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15話
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バサッバサッバサッ
黒い竜はどんどん近づいて来る。まだ離れているにもかかわらず、まるで目の前にいるかの様な威圧感だ。
「く…くろ……い…竜…黒い竜だ…はっ!全員起きろ!」
パンッ!
正気に戻ったガイウスが手を叩くと、空気が破裂する大きな音が辺りに響き渡った。この大きさなら拠点で眠っている全員が目を覚ますだろう。
今のは圧縮した空気を爆発させるガイウスの魔法。手の甲は緑色なので風の契約紋持ちという事だろう。
「なぁガイウス。戦闘準備と言ったのは取り消す。俺達ではあれに勝てない」
「ロイスでも勝てないのか!?」
「俺の実力知らないだろ……まぁ…厳しいだろうな。俺1人だけなら分からないけど」
「ロイス1人だけならってどういう事だ?」
「足手纏いが居たら勝てる相手にも勝てない」
「…なるほど…俺達は足手纏いか……」
ガイウスはグッと拳を握りしめる。不甲斐ない自分に、こんな若造に託すしかない無力さに腹が立つ。
だがいつまでも悔しがっている訳にはいかない。黒い竜はすぐ傍まで迫っている。
パンッ!
もう一度空気を破裂させて、拠点にいる全員の視線を集める。
「聞け!黒い竜が現れた!直ぐに撤退だ!」
「なんだと!」
「何故撤退するんだ!」
「黙れ!反論は認めない!俺達では勝てないんだ!命を無駄にするな!」
あちこちから不満の声が上がる。だがガイウスはこの作戦の指揮官なので、命令を無視するわけにも行かず、開拓者達は渋々退却の準備を始めた。
だが……撤退は間に合わなかった。
ドンッ!
黒い竜は大きな音を立てながら拠点に舞い降りた。
「でか…どの竜とも違うな」
ロイスは降り立った黒い竜を冷静に観察する。
「早く逃げろ!」
「急げ!荷物は置いていけ!」
「くそ!何で戻って来るんだよ!」
拠点の彼方此方で開拓者達が逃げ惑う。
「あ…やべ」
ロイスは突然ガイウスの服を掴み、横に大きく跳躍する。
その瞬間……
ゴオォォォォォォォ!!
黒い竜が口から炎を吐き出した。
その炎は拠点を縦断するだけに留まらず、林の奥まで突き抜けて行く。
「あつっ!」
「ぐわあぁ…何だ!」
更に炎の温度も凄まじく、避けたロイスとガイウスにも熱波が襲い掛かる。
今の炎に多くの開拓者が巻き込まれた様に見えたが、明確な人数は分からない。何故なら炎が収まった時、そこには何もなかったからだ。
「骨も残らず…か…」
「済まん…助かった…」
助けてもらった事に感謝するガイウスだが、多くの仲間を失った事に呆然としている。
「これが…黒い竜の力……化物か」
「まさか…あれはただの威嚇に過ぎないと思うぞ」
「うそ…だろ……人間が勝てる相手じゃない」
「ガイウス構えろ!また来るぞ!」
ロイスには竜が炎、通称息吹を吐く時の前兆が分かる。次はさっきよりも威力の高い炎が来るだろう。
ゴゴゴオォォォォォォ!!
予想通り、さっきとは比べ物にならない熱量の炎が吐き出された。
息吹は運よく違う方向に吐かれ、ロイス達は炎が収まるのをじっと待つ。
ブンッ!
「マジか!ふざけんな!」
黒い竜が突然首を振る。
そして吐き出される炎は、拠点全てを薙ぎ払う様にしてロイス達にも襲い掛かる。
「精霊共!力を貸せ!」
火の契約紋から火の精霊に魔力を送る。
どうやらロイスは迫りくる息吹を自身の炎で防ぐつもりの様だ。
ドドドドドドド!
「うお!ぐぐぐ」
黒い竜の息吹がロイスの炎に衝突し、全身の骨が軋むほどの衝撃が襲い掛かる。
「ぐぐぐ…」
いつまで続くのだろうか…魔法を行使するロイスの手は少しずつ火傷を負っていく。
「な…がい…わ!」
そして漸く炎が収まった。
「ふぅ…げ!またかよ!」
ゴオォォォォォォ!!
