16 / 163
第3章 黒竜と歴史
雪辱ノ熊
しおりを挟む
目視で確認するとそのタイラントグリズリーは尻尾が一本だった。災害級ではないようだが、ステータスプレートによるとB級らしい。
それが高いのか低いのか定かではないが弱くないのは明白だ。
その肝心のタイラントグリズリーは中々肉を食べようとしない。凶暴だとすれば直ぐに食いつくかと思っていたが予想以上に慎重のようだ。
(……しょうがねぇ…小細工なしでいくか…)
ザザッ
岩陰から飛び出てタイラントグリズリーを睨みつける。
もちろん相棒の村正を構えて…
タイラントグリズリーもこちらを睨みつけてくる。
お互い隙を伺っているのか中々動かない。
先に痺れを切らしたのはタイラントグリズリーの方だった。
その巨体に似合わない俊敏な動きで亮太へと突っ込んでくる。
そのまま爪で亮太を切り裂かんと迫る。
亮太は落ち着いて後ろに飛んで避けようとするが…
(!!!!)
咄嗟に後ろではなく横へ飛んだ。
ガリガリッ!!
空を切った爪から半透明の衝撃波のような物が飛び出し、後ろの岩に爪痕を残した。
「…あぶねぇ…後ろに飛んでたらやられてたな…」
先程後ろに避けようとした瞬間、頭に死のイメージがよぎったのだ。
「なるほどな…この腹の傷はあの攻撃で付けられたってわけか」
前に瀕死の重傷を負った時、どうやられたのか全く分からなかったが、ようやく謎が解けた。
だが、謎が解けたところで厄介なのは変わらない。
近づけば直接爪の餌食に、離れてもあの衝撃波が飛んでくる。さらに岩を削り取る程の威力もあるときた。
体制を立て直し、改めてタイラントグリズリーに向き直り、距離を詰める。
爪の直接攻撃も衝撃波もどちらも喰らえば瀕死は確実。ならば近付かなければ亮太に勝ち目はない。亮太に遠距離攻撃はないのだから。
タイラントグリズリーはまたも爪を振りかざす。
ギィィン
村正で受け止めるが亮太は吹き飛ばされた。
ザザァァァァ
空中で体制を整えてなんとか着地する。
「おいおい…クマのくせに器用じゃねえか」
今亮太が吹き飛ばされたのは力負けしたわけではない。爪に衝撃波を留めることで威力を上げていたために吹き飛ばされたのだ。
「まじでバケモンだな…なら…」
亮太はアップしたステータスをフルに使いタイラントグリズリーの周りを高速で移動する。
タイラントグリズリーもかなりの速さだが方向転換は苦手のようで亮太の速さにはついていけていないようだ。
困惑するタイラントグリズリーの隙を見て後ろから切り掛かる。
ズバッ!!
少し避けられたが左腕を深く切ることに成功した。
「ちっ…切り落としたかったんだが……まぁ切れることがわかっただけましか」
亮太は腕を切り落とすつもりだったのだ。
あの衝撃波を封じるにはそれしかないからだが、少し懸念もあった。
それは爪には村正で傷一つ付けられていなかったため、もしかすると身体も硬いのではと思ったのだ。
だが結果は上々だ。
切り落とせはしなかったものの、あの傷ではもう左腕は使い物にならないだろう。
グォラァァァァァ
タイラントグリズリーは腕を切られたことに腹を立てたのか威嚇してくる。
そのまま亮太との距離を詰めてくるが初めほどの速さはない。
亮太はまた高速で移動し、タイラントグリズリーの背後へ回り込むと右腕を切り落とそうと刀を振り下ろす。
スッ
刀は空を切った。
と、同時に思わぬ反撃を食らう。
「グハッ!」
亮太はなんとか刀で防御して威力を抑え、距離を取るが、タイラントグリズリーの爪が亮太の左腕を擦り、傷を負わす。
「クソッ!…そりゃねえだろ…」
亮太は自身の腕に傷をつけたタイラントグリズリーの左腕の睨みつける。
その左腕は完全ではないが治っていた。
「治癒能力かよ…」
それからはかなりの長期戦となった。
切っては離れ、切っては離れを繰り返し、攻撃を浴びせ続ける。
タイラントグリズリーは何度切られても回復し、亮太を食らわんと襲い掛かった。
その一進一退の攻防がしばらく続いたが、亮太は一つの突破口を見つけた。
タイラントグリズリーの治癒能力は確かに脅威ではあるが、無敵ではない。
切れば切るほど傷の治りが少しずつ遅くなっているのだ。
恐らく治癒能力にも限界があるのだろう。
そもそもタイラントグリズリーの治癒能力には弱点があったのだ。それは治癒の速さだ。もし、一瞬で傷を治癒されると流石に打つ手なしだが、左腕を切った時も治るのに少し時間が掛かっていたのだ。
今は傷が治るのに2倍以上の時間が掛かっている。
ここぞとばかりに亮太はタイラントグリズリーへ怒涛の攻撃を仕掛ける。
「ハァ!…ウラッ!…フン!…フッ!」
タイラントグリズリーに反撃の隙も与えないほどの乱撃が押し寄せる。
グゥオォォォォ………
ドシィィーン
タイラントグリズリーは弱々しく吠えるとその場に倒れ動かなくなった。
「ハァ…ハァ…ハァ……ふぅ」
息を整えて息絶えたタイラントグリズリーに近づいていく。
「…長かったな……だがこれで…リベンジは果たしたわけだ…」
少し感傷に浸る亮太。
それもそのはず…一度殺されかけた相手に勝つことができるまで強くなれたのだから。
それが高いのか低いのか定かではないが弱くないのは明白だ。
その肝心のタイラントグリズリーは中々肉を食べようとしない。凶暴だとすれば直ぐに食いつくかと思っていたが予想以上に慎重のようだ。
(……しょうがねぇ…小細工なしでいくか…)
ザザッ
岩陰から飛び出てタイラントグリズリーを睨みつける。
もちろん相棒の村正を構えて…
タイラントグリズリーもこちらを睨みつけてくる。
お互い隙を伺っているのか中々動かない。
先に痺れを切らしたのはタイラントグリズリーの方だった。
その巨体に似合わない俊敏な動きで亮太へと突っ込んでくる。
そのまま爪で亮太を切り裂かんと迫る。
亮太は落ち着いて後ろに飛んで避けようとするが…
(!!!!)
