠らない茜だが、樹を除いて、唯一信じれる相手は雫ぐらいである。
 その雫は、茜に知識を与えた後、音もなく消えた。
 一週間ほどの関係だったが、茜にとって雫は、茜の今後を左右するほど重要な人であったのは言うまでもない。
 そして、樹と再会するまでの二週間、茜はソロプレイヤーとしてその名を広めていた。

「フェアリーガーディアン。あんまり経験値高くないけども、私からするとすごく倒しやすいからレベル上げがしやすいんだよね」

 豊富にあるクーラの塔への転移アイテムを使用し、茜はクーラの塔にスポーンするフェアリーガーディアンの部屋へと向かった。
 適正レベルは400からのこのダンジョンは、茜にとっては簡単なダンジョンであるが、ダメージを受けないわけではないため油断は許されない。何より自分と同等クラスのプレイヤーがこの塔に来ないとも限らない。
 クーラの塔入口にミカンを潜伏させ、フェアリーガーディアンが沸く部屋の入口には茜の中でも強力な部類のペットを一匹、メロンと呼ばれているスライムを配慮したうえで茜はフェアリーガーディアンと向き合う。

 ソロプレイヤーだった時期が樹の二日に比べて茜は二週間と長かった。
 現実世界で常に樹がいた人生だった茜にとって一人でいることは耐えられず、気づけば仲間を欲するようになっていた。
 そしてたどり着いたのがサモナーである。
 樹や楓のような冒険職とは違い、特別職になるこの職業は、サモナーのみが収得できる召喚魔法が多くある。この召喚魔法による数の暴力がこのサモナーの戦い方になる。
 このサモナーの育て方は攻撃型と補助型、耐久型の三種類があるが、その中で茜は耐久型となっている。召喚魔法は魔力を消費するが、召喚されるモンスターのステータスはプレイヤーの体力に比例して上昇する。この耐久型は体力と魔力が非常に高くすることで、攻撃や防御を召喚したモンスターに任せ自身は召喚をし続ける戦い方が特徴である。

「スキル。召喚魔法レベルⅥ」

 茜はサモナーのみが使えるスキル『召喚魔法レベルⅥ』を使用する。
 レベル600のプレイヤーに及ぶ強力なモンスター、殲滅兵器G18を召喚するスキルである。最大で七体まで同時召喚可能だが、600秒経つと消える。
 姿は巨大な鎌を持った人型のロボットであり、攻撃力と防御力に割り振られたステータスを持つこのモンスターの殲滅力は高い。
 茜とスモモを守る二体を除いた五体が、それぞれフェアリーガーディアンに向けて、その武器を横に振り払う。
 フェアリーガーディアンのレベルは470から500の間であり、このモンスターで楽に倒すことが可能である。範囲攻撃故の弱さから、十回近く攻撃を与える必要があるが、五体で十回となると話は変わる。
 瞬く間にフェアリーガーディアンが殺されていく光景は何とも言えない爽快感があった。

「さてと、召喚魔法が切れるまで後9分はあるし」

 時間は有限。
 茜は、樹と楓のところに置いてきたシャドースライム、アンズを通して、二人のことを覗き見始める。

「どうなっているかな」

 それはもう楽しそうに笑みを浮かべるが、その笑みはすぐに消えることになる。

「…………あれ?」

 そこには予想外のイベントが発生している光景が映っていた。





「ようこそ、おいでくださいました。樹様、楓様」

 それは樹と茜が別れてすぐのことだった。
 カラータウンを収める貴族から届いた通知。内容は屋敷を訪れてくれないかというものだった。最上級モンスター討伐クエストの受注が可能なのは、カラータウンで最も偉い人、この貴族である。だからこそ、この通知は無視できない。
 好感度、あるいは信頼度と呼ばれるポイントをあげるためには地道な会話やプレゼントなどが有効的である。
 ただこのカラータウンで最も偉い人故か、街の人の声が届く。プレゼントなどしなくても他のNPCのクエストをクリアすれば自ずと上がるように出来ている。
 それに加えて樹は一つの道具を使用していた。
 それでもこれは早い展開である。

「今日はどのようなご用件で呼ばれたのですか?」
「それにつきましては、ご主人様がお話しいたします」

 自ら行くのと、呼ばれるのは話が変わってくる。樹はこの展開に戸惑っていると、明らかに使用人の態度が可笑しい点に気づく。
 使用人が、訪れたプレイヤーが二人なのに気づき、もう一人の目当てのプレイヤーを必死に探そうとしているからである。そして、その人物の名前を出す。

「あの、茜様はいらっしゃらないのですか?」
「茜は私用がありまして」

 私用らしい私用ではないけども、と思いつつそう話すと、使用人のNPCはそうですかと残念そうな表情をする。

「そうですか。分かりました。では、ご主人様の所まで案内いたします」

 その言葉と共に歩き出した使用人のNPCに二人は黙って着いていく。
 ツカツカと一定の歩幅で歩く使用人はどこか淡々としている。二人に対してと茜に対して妙に対応が異なる気がする。
 お目当てが茜だったかのな雰囲気だ。

