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第10章 異世界人と隠された秘密
竜人形態
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ジャリ…ドス、ドス…
吹き飛ばされた竜人が苛立った様にこちらを向く。
「短気な奴だ…」
竜人の目は充血したように真っ赤になっている。これは竜種が怒っている証拠だ。
にしても早すぎる。普通は追い込まれたり、逆鱗に触れたりすると怒るのだが…竜人とは短気な魔物なのだろうか…
「ま、最初から全力を出してくれた方が有り難い」
初めから全力で来るという事は、しばらくすればその実力に慣れる事が出来る。終盤にキレるよりは遥かにマシだ。
色々頭の中で考えながらも、五感ではしっかりと竜人を捉えている。どんな戦い方をするのか分からない以上、決して目を離したりはしない。
だが…ガリッと音がした瞬間、竜人は消えた。
「ソフィ!しっかり発動しろ!」
竜人が向かったのは見えざる者で気配を断っているソフィの元だ。怒った竜人の威圧を受けて、一瞬見えざる者が揺らいだ所為で存在を知られてしまった。
ソフィから返事は無いが揺らいでいた気配は消えた。声を出すと存在を認識される可能性があるので正しい判断だ。
「よし…ソフィはその状態で隙を見て攻撃しろ!」
またも返事は無いがそれで良い。ソフィならしっかりやってくれるだろう。肝心の竜人はソフィという標的を失い、次の標的として咲良を睨みつける。
「氣を使っても竜人の方が身体能力は上…か…なら技術でその差を埋めればいい」
強がっては見たものの、額からポタリと汗が地面に落ちた。
今咲良にある手札は氣、ソフィ、クロ、そして強引に発動させる魔装の4つだ。だが、その中で切り札となるのは1つしかない。
「クロ…やるぞ」
咲良が小さく呟くと、クロはコクリと頷いた。
「こい!」
叫んで挑発すると、竜人は正面から突っ込んで来た。
正面からぶつかっても絶対に負けない自信があるのか、または武士道精神でも持ち合わせているのか……それは分からないが、無性に腹が立つ。舐められている様な気がしてならない。
ガンッ!カンッカンッ!
振り下ろされる竜人の爪を村正で防いでいく。
やはり途轍もない身体能力をしている。それに竜人の爪は村正に触れているにも拘らず無傷だ。
咲良はその場でしゃがみ竜人の足を払う。
「な…」
だが竜人は予想していたのか、その場で跳躍して難なく避けた。そして今度は竜人が蹴りを繰り出し、咲良を吹き飛ばした。
「く…器用な奴だな」
空中で態勢を整え、地面に軽々と着地するもその表情は硬い。
竜人が空中で身動きを取れた理由は至って単純……尻尾だ。
地球に生息するカンガルーの様に尻尾を3本目の足として器用に動かせる竜人は、跳躍したと見せかけて尻尾を支えに両足を上げて足払いを避けたのだ。
咲良はそれにまんまと引っかかった。
「舐めるなよ」
咲良は今出せる最速の速さで竜人の周りを駆け出した。
(もっと速く…もっと速く…力を抜け…無駄をなくせ…感覚を研ぎ澄ませ)
自身に言い聞かせるように思案しながら、咲良はどんどん速度を速めて竜人をかく乱する。
「グルルウォォォ!」
ちょこまかと動きやがってと言わんばかりに、竜人は吠え、腕を振り回して無差別に暴れまわる。
「隙だらけだ…氣斬!」
暴れまわる竜人の背後から、氣で切れ味を上げた村正を振り下ろす。
「ちっ」
奇襲は成功したが想像以上に鱗が頑丈で、僅かな傷を付ける事しか出来なかった。これは咲良にとってかなり屈辱的だ。完全に背後を取ったにも拘らず、仕留める所か致命傷すら与えられなかったのだから。
竜人は背後を取られた事に怒り狂い、クルリと向き直ると村正を掴んで咲良を睨みつける。
