神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

焦土ノ炎

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「気配で分かってはいたが本部のグランドマスターが戦場に来るとはな」
「意外かの?しかしこの非常事態じゃからの…儂が来る他なかったのじゃ」
「咲良…この人は?」
「ん?そうか、ソフィは会った事無かったな。こいつはグランドマスターのレオ、つまり全ギルドのトップだ」

ソフィは目の前の人物が想像以上の大物である事に心底驚いた。

「お主が咲良とパーティを組んだソフィアか。初めましてじゃの」
「は、初めまして」
「何だレオ、知ってたのか」
「当然じゃ。特級冒険者の動向はしっかり把握しておるからの。それに儂が直々に椿と連絡を取ってやったのじゃぞ」
「お、という事は椿は正式に俺たちのパーティに入った訳か」
「そうじゃ。喜んで所属させてもらうと言っておったわい」

グランドマスターのレオのお陰で椿は思いの外早く竜の守り人に入る事が出来た。これは咲良にとってうれしい誤算だ。

「ありがとなレオ。それにしても…少し顔色が悪いぞ」

レオの表情は疲労困憊で、まるで何日も寝ていないかの様だ。

「何か訳ありか?」
「うむ…実はの…他の町も魔物の群れに襲われておる」
「そ、そんな!」

ソフィが悲鳴のような声を上げる。これほどの魔物の群れが他の場所でも発生しているとは考えただけでも恐ろしい事だ。

「なるほどな…だからか」
「どういう事?」

咲良は何かに気付いていた様だがソフィには何の事か分からなかった。

「感知して気付いたがギルド本部があるにも拘らず戦場の冒険者の数が少なすぎるんだ。本来の数ならここまで苦戦する事は無かっただろう」
「本部所属の冒険者は各地に派遣されておる。ここが手薄になったのはそれが理由じゃ」
「他の場所もこれほどの規模なのか?」
「いや、ここが一番大きい規模じゃ」
「計算外の事が次々と起こっているという訳か」
「うむ。何者かが裏で糸を引いているとしか思えないほどにの」
「あり得るな。だがまずはこの現状を乗り切る必要がある」
「何か策でもあるのかの?」
「そのために来た」

咲良にはこの現状を打破する何らかの策があるようだ。

「してその策とは何じゃ?」
「今戦場に出ている冒険者を全て左側に集めろ。右側は俺達竜の守り人が対処する」
「え?私達!?」
「キュイ!」

クロはやる気満々の様だがソフィはタジタジだ。いきなりあの大群の半分を引き受けなければならないとなると仕方のない事ではある。

「なるほどの。それなら持ちこたえられるかも知れんの。頼んでもよいか?」
「もちろんだ。伝令は頼んだぞ」

咲良達は後の事をレオに任せて本部を後にする。

「咲良…本当に私達だけで?」
「心配するな。ソフィにも出番はある」
「そっちじゃなくて!」
「何とかなるさ。それに…クロにもそろそろ戦闘を経験させておきたい」

クロはこれまで本格的な戦闘をした事が無い。咲良の魔力と氣を全て吸収して生まれたので戦闘力はかなり高いだろうがクロノスの知識はまだ移行していないので経験が浅すぎる。
だがこの戦場でクロを戦わせればかなりの経験値を得ることが出来るだろう。

「クロちゃんの為か…なら私も頑張るしかないね!」
「キュイキュイ!」

ソフィとクロは気合を入れるかの様に声を上げる。

「さぁ行くぞ。この戦場を…終わらせる」
「うん!」
「キュイ!」

3人は竜の守り人としての初仕事を熟す為戦場に向かった。



竜の守り人が防衛ラインの右側に着いた頃、レオが送った伝令係も防衛ラインに到着していた。

「伝令!伝令!戦闘中の者は全員防衛ラインの左側に移動してください!」

伝令係は何かの魔法なのか戦場全土に聞こえるほど大きな声で叫んだ。

「なんだと!?」
「そんな無謀な作戦呑めるか!誰の指示だ」
「本部の指示です!右側は特級冒険者のパーティ竜の守り人が対応するので急いで下さい!」
「なに!?特級冒険者がいるのか!?」
「いくら特級冒険者と言えどそんな事出来るのか!?」
「だがこの状況だ!信じるしかねぇだろ!」
「行くぞ!俺達は左側だ!一匹たりとも魔物を通すんじゃねぇぞ!」
「「「おう!」」」

冒険者達は一致団結して行動を開始した。中にはこの指示に不満を持つ者も居たが、このままでは防衛ラインが破られるのは目に見えていたので奇策の様にも思えるこの作戦に嫌々でも従う他なかった。


ドゴオォォォォォォォォン!

