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第3.5膜 フィリアはお医者ちゃん編
八十四射目「再会とすれ違い」
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そして、悲劇は訪れた。
オレの父さんが、拒魔病を患ったのだ。
拒魔病とは、読んで字の如く、
「体内に魔力をまったく吸収できなくなる難病」である。
それは、水が飲めなくなるとか、ご飯が食べれなくなるとか、それほど深刻な問題なのだ。
水や食料ほどの緊急性はないけれど、魔力は人間の生命活動に必須なエネルギー源である。
拒魔病にかかり、魔力が吸収できなくなった人間は、徐々に魔力を消耗して衰弱し、半年も経たずに死に至る。
そして恐ろしいことに、魔力が取り込めないせいで、回復魔法や解毒魔法が全く効かないのだ。
つまり、他の病気にもかかりやすくて、非常に治りにくいのだ。
でも、治す方法はある。
薬の大ダンジョン跡地、つまりマグダーラ山脈へと向かい、「ギルギリスの骨」を入手するのだ。
それを元に、魔力の受容体を人口的に作って移植すれば、父さんの命を助けられる。
オレは父さんを救うために、この村を飛び出した、はずだったのに……
何も出来ず、誠也の事を巻き込んで、両親とジルクに心配をかけて、
ただ心と身体に、深く傷を負って、ここまで帰ってきてしまったのだ……
久しぶりに帰ってきた故郷。
庭の土手に腰掛けて、感傷にふけっていると、
下の小道から足音が聞こえた。
それは、数か月ぶりに見た、オレの両親の姿だった。
ドクン、と、心臓が跳ね上がる。
胸の奥が熱くなって、全身に鳥肌がたつ。
勝手に涙がこみ上げてきて、視界がぐにゃりぐにゃりと滲んでいく。
「フィリア!? フィリアっ!!」
父さんに名前を呼ばれた。
もう駄目だった。
全て決壊した。
「お父さんっ!! お母さんっ!!」
オレは土手を滑りおちて、父さんと母さんの胸の中に飛び込んだ。
「うわぁぁぁぁぁんっ!!!」
村じゅうに響き渡るほどの大声で、わんわんと泣いた。
父さんと母さんの胸の中は、温かくて大きかった。
「フィリアっ!! よく帰ってきてくれたっ!! うぅぅぅっ!!」
泣いている父さんをみて、複雑な気持ちになった。
オレが帰ってきたということは、薬の入手に失敗したという事。
父さんの死ぬ運命は変わらない。
父さんはまだ元気そうだけど、あと一か月ぐらいで寝たきりになって、死んでしまうのだ。
「……父さんっ!! ……死んじゃ嫌だよぉぉ……!! なんでこうんなるだよぉぉっ!!」
オレが泣き叫ぶと、父さんは困ったような泣き顔をした。
「……フィリア。すまない……。オレは言い忘れていた。お前に大事な頼みがあるんだ……」
父さんは、そんな事を言った。
「オレの最後の頼みだ……」
………いやだ。
何を、言っているんだ? 父さん。
「フィリア、お前もう一人前の医者だ。オレがお前に教えられることは、もう残っていない」
………うそだ。
オレはまだ、父さんの足元にも及んでいない……
「どうか頼む、オレが居なくなった後は、お前が獣族達の医者になるんだ。……身勝手でワガママな願いだが、オレの後を継いでほしい」
……いやだ。
いやだいやだいやだ……
やっぱりオレは、受け入れられないよ。
諦めるなんて無理だ。
オレは父さんが大好きだ。
この世で一番大切な人なんだ……。
「ふっ……ふざけんな父さん。遺言なんかいらねぇ。オレは……父さんの事が大好きなんだよっ!!
父さんには命を救われた! オレに医者の生き方を教えてくれた!! 今のオレがあるのは、全部ぜんぶ全部っ!! 父さんのお陰なんだっ!!
だからっ!! 今度はオレがお前を助けるって言ってんだろっ!! 恩返しぐらいさせろよっ!! 勝手に逃げてんじゃねぇ!!
