神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

文字の大きさ
130 / 163
第9章 派生流派と天乱四柱

戦場混戦

しおりを挟む
「降りるぞソフィ」

戦場から少し離れた場所でソフィを下ろすと咲良は黒竜化を解く。すると少し遅れてクロがパタパタと飛んできた。

「お、速かったなクロ。かなり速く飛んだつもりだったんだが」
「キュイキュイ!」
「成長の証だな」

咲良がクロの確かな成長に喜んでいるとソフィが話しかけてくる。

「なんで直接行かないの?」
「黒竜の姿で行けば味方も混乱してしまうだろ。それに…あまり黒竜化は見せびらかしたくないからな」
「それもそっか。確かに皆ビックリするね」
「そういう事だ。よし、行くぞ」

3人は戦場に向かって走り出した。向かう先からは離れているにも拘らず凄まじい戦闘音が耳に入ってくる。

「気を引き締めろよソフィ。この先は常に死と隣り合わせだからな」
「う、うん」

ソフィは少し怯えた様子を見せるが咲良にはソフィを置いていくという選択肢は端から無かった。ソフィには少し酷かもしれないが今後の事を考えると様々な事を経験させておく必要があるからだ。


しばらく走ると直ぐに戦場に辿り着いた。そこで咲良は2人に指示を出す。

「常に見えざる者を発動した状態で俺から離れるな。クロはソフィを守れ。出来るな?」
「うん、分かった」
「キュイ!」

クロは任せろと胸を張るような仕草を見せる。
ソフィの見えざる者は気配を完全に断つ魔法だが、特定の人物には気配を感知させるようにする事が出来る。

「まずはこの戦場を仕切っている奴の元に向かう」

咲良は村正を抜くと目の前の魔物の群れに切り込んだ。魔物は様々な種の群れでは無く巨大な蛇ばかりで、少し不自然に感じた咲良だったがそれは後回しだ。

「ふっ!はっ!……ちっ…数が多すぎる」

次々と襲い掛かって来る巨大な蛇の魔物を片っ端から切り伏せる咲良だが、数が減るどころか増えている様にも感じる。

「これじゃ前に進めん。少しギアを上げるか」

後ろをチラリと見るとソフィとクロが必死に付いて来る姿が目に入るが、いくら倒してもすぐに囲まれてしまうのでこのままではジリ貧だ。

「クロ!ソフィ!ここは一気に切り抜ける!暁流弐ノ型 飛翔!」

咲良は魔装を発動し、全力の飛翔を前に放つ。

ドドドドドドドドッ!

巨大な飛翔が無数の蛇を吹き飛ばしていく。まるで地平線の彼方まで飛んでいくかの様で飛翔の威力が衰える事は無かった。

「開けたな。行くぞ!」
「うん!」
「キュイ!」

3人は目の前に出来た道を急いで駆けていく。ここでモタモタしていては折角出来た道が直ぐに魔物の群れで埋め尽くされてしまう。

その後も道が無くなると飛翔を放つという工程を何度も繰り返して漸く防衛ラインを築く冒険者たちの元に辿り着いた。

「誰だお前たちは!どこから来た!」

咲良達に気付いた1人の冒険者が声を荒げる。いきなり魔物の群れを掻き分けて現れた謎の一行を不審に思うのは当然の事だろう。

「トーレリアスから援軍に来た。ここの責任者に会いたい」
「う…」

話をしている咲良の後ろでソフィは口を押さえて蹲っている。その原因は目の前に広がる光景であちこちに冒険者の死体が転がっていた。戦場では当たり前の光景だが戦いとは無縁の地球人にとってはキツイものがある。

「援軍か…助かる。責任者なら門前の本部にいる」
「分かった。ソフィ…大丈夫か?」

咲良は蹲るソフィの背中を氣を送りながら撫でると楽になったのか顔色が良くなった。

「ありがとう。ごめんね」
「気にするな。少しずつ慣れていけばいい」
「おい、本部に行くなら現状の連絡を頼む。ここはもうダメだ。防衛ラインを下げないといけない」

冒険者が苦虫を噛み潰したような顔で咲良に話しかける。防衛ラインを下げなければいけない事が悔しいのだろう。

「まだ下げる必要はない」
「は?それはどういう意味だ…」

冒険者の疑問をよそに咲良は防衛ラインの端まで歩いていくと村正を鞘に仕舞い構えた。

「こういう意味だ……暁流抜刀術 破常!」

鞘の中で極限まで威力を高められた村正の一刀は防衛ライン辺りの魔物を全て真っ二つに切り裂く。その威力は凄まじく空間すら断ち切っていた。

「よし…初めてにしては上手くいったな」

なるべく多くの魔物を倒すために咲良は破常の一撃を扇状に広げたのだ。従来の破常は奥に斬撃が伸びていく。しかしそれでは防衛ラインを守る事は出来ないので横に広げた。それによって奥行は短くなるが範囲は広がる為この状況では最も適した形といえる。

「こ、これは…」
「す、すげぇ…」
「あいつは何者だ」

周りにいた冒険者は目の前で起こった出来事に驚きを隠せないでいる。

「これで一先ずここは大丈夫だろう。行くぞソフィ、クロ」
「あ、うん!」
「キュイ!」

咲良は2人を連れて本部に向かうがその間誰も話しかける者はいなかった。その場にいた全員が咲良という人物に興味はあったものの同時に恐怖も感じていたので話しかけることが出来なかったのだ。



アルカナの門前につくとそこには無数の簡易テントが建てられていた。その中でもひときわ大きいテントに近づくと直前で冒険者に止められた。

「何の用だ。ここは作戦本部だぞ」
「責任者に会いたい。トーレリアスから援軍に来た」
「トーレリアスから?早すぎないか?」
「かなり急いで来たからな。本陣が来るのはまだまだ先だろう」
「で?会ってどうするんだ?」
「情報交換と作戦会議だな」
「お前がそれをする必要はない。上に任せておけばいい」
「面倒だ。そこを通せ」

咲良は最近よく使うなと思いつつも指に嵌めてある指輪を冒険者に示す。

「これは…」

この反応も最近よく見ると思いつつも咲良は話を続ける。

「通っていいか?」
「特級冒険者なら問題ない。通りな」

中に入ると咲良の見知った人物が椅子に腰かけていた。

「よく来たのぅ。お主がここに来るとは知らなかったがの」
「やっぱりレオだったか」

そこにいたのはギルド本部のグランドマスター、レオナルド・ローレンスだった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

処理中です...