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第10章 異世界人と隠された秘密
二対ノ竜
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「さて…どう出る」
村正の切っ先を動かない竜人に向けて構える。
一対一では敵わない。それはしっかりと理解している。力ずくで何度も叩き切ったが、まだまだ決着は長引きそうだ。
――――しかし、咲良は一人じゃない。咲良と肩を並べるまでの戦力となったクロに、竜人の隙をずっと伺っている気配無きソフィ。こんなにも頼もしい味方がすぐ傍にいるのだ。一人で敵わないなら二人、二人で敵わないなら三人。それが仲間というものだ。
(仲間…か……俺には縁がないと思っていたが……そうでもなかったらしい)
ふと親友の陸の顔が頭に浮かぶ。彼は今どこで何をしているのかは知らないが、咲良に追いつくために必死で修行をしている事だけは確かだ。咲良は小さく笑みを浮かべると気持ちを切り替えた。
「けりをつけようか」
竜人に向けて、そしてクロとソフィに向けて呟いた咲良は叫ぶ。
「魔装!」
無理やり魔力を引き出して体を強化する。ミシミシと骨が軋み、激痛が身体を襲う。しかし、一度経験しているからか膝を付く事は無い。
「グガガガ!」
咲良の変化に逸早く気づいた竜人が警戒するように喉を鳴らす。
「ここからは…俺の時間だ」
ザシュ!
目にも止まらぬ速さで移動した咲良が、竜人の片翼を切り落とした。
「まだだ!」
もう一つの翼も切り裂こうとした時、竜人の尻尾が咲良を襲う。しかし、その場にしゃがんで尻尾を避けた咲良は、そのまま村正を切り上げた。
ドサッと最後の翼が重そうに地に落ちる。もうこれで竜人が飛ぶ事は無い。竜の象徴とも言える翼が一瞬で切り落とされるとは何とも哀れである。
「グ…グガ…」
咲良から急いで距離を取った竜人の目には恐れ、或いは驚愕の色が見える。まさか翼を失うとは思っていなかったらしい。
竜人の戦闘力は普通に魔装が出来る状態であっても苦戦は免れない程に高い。しかし、魔装を使わずに戦った事によって、竜人はそれが咲良の全力であると勘違いをした。だからこそ、突然何倍にも速くなった咲良に対応出来なかった。本来なら対応出来る筈の速度であっても…それは村正の切れ味にしても同様だ。
魔力が使えないという環境は、咲良だけでなく竜人にとっても悪い環境だったようだ。
「ぐ…くそ…」
成果は得られたが代償は大きい。今なお自身の魔力は身体を蝕んでいる。だがまだ倒れる訳にはいかない。
「あああ゛あ゛あぁぁぁぁ!」
珍しく声を荒げて気合を入れる。その雄叫びはまるで戦いの終わりを告げる鐘声の様に響き渡る。
そして咲良は竜人に向かって走り出した。
「暁流伍ノ型 震貫!」
咲良が完成させたばかりの新しい型 震貫を発動させると、キィーンと耳鳴りの様に甲高い音が村正から発せられる。
—―――暁流伍ノ型 震貫。
魔力を超高速振動と回転させる事で究極の切れ味を誇る五番目の型。暁月流の継承者である椿の奥義 鳴雀、それをヒントに作り出した型である。
竜人はここでミスを犯した。横に避けるか迎え撃つなりすれば良かったのだが、無い翼で飛んで逃げようとしてしまった。翼がない事を忘れてしまう程震貫に脅威を感じたのかもしれない。
そんな失態を咲良が逃す筈も無い。翼がない事で中途半端に空中に飛び出した無防備な竜人へ咲良の一刀、震貫が振り下ろされ、硬い鱗をあっさりと切り裂いた。
「ガ…ガ…」
震貫をまともに受けた竜人は、赤い液体を撒き散らしながら更に上空へと放り投げだされた。だがその眼は死んでおらず、咲良を睨みつけている。
本来の震貫の威力であれば真っ二つに出来た筈だが、無理やり魔力を引き出している今は細かい操作が難しい。その為、致命傷にはなったが一撃で屠る事は叶わなかった。
そしてトドメを刺す前に咲良に限界が来た。体中の力が抜け、魔力も使い果たし、咲良は地面に倒れた。間違いなく魔力欠乏症である。
もう咲良には竜人と戦う力は残されていない。だが何も心配はいらない。トドメを刺せるものがこの場には居るのだから。
「ク…クロ!」
『任せて父ちゃん!』
咲良の声は弱々しいものだったが、クロからは力強い返事が帰って来た。
「後は…たの…ん…だ…」
全てを託し、咲良は意識を失った。その表情は息子を信じる父親の様であった。
全てを託されたクロは今出せる全力の速度で竜人へ向かっていく。この突進が命中すれば竜人の体に風穴が空く事だろう。
竜人との距離はどんどん縮まっていくが全力の突進は自身にも少なくないダメージが入る。だがクロに恐怖は無い。今まで咲良に戦闘の殆どを任せていたクロはずっと役に立ちたいと願っており、その機会がようやく訪れたのだ。それも一番重要な場面を。
(父ちゃんに託されたんだ。絶対に勝ってみせる!)
