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闇の中で誰かが泣いている声が聞こえる・・・。
「洸紀泣いているのか?」
すんなりと自然に出た名前に自分でも驚くが、それでも洸紀の泣いている事の方が重要な気がする。
自分と相討ちし果てた魔物の生まれ変わり、そして今は弱く脆い容をした少年。
「洸紀どうして泣いている?」
姿の見えない闇の中泣いている相手に呼びかける、その声は穏やかで優しい声だった。
―僕に力が無いから
「そんな事は無い」
―僕が彼じゃないから
「洸紀・・・いつかはお前も目覚める・・・お前が望まなくても、お前は『白銀の魔物』に戻る」
―でも君が傷つく・・・僕に力が無いから、彼じゃないから
「問題ない、俺が天使だった頃はもっと怪我をしていた。すぐに治るがな」
過去を振り返る事は好きではなかったが、天界にいた時はもっと傷ついていた、再び天へ還ればそんな日々が自分を待っている。
―秦・・・僕はどうすれば強くなれるのかな?
「洸紀お前はそのままでいろ」
―ダメ・・・それじゃダメ
「いい、それで・・・」
「それでは何も変わらない」
秦の背後で遠い昔に聞いた声がする、けれど後ろを振り返るつもりは無い、声の主は彼だからだ。
「お前は何を望んでいる?」
背後から聞こえる声の持ち主はきっと白銀の髪と銀灰色の瞳をしているだろう。
「約束の成就を」
「約束・・・」
―約束は守らないと
不安げに震える洸紀の声と彼の声が重なる、同じ声・・・いや全く違う2つの声。
「お前もずっと縛られているのか」
「約束は成就させる、どんな形でも」
―約束・・・秦待っていてね。必ず帰るから
「洸紀・・・分った。待っているお前が戻って来るのを」
―絶対だからね
何時の間にか泣き止んでいた洸紀が秦と交わす約束に安堵し気配が遠退いていく、秦の背後にいる彼の気配もまた薄れていく。
「間もなく訪れる・・・約束の成就する日が・・・」
「それはお前が還る時か」
「・・・」
彼の気配も消え闇の中に秦独りが置き去りにされる、けれど洸紀との約束を守る為に彼は深い蒼い瞳を閉じた・・・。
「こう・・き。洸紀」
「え、あ。ハデス」
「ふふ、すごく幸せそうだったけれど。そんなに良い夢だったのかな?」
目覚めたばかりのボンヤリとした頭が覚醒し、愉しげに笑うハデスと無表情なシャラの顔を交互に見つめ、熟睡していた事に顔を赤くしてしまう。
「え、いや。あはは」
誤魔化す為に笑いながら、夢の中で秦とそして・・・彼と会話した事は自分の胸の中に仕舞い込んでおこう・・・夢の中だとしても秦が待っていてくれると言ってくれたのだから、それを励みにしてハデスとシャラの協力を得て一刻も早く花を持ち帰ろうと改める。
「大切な人の夢ですか?」
「え?ち、ちが」
「シャラからかったりしたダメだよー」
「それもそうですね。所で洸紀、この状況で熟睡とはすごいですね」
シャラが言うこの状況とは、ハデスが気絶させた屍鳥の背に乗りはるか上空を高速で飛んでいる危険な状況だった。
「う、ごめんなさい」
「いやいや、落ちなければいいよ。落ちたら流石に・・・ね」
高い所は全然平気だが、こう高速で移動している最中に寝てしまうとは我ながら自分の神経を疑ってしまう。
「どうですか、冥界の空は?」
骨で出来た巨大な鳥の背はお世辞にも寝心地も、座り心地も良いとは言えない。
けれど風を感じながらの空の旅はもう経験出来ないだろう、その点では最高と言える。
「こんな体験出来ないからね、すごいよ。風も気持ち良いし」
「それなら良いんだ。中央界と違って此処はずっとこの空だから」
髪や服を靡かせ屍鳥が空を翔る、確かにこの灰色の空しか存在しなければ気が滅入ってしまうだろう。
「かつて洸紀貴方が『白銀の魔物』だった時に生きていた地界は、夜しかない世界つまり闇の世界です。それが其々の世界の在り方です」