咄嗟に後ろではなく横へ飛んだ。
ガリガリッ!!
空を切った爪から半透明の衝撃波のような物が飛び出し、後ろの岩に爪痕を残した。
「…あぶねぇ…後ろに飛んでたらやられてたな…」
先程後ろに避けようとした瞬間、頭に死のイメージがよぎったのだ。
「なるほどな…この腹の傷はあの攻撃で付けられたってわけか」
前に瀕死の重傷を負った時、どうやられたのか全く分からなかったが、ようやく謎が解けた。
だが、謎が解けたところで厄介なのは変わらない。
近づけば直接爪の餌食に、離れてもあの衝撃波が飛んでくる。さらに岩を削り取る程の威力もあるときた。
体制を立て直し、改めてタイラントグリズリーに向き直り、距離を詰める。
爪の直接攻撃も衝撃波もどちらも喰らえば瀕死は確実。ならば近付かなければ亮太に勝ち目はない。亮太に遠距離攻撃はないのだから。
タイラントグリズリーはまたも爪を振りかざす。
ギィィン
村正で受け止めるが亮太は吹き飛ばされた。
ザザァァァァ
空中で体制を整えてなんとか着地する。
「おいおい…クマのくせに器用じゃねえか」
今亮太が吹き飛ばされたのは力負けしたわけではない。爪に衝撃波を留めることで威力を上げていたために吹き飛ばされたのだ。
「まじでバケモンだな…なら…」
亮太はアップしたステータスをフルに使いタイラントグリズリーの周りを高速で移動する。
タイラントグリズリーもかなりの速さだが方向転換は苦手のようで亮太の速さにはついていけていないようだ。
困惑するタイラントグリズリーの隙を見て後ろから切り掛かる。
ズバッ!!
少し避けられたが左腕を深く切ることに成功した。
「ちっ…切り落としたかったんだが……まぁ切れることがわかっただけましか」
亮太は腕を切り落とすつもりだったのだ。
あの衝撃波を封じるにはそれしかないからだが、少し懸念もあった。
それは爪には村正で傷一つ付けられていなかったため、もしかすると身体も硬いのではと思ったのだ。
だが結果は上々だ。
切り落とせはしなかったものの、あの傷ではもう左腕は使い物にならないだろう。
グォラァァァァァ
タイラントグリズリーは腕を切られたことに腹を立てたのか威嚇してくる。
そのまま亮太との距離を詰めてくるが初めほどの速さはない。
亮太はまた高速で移動し、タイラントグリズリーの背後へ回り込むと右腕を切り落とそうと刀を振り下ろす。
スッ
刀は空を切った。
と、同時に思わぬ反撃を食らう。
「グハッ!」
亮太はなんとか刀で防御して威力を抑え、距離を取るが、タイラントグリズリーの爪が亮太の左腕を擦り、傷を負わす。
「クソッ!…そりゃねえだろ…」
亮太は自身の腕に傷をつけたタイラントグリズリーの左腕の睨みつける。
その左腕は完全ではないが治っていた。
「治癒能力かよ…」
それからはかなりの長期戦となった。
切っては離れ、切っては離れを繰り返し、攻撃を浴びせ続ける。
タイラントグリズリーは何度切られても回復し、亮太を食らわんと襲い掛かった。
その一進一退の攻防がしばらく続いたが、亮太は一つの突破口を見つけた。
タイラントグリズリーの治癒能力は確かに脅威ではあるが、無敵ではない。
切れば切るほど傷の治りが少しずつ遅くなっているのだ。
恐らく治癒能力にも限界があるのだろう。
そもそもタイラントグリズリーの治癒能力には弱点があったのだ。それは治癒の速さだ。もし、一瞬で傷を治癒されると流石に打つ手なしだが、左腕を切った時も治るのに少し時間が掛かっていたのだ。
今は傷が治るのに2倍以上の時間が掛かっている。
ここぞとばかりに亮太はタイラントグリズリーへ怒涛の攻撃を仕掛ける。
「ハァ!…ウラッ!…フン!…フッ!」
タイラントグリズリーに反撃の隙も与えないほどの乱撃が押し寄せる。
グゥオォォォォ………
ドシィィーン
タイラントグリズリーは弱々しく吠えるとその場に倒れ動かなくなった。
「ハァ…ハァ…ハァ……ふぅ」
息を整えて息絶えたタイラントグリズリーに近づいていく。
「…長かったな……だがこれで…リベンジは果たしたわけだ…」
少し感傷に浸る亮太。
それもそのはず…一度殺されかけた相手に勝つことができるまで強くなれたのだから。
1
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる