神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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過去章 恐怖と成長

酷ナ現実

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死ぬ時は痛いのだろうか。どうせ死ぬならせめて楽に死にたい。
天国はどんなところだろうか。もしかすると地獄に落ちるかもしれない。

様々な思考が頭を巡るが、いつまで経っても痛みは襲ってこない。
不思議に思った秀樹は目をゆっくりと開ける。

「え?」

目に入ったのは真っ二つになった死骨狼と身の丈ほどある大剣を持った大男が1人。

「危ないところだった。大丈夫か?」

大男は大剣を構えて警戒したまま秀樹に声を掛けた。

「は…はい」
「それはよかった…他の2人も大丈夫だぞ」

秀樹は後ろを振り返ると2人の女性が祐介と志保を守るような形で構えている。
恐らく秀樹と同じように2人も助けられたのだろう。

「しばらくじっとしていてくれよ」

そういうと男は残りの死骨狼の元へと走り出した。

秀樹は死骨狼を軽々と大剣でぶった切っていくその大男の動きに見とれていた。

数分後全ての死骨狼を討伐した大男が戻ってきた。

「これでもう安全だ」
「あ、は、はい」
「さて、事情は後で聞くとしてまずはこの森を出よう…怪我人もいることだしな」


それからの記憶はなかった。
恐らく秀樹は精神的なストレスか、はたまた安堵からか気を失ってしまったのだ。






「うっ…あれ、おれは何を…」

秀樹が目を覚ますとそこは知らない家のベッドに寝かされていた。

ゆっくりと起きて身体に異常がないか確かめるが大丈夫のようだ

「おれはあの時確か…」

死骨狼に飛びかかられた時の光景が蘇ってくる。

「おえっ」

秀樹を吐き気が襲う。
生きていたとはいえ、死を感じたのだから仕方のないことだろう。

秀樹は頭を振り、気を紛らわせるとベッドがある部屋から出る。

部屋の先にはリビングらしきものがありそこには秀樹たちを助けてくれた大男がいた。

「おう、起きたか。びっくりしたぜ。急に倒れるんだもんよ」
「ここは一体、あの後何が…」
「俺が運んだ。ここは森の近くの集落でな。場所を貸してもらってる」
「あ、あの、ありがとうございました」

改めてその男を見るとスキンヘッドで髭を生やし屈強な身体をしている。
見かけでは30代くらいだろうが日本人には見えない。かといって外人ともいえない顔だ。

「まぁ座れや」

男に言われ秀樹は男の隣のイスに腰掛ける。

「で…事情を聞きたいとこなんだが、あんたら異世界人か?」
「異世界人?」
「その反応を見ると間違いねぇ様だな」
「えっ?どういうことですか?」

秀樹は混乱して何が何だかよくわかっていない様だ。

「しゃーねーな。まずは俺が色々話してやるよ。おっとその前に」
「なんですか?」
「お前名前なんて言うんだ?俺はマッドだ」
「俺は田中秀樹っていいます」
「やっぱこの世界の名前じゃねぇな。それか東の国の皇族かだが、その線はなさそうだ」
「え?この世界?皇族?」
「いやこっちの話だ。秀樹でいいんだな。ならまずは秀樹の今の状況を説明してやる」
「はぁ…お願いします」


そして秀樹はマッドからこの世界について教えてもらった。
異世界人や魔物のこと、冒険者のことから魔法についても聞いた。
名前を聞いて異世界人だと思ったのはこの世界で苗字がある者は貴族か東の国の皇族かしいないらしい。また昔からたまに秀樹たちのような異世界人がいきなり現れて魔物に襲わることがあるからだそうで。とはいってもマッドが実際に異世界人に会ったのは秀樹達が初めてなので確証は持てていなかった。

どれも信じがたいことで、夢であって欲しいと思ったが、あんな経験をしたのだ。受け入れるしかない。


「そんな…帰れないなんて」
「まぁそんな悲観するな、俺もそこまで詳しいわけじゃないからな。文献に載ってないだけで帰れた奴だっているかもしれん。それに、この世界だっておもしれーぞ」
「そんなこといわれても…あっ…祐介と志保は…」

ふと家の中に祐介と志保がいない事に気付き、安否をマッドに尋ねる。

「ん?あぁ、あの2人か。あいつらは俺の仲間がこことは違う集落でそれぞれ面倒見てる。そこで事情も一通り聞いてるだろうな」
「無事なんですね…良かった」

秀樹は拳をギュッと強く握りしめながら俯く。

「後悔してるか?」

マッドが少し真剣な表情で聞いてくる。

「守れなかったのが悔しいか?」
「ぐっ…悔しいです!」

秀樹はボロボロと涙を流し、2人が襲われている時に動けなかった事、そして抵抗せずに死を受け入れてしまった事を思い出す。

「なら向き合え、逃げるな、足掻け、そして強くなれ。死を受け入れて良いのは後悔の無い者だけだ。今までの人生、これからの人生を無駄にするな。もう一度言う。強くなれ!」

マッドの言葉がスッと秀樹に入ってくる。
そして涙を拭ったその瞳には強い意志が宿っていた。

「そう、その目だ」

マッドは秀樹が覚悟を決めたのが分かったのか微笑んだ。

「なら俺の弟子になれ、鍛えてやる」
「お願いします!」

こうして秀樹は異世界での第一歩を踏み出した。
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