「灰色の世界と、闇の世界・・・その世界にいる人達は他の空も見てみたいよね」
その言葉にハデスの深い藍色の瞳が揺らぐ、シャラがハデスを見つめ灰色の空をアメジストの瞳に映す。
「見たいよ。蒼く澄み切った空を・・・」
「ハデス」
ハデスも蒼い空を見たいと望むなら、地界にいる魔物達も夜以外の空を求めないのか・・・洸紀に会いに来たケルベロスは中央界の空をどう思ったのか・・・。
何か絶対に忘れてはいけない大切な筈の事が思い出せない、いつかその大切な筈の何かを思い出す時が来る、その時が洸紀が洸紀で無くなる時なのだろうか。
「僕はこの世界が全てだから、願うだけだけど」
「そっか」
そう言われてしまえば洸紀には何も言えない、ニコリと笑うハデスの笑みが寂しげに見えた。
「洸紀間もなく着きますよ。あれが柱です」
「あれが・・・」
シャラが指差す先に巨大な灰色の柱が天高く聳え、柱の終わりが見えなかった。
「さあ、降りようか。『真睡花』は地上に在るから」
「う、うん」
屍鳥の頭をハデスが撫で、鳥が地上へと下降していく。
地上に降り立つとやはり柱の周りは潤いの無い、干乾びた砂の大地しか無く、花が咲いている気配は無い。
「また帰りも頼むよ」
屍鳥の頭をハデスが撫でると大人しく翼をしまい、数歩後ろへ下がる。
「さあ、行きましょう」
柱の周りには何も無い、勿論花も無ければ雑草すら生えていない。
「何処に『真睡花』が・・・」
「こちらです・・・」
シャラが褐色の手を洸紀に差し出す、触れた手は確かに人の柔らかさをしていたが、温もりは無く洸紀の温かい手の体温を奪っていく、ハデスが柱に手を触れると柱の周辺が液体の様に波紋を生み出した。
「すごい」
「この中に花があります」
「さあ、時間も無い。急ごうか」
そうだ秦が待っている、洸紀が頷き波紋を浮かばせる柱の入り口から中へと入って行った。
「此処が柱の中、上に行く時はこうしてそこの中央に在る乗り物で上へ昇るんだよ」
「下に降りる機会が余り無いので、滅多に使われる事がありません」
ハデスが指を指す、円柱の中は暗く点々とした灯りしかなく、中央には丸い台座がありそれに乗って上へ行くらしい。
「時間があれば上を案内したいけどね」
「うん、ありがとうハデス」
「さあ、洸紀こちらへ」
確かに洸紀も興味はあったが観光で来ているのとは訳が違う、気持ちだけ受け取りシャラに誘われる。
「さあ、洸紀此方へ。此処に立って下さい」
「目を閉じて」
シャラに促されハデスが洸紀の目の上に掌を重ねる、ひんやりとした感触が心地好く暫くの間、闇に溶け込み懐かしい気分を味わう。
「目を開けて・・・」
シャラ達が一歩洸紀から離れていく気配を、感じながらそっと目を開ける。
「あっ・・・」
目の前に鏡など無かった・・・いや正確には鏡とも言えない、人の姿を映すものなど存在しない筈。
「洸紀。目を逸らしては駄目だよ」
「その鏡は『真睡鏡』と言う己の真実の姿を映す鏡です。その鏡に映る姿が貴方の真実・・・」
驚愕に目を見張り目を逸らしたくなるの堪える、真実が残酷なのは今までで散々思い知っていたが、改めて洸紀の目の前に突き立てられる。
『真睡鏡』が映す真実の洸紀の姿、顔を見た事が無いが間違い無く目の前に映る、白銀の髪と銀灰色の瞳を持つ並外れ容姿をした彼が『白銀の魔物』・・・かつての自分なのだろう。
「やっぱり僕は彼なんだね・・・」
涙が頬を止め処なく伝う、今迄散々言われて来た事だ、けれど目の前に確たる証拠と共に突きつけられてしまえば、もう逃げ場など無い。
「辛いですか?」
シャラの問いに静かに首を振る、漠然と受け入れて来た真実が、この時を持って明確に自分の在り方を示す洸紀に、1つの答えが導き出された。
その答えが結末を産むのは、少し先の話しになる。
「洸紀『真睡鏡』に手を翳して、花はその先に在るから」
「この先・・・」
洸紀が表情を変え仕草を変えても、目の前に映る『白銀の魔物』の表情は変わらない、真っ直ぐに洸紀を見ている。
