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オリギナ魔法学校
第十話 学校の調査方法
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確かこの奥が校長の部屋だったと思うのだが、なにやらただならぬ雰囲気で討論が行われている。
魔法学における証明とか、理論の重要性、歴史的価値について喧々諤々の状況だ。
クラウディアが軽く扉をたたいたが中で反応している気配がない。
「まかせろ」と俺が扉をたたく。扉がしなるような威力だ。
それでようやく議論が中断した。
クラウディアの手を引いて入場だ。
「シュンカ、何を話しているんだ? 俺のことか?」
単刀直入に切り込む。校長は俺を確認すると、同意するように笑った。
「ええ、貴方のことです。何をしてもらおうかという問題ですよ」
「”俺にしてもらう?”お前らが教えてくれるんじゃ無いのか?」
「ふふ、その通りです。ですが我々は魔界の技術にも興味がある。全てを極めてみたいのですよ。私は一体何を知ることができるのか? 更にどれほど先に進むことができるのか? 描くだけだった未来をこの手に掴む……どれほどの興奮かはあなたにはまだわからないでしょうね」
シュンカが興奮した口調で話している。深い堀が刻まれた顔が欲望と喜びにまみれてゆがんでいる。伸ばされた手の先にいる俺には「そ、そうか」としか答えられない。知識に対するすさまじい執念を感じる。シュンカの顔には好奇心があふれている。もはや狂気を感じるほどだ。俺の技術を渡したらこいつらが悪用しそうで怖い。
すっとクラウディアの陰に隠れてしまった。力以外の脅威を、恐怖を感じたのだ。肘でつついてクラウディアを促す。
「あ、あの。二年のクラウディアです。こちらはカテイナ君です。あの……ここに来た理由を説明してもいいですか?」
「! ああ、そうですね。我々としたことが、クラウディアさん説明をお願いします」
「今話題のカテイナ君なのですが、明日一日私の授業についてきたいとのことです。それで――」
「その手があったか!!! 私としたことが!!! 授業体験制度を忘れるとは!!! 副校長! 授業体験の対象年齢の制限は? 何歳ですか!?」
一気にシュンカがクラウディアの話をぶった切った。副校長は喜び勇んで校則について調べに走る。
加えて色めき立ったのが二年担当の教授群だ。
「よし! まず一時限目はゲート魔法の限界についてやるぞ!」
「アホか! 学年主任権限で明日は俺の授業に全部変更する!」
「待ちなさい! 校長権限で私主催の特別授業を行います!」
俺の目の前で醜い大人の争いが始まった。校則と私情と欲と権力が入り乱れて、元の喧々諤々の議論の状態に戻った。
すっとクラウディアに背中を押される。
「君が決めて」
「何故だ。俺にはこの欲望は止められないぞ」
「君が決めるべきだよ。決定権は君にある。ほら、ドラフトで教えてくれたでしょ? “お前の望みだけを言え”って。君の望みは何だった? 特別授業じゃないでしょう? 普通の学校――」
人差し指でクラウディアの口を押える。最後まで教えるな。俺は次期魔界王だ。俺は自分で考え、自分で行動する。たとえ俺の言葉を使ってだって俺に指図はさせない。たとえ俺が望むことでも、先に言うことは許さない。
一呼吸置く。
醜く争う大人たちに向かって俺は勝たなくてはいけない。狂気で気圧された分も取り戻さないといけない。
さあ、不意を衝くぞ。俺を無視した連中に向かって奇襲を仕掛ける。この俺は次期魔界王だぞ!
「おい、お前ら! 俺を無視して話を進めるなよ!」
相手が驚いてこちらを見る。ここで溜めた魔力を浴びせかける。
議論で大騒ぎしていた連中がそれで一気に黙った。これは隙だ。これを見逃すほど俺はお人よしではない。
「俺は! 俺はな、この学校の普通の授業が観たいんだ! 特別なんてするんじゃないぞ! わかったな!」
効果的に魔力を使い。声の威力で圧倒する。
落ち着いて周りを見る。ふふ、全員驚愕の顔で静止している。これが勝利というものだ。
ゆっくりと腕を組んで胸を張る。
「明日は特別な授業は無しだ! いいな!」
念を押してシュンカを見る。
下唇を噛んで悔しそうな……というより泣き出しそうな顔だ。
唐突に校長が泣き出した。“私の研究!”とか“理論の証明”とか、難しい言葉が嗚咽に交じって聞こえる。
な、なぜだ? 何故泣く? びっくりするように力は込めたが叩いたわけではない。……お、おれは泣かすほど脅かしたのか? わ、わからん。昼間の件を知っているシュンカがダメで、初体験の連中が無事な理由も俺にはわからないぞ。
そのまま、信じられないぐらいぎゃんぎゃん泣かれた。周りの教授陣も唖然としている。ちょっとやそっと待ったぐらいじゃ泣き止まない。
……ひょっとして俺はこれを止めないといけないのか? 周りを見ても誰一人止めようとする者がいない。
紳士は女性を泣かせてはならない、とある。しかし、どうしたら泣き止むのか、俺には皆目見当がつかない。
ヒントを求めてクラウディアを見る。しかしクラウディアも目を点にしていてわかりかねているようだ。
