神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

兄弟喧嘩

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盗賊供が咲良の竜格に怯えている頃、椿はジャンと対峙していた。

「お久しぶりですね…ジャン」
「……この俺に何の用だ」
「分かっているでしょう。貴方が暁月流を名乗って悪事を働いたからです」
「師匠の差し金か」
「えぇ…師匠の代わりに来ました」
「で…あれは何だ?」

ジャンは険しい表情を浮かべて中庭に視線を移す。

「咲良さんですか…心配は無用です。彼は手を出しませんから」
「…何者だと聞いているんだ。異常だぞ」
「私にもよく分かりません。ただ…頼もしい味方である事は確かです」
「化物を連れてきやがって……だがお前が俺に勝てる道理は無いぞ」
「昔とは違います」
「生意気になったもんだ。証明してみせろ」
「そのつもりです」

2人は同時に刀を抜いて構える。

「「壱ノ型 飛燕!」」

ドガァーン!

お互いの飛燕がぶつかって辺りに衝撃が広がる。椿は衝撃が収まるのを待つ事無く行動を開始する。

「甘い。弐ノ型 伸月」

椿が距離を詰めようとした所でジャンはすかさず伸月を発動し、伸びる刀身が椿に襲い掛かる。
椿は走りながら体を捻って伸月を避けると、そのまま飛燕を放つ。

「俺を舐めすぎだ」

ジャンは刀を地面に突き刺すと同時に弐ノ型 伸月を発動する。
刀身が伸びたためにジャンは空高く昇っていき椿の飛燕を回避する。

「そら、お返しだ。乱飛燕!」

空中から無数の斬撃が椿に襲い掛かる。傍から見ると小規模のミサイルの様だ。

「くっ…」

咄嗟に魔力をドーム状に展開するが即席の魔力壁の強度は脆く、斬撃の雨が止んだ頃には椿の全身から血が滴り落ちていた。

「昔のままだな。お前は俺には勝てない」

ジャンはスタッと着地すると椿に声を掛ける。

「ぐ…そうですかね…判断するのは…まだ早い!」

椿は力強く立ち上がると魔装を発動する。

「バカか…俺にも魔装がある事を忘れたのか?」

ジャンも魔装を発動するが、魔力を感知出来る者ならすぐに分かってしまう程に差があった。

「単純な戦闘力も俺が上。魔装の質も俺が上。足掻くだけ無駄だ」
「…なぜ…」
「あ?」
「なぜ道を踏み外したのですか…」

発動したばかりの魔装を突然解いた椿がジャンに語りかける。
その表情はどこか複雑で、決して混ざる事の無い水と油の様に悲しみや怒りが窺える。

「俺はこっちの方が合ってるだけだ。お前らみたいにのうのうと生きるのはうんざりだ」
「師匠は…あなたを息子の様に思っていたのに!」
「知るか…奴に感謝するとすれば、暁月流を教わった事くらいだ」
「ジャン……戻ってくる気はないのですか」
「ふん…お前らとは見ている世界が違うんだ」
「そう…ですか…」
「お喋りはここまでだ」

ジャンは魔装の質を更に濃くするとゆっくりと椿に向かって歩き出す。

「知っていますか…魔装はただ濃くすれば良いという訳じゃないんです」
「負け惜しみか?」
「事実ですよ。咲良さんに教えてもらいましたから…見せてあげます。まだ短時間しか出来ませんが、本物の魔装を…」

椿は目を閉じると精神を統一するかの様に集中する。
ジャンはその異様な雰囲気に思わず歩みを止めてしまった。

「な…なんだそれは…」
「氣と魔力を合わせて初めて本物の魔装になるそうですよ」

なんと椿は魔力だけでなく氣も混ぜた魔装を発動した。
ジャンは氣を操れないので感知は出来ない。しかしそれでも椿の纏う魔装が今までとは一線を画すものである事は察した。

実は椿は咲良との修行において極短時間ではあるが咲良と同じ魔装を使える様になっていた。
元々無意識領域で氣を使えていた椿は咲良に手ほどきを受けた事でその才能を開花させたのだ。とはいっても咲良からすればまだまだ未熟なのだが…

「気を付けてください。私もまだ力を抑える事は出来ませんから」

椿が呟いた瞬間、ジャンはゾクッと恐怖を感じた。

(これは…やばい!)

そう思ったのも束の間、椿の姿が視界から消えていた。

「なにっ!どこに行きガッ!!!」

次の瞬間、ジャンは腹部に強烈な痛みを感じると共に中庭の大階段をガリガリと滑るように吹き飛んだ。

「う…うぐ……くそ……」
「気を抜かないで下さい」
「がはあぁぁ!!!」

ジャンが痛みに耐えながらも椿を探していると、いつの間にか上空にいた椿が落下する勢いを加えた重い拳で再度腹部を殴りつける。
ジャンの体はあまりの衝撃にくの字に曲がる。

「ぐ…この…どげぇ!!」

ジャンは叫び声をあげて椿に拳を振るうが、軽く避けられてしまった。

「はぁはぁはぁ…てめぇ…」
「もう諦めてください」
「ふざけ…やがって………」

ジャンはフラフラと立ち上がるとポケットから緑の液体が入った小瓶を取り出した。

「お前は……俺に…殺される運命なんだよ」

そういうとジャンは小瓶の液体を飲み干した。

「一体何を…」
「ゴクッ……これで形成逆転だ」

その瞬間、ジャンの魔力がどんどんと膨れ上がっていく。

「こ、これは…」
「良い気分だ……」

ジャンの魔力は今なお膨れ上がっていく。この現象に椿は何が起こっているのか理解できなかった。

遠くで見守っている1人を除いて…
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