「時間がありません・・・洸紀」
シャラの急かす声に唾呑み込んで、『真睡鏡』に向かって手を伸ばす、鏡は洸紀の腕を呑み込んだ。
波紋を浮かばせながら靄の様な物が腕に絡む感触に眉を寄せる、鏡の向こう側の自分も手を差し出す。
眩しい程に白い手が洸紀の手に触れようとしている、傷1つ無い爪の先まで色素の薄い手は、剣を持ち秦と戦ったとは思えない繊細な手だった。
「花が」
鏡の向こうの『白銀の魔物』の手は何も持ってなどいなかった、けれど触れるか触れないかの距離に指が近付いた時、2人の手の間には花が在った。
「それがありとあらゆる病に効く『真睡花』です」
「お疲れ様、洸紀」
掴んだ花の感触を忘れずに鏡から引き抜くと、役目を終えた『真睡鏡』の中の彼も消えていた。
「これが、『真睡花』・・・良かった。これで秦が助かる」
手にした花は茎と葉は灰色の一見すると枯れているようにしか見えないが、花弁は色が無く薄く透けていた。
「この花弁を飲ませれば助かりますよ」
「ありがとう、2人とも!」
精一杯の笑顔で洸紀が2人に礼を言い、その表情を複雑な視線で見つめ、ハデスが先程まで洸紀が立っていた『真睡鏡』の前に立ち懐から出した小さな瓶の蓋を開け、『真睡鏡』を小瓶の中に取り込む。
「ハデス?」
小瓶に蓋をし首を傾げてその流れを見ていた洸紀に、その瓶を握らせる。
「これを、呑めば只一度だけかつての姿に戻れる」
「え・・・」
「けれど、使う時を良く考えて。間違えてしまえばずっと後悔する事になる」
「どうして。これを僕に?」
ひやりとした瓶とハデスを交互に見つめ、握り締める指に力を込めた。
「ご褒美だよ、良く頑張ったね」
「だって僕だけの力じゃない・・・2人の・・・」
御蔭だよ・・・言葉は最期まで伝えられなかった、何時の間にか止まっていた涙が視界を歪ませる。
「洸紀はすごいよ、たった独りでこの世界に来て、大切な人の為に此処まで頑張ったんだから」
ハデスが口元に笑みを浮かべ、洸紀に顔を近づける左目に溜まった涙をその唇でそっと拭った。
柔らかな感触、前にそうやって秦にも涙を拭われた事を思い出す、優しい行為に涙が止まる。
「人の味・・・まだ時間はあるよ」
「ハデス、ありがとう。君とシャラの御蔭で此処までこれたんだ」
「僕も洸紀に会えて良かった」
別れの時間が近付く、洸紀がハデスに握手を求めハデスもまた、それに応え手をしかっりと握る。
「さあ、行きましょう。ハデス貴方はこのまま上へ」
「ああ、そうだね。じゃあ、洸紀・・・」
「うん、あ、また・・・」
会えるとは限らないがまた会いたいと思う気持ちはある、少し寂しげにハデスは笑いながら2人を見送る。
洸紀はこのハデスの何処か諦めた寂しげな表情を忘れないだろう、自分もこんな風な表情を浮べているのかもしれない。
外に出てシャラと共に屍鳥背に乗り、行きよりも速度を上げ柱を後にした。
「洸紀・・・以前私は貴方に会った事があるんです」
「え?」
「洸紀ではなく『白銀の魔物』ですが」
風を感じながら空を飛行し、シャラがその名を口にする。
今迄実感が持てずにいたその名も、先程見た『真睡鏡』の中の姿で鮮明に脳裏に浮かぶ。
「彼は何を?」
「何も、只扉を見ていました」
洸紀を見つめるそのアメジストの瞳の先に、きっと彼がいるのだろう。
「何処か別の世界に行きたかったのかな」
「私には分りません。彼もまた扉を渡る資格を有しているので何時でも、その先に行けたんです」
「・・・」
「一度も彼は扉を使いませんでした」
「扉を使っていたら、僕は存在しなかったのかな」
「そうかもしれません。過去或いは未来を渡れば、もしかしたら・・・」
「そっか・・・でも彼は使わなかったね」
灰色の空を見上げる、洸紀が洸紀であって『白銀の魔物』は『白銀の魔物』だからこそ、両者の考えが結びつく事は無い。
「洸紀は使いますか?もし過去に行けるなら?」