クロは咲良の為に、ソフィの為に、そして自分自身の為に竜人へと突っ込んでいく。
だが竜人もただ待つ事は無い。突っ込んで来るクロに最後の抵抗なのだろうか、竜種が持つ固有能力――炎弾を放とうとしている。
ここで炎弾使うとは誰が予想出来たであろうか。仮に咲良だったとしても驚くに違いない。となればクロが驚かないはずがない。しかし猛スピードのクロは避ける事が出来ない。
竜人がクロに向かって炎弾を放とうとした時…
シュッ!ドス!
何処からともなく飛んで来た小刀が竜人の目に突き刺さった。それによって炎弾はあらぬ方向へと飛んでいく。
この小刀の持ち主は明白。気配を隠していた彼女は最後の最後に貴重な仕事を熟してくれた。これまでの激しい戦闘をじっと観察し、彼女の最初で最後の攻撃は寸分の狂いもなく目に命中した。
クロは心の中で感謝しつつ竜人に激突し、その腹に風穴を空ける。こうしてクロの色々な意味で初めての戦闘は勝利で幕を下ろした。
村正の切っ先を動かない竜人に向けて構える。
一対一では敵わない。それはしっかりと理解している。力ずくで何度も叩き切ったが、まだまだ決着は長引きそうだ。
――――しかし、咲良は一人じゃない。咲良と肩を並べるまでの戦力となったクロに、竜人の隙をずっと伺っている気配無きソフィ。こんなにも頼もしい味方がすぐ傍にいるのだ。一人で敵わないなら二人、二人で敵わないなら三人。それが仲間というものだ。
(仲間…か……俺には縁がないと思っていたが……そうでもなかったらしい)
ふと親友の陸の顔が頭に浮かぶ。彼は今どこで何をしているのかは知らないが、咲良に追いつくために必死で修行をしている事だけは確かだ。咲良は小さく笑みを浮かべると気持ちを切り替えた。
「けりをつけようか」
竜人に向けて、そしてクロとソフィに向けて呟いた咲良は叫ぶ。
「魔装!」
無理やり魔力を引き出して体を強化する。ミシミシと骨が軋み、激痛が身体を襲う。しかし、一度経験しているからか膝を付く事は無い。
「グガガガ!」
咲良の変化に逸早く気づいた竜人が警戒するように喉を鳴らす。
「ここからは…俺の時間だ」
ザシュ!
