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第6章 新天地と冒険者
鍛治披露
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「早速始めてもらおうかしら」
「何を作れば良いんだ?」
「そうね、じゃあ鉄鉱石を主体とした剣でも作ってもらおうかしら。それ以外の素材はあそこにある箱から自由に使って良いわ」
サラが指を指した先には木の箱がある。
中には火炎石、発燃石、翡翠晶、魔石があるがどれもかなり質が悪い。
魔石
魔力をもった鉱石。その魔力の保有量は質によって変わる。この鉱石で作られた武具は極微量の魔力を放つ。
咲良は発燃石と翡翠晶、魔石を手に取り溶鉱炉へと向かう。
「発燃石と翡翠晶に魔石?なにするつもり?」
「さぁな。どっちにしろ見てりゃ分かるだろ」
「お手並み拝見といこうかしら…」
咲良は背中に視線を感じつつ作業を始める。
初めに溶鉱炉の温度を下げてから発燃石を入れ、少しずつ温度を上げていく。
発燃石は脆く、衝撃を与えると爆発する火薬のような鉱石で、溶かすとその特性が失われ、ただの石となるため武器の素材には向かない。だが少しずつ熱して溶かしていく事で、その性能を保持出来る。
発燃石が完全に溶けると次に魔石も溶かしにかかる。
鉱石によって溶ける温度、時間は異なるため、溶かす順序と混ぜ方は気を付けなければならない。
そして、発燃石と魔石を同時に溶かすことによって、武器の形になった時に魔力を込めると武器が熱を帯びるようになる。
溶けて混ざったものを一度外に出して冷ます。
その間に鉄鉱石を溶かしにかかる。
鉄鉱石は不純物を取り除くために高温で一気に溶かし、急激に冷やして叩くという工程を何度もしなければならない。
そして全ての鉱石を再び溶かして混ぜる。
その一連の動作には一切の無駄がない。
「俺は鍛治に関してはあまり知識はねぇが、動きに一切の迷いがねぇな。すげぇ集中力だ…なぁサラ」
「……………」
「おいサラ?」
ちらっと見ると、サラは咲良の作業に見惚れていた。
「おいサラ!」
「え?…あ、うん」
カゼルの声ではっと意識を戻す。
「で?どうなんだ?」
「すごい…あんな加工の仕方があるなんて…」
「やっぱり咲良の技術は凄いのか…」
「見たこともない技術だわ」
サラは咲良の技術に目を奪われていた。まるで芸術品でも見ているかのように目を輝かせている。
クロノスが何百年も掛けて研究し、磨き上げてきた技術を一介の鍛治師が理解できるはずもない。
全ての鉱石が溶けて完全に混ざると冷まし、咲良専用のアダマンタイトで作ったハンマーで打っていく。
オリハルコンやアダマンタイトなどの貴重な鉱石を普通の鉄のハンマーで打つと、ハンマーの方が壊れてしまうため、村正を打つ際に作ったものだ。
カンッカンッカンッカンッ
カゼルとサラが背後で見守る中、咲良は目の前の素材ひとつひとつに耳を傾け、ハンマーを振り下ろす。
そして2時間後、咲良の手には一本の見事な剣が輝きを放っていた。
「できたぞ…この剣の名は…炎界…」
サラに炎界を手渡す。
「すごい…これほどの剣をあの素材だけで作れるなんて…信じられない」
「俺の鑑定でもかなりの業物と見た。それに…刀身の周りが少し赤くなってねえか?」
カゼルの言う通り炎界の刀身の周りに赤い何かが覆っている。
「これは発燃石を最大限活用したためだ。効果は切ったり競り合ったりと剣に衝撃を与えると爆発する」
「魔武器かよ!」
「あぁ。素材があまり良くないから爆発は小規模だけどな」
シュッ…ボンッ
咲良が炎界を振るうと小さな爆発が起こる。確かに小規模だが、仮に魔物を切ったとすれば殺傷力はかなりの物になる。
「すごっ!……負けたわ。こんな剣作られちゃね…」
「サラ、どんなに良い素材を使っても技術が無ければ宝の持ち腐れだ。大事なのは自分の技術をしっかり理解し、それに見合った素材を使う事だ」
「そっか…あんたが言うなら間違い無いんでしょうね」
サラは咲良の忠告に素直に頷いた。
「ただ良い素材を使うだけで業物が作れるなら誰も苦労はしないからな」
「ところでよ…その炎界?どうすんだ?」