シャラの問いに洸紀は沈黙する、戻れるならあの時間に、空を失ったあの時間に戻りたい。
けれど過去を変える事を人である洸紀には出来ない、それが禁忌だと知っているから。
「いや、どんなに亡くしてしまった人を取り戻したくとも、過去を変えるなんて出来ない」
「その答えに安心しました。実は扉を潜り世界を渡る事はまだ簡単なんです。けれど時を渡るに多大な代償を伴います。私が管理する『時の扉』で時を渡るのはほぼ不可能でしょう」
「ええっ!」
「すみません、少し洸紀をからかいました」
真顔でそうシャラに言われてしまうと、怒る気も起きない。
「さあ、着きました」
先程の岩に戻り屍鳥から降り立ち、シャラの手で扉を開いてもらう、最後に後ろを振り向き冥界をその目に焼き付かせた。
「・・・行きましょう」
きっともうこの世界には来ない、きっとハデスにも会えないだろう、この世界の友人に想いを馳せながら、冥界を後にした。
「洸紀此処でお別れです」
「シャラありがとう」
シャラが管理する灰色の羽根が降る空間で、シャラの懐に預かって貰っていた花を受け取り深々と頭を下げた。
「良いんですよ、楽しかったです・・・こう言うのも不謹慎ですが。後先程の質問ですが」
「もし、時を渡れたらって?」
「はい、本当は『白銀の魔物』に聞いてみたかったんです。結局は聴きそびれてしまって、だから貴方に尋ねたんです」
「分ったの?」
「分ったような気がします。きっと時を代償が無く渡れたとしても、あの方は渡らないでしょう・・・」
シャラが少しだけ微笑み、洸紀も笑顔で頷く。
「それでは洸紀」
「うん、シャラ・・・また会えるよね?」
「時が来ればいずれまた・・・と言っておきましょう」
洸紀の背後の扉が開かれる、洸紀がその扉を潜り音も無く扉が閉じて消えていく。
『帰って行ったね・・・シャラ』
灰色の羽と共にハデスの声が降ってくる、今の遣り取りも全て見ていたのだろう。
「ええ、洸紀が居るべき場所へ」
『良い子だったね』
「そうですね、何処か昔の誰かに似ていますよ」
『誰かな?』
「その方は今この世界で一番偉くなってしまいましたね」
『ふ・・・そっか』
楽しげな響きを含ませると、灰色の羽もまた震えながら踊るように回って降りてくる。
「貴方が介入した事で、地界の王のシナリオが変わりますね」
『これで、洸紀が少し自由に動けるのかもしれない』
「我々が出来るのは此処までです」
『そうだね、地界の王の願いはとてもささやかなものだった。けれど地界の王だからこそ、最も叶う事が難しい願いでもある』
それはハデスも同じかもしれない、ほんの小さな願いも叶う事が難しい。
「どの世界の支配者も何一つ自由が無く、嵌められた枷は重い・・・」
『シャラ、それでも僕はこの世界の・・・である事を誇りに思う』
ハデスの声が遠ざかっていく、久しぶりの逢瀬だった。
これで暫くまた会えないだろう、けれどその言葉でシャラの心が満たされる。
降り注ぐ羽と再びこの静かな空間で孤独な時間を過ごす、けれどその胸の内は温かさで満ちていた・・・。
「洸紀泣いているのか?」
すんなりと自然に出た名前に自分でも驚くが、それでも洸紀の泣いている事の方が重要な気がする。
自分と相討ちし果てた魔物の生まれ変わり、そして今は弱く脆い容をした少年。
「洸紀どうして泣いている?」
姿の見えない闇の中泣いている相手に呼びかける、その声は穏やかで優しい声だった。
―僕に力が無いから
「そんな事は無い」
―僕が彼じゃないから
「洸紀・・・いつかはお前も目覚める・・・お前が望まなくても、お前は『白銀の魔物』に戻る」
―でも君が傷つく・・・僕に力が無いから、彼じゃないから
「問題ない、俺が天使だった頃はもっと怪我をしていた。すぐに治るがな」
過去を振り返る事は好きではなかったが、天界にいた時はもっと傷ついていた、再び天へ還ればそんな日々が自分を待っている。
―秦・・・僕はどうすれば強くなれるのかな?
