神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第8章 黒竜の雛と特級冒険者

護衛契約

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「それで薬はどこにある?」
「ククレという商人が持っているはずです」

2人はドレシアに着くと早速ククレという商人を探した。

「何処にもいないぞ」
「おかしいですね。すぐに見つかるはずなんですが」

2人はドレシアの商人にククレの所在を聞きまわったが、所在どころか名前すら知っている者はいなかった。

「そもそもユイルはククレという商人と面識はあるのか?」
「いえ、ありません。奥様だけです」
「だと思った……闇商人にも当たってみるか」

咲良は念の為に商人から聞き出しておいた闇商人の場所までユイルを案内する。その場所は人影のない裏路地にある喫茶店のような店だ。

「あんたはククレか?」
「えぇよくご存じで。ご用は何ですか?」

店に入って中に居た男に声を掛ける。まさか一人目で目当ての人物と出会えるとは思っていなかったがどうやら運が良かったらしい。

「僕はハワード家の使用人です。第二夫人より薬を取りに来るよう言われました」
「ハワード家?薬?一体何の話です?」
「え?何を言っているんです?」
「予想通りか…」

ユイルはククレの反応に困惑しているが咲良に驚きはなかった。

「咲良さん、どういうことですか?」
「後で話す。それよりククレ、お前は本当に第二夫人を知らないのか?」
「えぇ、ハワード家の方と繋がりなどありませんよ」
「なら外の奴らはお前とは無関係とでも?」
「な、何のことです?」
「思いの外分かりやすかったな。しばらく寝てろ、後で聞きたいことがある」

咲良はククレの意識を一瞬で刈り取るとユイルに向き直る。

「今この建物は囲まれている。ユイルを狙った暗殺者で間違いないだろう」
「そ、そんな!」
「少し待ってろ。すぐに終わらせる」

咲良はそういうと気配を消して外に出た。ユイルは目の前でいきなり消えた咲良に動揺していると外から戦闘音が聞こえてきた。

「外で何が…」

しばらくユイルが身を潜めていると外から戦闘音が聞こえなくなった。それと同時に咲良が悠々と店の中に入ってきた。

「咲良さん…」
「終わったぞ。気配を察知されちゃ暗殺者も形無しの様だ」
「そう…ですか…それで一体何が…」
「ここからは俺の予想だが…ユイルにとって辛い話になるだろう。聞きたいか?」
「僕にとって……話してください。何が起こっているのか知りたいです」

咲良はユイルの意思を確認すると話し出した。



「そんな…そんなことが…」
「証拠はない。だが今まで起きたことを考えれば容易に想像できる」
「………」
「使用人としては辛いだろうが切り替えろ。これからもお前は狙われるだろうし、長女のルーナの命も危うい可能性がある」
「お嬢様が…」
「守りたいか?」

咲良は真剣な表情でユイルに問う。

「僕に守る力はありません」
「一つだけあるだろう。ハワード家において今のお前の立場は何だ」
「僕の立場……」

ユイルは少し考えるとバッと咲良を強い眼差しで見つめる。どうやら覚悟が出来た様だ。

「咲良さん!あなたの力を見込んでお願いがあります!
「なんだ?」
「ハワード家次期当主として僕は家族を守る義務がある!なので護衛をあなたにお願いしたいのです!」
「一時的で良ければお受けしよう。ハワード家次期当主様」

咲良はユイルに敬意を払い小さく頭を下げる。

「ではすぐにアルカナに戻ります!このつまらない争いを収める為に!」
「仰せの通りに」
「畏まらないでください。なんだかムズムズします」

ユイルの言葉に咲良はフッと笑うと2人は急いでアルカナに向かった。


「ユイル、ハワード家に着くとまずルーナというお嬢さんに会わせてくれ」
「それは構いませんがどうしてですか?」
「俺は魔法医師だ。治せるかもしれない」
「本当ですか!?」
「もし無理でも原因は掴めるだろう」
「是非お願いします!」


2人がハワード家に着くと早速現当主のクレイダル・ハワードに面会する事になった。

「初めまして。冒険者の咲良です」
「ふむ。こちらの使用人が世話になった様だな。ここ暫く仕事で家を空けていてな。ユイルが行方不明になっていたとは知らなかった」

クレイダル・ハワードは立派な白鬚を生やした50代位の男だ。

「既にユイル様が継承権をお持ちである事を知っています」
「そうだったか。それで要件は何だ?」
「この度ユイル様の護衛を務めさせて頂く事になりました」
「ほう。ユイル専属という訳か」
「はい。つきましてはお耳に入れたい事がございます」
「話してみろ」
「ユイル様は何者かに命を狙われております。道中何度も刺客に襲われたので間違いありません。首謀者については捜索中です」
「そうか…ユイルが息子であるという情報が漏れていたか」

クレイダルは少し俯くと思案に暮れる。

「こちらでも調べておこう。報告ご苦労だったな」
「いえ。最後にルーナお嬢様の容体を診させて頂きます。私は魔法医師ですので。ユイル様の許可は得ていますが一応報告を」
「あぁ構わない」
「ありがとうございます。では失礼致します」

咲良はクレイダルと別れるとユイルに連れられてルーナが寝ている部屋へと案内された。

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