神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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過去章 恐怖と成長

問題児童

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「さて、今日から修行をするわけだが…」

何かあったか、マッドが困った顔で秀樹のを見る。

「どうかしましたか?」
「お前のツレの、なんて言ったかな…」
「祐介と志保ですか?」
「そう!その志保って子なんだが……」

志保の身に何か起こったのだろうか、秀樹はマッドの次の言葉を息を呑んで待つ。

「現実を未だ受け入れられないらしくてな…」
「え?……志保が…ですか?」

現実を受け入れられないとはどう言うことだろうか。

「簡単に言うと引きこもりだな。祐介とやらは修行を始めるようだが、志保ってのはダメだ。完全に心が折れちまって修行どころじゃない」

秀樹も祐介も前に進もうとしている。しかし、志保は女性だ。差別するわけでは無いが無理に修行をさせるのは酷というものだ。

「なら俺は2人を守れるくらい強くなればいいだけです」
「ふっ、その意気だ」

マッドは秀樹の意気込みに気を良くしたのか笑みを浮かべる。

「まずは何をするんですか?」
「まずはステータスプレートで今の実力を確認しろ」

先日秀樹はマッドからポケットにいつの間にか入っていた不思議な板の使い方を教わったのだが、どうやら他にも機能があるようだ。しかし、マッドに聞いてもそんな機能は付いていないとの事でよく分からなかった。異世界人のプレートだけに付いている機能なのだろうか。

ひとまず自身のステータスを確認する。

名前 田中秀樹
年齢 21
職業 旅人
レベル 1
体力 I
魔力 H
筋力 G
耐久 I
俊敏 H
器用 I
精神 H

技能
順応、剛力

称号
異世界人、雑草根性


順応
様々な環境に対する順応力が上がる。

剛力
魔力を使用する事で瞬間的に筋力を上げる。

雑草根性
ヤワなことではヘタレない根性の持ち主。


「確認したな。なら次はどの武器が合ってるか選ばないとな」

そういうとマッドは剣や槍など様々な武器を持ってきた。
しかし真剣など持ったことがあるはずもなく、どの武器が良いのかさっぱりわからない。
剣を握って見るが振り方もデタラメで、槍や弓などは論外だ。
ただ、大剣を持った時は今までで一番重いが何故かしっくり来た。

「お、なんかこれ良いな」
「俺と同じ大剣か。教える側としてもありがたいな」
「ご指導お願いします」
「任せろ」


その日から厳しい修行が始まった。
まずは体力作りから始めた。剣技は身体が出来てからだ。
マッドの修行はとても厳しく毎日身体がピクリとも動かなくなるまで酷使した。
マッド曰く、これでもまだ序の口だそうだが、地球で平凡に暮らしていた秀樹にとっては毎日が地獄だった。

2ヶ月掛けて漸く剣技の修行に入る。この頃には秀樹のステータスもかなり上がり、身体が軽くなった。
剣技の修行は筋トレよりも数倍ハードであったが、それ以上に楽しかったので乗り越えられた。




修行を始めてから半年が経過した。
この半年間、1日の休みもなく修行した。

祐介もマッドの仲間の元で修行をしていたが、残念ながら志保は半年経っても立ち直れておらず、会いに行った時も部屋から出ようとすらしなかった。


「ありゃ問題児だな。今はそっとしておけ」

マッドにもそう言われてしまった。

「でも、いつかは部屋から出てこないと」
「かもな…けど今は自分のことに集中しろ。人のことを気にしている場合じゃないぞ。まぁそれに、お前が守ってやるんだろ」
「はい!もっと強くならないと!」
「なら今からコーチンに行くぞ」
「コーチン?」
「ここから東に行ったところにある街だ。そこのギルドで冒険者登録をする」

今更だがまだ秀樹達は冒険者になっていない。
秀樹が生活、もとい修行しているのは周りには森しかない名もなき小さな集落だ。
ちなみに祐介と志保も少し離れた場所にある集落で生活しているが、毎日修行漬けなので何をしているのか詳しい事はあまり知らない。

「冒険者登録ですか…」
「初めはG級からだが、この世界で生きて行くにはそういう基礎も必要だ」
「俺たちは帰るつもりですよ」

秀樹は少し強調して答えた。

「帰りたい気持ちは分かるがな。その方法を探す為にはこの世界で生きて行く知識や力が必要だろ」
「それはそうですが…」
「なら例えだ。帰れるかもしれない場所が危険な場所にあったらどうする?」
「それは…」

マッドの正論に秀樹は言葉を詰まらせる。

「態々そんな危険地帯まで護衛してくれる奴がいるとでも?仮に護衛を受けてくれる奴がいたとしてもだ。護衛料はどうする?危険地帯ともなると金額もバカにならないぞ」
「……………」
「悪いが俺もそこまでお人好しじゃない。お前を鍛えてるのは縁があったからだ。自分が助けた奴がまたすぐ野垂れ死ぬのは嫌だからな」
「…わかりました…まずはコーチンですね」
「わかればいい。明日にでも出発だ」

秀樹は頭ではマッドが言っていることが正論だとは分かっているがまだ完全には受け入れられないでいた。

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