神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第6章 新天地と冒険者

超不愉快

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「サイモン殿…儂はこの村の村長だ」
「そうですか。すみませんがこの状況を説明してくれませんか?」
「うむ…このオークの群れはこちらの冒険者殿が1人で倒してくれての…儂らは全員無傷じゃ」
「彼が…1人で?」

サイモンとその後ろの冒険者は驚愕の表情を浮かべる。

「なんだと!うそだ!」
「そうだ!あり得ない!」
「オークの群れだぞ!」
「本当のことを言え!」

信じられないとあちこちから罵声が飛ぶ。

「待て君たち!冷静に!」
「しかし!……」

サイモンが止めるが騒ぎは収まらない。

「嘘ではないわい…この村の全員が見ておった」
「そうだそうだ!」
「嘘なんかついてないわ!彼は英雄よ!」
「この兄ちゃんがいなきゃ俺たち今頃全滅だったんだからな!」

村人は村長が嘘つき呼ばわりされて怒っている。

「すまない…私たちも戸惑っているんだ…」

サイモンは咲良に目を向ける。

「君の名前は?」
「咲良です」
「では咲良くん。これは本当にきみがやったのですか?」
「そうですがなにか?」

ここまで疑われると少し不愉快だ。

「いや…とても信じられなくてね」
「貴方達が信じようが信じまいが俺には些細な事です」
「些細って……君の階級は?」
「E級だ」

ここは敢えて正直に答える。

「ほら見ろ!E級にこんな事できるわけない!」
「そうだ!嘘をつくな!」
「何があったのかはっきりしろ!」
「静かにしなさい!!」

サイモンが怒鳴った。

「確かに信じられませんが彼らが今嘘をつく利点がありません。咲良くん…君はいつ冒険者になったのですか?」
「確か…一月程前ですね」
「なるほど…それなら多少納得がいきます。実力があっても登録が遅ければ階級は低いですから」

どうやらサイモンはこの冒険者集団の中では常識人のようだ。

「隊長!こいつの事を信じるんですか!?」
「そうですよ!オークは200体はくだらなかったんですよ!」
「そうだ!それにオークジェネラルやオークキングだって」
「そうですね。これを1人で全滅させたとすると彼はB級はあるって事になります」
「B級だと!?こんな若造が!?」
「あり得ない!」
「嘘をついて自分の手柄にしようとしてもバレるぞ!」

サイモン以外の冒険者は皆否定する。
ここまでくると流石の咲良も我慢ならない。

「なら俺がいなければどうなっていた?」

言葉を崩した咲良の声には少し怒気が含まれている。

「そんなの決まってる!俺たちが倒していた!」
「俺たちはそのための部隊なんだからな!」
「……間に合ったとでも?」

咲良の表情がどんどん険しくなっていく。

「そうだ!間に合っていたはずだ!」
「嘘はだめです……間に合いはしなかった…」

サイモンは正直に言うがもう遅い。間に合わないとは冒険者達も分かっていたはずだが、ヒートアップしているせいでその事は頭から抜けている。

「さっきから好き放題言ってんじゃねえよ。まずはここの村人達に詫びの一言でも言ったらどうだ?」
「な、なんだと!」
「なぜ俺たちが!」

急に態度の変わった咲良に少し動揺するが負けじと反論してくる。

「この村が襲われたのはお前らのせいだ。先に何があるかも考えずに無闇に追いかけやがって」

もうこいつらに気を使う必要はない。

「それは知らなかったんだ!」
「そうだ!仕方なかったんだ!」
「俺たちのせいじゃない!」

その瞬間、濃密な殺気が冒険者達を襲い、皆顔を青ざめ足がガクガクと震えている。サイモンも例外ではない。

村人達には殺気を当てていないので、彼らは何が起こっているのか分からず慌て始める。

「俺がここに偶々いなければこの村は滅んでいた。村人は全員死んでいただろう。それを…仕方ないで済ますのか?」

更に殺気を強める。

「す…すみません…改めて…謝罪します…ので…お…おち…つい…て……ぐっ」

サイモンが青ざめながら振り絞って声を出す。

「もう騒ぐな…次はない」

咲良は殺気を抑えると冒険者達は気が抜けたのか地面に膝をつき、汗を大量に流している。

「ハァハァ。わ、わかりました。君達…今ので分かったでしょう…彼の実力が…」
「儂からもお願いじゃ。彼を責めんでくれ…儂らの命の恩人なんじゃからな」
「はい…今回は私たちの失態で危険な目に合わせてしまった…本当に申し訳ございません」

サイモンが深々と頭を下げるが咲良は許さない。

「お前もだが、後ろのやつらの方が問題だ」

咲良は冷たく言い放った。

「…す…すまない」
「わ…悪かった…」
「すまん…」

冒険者達は次々と頭を下げる。

「初めからそうしろ。俺もお前らと同じ冒険者だからな。冒険者の評判を下げる様なことはするな。同業者としては恥だ」
「以後気をつけましょう」
「あぁ…で…このオークの死体の処理と村の復興は任せていいんだな?」
「もちろんです…我々に今できることはそれぐらいしかありませんから」
「そうか…」


その後、冒険者達は村を片付け始めたが、作業中チラチラと咲良の方を見ており、その視線がうっとおしく、睨み返すと顔を青ざめて目をそらした。先ほどの殺気が忘れられないのだろう。
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