クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第六膜 見抜きと血煙の仮面舞踏会編

百九十六射目「じゃあな。またね」

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 そして、私と行宗ゆきむねとフィリアは、小屋を出た。

 砂利道をさくさくと踏みしめながら、アルム村へと歩いていく。
 時刻は、もう昼下がり。
 空を飛び、戦い、気絶して、作戦会議をしていたから、かなり時間が経ったらしい。

「なぁ、和奈かずな。フィリアと話して、今日中にはこの獣族独立自治区を出発ようと思うんだが」

 行宗ゆきむねが口を開いた。
 一ヶ月という猶予があるのに、どうしてそこまで急いでいるのだろう? と一瞬疑問に思ったけれど。
 考えれば当然のことだ。
 人間の襲撃で、獣族が大量殺戮された今。
 獣族独立自治区に、人間である私達の居場所はない。

「そうだね。アルム村の人たちも、そうとう怒っているだろうから……」

 フィリアが避難誘導をしたお陰で、アルム村の住人は、ほとんど無事だったみたいだけど。
 村がことごとく破壊されたのだ。冷静でいられるハズがない。

 ただ、一つだけ、私には心残りがあった。
 
「でも、一つだけ。フィリアにお願いしてもいい?
 アイリスちゃんのこと、見てあげてほしい」

「アイリス……アルム村で暴れてたジャイガの娘だろう?」

「うん。アイリスちゃんは、歌の特殊スキルの力で、私と行宗の命を助けてくれたの。
 でも、私はアイリスの両親を守れなかった。目の前で、動けば助けられたのに。
 マナ騎士団がクラスメイトだったショックで、私の身体は固まって、全く動かなかった」

「なるほどそれで、アイリスの歌の力が、暴走状態になったってことか」

 行宗ゆきむねが言った。

「もともと、何かの病気だって言ってた。歌を歌うと、血を吐いて苦しんでいたから」

「へぇ」

 フィリアの目つきが、真剣なものに変わった。

「……私はもう、謝れない。仲直りなんてできないけど。
 アイリスちゃんは、優しくて強い女の子だから。

「まかせろ」

 フィリアは、私の肩をがしりと掴んだ。
 
「アイリスのことも、獣族独立自治区のことも、オレ達がなんとかする。
 だから、外のことは頼んだぜ、お前ら」

 フィリアの言葉に、応えるように。

「まかせて。私達二人で、世界を救ってみせるから!」

 大げさなセリフで、胸を叩いた。


 ★★★


 アルム村の、崖上にて、ジルクが荷物を揃えて待機していた。
 2人分の大きなリュックだ。
 中には保存食や着替え、武器や地図、ガロン金貨、図鑑や薬などが詰まっている。
 もともと、天空の大ダンジョンの攻略までを想定した荷物だ。
 ガロン王国の王都までなら、十分すぎる用意だろう。
 
「あった」

 私は弾んだ声で、草むらからボール拾い上げる。
 行宗ゆきむねの手作りのサッカーボールだ。
 今朝、北の街ぜピアに向かって飛んだとき、ここに置きっぱなしにしていたようだ。

「……持って行くのか?」

「もちろんだよ。わたしにとっての、大切なお守りだから」

 私は、サッカーボールをぎゅっと抱きしめてから、リュックの中へと押し込んだ。

 
 ★★★


「悪かったな。ちゃんと見送りできなくて。オレも早く診療所に戻らねぇと」

 フィリアが、寂しげな表情で言った。

「俺達もすぐに出発するよ。獣族とトラブルにならないうちに」

 行宗ゆきむねがそっけなく応える。

「じゃあな。行宗ゆきむね和奈かずな

 フィリアは、私たちに背中を向けて、ゆっくりと歩き出した。
 ジルクも名残惜しそうに、それに倣う。

 あっけない。
 私は、心臓がギュッと締め付けられるようだった。
 今まで、3ヶ月間。家族同然の生活をしてきた。
 私はフィリアちゃんに、命を救われた。
 今は焼け跡となった、このアルム村で、私は……

「今までありがとう。またねっ!」

 私は叫んだ。

「元気でな。フィリアっ! ジルク! ……マナトやジュリアさんにもよろしくな」

「おう!」

 遠くから、フィリアの声が聞こえて。
 それが私たちの別れになった。

 ふぅ、
 と、息を吐いく。
 雨の少ない独立自治区に、まばらに生えた木々の葉をみれば、かすかに赤みを帯びはじめている。
 紅葉の気配を感じる、初秋。

「よし、行くか」

「うん」

 私と行宗ゆきむねは、リュックを背負う。
 ときどき後ろを振り返りながらも、前に向かって歩き出した。

 最初の目的地は、南。
 ガロン王国、ギラギース地区の街である。

 最終目的地のガロン王国首都とは反対方向であるが、
 ギラギース地区には大きな河があり、船で北の上流へと登っていくのだ。
 それが一番早いらしい。
 
 行宗ゆきむねが言うには、ギラギース地区は、マグダーラ山脈に行くときも通った道らしい。
 そのときはメンバーに獣族のフィリアが居たから、大河を渡るために、空を飛んだり地下トンネルに潜ったり、苦労したみたいだけど。

 今回は、私も行宗ゆきむねも獣族ではないので、堂々と橋を渡って行けるだろう。

 
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