終わったと思った瞬間、三度目の息吹が吐き出された。しかも今度はロイスめがけて。
黒い竜は自身の息吹が1人の人間に防がれた事に腹を立て、ロイスを標的にしたのかもしれない。
ドドドドドドドド!
「ぐおっ!…ふざけるな!」
ロイスに向けて放たれた息吹は、より威力を増している。
「ちょ…ちょ…調子に……乗るな!」
ロイスの周囲から黒い竜が吐いている炎と同じ規模の炎が発生し、炎を押し返していく。
「す…すげぇ……なんだこの魔法…ロイス…すげぇぞロイス!」
「死にたくないなら黙ってろ!」
「あぁ…済まん」
今話しかけられるのは正直ウザい。これほどの炎を押し返す為にかなり集中しているので、会話や雑念は邪魔でしかない。
「もっとだ!」
気合を入れると、炎はどんどん黒い竜の息吹を押し返していく。
「お前が…焼けろ!」
そしてついに…
ボバッ!ジュウゥ…
ロイスは競り勝った。
肝心の黒い竜は炎に包まれている。
「勝った…倒したぞ!」
ガイウスは黒い竜を倒せたと思っているらしい。この程度で倒せるなら誰も苦労などしないというのに…
「まだだ。それに…仮に倒していたとして…あんたはこの状況が勝ちだと思うのか?」
ロイスの言っている意味がよく分からない。だが辺りを見渡して漸く理解した。
「俺…たち…だけ……なのか…」
「あぁ。さっきの息吹に耐えたのは俺達だけみたいだ」
「全…滅……」
生き残っているのはロイスとガイウスだけだった。他の開拓者達の姿は何処にもなく、全員が息吹によって灰にされていた。
その事実に思わず足の力が抜けてしまい、ストンと地に膝を付けた。ロイスに助けてもらっていなければ、ガイウス自身消し炭になっていただろう。
そして戦いはまだ終わっていなかった。むしろこれからが本番だ。
グラアァァァァアァ!!
突然、剣の処刑林中に鼓膜が裂けるほどの咆哮が響き渡った。
そして炎に包まれていた黒い竜は何事も無かったかのようにこちらを睨みつけている。
あぁ…俺の人生もここまでだ…
咆哮を聞き、目が合った瞬間…ガイウスは人生を諦めた。
黒い竜はどんどん近づいて来る。まだ離れているにもかかわらず、まるで目の前にいるかの様な威圧感だ。
「く…くろ……い…竜…黒い竜だ…はっ!全員起きろ!」
パンッ!
正気に戻ったガイウスが手を叩くと、空気が破裂する大きな音が辺りに響き渡った。この大きさなら拠点で眠っている全員が目を覚ますだろう。
今のは圧縮した空気を爆発させるガイウスの魔法。手の甲は緑色なので風の契約紋持ちという事だろう。
「なぁガイウス。戦闘準備と言ったのは取り消す。俺達ではあれに勝てない」
「ロイスでも勝てないのか!?」
「俺の実力知らないだろ……まぁ…厳しいだろうな。俺1人だけなら分からないけど」
「ロイス1人だけならってどういう事だ?」
「足手纏いが居たら勝てる相手にも勝てない」
「…なるほど…俺達は足手纏いか……」
ガイウスはグッと拳を握りしめる。不甲斐ない自分に、こんな若造に託すしかない無力さに腹が立つ。
だがいつまでも悔しがっている訳にはいかない。黒い竜はすぐ傍まで迫っている。
パンッ!
もう一度空気を破裂させて、拠点にいる全員の視線を集める。
「聞け!黒い竜が現れた!直ぐに撤退だ!」
「なんだと!」
「何故撤退するんだ!」
「黙れ!反論は認めない!俺達では勝てないんだ!命を無駄にするな!」
あちこちから不満の声が上がる。だがガイウスはこの作戦の指揮官なので、命令を無視するわけにも行かず、開拓者達は渋々退却の準備を始めた。
だが……撤退は間に合わなかった。
ドンッ!
黒い竜は大きな音を立てながら拠点に舞い降りた。
「でか…どの竜とも違うな」
ロイスは降り立った黒い竜を冷静に観察する。
「早く逃げろ!」
「急げ!荷物は置いていけ!」
「くそ!何で戻って来るんだよ!」
拠点の彼方此方で開拓者達が逃げ惑う。
「あ…やべ」
ロイスは突然ガイウスの服を掴み、横に大きく跳躍する。
その瞬間……
ゴオォォォォォォォ!!