「洸紀お前はそのままでいろ」
―ダメ・・・それじゃダメ
「いい、それで・・・」
「それでは何も変わらない」
秦の背後で遠い昔に聞いた声がする、けれど後ろを振り返るつもりは無い、声の主は彼だからだ。
「お前は何を望んでいる?」
背後から聞こえる声の持ち主はきっと白銀の髪と銀灰色の瞳をしているだろう。
「約束の成就を」
「約束・・・」
―約束は守らないと
不安げに震える洸紀の声と彼の声が重なる、同じ声・・・いや全く違う2つの声。
「お前もずっと縛られているのか」
「約束は成就させる、どんな形でも」
―約束・・・秦待っていてね。必ず帰るから
「洸紀・・・分った。待っているお前が戻って来るのを」
―絶対だからね
何時の間にか泣き止んでいた洸紀が秦と交わす約束に安堵し気配が遠退いていく、秦の背後にいる彼の気配もまた薄れていく。
「間もなく訪れる・・・約束の成就する日が・・・」
「それはお前が還る時か」
「・・・」
彼の気配も消え闇の中に秦独りが置き去りにされる、けれど洸紀との約束を守る為に彼は深い蒼い瞳を閉じた・・・。
「こう・・き。洸紀」
「え、あ。ハデス」
「ふふ、すごく幸せそうだったけれど。そんなに良い夢だったのかな?」
目覚めたばかりのボンヤリとした頭が覚醒し、愉しげに笑うハデスと無表情なシャラの顔を交互に見つめ、熟睡していた事に顔を赤くしてしまう。
「え、いや。あはは」
誤魔化す為に笑いながら、夢の中で秦とそして・・・彼と会話した事は自分の胸の中に仕舞い込んでおこう・・・夢の中だとしても秦が待っていてくれると言ってくれたのだから、それを励みにしてハデスとシャラの協力を得て一刻も早く花を持ち帰ろうと改める。
「大切な人の夢ですか?」
「え?ち、ちが」
「シャラからかったりしたダメだよー」
「それもそうですね。所で洸紀、この状況で熟睡とはすごいですね」
シャラが言うこの状況とは、ハデスが気絶させた屍鳥の背に乗りはるか上空を高速で飛んでいる危険な状況だった。
「う、ごめんなさい」
「いやいや、落ちなければいいよ。落ちたら流石に・・・ね」
高い所は全然平気だが、こう高速で移動している最中に寝てしまうとは我ながら自分の神経を疑ってしまう。
「どうですか、冥界の空は?」
骨で出来た巨大な鳥の背はお世辞にも寝心地も、座り心地も良いとは言えない。
けれど風を感じながらの空の旅はもう経験出来ないだろう、その点では最高と言える。
「こんな体験出来ないからね、すごいよ。風も気持ち良いし」
「それなら良いんだ。中央界と違って此処はずっとこの空だから」
髪や服を靡かせ屍鳥が空を翔る、確かにこの灰色の空しか存在しなければ気が滅入ってしまうだろう。
「かつて洸紀貴方が『白銀の魔物』だった時に生きていた地界は、夜しかない世界つまり闇の世界です。それが其々の世界の在り方です」
「灰色の世界と、闇の世界・・・その世界にいる人達は他の空も見てみたいよね」
その言葉にハデスの深い藍色の瞳が揺らぐ、シャラがハデスを見つめ灰色の空をアメジストの瞳に映す。
「見たいよ。蒼く澄み切った空を・・・」
「ハデス」
ハデスも蒼い空を見たいと望むなら、地界にいる魔物達も夜以外の空を求めないのか・・・洸紀に会いに来たケルベロスは中央界の空をどう思ったのか・・・。
何か絶対に忘れてはいけない大切な筈の事が思い出せない、いつかその大切な筈の何かを思い出す時が来る、その時が洸紀が洸紀で無くなる時なのだろうか。
