神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第2章 異界と異形

全力疾走

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探索を初めてどれほど歩いただろうか…
今日は洞窟を出て1日は歩き続けている。
もうここは未知の世界…なにが出るか分からない。
そもそもどこに行こうが未知の世界ではあるが…


しばらく歩くと見えて来たのは天辺が見えないくらいおおきな大木の根元。
その大木はこの森のどこからでも見ることが出来るほど高く聳え立っている。

近づくとなぜかその大木の周りには草木がなかった。
まるで隕石でも落ちたかの様なクレーターがあり、その中心に堂々と構えているかの大木。

そのクレーターへ一歩踏み出した瞬間…






亮太は死んだ…

否、死んだと感じるほどの悪寒が走った。

その直後、大木から巨大な何かが降りて来た。

それが何かはすぐにわかった。
漆黒の鱗を纏い、その背中には一度羽ばたけば全てを吹き飛ばしてしまうのではないかと思えるほどの大きな翼と巨木をも薙ぎ倒せる程の尻尾。そして人間の身体など紙切れの様に切り裂いてしまう様な爪と、どんなものでも噛みちぎれそうな牙。

その存在感は見ただけで命を刈り取られてしまうと錯覚する。



「………ド…ドラ……ゴン……」



神話上の生き物がそこにはいた。



それからの行動は早かった。

無我夢中で洞窟がある方角に向かって走り出した。
後ろは振り返らず蛇に睨まれた蛙の気分を味わいながらただひたすら走った。

生存本能になぜドラゴンが反応しなかったのかは分からない。
生存本能ですら感じ取れないほどあのドラゴンは気配を消すのが上手かったのか…もしくは生存本能の精度がまだ低かったのか……

亮太はそんな事など気にする余裕もなく、ひたすらに走った。



途中で化け物に出会うことは運良くなかった。









気がつくと、洞窟の前に来ていた。
行きは1日掛けてたどり着いた大木からこの洞窟まで全力疾走し、5時間程でたどり着けた。
これはステータスを上げていたお陰だろう。
洞窟まで戻る必要はなかったかもしれないが、勝手に体が動いてしまったのだ。




肝心のドラゴンは追っては来なかった様だ。

「……ハァ…ハァ…ハァ……」

走り続けたため、いくらステータスが上がったとはいえ疲れるものは疲れるのだ。

「……ふざけんなよ…死ぬかと思った」

ようやく死の恐怖から解放された亮太だが安堵の表情はしていない…ある事に気付いたからだ。

「……いつかは…倒さないといけないってことか」

なぜ倒さなければならないのか…
それはこの森がとてつもなく広く、あの大木が最も高い場所だからだ。

いつまでもここで暮らすわけにはいかない。
称号の異世界人の効果は言語の理解、つまりこちらにも人はいると言うことだ。
ならば街へ行き情報を得なければならない。
その街を見つけるためには一番遠くを見渡せるあの大木に登るのが手っ取り早い。
この森がどれほどの広さなのか不明なので街にたどり着くまでひたすら歩くと言うのは無謀だ。化け物もいる森で方角も分からないまま彷徨うことはできない。

天辺が見えないほど高いあの大木に登れば、何かしらの情報は得られるはずだ。


「……先は長いってことか…」





その日から亮太はあることに没頭した。
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