「サラにやるよ。詫びだ」
「いいの?…これほどの剣だと素材が良くないとはいえ、魔武器という事も考慮して金貨2枚はすると思うのだけど」
サラの作ったミスリル製の槍が金貨4枚なので、破格の値段と言える。
「なら金貨1枚で買い取ってくれ。ただし…」
咲良は神妙な趣でサラを見つめる。
「なにかしら?」
「俺は作った武具は全て自分の分身のように思っている。だから、心無い者には使って欲しくないんだ。炎界をどうするかは任せるがそれだけは心に留めておいてくれ」
「分かったわ。約束する。ところで…おねがいがあるんだけど」
サラが少しモジモジしながら咲良を見つめる。
「なんだ?」
「弟子にしてくれないかしら?」
「断る」
「はや!なんでよ!いいじゃない!」
咲良はサラの願いを一瞬でぶった切る。
「俺はやることがある。王都に留まるつもりもないしな」
「なら私も付いて行く!こんなチャンス逃すわけにはいかないわ!」
「それでもダメだ」
咲良はどんな理由がサラにあろうと連れていく気はない。
「どうしてよ!」
「足手纏いだ」
「あ…足手纏い?」
「そうだ。俺は世界中を旅するから危険な場所にも行くだろう。お前はどう見ても戦えるとは思えない」
「だったら!「しつこい!…諦めろ」…そんな…」
しつこく食い下がるサラだが、なにを言われようと首を縦に振るつもりは微塵もない。
「じゃあこうしたらどうだ?」
カゼルがある提案をする。
「次に王都に来た時、改めて判断するってのはどうよ?」
「………ま、それならいいだろう。ただし、その時も足手纏いだと思えば連れて行かないけどな」
「…わかったわ。必ず足手纏いなんて言わせない!」
サラはこれから鍛治師として働きながら、強くなると心に強く決めたが、咲良から見ると、どうあがいても強くなれるとは思えない。
「じゃ…行くぞカゼル」
「お、おう…またなサラ!」
「えぇ…私も楽しみにしてるわ!」
炎界を手渡して金貨1枚を受け取り、ようやくサラの店を出てカゼルの店へと向かう。
なんとか師匠にされるのを回避した咲良は思案する。
(弟子を作ること自体は駄目ではないが……俺の弟子になるという事は技神になるという事だ。そう簡単に決めて良い問題じゃない)
案外、弟子について真剣に考えている咲良だった。
「何を作れば良いんだ?」
「そうね、じゃあ鉄鉱石を主体とした剣でも作ってもらおうかしら。それ以外の素材はあそこにある箱から自由に使って良いわ」
サラが指を指した先には木の箱がある。
中には火炎石、発燃石、翡翠晶、魔石があるがどれもかなり質が悪い。
魔石
魔力をもった鉱石。その魔力の保有量は質によって変わる。この鉱石で作られた武具は極微量の魔力を放つ。
咲良は発燃石と翡翠晶、魔石を手に取り溶鉱炉へと向かう。
「発燃石と翡翠晶に魔石?なにするつもり?」
「さぁな。どっちにしろ見てりゃ分かるだろ」
「お手並み拝見といこうかしら…」
咲良は背中に視線を感じつつ作業を始める。
初めに溶鉱炉の温度を下げてから発燃石を入れ、少しずつ温度を上げていく。
発燃石は脆く、衝撃を与えると爆発する火薬のような鉱石で、溶かすとその特性が失われ、ただの石となるため武器の素材には向かない。だが少しずつ熱して溶かしていく事で、その性能を保持出来る。
発燃石が完全に溶けると次に魔石も溶かしにかかる。
鉱石によって溶ける温度、時間は異なるため、溶かす順序と混ぜ方は気を付けなければならない。
そして、発燃石と魔石を同時に溶かすことによって、武器の形になった時に魔力を込めると武器が熱を帯びるようになる。
溶けて混ざったものを一度外に出して冷ます。
その間に鉄鉱石を溶かしにかかる。
鉄鉱石は不純物を取り除くために高温で一気に溶かし、急激に冷やして叩くという工程を何度もしなければならない。
そして全ての鉱石を再び溶かして混ぜる。
その一連の動作には一切の無駄がない。
「俺は鍛治に関してはあまり知識はねぇが、動きに一切の迷いがねぇな。すげぇ集中力だ…なぁサラ」
「……………」
「おいサラ?」
ちらっと見ると、サラは咲良の作業に見惚れていた。
「おいサラ!」
「え?…あ、うん」
カゼルの声ではっと意識を戻す。
「で?どうなんだ?」
「すごい…あんな加工の仕方があるなんて…」
「やっぱり咲良の技術は凄いのか…」
「見たこともない技術だわ」
サラは咲良の技術に目を奪われていた。まるで芸術品でも見ているかのように目を輝かせている。
クロノスが何百年も掛けて研究し、磨き上げてきた技術を一介の鍛治師が理解できるはずもない。
全ての鉱石が溶けて完全に混ざると冷まし、咲良専用のアダマンタイトで作ったハンマーで打っていく。
オリハルコンやアダマンタイトなどの貴重な鉱石を普通の鉄のハンマーで打つと、ハンマーの方が壊れてしまうため、村正を打つ際に作ったものだ。
カンッカンッカンッカンッ
カゼルとサラが背後で見守る中、咲良は目の前の素材ひとつひとつに耳を傾け、ハンマーを振り下ろす。
そして2時間後、咲良の手には一本の見事な剣が輝きを放っていた。
「できたぞ…この剣の名は…炎界…」
サラに炎界を手渡す。
「すごい…これほどの剣をあの素材だけで作れるなんて…信じられない」
「俺の鑑定でもかなりの業物と見た。それに…刀身の周りが少し赤くなってねえか?」
カゼルの言う通り炎界の刀身の周りに赤い何かが覆っている。
「これは発燃石を最大限活用したためだ。効果は切ったり競り合ったりと剣に衝撃を与えると爆発する」
「魔武器かよ!」
「あぁ。素材があまり良くないから爆発は小規模だけどな」
シュッ…ボンッ
咲良が炎界を振るうと小さな爆発が起こる。確かに小規模だが、仮に魔物を切ったとすれば殺傷力はかなりの物になる。
「すごっ!……負けたわ。こんな剣作られちゃね…」
「サラ、どんなに良い素材を使っても技術が無ければ宝の持ち腐れだ。大事なのは自分の技術をしっかり理解し、それに見合った素材を使う事だ」
「そっか…あんたが言うなら間違い無いんでしょうね」
サラは咲良の忠告に素直に頷いた。
「ただ良い素材を使うだけで業物が作れるなら誰も苦労はしないからな」
「ところでよ…その炎界?どうすんだ?」
「サラにやるよ。詫びだ」
「いいの?…これほどの剣だと素材が良くないとはいえ、魔武器という事も考慮して金貨2枚はすると思うのだけど」
サラの作ったミスリル製の槍が金貨4枚なので、破格の値段と言える。
「なら金貨1枚で買い取ってくれ。ただし…」
咲良は神妙な趣でサラを見つめる。
「なにかしら?」
「俺は作った武具は全て自分の分身のように思っている。だから、心無い者には使って欲しくないんだ。炎界をどうするかは任せるがそれだけは心に留めておいてくれ」
「分かったわ。約束する。ところで…おねがいがあるんだけど」
サラが少しモジモジしながら咲良を見つめる。
「なんだ?」
「弟子にしてくれないかしら?」
「断る」
「はや!なんでよ!いいじゃない!」
咲良はサラの願いを一瞬でぶった切る。
「俺はやることがある。王都に留まるつもりもないしな」
「なら私も付いて行く!こんなチャンス逃すわけにはいかないわ!」
「それでもダメだ」
咲良はどんな理由がサラにあろうと連れていく気はない。
「どうしてよ!」
「足手纏いだ」
「あ…足手纏い?」
「そうだ。俺は世界中を旅するから危険な場所にも行くだろう。お前はどう見ても戦えるとは思えない」
「だったら!「しつこい!…諦めろ」…そんな…」
しつこく食い下がるサラだが、なにを言われようと首を縦に振るつもりは微塵もない。
「じゃあこうしたらどうだ?」
カゼルがある提案をする。
「次に王都に来た時、改めて判断するってのはどうよ?」
「………ま、それならいいだろう。ただし、その時も足手纏いだと思えば連れて行かないけどな」
「…わかったわ。必ず足手纏いなんて言わせない!」
サラはこれから鍛治師として働きながら、強くなると心に強く決めたが、咲良から見ると、どうあがいても強くなれるとは思えない。
「じゃ…行くぞカゼル」
「お、おう…またなサラ!」
「えぇ…私も楽しみにしてるわ!」
炎界を手渡して金貨1枚を受け取り、ようやくサラの店を出てカゼルの店へと向かう。
なんとか師匠にされるのを回避した咲良は思案する。
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