「僕はこの世界が全てだから、願うだけだけど」
「そっか」
そう言われてしまえば洸紀には何も言えない、ニコリと笑うハデスの笑みが寂しげに見えた。
「洸紀間もなく着きますよ。あれが柱です」
「あれが・・・」
シャラが指差す先に巨大な灰色の柱が天高く聳え、柱の終わりが見えなかった。
「さあ、降りようか。『真睡花』は地上に在るから」
「う、うん」
屍鳥の頭をハデスが撫で、鳥が地上へと下降していく。
地上に降り立つとやはり柱の周りは潤いの無い、干乾びた砂の大地しか無く、花が咲いている気配は無い。
「また帰りも頼むよ」
屍鳥の頭をハデスが撫でると大人しく翼をしまい、数歩後ろへ下がる。
「さあ、行きましょう」
柱の周りには何も無い、勿論花も無ければ雑草すら生えていない。
「何処に『真睡花』が・・・」
「こちらです・・・」
シャラが褐色の手を洸紀に差し出す、触れた手は確かに人の柔らかさをしていたが、温もりは無く洸紀の温かい手の体温を奪っていく、ハデスが柱に手を触れると柱の周辺が液体の様に波紋を生み出した。
「すごい」
「この中に花があります」
「さあ、時間も無い。急ごうか」
そうだ秦が待っている、洸紀が頷き波紋を浮かばせる柱の入り口から中へと入って行った。
「此処が柱の中、上に行く時はこうしてそこの中央に在る乗り物で上へ昇るんだよ」
「下に降りる機会が余り無いので、滅多に使われる事がありません」
ハデスが指を指す、円柱の中は暗く点々とした灯りしかなく、中央には丸い台座がありそれに乗って上へ行くらしい。
「時間があれば上を案内したいけどね」
「うん、ありがとうハデス」
「さあ、洸紀こちらへ」
確かに洸紀も興味はあったが観光で来ているのとは訳が違う、気持ちだけ受け取りシャラに誘われる。
「さあ、洸紀此方へ。此処に立って下さい」
「目を閉じて」
シャラに促されハデスが洸紀の目の上に掌を重ねる、ひんやりとした感触が心地好く暫くの間、闇に溶け込み懐かしい気分を味わう。
「目を開けて・・・」
シャラ達が一歩洸紀から離れていく気配を、感じながらそっと目を開ける。
「あっ・・・」
目の前に鏡など無かった・・・いや正確には鏡とも言えない、人の姿を映すものなど存在しない筈。
「洸紀。目を逸らしては駄目だよ」
「その鏡は『真睡鏡』と言う己の真実の姿を映す鏡です。その鏡に映る姿が貴方の真実・・・」
驚愕に目を見張り目を逸らしたくなるの堪える、真実が残酷なのは今までで散々思い知っていたが、改めて洸紀の目の前に突き立てられる。
『真睡鏡』が映す真実の洸紀の姿、顔を見た事が無いが間違い無く目の前に映る、白銀の髪と銀灰色の瞳を持つ並外れ容姿をした彼が『白銀の魔物』・・・かつての自分なのだろう。
「やっぱり僕は彼なんだね・・・」
涙が頬を止め処なく伝う、今迄散々言われて来た事だ、けれど目の前に確たる証拠と共に突きつけられてしまえば、もう逃げ場など無い。
「辛いですか?」
シャラの問いに静かに首を振る、漠然と受け入れて来た真実が、この時を持って明確に自分の在り方を示す洸紀に、1つの答えが導き出された。
その答えが結末を産むのは、少し先の話しになる。
「洸紀『真睡鏡』に手を翳して、花はその先に在るから」
「この先・・・」
洸紀が表情を変え仕草を変えても、目の前に映る『白銀の魔物』の表情は変わらない、真っ直ぐに洸紀を見ている。
「時間がありません・・・洸紀」
シャラの急かす声に唾呑み込んで、『真睡鏡』に向かって手を伸ばす、鏡は洸紀の腕を呑み込んだ。
