神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

文字の大きさ
104 / 163
第8章 黒竜の雛と特級冒険者

組合本部

しおりを挟む
「あれが王都アルカナ…」
「想像以上だな…湖が巨大すぎて王都がボンヤリとしか見えない」

咲良達はトラスを出発して3日後、南の国の王都アルカナに到着した。
アルカナは北の国の王都アムルとは違い城壁はないが、その代わり巨大な湖の中心に建てる事で自然の要塞となっている。そのため、岸から架かる3本の橋を渡る以外にアルカナに入る方法は無い。

「とりあえず宿の確保だな。ソフィの友人の情報集めはそれからだ」
「咲良さんの用事はどうするんですか?」
「それは後で構わない…と言いたい所だが、特級になれば情報を集めやすいかもしれない」
「なるほど。確かにそうかもしれませんね」
「しばらく別行動を取るのが良いだろう。審査にどれほど時間が掛かるか分からないからな」
「分かりました。宿は同じなので時々情報交換しましょう」
「あぁ。なら俺はこれからギルド本部に向かう」
「私は料理大会に出場していた人を探してみます」

ソフィの友人がまだアルカナにいるかどうかは分からないが、料理大会に出ていた者、またはその関係者を当たれば少なくとも手掛かりは得られるはずだ。

「分かった。クロ、ソフィと一緒にいてやってくれるか?」
「キュイ!」

クロが任せろと言うように鳴く。

「クロちゃん?どうしてですか?」
「ソフィはまだ大きな町に来たことがないだろう?町っていうのは大きくなればなるほど裏の面も出てくるものだ」
「裏の面…ですか?」
「そうだ。奴隷商、薬物売買など裏では様々な事が行われているだろう。うろちょろしていたら厄介ごとに巻き込まれないとも限らない」

王都等の巨大都市に闇の部分は付き物だ。ソフィが情報収集の際に治安の悪い地区に踏み込んでしまう可能性はある。そうなればE級のソフィに抗う術はない。

「クロちゃんが守ってくれるのですか?」
「いや、クロにはまだ戦う力はない。だがクロと俺は繋がっているからな。お互いに居場所が分かるんだ」
「そうなんですか!それは凄いですね。でも居場所が分かったとしても…」
「感情も分かるのさ。もし何かあればクロが知らせてくれる」
「それは頼もしいですね。クロちゃんお願いね」
「キュイキュイ!」
「なら行ってくる。クロ、頼んだぞ」
「キュキュ!」

咲良はクロとソフィと別れギルド本部に向かう。
しばらく歩くとすぐにギルド本部が見えてきた。アルカナの中でも王城と同じくらい大きな建物がギルド本部なので迷うことなく到着できた。

「ここがギルド本部…」

咲良は巨大な扉を開けて中へと進む。すると中にいた冒険者たちが咲良を睨みつける。

(この反応は予想通りだな。気にするだけ無駄か…)

ギルド本部は職員、もしくはA級以上の冒険者しか基本的には出入り出来ず、取り扱う依頼も高難度のものばかりだ。つまり咲良を睨んでいる冒険者はA級以上の猛者という事になる。恐らく初めて見る冒険者の実力を見定めているのだろう。

咲良は睨んでくる冒険者を無視しながら受付に進む。しかし受付にたどり着く前に2階の方から強烈な視線が咲良に降りかかる。

(……ほぅ。あいつか…)

咲良はその視線の方を見やると、着物の上に長羽織を羽織り、刀を腰に差した見るからに侍の様な長髪の男がいた。

(かなり出来る。間違いなく特級だな)

咲良はその侍が特級冒険者であると瞬時に理解した。
初めて会う特級にワクワクが止まらない咲良はニヤリと笑みを浮かべると、侍も咲良の実力がわかった様でニヤリと笑い返した。

(こんな所で出会えるとは…やっぱりこの世界は面白い)

咲良は侍から目を逸らすと受付嬢に声を掛ける。

「すみません。昇級の審査をお願いしたいのですが」
「審査ですね。まずは身分証をお願いします……はい、確認しました。あなたが咲良さんなんですね」
「知っているんですか?」
「えぇ勿論です。あの天乱四柱の方々から直々の推薦ですからね。本部でもかなり話題になっていますよ」

マリア達天乱四柱の名は想像以上に有名の様だ。

「では推薦状をお願いします。この後グランドマスターと面会していただきますのでしばらくお待ちください」

グランドマスターはギルドマスター達の頂点に君臨する者で、その権力は一国の王を凌ぐとさえ言われている。

「分かりました。一つお聞きしたいのですが?」
「なんでしょう」
「2階にいた刀を差した男は誰ですか?」
「椿さんの事ですね。あの方は東の国から来た侍のという剣士だそうです」
「椿…か…」

咲良は椿という男に親近感が湧いた。同じ刀を持ち、名前も咲良は流桜と名乗っているので近い。

「椿さんがどうかされましたか?」
「いえ、特級に会ったのは初めてなので」
「よくご存知でしたね。椿さんが特級である事はあまり知られていないのですが」

咲良は受付嬢に鎌をかけた。椿の力は見抜いたが階級が特級であるとはまだ知らなかった。基本的に階級というのは他者に簡単に教えていいものではないが、鎌をかけたお陰であっさりと情報を仕入れることが出来た。

「特級の実力までは隠せないと言う事ですよ」
「なるほど。咲良さんは良い眼をお持ちなんですね」
「冒険者にとっては必須でしょう」
「その通りですね。ではグランドマスターの所へご案内します」

咲良は受付嬢に連れられてグランドマスターの部屋へ案内される。

コンッコンッ

「咲良さんをお連れしました。通してよろしいでしょうか?」
「入れ」
「咲良さん、ここからはお一人でどうぞ」
「分かりました。失礼します」

咲良が中に入った瞬間、全身に棘が刺さった様な感覚を覚えた。

「……何のつもりだ?」
「ほぅ。儂の殺気を浴びても一切動揺しないとはのぅ」

咲良に殺気を浴びせたのは銀髪のエルフだ。見た目は30代だが雰囲気や話し方からして歳はかなり取っている様に思える。


すぐに殺気は消えたが咲良は無表情だ。

「すまんの。じゃがこれでお主の実力はある程度把握出来た」
「全く…エルフってのはどいつもこいつも」

咲良は初めてマリアに会った時のことを思い出した。あの時もこのエルフの様に殺気を浴びせられた。殺気を浴びた所で痛くも痒くもないが不愉快なのは変わりない。
こんな出会い方は今後一切御免被りたいと心から思う咲良だった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

処理中です...