冒険者達が左側に移動した時、竜の守り人がいるとされる右側で凄まじい音と共に巨大な炎が上がった。

「な、何だあれは!?」
「新手の魔物の仕業か!?」
「いや違う!あの方角は特級冒険者がいる所だ!」
「ならそのパーティの仕業か!」

冒険者達は遠くで舞い上がる炎を見上げながら口々に叫ぶ。

「何だこれは!す、すげぇ魔力だ!こんな膨大な魔力感じた事ねぇぞ!」

覚醒者だろうか、魔力を感知出来る冒険者が炎から溢れる膨大な魔力に驚きの声を上げる。それほどまでに舞い上がる炎の魔力は異常だった。

その異常な炎を生み出したのは勿論咲良だ。事は数分前、咲良達が目的地に到着した頃に遡る。




~炎が上がる数分前~

「伝令!伝令!戦闘中の者は全員防衛ラインの左側に移動して下さい!」

咲良達の耳にも伝令係の声が届くと、周りにいた冒険者は意図も分からぬまま左側へと移動していく。

「この声は伝令係の魔法だな…便利な魔法があったもんだ」
「そんな事より…こ、こんな数を相手にしなきゃいけないなんて…」

ソフィは目の前に迫る魔物の大群に怖気づいてしまう。

「冒険者を左側に移動させた所為で魔物がかなり迫って来た。まずは奴らを押し戻す」
「どうやって?」
「まぁ見てろ。クロ、初めての共同作業と行こうか」
「キュイ!」

咲良はクロにそう言うと黒竜化をした。

「やっぱり凄い迫力…」

ソフィが見るのは2度目だが、咲良の黒竜化は何度見ても慣れる事は無いだろうと心の中で思っていた。

「さてクロ…やる事は言わなくても分かってるな」
「キュイキュイ!」

咲良とクロは言葉を交わさなくともある程度の意思疎通が可能だ。これから咲良がしようとしている事をクロはしっかりと理解出来ていた。

「行くぞ!」
「キュイ!」

2対の黒竜は口に魔力を集めてググッと首を後ろに引く。

「黒竜の炎弾!」
「キュワー!」

黒竜の口から全てを灰と化す紅蓮の業火が放たれる。
2つの炎弾は1つに纏まって更に巨大な炎弾となって魔物の群れの奥に着弾した。

ドゴオォォォォォォォォン!

立っていられない程の衝撃と共に轟音が辺りに響き渡る。
傍で見ていたソフィは黒竜となった咲良の後ろに隠れていたため衝撃で吹き飛ばされる事は無かったがあまりの轟音に思わず目を瞑って耳を塞いだ。

音と衝撃が収まった頃、目を開いたソフィは唖然とする。2対の黒竜が放った炎弾によって目の前の土地は焦土と化していたのだ。魔物の死体は一切無く、全て燃え尽きていた。

「う…うそ…」
「即興にしては上出来だな。よくやったクロ。申し分ない威力だ」
「キュイキュイ!」

やはりクロは戦いの経験が無いだけで純粋な戦闘力は途轍もなく高い様だ。これで戦い方を学べば化けるだろう。最も世界の調停者なのだから当然なのかもしれないが…

「これでかなり押し戻せたな」
「そうだね!」
「キュイ!」
「だが本当の戦いはこれからだ。俺が前に出るから2人は俺が取りこぼした魔物を始末してくれ。行くぞ!」

3人は気を引き締めて前へと突き進む。
こうして竜の守り人が一気に知れ渡る事となる防衛戦が始まった。
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