波紋を浮かばせながら靄の様な物が腕に絡む感触に眉を寄せる、鏡の向こう側の自分も手を差し出す。
眩しい程に白い手が洸紀の手に触れようとしている、傷1つ無い爪の先まで色素の薄い手は、剣を持ち秦と戦ったとは思えない繊細な手だった。
「花が」
鏡の向こうの『白銀の魔物』の手は何も持ってなどいなかった、けれど触れるか触れないかの距離に指が近付いた時、2人の手の間には花が在った。
「それがありとあらゆる病に効く『真睡花』です」
「お疲れ様、洸紀」
掴んだ花の感触を忘れずに鏡から引き抜くと、役目を終えた『真睡鏡』の中の彼も消えていた。
「これが、『真睡花』・・・良かった。これで秦が助かる」
手にした花は茎と葉は灰色の一見すると枯れているようにしか見えないが、花弁は色が無く薄く透けていた。
「この花弁を飲ませれば助かりますよ」
「ありがとう、2人とも!」
精一杯の笑顔で洸紀が2人に礼を言い、その表情を複雑な視線で見つめ、ハデスが先程まで洸紀が立っていた『真睡鏡』の前に立ち懐から出した小さな瓶の蓋を開け、『真睡鏡』を小瓶の中に取り込む。
「ハデス?」
小瓶に蓋をし首を傾げてその流れを見ていた洸紀に、その瓶を握らせる。
「これを、呑めば只一度だけかつての姿に戻れる」
「え・・・」
「けれど、使う時を良く考えて。間違えてしまえばずっと後悔する事になる」
「どうして。これを僕に?」
ひやりとした瓶とハデスを交互に見つめ、握り締める指に力を込めた。
「ご褒美だよ、良く頑張ったね」
「だって僕だけの力じゃない・・・2人の・・・」
御蔭だよ・・・言葉は最期まで伝えられなかった、何時の間にか止まっていた涙が視界を歪ませる。
「洸紀はすごいよ、たった独りでこの世界に来て、大切な人の為に此処まで頑張ったんだから」
ハデスが口元に笑みを浮かべ、洸紀に顔を近づける左目に溜まった涙をその唇でそっと拭った。
柔らかな感触、前にそうやって秦にも涙を拭われた事を思い出す、優しい行為に涙が止まる。
「人の味・・・まだ時間はあるよ」
「ハデス、ありがとう。君とシャラの御蔭で此処までこれたんだ」
「僕も洸紀に会えて良かった」
別れの時間が近付く、洸紀がハデスに握手を求めハデスもまた、それに応え手をしかっりと握る。
「さあ、行きましょう。ハデス貴方はこのまま上へ」
「ああ、そうだね。じゃあ、洸紀・・・」
「うん、あ、また・・・」
会えるとは限らないがまた会いたいと思う気持ちはある、少し寂しげにハデスは笑いながら2人を見送る。
洸紀はこのハデスの何処か諦めた寂しげな表情を忘れないだろう、自分もこんな風な表情を浮べているのかもしれない。
外に出てシャラと共に屍鳥背に乗り、行きよりも速度を上げ柱を後にした。
「洸紀・・・以前私は貴方に会った事があるんです」
「え?」
「洸紀ではなく『白銀の魔物』ですが」
風を感じながら空を飛行し、シャラがその名を口にする。
今迄実感が持てずにいたその名も、先程見た『真睡鏡』の中の姿で鮮明に脳裏に浮かぶ。
「彼は何を?」
「何も、只扉を見ていました」
洸紀を見つめるそのアメジストの瞳の先に、きっと彼がいるのだろう。
「何処か別の世界に行きたかったのかな」
「私には分りません。彼もまた扉を渡る資格を有しているので何時でも、その先に行けたんです」
「・・・」
「一度も彼は扉を使いませんでした」
「扉を使っていたら、僕は存在しなかったのかな」