目にも止まらぬ速さで移動した咲良が、竜人の片翼を切り落とした。
「まだだ!」
もう一つの翼も切り裂こうとした時、竜人の尻尾が咲良を襲う。しかし、その場にしゃがんで尻尾を避けた咲良は、そのまま村正を切り上げた。
ドサッと最後の翼が重そうに地に落ちる。もうこれで竜人が飛ぶ事は無い。竜の象徴とも言える翼が一瞬で切り落とされるとは何とも哀れである。
「グ…グガ…」
咲良から急いで距離を取った竜人の目には恐れ、或いは驚愕の色が見える。まさか翼を失うとは思っていなかったらしい。
竜人の戦闘力は普通に魔装が出来る状態であっても苦戦は免れない程に高い。しかし、魔装を使わずに戦った事によって、竜人はそれが咲良の全力であると勘違いをした。だからこそ、突然何倍にも速くなった咲良に対応出来なかった。本来なら対応出来る筈の速度であっても…それは村正の切れ味にしても同様だ。
魔力が使えないという環境は、咲良だけでなく竜人にとっても悪い環境だったようだ。
「ぐ…くそ…」
成果は得られたが代償は大きい。今なお自身の魔力は身体を蝕んでいる。だがまだ倒れる訳にはいかない。
「あああ゛あ゛あぁぁぁぁ!」
珍しく声を荒げて気合を入れる。その雄叫びはまるで戦いの終わりを告げる鐘声の様に響き渡る。
そして咲良は竜人に向かって走り出した。
「暁流伍ノ型 震貫!」
咲良が完成させたばかりの新しい型 震貫を発動させると、キィーンと耳鳴りの様に甲高い音が村正から発せられる。
—―――暁流伍ノ型 震貫。
魔力を超高速振動と回転させる事で究極の切れ味を誇る五番目の型。暁月流の継承者である椿の奥義 鳴雀、それをヒントに作り出した型である。
竜人はここでミスを犯した。横に避けるか迎え撃つなりすれば良かったのだが、無い翼で飛んで逃げようとしてしまった。翼がない事を忘れてしまう程震貫に脅威を感じたのかもしれない。
そんな失態を咲良が逃す筈も無い。翼がない事で中途半端に空中に飛び出した無防備な竜人へ咲良の一刀、震貫が振り下ろされ、硬い鱗をあっさりと切り裂いた。
「ガ…ガ…」
震貫をまともに受けた竜人は、赤い液体を撒き散らしながら更に上空へと放り投げだされた。だがその眼は死んでおらず、咲良を睨みつけている。
本来の震貫の威力であれば真っ二つに出来た筈だが、無理やり魔力を引き出している今は細かい操作が難しい。その為、致命傷にはなったが一撃で屠る事は叶わなかった。
そしてトドメを刺す前に咲良に限界が来た。体中の力が抜け、魔力も使い果たし、咲良は地面に倒れた。間違いなく魔力欠乏症である。
もう咲良には竜人と戦う力は残されていない。だが何も心配はいらない。トドメを刺せるものがこの場には居るのだから。
「ク…クロ!」
『任せて父ちゃん!』
咲良の声は弱々しいものだったが、クロからは力強い返事が帰って来た。
「後は…たの…ん…だ…」
全てを託し、咲良は意識を失った。その表情は息子を信じる父親の様であった。
全てを託されたクロは今出せる全力の速度で竜人へ向かっていく。この突進が命中すれば竜人の体に風穴が空く事だろう。
竜人との距離はどんどん縮まっていくが全力の突進は自身にも少なくないダメージが入る。だがクロに恐怖は無い。今まで咲良に戦闘の殆どを任せていたクロはずっと役に立ちたいと願っており、その機会がようやく訪れたのだ。それも一番重要な場面を。
(父ちゃんに託されたんだ。絶対に勝ってみせる!)
クロは咲良の為に、ソフィの為に、そして自分自身の為に竜人へと突っ込んでいく。
だが竜人もただ待つ事は無い。突っ込んで来るクロに最後の抵抗なのだろうか、竜種が持つ固有能力――炎弾を放とうとしている。
ここで炎弾使うとは誰が予想出来たであろうか。仮に咲良だったとしても驚くに違いない。となればクロが驚かないはずがない。しかし猛スピードのクロは避ける事が出来ない。
竜人がクロに向かって炎弾を放とうとした時…
シュッ!ドス!
何処からともなく飛んで来た小刀が竜人の目に突き刺さった。それによって炎弾はあらぬ方向へと飛んでいく。
この小刀の持ち主は明白。気配を隠していた彼女は最後の最後に貴重な仕事を熟してくれた。これまでの激しい戦闘をじっと観察し、彼女の最初で最後の攻撃は寸分の狂いもなく目に命中した。
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