黒い竜が口から炎を吐き出した。
その炎は拠点を縦断するだけに留まらず、林の奥まで突き抜けて行く。
「あつっ!」
「ぐわあぁ…何だ!」
更に炎の温度も凄まじく、避けたロイスとガイウスにも熱波が襲い掛かる。
今の炎に多くの開拓者が巻き込まれた様に見えたが、明確な人数は分からない。何故なら炎が収まった時、そこには何もなかったからだ。
「骨も残らず…か…」
「済まん…助かった…」
助けてもらった事に感謝するガイウスだが、多くの仲間を失った事に呆然としている。
「これが…黒い竜の力……化物か」
「まさか…あれはただの威嚇に過ぎないと思うぞ」
「うそ…だろ……人間が勝てる相手じゃない」
「ガイウス構えろ!また来るぞ!」
ロイスには竜が炎、通称息吹を吐く時の前兆が分かる。次はさっきよりも威力の高い炎が来るだろう。
ゴゴゴオォォォォォォ!!
予想通り、さっきとは比べ物にならない熱量の炎が吐き出された。
息吹は運よく違う方向に吐かれ、ロイス達は炎が収まるのをじっと待つ。
ブンッ!
「マジか!ふざけんな!」
黒い竜が突然首を振る。
そして吐き出される炎は、拠点全てを薙ぎ払う様にしてロイス達にも襲い掛かる。
「精霊共!力を貸せ!」
火の契約紋から火の精霊に魔力を送る。
どうやらロイスは迫りくる息吹を自身の炎で防ぐつもりの様だ。
ドドドドドドド!
「うお!ぐぐぐ」
黒い竜の息吹がロイスの炎に衝突し、全身の骨が軋むほどの衝撃が襲い掛かる。
「ぐぐぐ…」
いつまで続くのだろうか…魔法を行使するロイスの手は少しずつ火傷を負っていく。
「な…がい…わ!」
そして漸く炎が収まった。
「ふぅ…げ!またかよ!」
ゴオォォォォォォ!!
終わったと思った瞬間、三度目の息吹が吐き出された。しかも今度はロイスめがけて。
黒い竜は自身の息吹が1人の人間に防がれた事に腹を立て、ロイスを標的にしたのかもしれない。
ドドドドドドドド!
「ぐおっ!…ふざけるな!」
ロイスに向けて放たれた息吹は、より威力を増している。
「ちょ…ちょ…調子に……乗るな!」
ロイスの周囲から黒い竜が吐いている炎と同じ規模の炎が発生し、炎を押し返していく。
「す…すげぇ……なんだこの魔法…ロイス…すげぇぞロイス!」
「死にたくないなら黙ってろ!」
「あぁ…済まん」
今話しかけられるのは正直ウザい。これほどの炎を押し返す為にかなり集中しているので、会話や雑念は邪魔でしかない。
「もっとだ!」
気合を入れると、炎はどんどん黒い竜の息吹を押し返していく。
「お前が…焼けろ!」
そしてついに…
ボバッ!ジュウゥ…
ロイスは競り勝った。
肝心の黒い竜は炎に包まれている。
「勝った…倒したぞ!」
ガイウスは黒い竜を倒せたと思っているらしい。この程度で倒せるなら誰も苦労などしないというのに…
「まだだ。それに…仮に倒していたとして…あんたはこの状況が勝ちだと思うのか?」
ロイスの言っている意味がよく分からない。だが辺りを見渡して漸く理解した。
「俺…たち…だけ……なのか…」
「あぁ。さっきの息吹に耐えたのは俺達だけみたいだ」
「全…滅……」
生き残っているのはロイスとガイウスだけだった。他の開拓者達の姿は何処にもなく、全員が息吹によって灰にされていた。
その事実に思わず足の力が抜けてしまい、ストンと地に膝を付けた。ロイスに助けてもらっていなければ、ガイウス自身消し炭になっていただろう。
そして戦いはまだ終わっていなかった。むしろこれからが本番だ。
グラアァァァァアァ!!
突然、剣の処刑林中に鼓膜が裂けるほどの咆哮が響き渡った。
そして炎に包まれていた黒い竜は何事も無かったかのようにこちらを睨みつけている。
あぁ…俺の人生もここまでだ…
咆哮を聞き、目が合った瞬間…ガイウスは人生を諦めた。
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この度ついに完結しました。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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