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14話
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「よーし、お前ら!いったん下がれ!ロイスが道を作ってくれるそうだ!」
ガイウスが大声で叫び、作業中の開拓者を呼び戻す。
「じゃあロイス。頼んだぞ」
「任された」
開拓者たちが全員下がるのを確認してから、ロイスは作業現場の最前線まで進む。
やる気がある様に見えるのは早く帰りたいからであって、決して今回の開拓に乗り気な訳では無い。
「精霊共…力を貸せ」
そして再び手の甲に火の契約紋が浮かび上がると、周りの木や葉がボウッと燃えて一瞬で炭になった。
今回燃えた範囲はロイスを中心にして半径3m程だ。ここに来る時は半径1mで十分だったが、後ろに控える開拓者達が通る事を考慮して範囲を広げた。
「おぉー。すげぇ熱量」
「確かに…木が一瞬で灰になってやがる。あんな熱量いきなり出せねぇぞ普通…」
「いやそれよりも…見ろ。一定の範囲しか燃えていない」
「あぁ…あんな精密な操作は初めて見た」
「スゲーけどさ…あいつの契約紋は水だって聞いた事あるぞ」
「俺は土って聞いたぞ。どうなってんだ?」
「噂に信憑性は無いって事だろうが…火の無い所に煙は立たないっていうからな。奴はコレクターの可能性が高い」
「なるほどな…だが変な気分だ。実力は信用に値するのに奴自身は信用出来そうにない」
ロイスの実力を見た開拓者達は驚きながらもしっかりと目に焼き付ける。
その内の数名は、ロイスの隠しても隠し切れない異様さに何となく気付いていた。流石開拓者なだけはあるという事だろう。
「道が出来た…すげぇなロイス。よしお前ら!後に続け!近づきすぎるなよ!」
ガイウスの指示は的確だ。魔法の効果範囲に誤って入れば木と同じく灰になってしまう。ロイスなら効果範囲を変える事も容易だが、そこまでしてやるつもりは無い。
開拓者達は一定の距離を保ちつつ、ロイスの作る黒焦げた道をゆっくりと進みだした。
「ガイウス!少し良いか!」
「どうした!」
魔法を行使して早数時間、先を歩くロイスがガイウスに呼びかけた。
「もう日が暮れる!ここを拠点にするから水の契約紋持ちに準備させろ!」
「水の?……あぁ分かった!」
ロイスの意図が分かったのか、ガイウスは水の契約紋持ちを直ぐに集めだした。
「そろそろ良いか。行くぞ!……はっ!」
ボッ!ドドドドドドド!
バッと手を広げると、ロイスの前方に炎が波の様に燃え広がった。
「おい!何をぼさっとしてる!火を消せ!」
燃えた範囲は約直径50m。ここまでの広範囲になると幾らロイスでも燃え広がらないように操作するのは困難で、所々大きな火災が発生している。このまま放っておけばどんどん火は燃え広がっていくだろう。
「あ…あぁ!」
呆気に取られていた水の契約紋持ちは、慌てて火を消し始めた。
「流石は開拓者、良い腕だ」
行動は一瞬遅れたものの開拓者達の手際は素早く、直ぐに火は消し止められた。
開拓者になるには実力だけでなく、判断力や行動力も問われる。少なくとも、国の上層部に選ばれるだけの実力はあるという事だろう。
「こんな簡単に拠点が築けるとは驚きだ…凄いな」
「今日からはこうやって拠点を移動しつつ開拓する。出来た道は他の奴らが舗装すれば良い」
「分かった。それが一番効率良さそうだ。それよりも…魔力は大丈夫か?」
「正直キツイな。だから今日はここまでなんだ」
本当はまだ余裕である。しかし、未開拓地は何が起こるか分からない危険地帯なので、その時の為に魔力は常に一定量を残しておきたかったのだ。
ロイスが合流してから開拓は一気に効率化した。
この数日間、燃やしては水で消火し、燃やしては消火するという単純作業を続け、一同は着実に道を築きつつあった。
だが剣の処刑林は広大で、まだ中間地点にも到達していない。ロイス1人なら2~3日あれば踏破出来るが、大人数となれば必然的に速度は遅くなる。