「選択を間違えたな蜥蜴…衝波!」
掴まれた村正から、全力の衝波を竜人に流し込む。
「グガガ…ガ…ガ…」
竜人の体内で氣が乱気流の様に暴れまわる。その隙を逃す咲良では無い。
氣を纏わせた一刀――氣斬を至近距離で振り下ろす。
相変わらず硬い鱗だが、村正の切れ味と強度を信じて力任せに振り下ろす。表現するなら、切り裂くではなく、叩き切るだろうか。
一撃で倒せない事は分かっているので、何度も何度も振り下ろす。果たしてこの攻撃が効いているのだろうか等も考えず、一心不乱に振り下ろす。
「グガアァァァ!!」
漸く衝波の威力が弱まったのか、竜独特の咆哮で威嚇しながら咲良から逃げる様に距離を取った。
「今だクロ!」
竜人が咲良から離れた事で安心しきった瞬間、クロが猛スピードで竜人に突っ込んでいく。魔法を封じられているとはいえ、素のステータスが咲良以上のクロが本気で突っ込めば、いくら竜人でもひとたまりもないだろう。
だがここで思わぬ誤算があった。隙だらけの筈の竜人の背から巨大な翼が突然生えたのだ。その翼で体を包む様に折り畳み、クロの突進の威力を弱めたのだ。実際、竜人は吹き飛んだものの、致命傷には至っていない。
「まさしく竜人化そのものか…厄介な」
翼の生えた竜人の姿は、咲良の竜人化状態とそっくり、否、瓜二つだった。更に、冷静さを取り戻した様で、真っ赤に充血していた目が元に戻った。このタイミングで冷静になられると余計やり辛い。慣れたと思った途端に戦い方を変えられるのだから厄介に決まっている。
また、飛べる様になった事も厄介さを増している。ただ飛べるだけなら問題ないが、竜種は飛行能力に長けた種族。竜人とは言え竜種に違いないので、移動速度はこれまでより格段に速くなるだろう。クロの突進を防いだ事から見ても、相当な強度を誇っている事は間違いない。
咲良は険しい表情を浮かべながら、村正を握る拳に力を強めた。
吹き飛ばされた竜人が苛立った様にこちらを向く。
「短気な奴だ…」
竜人の目は充血したように真っ赤になっている。これは竜種が怒っている証拠だ。
にしても早すぎる。普通は追い込まれたり、逆鱗に触れたりすると怒るのだが…竜人とは短気な魔物なのだろうか…
「ま、最初から全力を出してくれた方が有り難い」
初めから全力で来るという事は、しばらくすればその実力に慣れる事が出来る。終盤にキレるよりは遥かにマシだ。
色々頭の中で考えながらも、五感ではしっかりと竜人を捉えている。どんな戦い方をするのか分からない以上、決して目を離したりはしない。
だが…ガリッと音がした瞬間、竜人は消えた。
「ソフィ!しっかり発動しろ!」
竜人が向かったのは見えざる者で気配を断っているソフィの元だ。怒った竜人の威圧を受けて、一瞬見えざる者が揺らいだ所為で存在を知られてしまった。
ソフィから返事は無いが揺らいでいた気配は消えた。声を出すと存在を認識される可能性があるので正しい判断だ。
「よし…ソフィはその状態で隙を見て攻撃しろ!」
またも返事は無いがそれで良い。ソフィならしっかりやってくれるだろう。肝心の竜人はソフィという標的を失い、次の標的として咲良を睨みつける。
「氣を使っても竜人の方が身体能力は上…か…なら技術でその差を埋めればいい」
強がっては見たものの、額からポタリと汗が地面に落ちた。
今咲良にある手札は氣、ソフィ、クロ、そして強引に発動させる魔装の4つだ。だが、その中で切り札となるのは1つしかない。
「クロ…やるぞ」
咲良が小さく呟くと、クロはコクリと頷いた。
「こい!」
叫んで挑発すると、竜人は正面から突っ込んで来た。
正面からぶつかっても絶対に負けない自信があるのか、または武士道精神でも持ち合わせているのか……それは分からないが、無性に腹が立つ。舐められている様な気がしてならない。
ガンッ!カンッカンッ!