「…………どういうことだろう」

 樹と茜は最上級モンスターのクエスト関係を受けていない。それどころか他のクエストも手付かずだった。つまり屋敷の主人から二人への好感度や信頼度は同じぐらいであったはず。
 でも茜にだけ好感度が高いみたいに感じる。

「どうかしたのですか?」
「どうも茜がメインだったみたいだったからさ」
「つまり、私たちはお呼びではなかったということですか?」
「まあ、ただのおまけかな」
 
 二人は使用人に聞こえないようにひそひそ話をする。
 聞こえても特に問題はないはずだが、気持ち的に樹は聞かれたくなかった。例え相手がNPCだとしても、まるで生きているかのような相手に失礼な会話はしたくなかった。

「こちらです」

 たどり着いた部屋の前で、使用人が立ち止まる。
 部屋をノックし、そのまま開けながら入る。部屋の中で扉が閉まらないように抑えながら、二人に入るよう催促する。
 部屋の中には主人であるNPCが一人、ソファ横に立っていた。応接間らしい部屋は二つのソファが向かい合い、その間に低いテーブル。壁には様々な絵画が飾られている。

「ようこそおいでくださいました、樹様。楓様。それと」

 主人も一人足りないことに気づき、茜を探し出す。

「茜様は?」
「茜は私用があり、来ていません。すみません」
「そうでしたか。いえ、急な話でしたので、こちらの方こそ申し訳ありませんでした。もう少し早く通知を出すべきだった私たちの落ち度です。どうぞ、おすわりになってください」

 主人に言われ、樹がソファに座ると続いて楓が樹の隣に座る。最後に主人が向かいのソファに座る。
 全員が座ると、使用人が紅茶を淹れたカップを三つ用意し始める。

「話というのはですね、先日復活したモンスターについてです」
「モンスターですか?」
「はい。この大陸に唯一無二と言っても差し支えないほど強力で強大なモンスター、その討伐をお願いしたいのです」
「分かりました」

 内容は明らかに、最上級モンスターのことである。
 樹は早いクエスト受注に戸惑っていた。
 恐らくだが、茜が忘れているだけで、好感度を上げる行為をしていたのだろう。もしくは茜が最初で最後にパーティーを組んでいたプレイヤーが関係しているのか。その結論に至り、例えどんな理由としても特に問題がないため、樹は素直に受注することを決める。

「このクエストの受注は僕と楓さん、そして茜の三人が、という形で良いのですか?」
「はい。パーティーを組んでおられないみたいですが、何分相手が相手ですので。複数のパーティーで登録が可能になります」

 それぞれ一人しかいないパーティーが三つとして処理されているらしい。そうなっているのであれば誰が倒しても全員でクエストクリアができるようになる。
 問題がないことを確認し、樹は分かりましたと再び頷く。
 使用人がそんな樹の前にカップを置き、続いて楓の前にも置く。最後に自身の主人の前に置くと主人はどうぞと二人に紅茶を進める。

「紅茶でも飲みながら聞いていてください。この相手に対する詳しい説明を致したいと思いますので」





「二人きりでどこかに行くのを予想していたんだけどな」

 そう呟きながら、不満そうに茜は最上級モンスターの説明を受けている二人を見る。
 そして、どうして予定よりも早くクエスト受注が出来たのか、どうして自身の好感度が高いのかを考える。

「やっぱり雫かな」

 好感度はパーティー内で共有されるため、可能性をあげるならば昔雫と組んでいた頃のデータが残っていたが妥当だろう。
 この辺りがどのように処理されているのか、ゲームの内部までは知らないが、これ以外の可能性を茜はあげれなかった。

「まあ、でも。二人きりにして分かるね。楓さん、そこそこ樹のこと好きそう?」

 二人が座る姿。二人の距離がそこそこ狭い。この距離は後から座った楓の気持ちが出ているはずだ。そして二人きりになるのに対して嫌そうな感じではない点も大きい。
 二日前助けた時、その時最初に楓の前に現れたのは樹である。助けに来た王子様、とはいかなくてもそれに近い感情はその時抱いたのか。

「でも、どうだろう。楓さん、常にニコニコしているし。心の内まで分かりにくい」

 なんて思っていると、ふと不振な動きを捉えた。
 それは昨日、会話を盗見聞きしていた男を尾行するよう命令していたブドウからのものだった。樹と楓ではなくその男の方をのぞき見し始める。
 その男は茜が転移した場所近くにいた。
 ターゲットを見失った探偵初心者のような慌てふためきをしている。
 転移アイテムの形を覚えていれば、相手がどこに転移したか分かるのだが、この男は茜がどこに転移したのかが分からないみたいだ。

「もしかしなくても、私のこと探しているのかな?」

 ブドウを通して、盗み聞きしていた男の独り言を盗み聞きした茜は、男が茜の実力を見ようとしているのを知っている。
 この男利用できるかもしれない。
 すでに、相手ギルドの実力の底を確認していた茜にふとした妙案が思いつき、そして不適な笑みを浮かべた。
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