「こりゃ時間掛かるな…はぁ…レオンの飯が食べたい」
愚痴りながらも、ロイスが作業を止める事は無かった。
そしてある日、事件は起きた。
その日の前日は休みだった。魔力が回復する速度は常に一定なので、毎日消費していると睡眠を取っただけでは完全に回復しなくなったのだ。
今やこの開拓作業の中心はロイスである。という事はロイスが休みたいと申し出れば休ませるしかないのだ。
そして次の日の朝、丸一日休んだ事でロイスの魔力は完全に回復した。
魔力を消費していると少なからず倦怠感があるので、回復した事によって心身共にスッキリする筈だった。そう……筈だったのだ。
目を覚ましたロイスはずっと林の奥を見つめていた。
「疲れは取れたかロイス?…ってどうしたんだ?」
先に起きていたガイウスはロイスが朝から不機嫌な事に気が付いた。
寝起きだから不機嫌なのか?……初めはそう思ったガイウスだったが、それは直ぐに違うと分かった。寝起きのロイスとは何度か会っているが、不機嫌だった事は一度も無いからだ。
「分からないのか?空気が変わった」
「空気?……俺には何も…いや待て……確かに変な感じがするな。こりゃどういう事だ?」
「さぁ…俺の予想だと魔獣が近くにいる、若しくは環境自体が変化しようとしているのかも」
「魔獣か…嫌な単語だな。ん?ちょっと待て…環境が変化?何だそりゃ」
「開拓者なのに知らないのかよ…未開拓地はいきなり寒くなったり突風が吹いたりと環境が変化事が稀にある。その前兆の可能性も…ガイウス!戦闘態勢!寝ている奴は叩き起こせ!」
突然ロイスが慌てた様に叫んだ。
ガイウスは何が起きているのか分かっていなかったが、直ぐに理解した。否、理解させられた。
バサッバサッバサッバサッ
林の奥から突風を巻き起こして近づいてくる巨大な影、黒い竜が視界に入ったのだ。
ガイウスが大声で叫び、作業中の開拓者を呼び戻す。
「じゃあロイス。頼んだぞ」
「任された」
開拓者たちが全員下がるのを確認してから、ロイスは作業現場の最前線まで進む。
やる気がある様に見えるのは早く帰りたいからであって、決して今回の開拓に乗り気な訳では無い。
「精霊共…力を貸せ」
そして再び手の甲に火の契約紋が浮かび上がると、周りの木や葉がボウッと燃えて一瞬で炭になった。
今回燃えた範囲はロイスを中心にして半径3m程だ。ここに来る時は半径1mで十分だったが、後ろに控える開拓者達が通る事を考慮して範囲を広げた。
「おぉー。すげぇ熱量」
「確かに…木が一瞬で灰になってやがる。あんな熱量いきなり出せねぇぞ普通…」
「いやそれよりも…見ろ。一定の範囲しか燃えていない」
「あぁ…あんな精密な操作は初めて見た」
「スゲーけどさ…あいつの契約紋は水だって聞いた事あるぞ」
「俺は土って聞いたぞ。どうなってんだ?」
「噂に信憑性は無いって事だろうが…火の無い所に煙は立たないっていうからな。奴はコレクターの可能性が高い」
「なるほどな…だが変な気分だ。実力は信用に値するのに奴自身は信用出来そうにない」
ロイスの実力を見た開拓者達は驚きながらもしっかりと目に焼き付ける。
その内の数名は、ロイスの隠しても隠し切れない異様さに何となく気付いていた。流石開拓者なだけはあるという事だろう。
「道が出来た…すげぇなロイス。よしお前ら!後に続け!近づきすぎるなよ!」
ガイウスの指示は的確だ。魔法の効果範囲に誤って入れば木と同じく灰になってしまう。ロイスなら効果範囲を変える事も容易だが、そこまでしてやるつもりは無い。
開拓者達は一定の距離を保ちつつ、ロイスの作る黒焦げた道をゆっくりと進みだした。
「ガイウス!少し良いか!」
「どうした!」
魔法を行使して早数時間、先を歩くロイスがガイウスに呼びかけた。
「もう日が暮れる!ここを拠点にするから水の契約紋持ちに準備させろ!」
「水の?……あぁ分かった!」
ロイスの意図が分かったのか、ガイウスは水の契約紋持ちを直ぐに集めだした。
「そろそろ良いか。行くぞ!……はっ!」
ボッ!ドドドドドドド!