振り下ろされる竜人の爪を村正で防いでいく。
やはり途轍もない身体能力をしている。それに竜人の爪は村正に触れているにも拘らず無傷だ。
咲良はその場でしゃがみ竜人の足を払う。
「な…」
だが竜人は予想していたのか、その場で跳躍して難なく避けた。そして今度は竜人が蹴りを繰り出し、咲良を吹き飛ばした。
「く…器用な奴だな」
空中で態勢を整え、地面に軽々と着地するもその表情は硬い。
竜人が空中で身動きを取れた理由は至って単純……尻尾だ。
地球に生息するカンガルーの様に尻尾を3本目の足として器用に動かせる竜人は、跳躍したと見せかけて尻尾を支えに両足を上げて足払いを避けたのだ。
咲良はそれにまんまと引っかかった。
「舐めるなよ」
咲良は今出せる最速の速さで竜人の周りを駆け出した。
(もっと速く…もっと速く…力を抜け…無駄をなくせ…感覚を研ぎ澄ませ)
自身に言い聞かせるように思案しながら、咲良はどんどん速度を速めて竜人をかく乱する。
「グルルウォォォ!」
ちょこまかと動きやがってと言わんばかりに、竜人は吠え、腕を振り回して無差別に暴れまわる。
「隙だらけだ…氣斬!」
暴れまわる竜人の背後から、氣で切れ味を上げた村正を振り下ろす。
「ちっ」
奇襲は成功したが想像以上に鱗が頑丈で、僅かな傷を付ける事しか出来なかった。これは咲良にとってかなり屈辱的だ。完全に背後を取ったにも拘らず、仕留める所か致命傷すら与えられなかったのだから。
竜人は背後を取られた事に怒り狂い、クルリと向き直ると村正を掴んで咲良を睨みつける。
「選択を間違えたな蜥蜴…衝波!」
掴まれた村正から、全力の衝波を竜人に流し込む。
「グガガ…ガ…ガ…」
竜人の体内で氣が乱気流の様に暴れまわる。その隙を逃す咲良では無い。
氣を纏わせた一刀――氣斬を至近距離で振り下ろす。
相変わらず硬い鱗だが、村正の切れ味と強度を信じて力任せに振り下ろす。表現するなら、切り裂くではなく、叩き切るだろうか。
一撃で倒せない事は分かっているので、何度も何度も振り下ろす。果たしてこの攻撃が効いているのだろうか等も考えず、一心不乱に振り下ろす。
「グガアァァァ!!」
漸く衝波の威力が弱まったのか、竜独特の咆哮で威嚇しながら咲良から逃げる様に距離を取った。
「今だクロ!」
竜人が咲良から離れた事で安心しきった瞬間、クロが猛スピードで竜人に突っ込んでいく。魔法を封じられているとはいえ、素のステータスが咲良以上のクロが本気で突っ込めば、いくら竜人でもひとたまりもないだろう。
だがここで思わぬ誤算があった。隙だらけの筈の竜人の背から巨大な翼が突然生えたのだ。その翼で体を包む様に折り畳み、クロの突進の威力を弱めたのだ。実際、竜人は吹き飛んだものの、致命傷には至っていない。
「まさしく竜人化そのものか…厄介な」
翼の生えた竜人の姿は、咲良の竜人化状態とそっくり、否、瓜二つだった。更に、冷静さを取り戻した様で、真っ赤に充血していた目が元に戻った。このタイミングで冷静になられると余計やり辛い。慣れたと思った途端に戦い方を変えられるのだから厄介に決まっている。
また、飛べる様になった事も厄介さを増している。ただ飛べるだけなら問題ないが、竜種は飛行能力に長けた種族。竜人とは言え竜種に違いないので、移動速度はこれまでより格段に速くなるだろう。クロの突進を防いだ事から見ても、相当な強度を誇っている事は間違いない。
咲良は険しい表情を浮かべながら、村正を握る拳に力を強めた。
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