神の盤上〜異世界漫遊〜

第6章 新天地と冒険者

失態者達

「終わりました」

村人が集まっているところに行き、魔力を解く。

「……すごいのぅ…圧倒的じゃ…」
「それほどでも、怪我はありませんね？」
「あるわけないわい…こっちには一体も来とらん…この魔力の壁もいらんと思ったくらいじゃ」

村長の言う通り、咲良は一体も後ろに通さなかった。村の被害もギリギリ許容範囲に収まっている。

「ありがとうございます！」
「あんたはこの村の英雄だ！」
「すげぇなあんた！強いにもほどがあるぜ！」
「貴方がいてくれなかったどうなっていたか！」
「奇跡だ！」

村の者が咲良に群がり賞賛の声を浴びせる。

しばらくすると森の奥から冒険者が数十人走って来た。

「！！！なんだ！？どうなってる！？」
「…オ…オークが…全滅…」
「一体何が……」
「そんなバカな！！」
「おい！誰がやった！？」

冒険者は全員オークの群れが全滅しているのに動揺を隠せない。
それもそのはず、オークの群れが向かう先に村があると判明してから冒険者達はかなり焦っていたのだ。






～～咲良がオークを全滅させる１時間前～～


ドゴォーン
バギッドゴッ



「隊長！オークの数が多すぎます！このままだと…」
「分かっています！合図を出すので魔法を使えるものは一斉に放ってください！それ以外は援護を！それで体制を整えます！」
「分かりました！」

隊長と話していた男はオークの隙間を抜けて他の冒険者の元へと走る。

「おいお前ら！隊長の合図とともに魔法を放て！それ以外は援護だ！」
「わかった！」
「りょーかい！」

男はさらに他の場所にも移動し声を掛けて周る。



ザシュッ

隊長がオークを剣で切り裂く。

「いまだ！」

隊長は手を天に掲げる。

すると…


ババッ
シュー

ボォーン


手から火が放たれて空中で爆発した。

「あれは！！」
「隊長の魔法だ！」
「合図か！」
「よし！俺たちもやるぞ！」

「「「「「おぉー」」」」」


隊長の合図とともにオークに向かって一斉に魔法が放たれた。
土が盛り上がり、火が燃え盛り、水が溢れ、風が吹き荒れる。


ドドドドドドッ

様々な魔法によってかなりのオークが生き絶えた。

「よし！一旦後ろの森まで退避！」

隊長の呼び掛けでその場にいた全ての冒険者が森へと退避していく。
残りのオークは追っては来ていない。

「全員退避したようですね！残りのオークの数は分かりますか？」
「凡そ２００かと」
「まだそんなに残っていましたか…」
「キングとジェネラルも混じっています！」
「どうしますか？」
「無論、全て討伐するのみ！君たち！まだ余力はありますね？」

隊長の問いに皆が一斉にもちろんだという表情を浮かべる。

「では行こう！」
「隊長！」

冒険者の１人が他の冒険者をかき分けて隊長の元へと駆けてきた。

「どうかしましたか？」
「奴らが移動し始めました！」
「そうですか！では追いかけます！」

冒険者たちはオークの群れを追いかける。
オークの集団も後ろから冒険者が迫っているのを感じ取ったのか北へ西へとルートを変えながら移動する。

追いかけてしばらくして…

「隊長！オークの向かう先に村があります！」
「なに！？それはまずい！なんとかして気をそらさないと！」
「もう間に合いません！この森を抜けるとすぐに村にたどり着いてしまいます！」
「くそっ！こうなれば少しでも早くその村へたどり着くしかありません！」

冒険者達はスピードをあげて森を突き進む。しかしオークには追い付けない。

ようやく森を抜け村に入ると…

オークどもは全て討伐されており、そこら中にオークの死体が転がっていたのだ。

その奥には村人が一箇所に集められており、その前方には若い男が１人。

「！！！なんだ！？どうなってる！？」
「…オ…オークが…全滅…」
「一体何が……」
「そんなバカな！！」
「おい！…誰がやった！？」

冒険者は全員オークの群れが全滅しているのに動揺していると隊長が前に出て来た。

「落ち着くのです！」

どうやらこの男がこの集団のリーダーのようだと咲良は理解した。

「私はこの隊の責任者のサイモンと言います。誰かこの状況を説明できる者はいませんか？」

咲良はこの時めんどくせぇ事になりそうだと頭を抱えた。