バッと手を広げると、ロイスの前方に炎が波の様に燃え広がった。
「おい!何をぼさっとしてる!火を消せ!」
燃えた範囲は約直径50m。ここまでの広範囲になると幾らロイスでも燃え広がらないように操作するのは困難で、所々大きな火災が発生している。このまま放っておけばどんどん火は燃え広がっていくだろう。
「あ…あぁ!」
呆気に取られていた水の契約紋持ちは、慌てて火を消し始めた。
「流石は開拓者、良い腕だ」
行動は一瞬遅れたものの開拓者達の手際は素早く、直ぐに火は消し止められた。
開拓者になるには実力だけでなく、判断力や行動力も問われる。少なくとも、国の上層部に選ばれるだけの実力はあるという事だろう。
「こんな簡単に拠点が築けるとは驚きだ…凄いな」
「今日からはこうやって拠点を移動しつつ開拓する。出来た道は他の奴らが舗装すれば良い」
「分かった。それが一番効率良さそうだ。それよりも…魔力は大丈夫か?」
「正直キツイな。だから今日はここまでなんだ」
本当はまだ余裕である。しかし、未開拓地は何が起こるか分からない危険地帯なので、その時の為に魔力は常に一定量を残しておきたかったのだ。
ロイスが合流してから開拓は一気に効率化した。
この数日間、燃やしては水で消火し、燃やしては消火するという単純作業を続け、一同は着実に道を築きつつあった。
だが剣の処刑林は広大で、まだ中間地点にも到達していない。ロイス1人なら2~3日あれば踏破出来るが、大人数となれば必然的に速度は遅くなる。
「こりゃ時間掛かるな…はぁ…レオンの飯が食べたい」
愚痴りながらも、ロイスが作業を止める事は無かった。
そしてある日、事件は起きた。
その日の前日は休みだった。魔力が回復する速度は常に一定なので、毎日消費していると睡眠を取っただけでは完全に回復しなくなったのだ。
今やこの開拓作業の中心はロイスである。という事はロイスが休みたいと申し出れば休ませるしかないのだ。
そして次の日の朝、丸一日休んだ事でロイスの魔力は完全に回復した。
魔力を消費していると少なからず倦怠感があるので、回復した事によって心身共にスッキリする筈だった。そう……筈だったのだ。
目を覚ましたロイスはずっと林の奥を見つめていた。
「疲れは取れたかロイス?…ってどうしたんだ?」
先に起きていたガイウスはロイスが朝から不機嫌な事に気が付いた。
寝起きだから不機嫌なのか?……初めはそう思ったガイウスだったが、それは直ぐに違うと分かった。寝起きのロイスとは何度か会っているが、不機嫌だった事は一度も無いからだ。
「分からないのか?空気が変わった」
「空気?……俺には何も…いや待て……確かに変な感じがするな。こりゃどういう事だ?」
「さぁ…俺の予想だと魔獣が近くにいる、若しくは環境自体が変化しようとしているのかも」
「魔獣か…嫌な単語だな。ん?ちょっと待て…環境が変化?何だそりゃ」
「開拓者なのに知らないのかよ…未開拓地はいきなり寒くなったり突風が吹いたりと環境が変化事が稀にある。その前兆の可能性も…ガイウス!戦闘態勢!寝ている奴は叩き起こせ!」
突然ロイスが慌てた様に叫んだ。
ガイウスは何が起きているのか分かっていなかったが、直ぐに理解した。否、理解させられた。
バサッバサッバサッバサッ
林の奥から突風を巻き起こして近づいてくる巨大な影、黒い竜が視界に入ったのだ。
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