オレは医者だっ!! この世で一番大切なものは、死んでも助けてやるっ!!」
オレは父さんと母さんを突き放して、小道を全速力で駆け下りていった。
追いかけてくる気配はなかった。
走る、走る、走る……
とにかく走る。
早く、もっと早く、風よりも早く。
ずっと遠くへ、青空の上まで……
「あぁああああっ!!!」
泣き叫びながら、呼吸を乱して走る。
すぐに、身体に疲れが押し寄せてくる。
当然だ。
つい昨日までオレは、王国軍の駐屯地の地下に監禁されて、
毎日毎日、朝から晩まで、男どものオモチャにされていたのだから。
「はぁ……はぁ……あぁ、あぁ……!!」
オレは、限界がきて、近くの草むらへと寝転がった。
全身から汗が噴きでてくる。
喉も乾いてきた。
お腹も空いたな……。
「水素」
ごくっ、ごくっ……
オレは水魔法で、喉の渇きを潤した。
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
家から飛び出したままの勢いで、オレはアルム村の端っこまで、走り抜けてきた。
日の出から時間は立っていないから、起きている人は少なかったのが幸いだ。
泣き顔なんて、見られたくないからな……
「ふぅ………」
朝の大空を見上げる。
鳥の音や草の音、虫の声が入り乱れて、心地のよい風がオレの身体を優しくなでて、目じりの涙を乾かしていく。
帰ってきたんだな……オレの故郷……
家に帰る気は起きなかった。
しばらく、この草むらで寝ようかな……気持ちいい……
なんて事も思ったけれど。
オレは立ち上がった。
(誠也に会いに行こう……)
オレはアルム村を出て、山道を歩きだした。
二つの山を越えた先に、誠也が休んでいるという採掘場の旅館がある。
まぁ、歩いていくには骨が折れる距離だ。
今から歩いても、着くのは正午を過ぎてからだろう。
一歩一歩、オレは歩みを進めていく。
オレの心の中は、ぐちゃぐちゃだった。
誠也に会いたい。
誠也なら、また笑顔で「私にまかせろ」なんて言って、オレの手を強く握って。
オレの悩みを全部、解決してくれるかもしれない。
誠也は、オレの本当の意味での、はじめての友達だったのかもしれない。
オレは今までずっと、貧富の差のせいで、他の子達からは距離を置かれていた。
オレの一番の友達は、いつも医学の勉強と小説だった。
誠也は、オレをマグダーラ山脈に連れていってくれると約束した。
父さんを絶対に助けるって、オレの手を握ってくれた。
オレは……誠也を愛してる。
年の差なんて関係ない。
オレは父さんを助けたい。
そして誠也と結ばれたい。
それで全部ハッピーエンドだ。
はやく誠也に抱きしめられたい。
あの時みたいな、甘くて濃いキスをしたい。
そんな妄想に耽りながら、オレは山道を登っていった。
オレの父さんが、拒魔病を患ったのだ。
拒魔病とは、読んで字の如く、
「体内に魔力をまったく吸収できなくなる難病」である。
それは、水が飲めなくなるとか、ご飯が食べれなくなるとか、それほど深刻な問題なのだ。
水や食料ほどの緊急性はないけれど、魔力は人間の生命活動に必須なエネルギー源である。
拒魔病にかかり、魔力が吸収できなくなった人間は、徐々に魔力を消耗して衰弱し、半年も経たずに死に至る。
そして恐ろしいことに、魔力が取り込めないせいで、回復魔法や解毒魔法が全く効かないのだ。
つまり、他の病気にもかかりやすくて、非常に治りにくいのだ。
でも、治す方法はある。
薬の大ダンジョン跡地、つまりマグダーラ山脈へと向かい、「ギルギリスの骨」を入手するのだ。
それを元に、魔力の受容体を人口的に作って移植すれば、父さんの命を助けられる。
オレは父さんを救うために、この村を飛び出した、はずだったのに……
何も出来ず、誠也の事を巻き込んで、両親とジルクに心配をかけて、
ただ心と身体に、深く傷を負って、ここまで帰ってきてしまったのだ……
久しぶりに帰ってきた故郷。
庭の土手に腰掛けて、感傷にふけっていると、
下の小道から足音が聞こえた。
それは、数か月ぶりに見た、オレの両親の姿だった。
ドクン、と、心臓が跳ね上がる。
胸の奥が熱くなって、全身に鳥肌がたつ。
勝手に涙がこみ上げてきて、視界がぐにゃりぐにゃりと滲んでいく。
「フィリア!? フィリアっ!!」
父さんに名前を呼ばれた。
もう駄目だった。
全て決壊した。
「お父さんっ!! お母さんっ!!」
オレは土手を滑りおちて、父さんと母さんの胸の中に飛び込んだ。
「うわぁぁぁぁぁんっ!!!」
村じゅうに響き渡るほどの大声で、わんわんと泣いた。