「そうかもしれません。過去或いは未来を渡れば、もしかしたら・・・」
「そっか・・・でも彼は使わなかったね」
灰色の空を見上げる、洸紀が洸紀であって『白銀の魔物』は『白銀の魔物』だからこそ、両者の考えが結びつく事は無い。
「洸紀は使いますか?もし過去に行けるなら?」
シャラの問いに洸紀は沈黙する、戻れるならあの時間に、空を失ったあの時間に戻りたい。
けれど過去を変える事を人である洸紀には出来ない、それが禁忌だと知っているから。
「いや、どんなに亡くしてしまった人を取り戻したくとも、過去を変えるなんて出来ない」
「その答えに安心しました。実は扉を潜り世界を渡る事はまだ簡単なんです。けれど時を渡るに多大な代償を伴います。私が管理する『時の扉』で時を渡るのはほぼ不可能でしょう」
「ええっ!」
「すみません、少し洸紀をからかいました」
真顔でそうシャラに言われてしまうと、怒る気も起きない。
「さあ、着きました」
先程の岩に戻り屍鳥から降り立ち、シャラの手で扉を開いてもらう、最後に後ろを振り向き冥界をその目に焼き付かせた。
「・・・行きましょう」
きっともうこの世界には来ない、きっとハデスにも会えないだろう、この世界の友人に想いを馳せながら、冥界を後にした。
「洸紀此処でお別れです」
「シャラありがとう」
シャラが管理する灰色の羽根が降る空間で、シャラの懐に預かって貰っていた花を受け取り深々と頭を下げた。
「良いんですよ、楽しかったです・・・こう言うのも不謹慎ですが。後先程の質問ですが」
「もし、時を渡れたらって?」
「はい、本当は『白銀の魔物』に聞いてみたかったんです。結局は聴きそびれてしまって、だから貴方に尋ねたんです」
「分ったの?」
「分ったような気がします。きっと時を代償が無く渡れたとしても、あの方は渡らないでしょう・・・」
シャラが少しだけ微笑み、洸紀も笑顔で頷く。
「それでは洸紀」
「うん、シャラ・・・また会えるよね?」
「時が来ればいずれまた・・・と言っておきましょう」
洸紀の背後の扉が開かれる、洸紀がその扉を潜り音も無く扉が閉じて消えていく。
『帰って行ったね・・・シャラ』
灰色の羽と共にハデスの声が降ってくる、今の遣り取りも全て見ていたのだろう。
「ええ、洸紀が居るべき場所へ」
『良い子だったね』
「そうですね、何処か昔の誰かに似ていますよ」
『誰かな?』
「その方は今この世界で一番偉くなってしまいましたね」
『ふ・・・そっか』
楽しげな響きを含ませると、灰色の羽もまた震えながら踊るように回って降りてくる。
「貴方が介入した事で、地界の王のシナリオが変わりますね」
『これで、洸紀が少し自由に動けるのかもしれない』
「我々が出来るのは此処までです」
『そうだね、地界の王の願いはとてもささやかなものだった。けれど地界の王だからこそ、最も叶う事が難しい願いでもある』
それはハデスも同じかもしれない、ほんの小さな願いも叶う事が難しい。
「どの世界の支配者も何一つ自由が無く、嵌められた枷は重い・・・」
『シャラ、それでも僕はこの世界の・・・である事を誇りに思う』
ハデスの声が遠ざかっていく、久しぶりの逢瀬だった。
これで暫くまた会えないだろう、けれどその言葉でシャラの心が満たされる。
降り注ぐ羽と再びこの静かな空間で孤独な時間を過ごす、けれどその胸の内は温かさで満ちていた・・・。
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