父さんと母さんの胸の中は、温かくて大きかった。
「フィリアっ!! よく帰ってきてくれたっ!! うぅぅぅっ!!」
泣いている父さんをみて、複雑な気持ちになった。
オレが帰ってきたということは、薬の入手に失敗したという事。
父さんの死ぬ運命は変わらない。
父さんはまだ元気そうだけど、あと一か月ぐらいで寝たきりになって、死んでしまうのだ。
「……父さんっ!! ……死んじゃ嫌だよぉぉ……!! なんでこうんなるだよぉぉっ!!」
オレが泣き叫ぶと、父さんは困ったような泣き顔をした。
「……フィリア。すまない……。オレは言い忘れていた。お前に大事な頼みがあるんだ……」
父さんは、そんな事を言った。
「オレの最後の頼みだ……」
………いやだ。
何を、言っているんだ? 父さん。
「フィリア、お前もう一人前の医者だ。オレがお前に教えられることは、もう残っていない」
………うそだ。
オレはまだ、父さんの足元にも及んでいない……
「どうか頼む、オレが居なくなった後は、お前が獣族達の医者になるんだ。……身勝手でワガママな願いだが、オレの後を継いでほしい」
……いやだ。
いやだいやだいやだ……
やっぱりオレは、受け入れられないよ。
諦めるなんて無理だ。
オレは父さんが大好きだ。
この世で一番大切な人なんだ……。
「ふっ……ふざけんな父さん。遺言なんかいらねぇ。オレは……父さんの事が大好きなんだよっ!!
父さんには命を救われた! オレに医者の生き方を教えてくれた!! 今のオレがあるのは、全部ぜんぶ全部っ!! 父さんのお陰なんだっ!!
だからっ!! 今度はオレがお前を助けるって言ってんだろっ!! 恩返しぐらいさせろよっ!! 勝手に逃げてんじゃねぇ!!
オレは医者だっ!! この世で一番大切なものは、死んでも助けてやるっ!!」
オレは父さんと母さんを突き放して、小道を全速力で駆け下りていった。
追いかけてくる気配はなかった。
走る、走る、走る……
とにかく走る。
早く、もっと早く、風よりも早く。
ずっと遠くへ、青空の上まで……
「あぁああああっ!!!」
泣き叫びながら、呼吸を乱して走る。
すぐに、身体に疲れが押し寄せてくる。
当然だ。
つい昨日までオレは、王国軍の駐屯地の地下に監禁されて、
毎日毎日、朝から晩まで、男どものオモチャにされていたのだから。
「はぁ……はぁ……あぁ、あぁ……!!」
オレは、限界がきて、近くの草むらへと寝転がった。
全身から汗が噴きでてくる。
喉も乾いてきた。
お腹も空いたな……。
「水素」
ごくっ、ごくっ……
オレは水魔法で、喉の渇きを潤した。
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
家から飛び出したままの勢いで、オレはアルム村の端っこまで、走り抜けてきた。
日の出から時間は立っていないから、起きている人は少なかったのが幸いだ。
泣き顔なんて、見られたくないからな……
「ふぅ………」
朝の大空を見上げる。
鳥の音や草の音、虫の声が入り乱れて、心地のよい風がオレの身体を優しくなでて、目じりの涙を乾かしていく。
帰ってきたんだな……オレの故郷……
家に帰る気は起きなかった。
しばらく、この草むらで寝ようかな……気持ちいい……
なんて事も思ったけれど。
オレは立ち上がった。
(誠也に会いに行こう……)
オレはアルム村を出て、山道を歩きだした。
二つの山を越えた先に、誠也が休んでいるという採掘場の旅館がある。
まぁ、歩いていくには骨が折れる距離だ。
今から歩いても、着くのは正午を過ぎてからだろう。
一歩一歩、オレは歩みを進めていく。
オレの心の中は、ぐちゃぐちゃだった。
誠也に会いたい。
誠也なら、また笑顔で「私にまかせろ」なんて言って、オレの手を強く握って。
オレの悩みを全部、解決してくれるかもしれない。
誠也は、オレの本当の意味での、はじめての友達だったのかもしれない。
オレは今までずっと、貧富の差のせいで、他の子達からは距離を置かれていた。
オレの一番の友達は、いつも医学の勉強と小説だった。
誠也は、オレをマグダーラ山脈に連れていってくれると約束した。
父さんを絶対に助けるって、オレの手を握ってくれた。
オレは……誠也を愛してる。
年の差なんて関係ない。
オレは父さんを助けたい。
そして誠也と結ばれたい。
それで全部ハッピーエンドだ。
はやく誠也に抱きしめられたい。
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