何かないのか? シュンカは知識欲の塊だ。そう、例えばさっき騒いでいた魔力結晶なんかどうだ? あれはきれいだし女には効果があるだろう。それに、俺は男だ。女に対して責任がある。
そうと決まれば早い。両手で思いっきり魔力を集中する。強く小さく全力で勢いよくだ。一点に集めた魔力を小さい水晶の様に固める。
「シュンカ、だまってこれを受け取れ」
結晶は自ら淡く光を放つ。あたりは静かに静寂に包まれており、シュンカの嗚咽だけが聞こえるような状態だ。
無理やりシュンカの手を取る。強引に手渡す。受け取らせないわけはない。
「こ、これはなんです」
「お前らが言っていた魔力結晶だ。お前が望めばつくり方を教えてやる」
「ほ、本当に?」
ぐしゃぐしゃの泣き顔をどうにか落ち着かせる。その隙に、「明日一日、俺はクラウディアにくっつくからな」と俺の要求だけを飲み込ませる。
ふふ、ふはははは、これでいい。全ては俺の思うがままだ。この後は長居無用、連中の動揺が収まる前にこの場を立ち去るのだ。
踵を返してクラウディアの部屋に戻る。これで俺は一応この学校にもぐりこむことに成功したのだ。
魔法学における証明とか、理論の重要性、歴史的価値について喧々諤々の状況だ。
クラウディアが軽く扉をたたいたが中で反応している気配がない。
「まかせろ」と俺が扉をたたく。扉がしなるような威力だ。
それでようやく議論が中断した。
クラウディアの手を引いて入場だ。
「シュンカ、何を話しているんだ? 俺のことか?」
単刀直入に切り込む。校長は俺を確認すると、同意するように笑った。
「ええ、貴方のことです。何をしてもらおうかという問題ですよ」
「”俺にしてもらう?”お前らが教えてくれるんじゃ無いのか?」
「ふふ、その通りです。ですが我々は魔界の技術にも興味がある。全てを極めてみたいのですよ。私は一体何を知ることができるのか? 更にどれほど先に進むことができるのか? 描くだけだった未来をこの手に掴む……どれほどの興奮かはあなたにはまだわからないでしょうね」
シュンカが興奮した口調で話している。深い堀が刻まれた顔が欲望と喜びにまみれてゆがんでいる。伸ばされた手の先にいる俺には「そ、そうか」としか答えられない。知識に対するすさまじい執念を感じる。シュンカの顔には好奇心があふれている。もはや狂気を感じるほどだ。俺の技術を渡したらこいつらが悪用しそうで怖い。
すっとクラウディアの陰に隠れてしまった。力以外の脅威を、恐怖を感じたのだ。肘でつついてクラウディアを促す。
「あ、あの。二年のクラウディアです。こちらはカテイナ君です。あの……ここに来た理由を説明してもいいですか?」
「! ああ、そうですね。我々としたことが、クラウディアさん説明をお願いします」
「今話題のカテイナ君なのですが、明日一日私の授業についてきたいとのことです。それで――」
「その手があったか!!! 私としたことが!!! 授業体験制度を忘れるとは!!! 副校長! 授業体験の対象年齢の制限は? 何歳ですか!?」
一気にシュンカがクラウディアの話をぶった切った。副校長は喜び勇んで校則について調べに走る。
加えて色めき立ったのが二年担当の教授群だ。
「よし! まず一時限目はゲート魔法の限界についてやるぞ!」
「アホか! 学年主任権限で明日は俺の授業に全部変更する!」
「待ちなさい! 校長権限で私主催の特別授業を行います!」
俺の目の前で醜い大人の争いが始まった。校則と私情と欲と権力が入り乱れて、元の喧々諤々の議論の状態に戻った。
すっとクラウディアに背中を押される。
「君が決めて」
「何故だ。俺にはこの欲望は止められないぞ」
「君が決めるべきだよ。決定権は君にある。ほら、ドラフトで教えてくれたでしょ? “お前の望みだけを言え”って。君の望みは何だった? 特別授業じゃないでしょう? 普通の学校――」
人差し指でクラウディアの口を押える。最後まで教えるな。俺は次期魔界王だ。俺は自分で考え、自分で行動する。たとえ俺の言葉を使ってだって俺に指図はさせない。たとえ俺が望むことでも、先に言うことは許さない。
一呼吸置く。
醜く争う大人たちに向かって俺は勝たなくてはいけない。狂気で気圧された分も取り戻さないといけない。
さあ、不意を衝くぞ。俺を無視した連中に向かって奇襲を仕掛ける。この俺は次期魔界王だぞ!
「おい、お前ら! 俺を無視して話を進めるなよ!」
相手が驚いてこちらを見る。ここで溜めた魔力を浴びせかける。
議論で大騒ぎしていた連中がそれで一気に黙った。これは隙だ。これを見逃すほど俺はお人よしではない。
「俺は! 俺はな、この学校の普通の授業が観たいんだ! 特別なんてするんじゃないぞ! わかったな!」
効果的に魔力を使い。声の威力で圧倒する。
落ち着いて周りを見る。ふふ、全員驚愕の顔で静止している。これが勝利というものだ。
ゆっくりと腕を組んで胸を張る。
「明日は特別な授業は無しだ! いいな!」
念を押してシュンカを見る。
下唇を噛んで悔しそうな……というより泣き出しそうな顔だ。
唐突に校長が泣き出した。“私の研究!”とか“理論の証明”とか、難しい言葉が嗚咽に交じって聞こえる。
な、なぜだ? 何故泣く? びっくりするように力は込めたが叩いたわけではない。……お、おれは泣かすほど脅かしたのか? わ、わからん。昼間の件を知っているシュンカがダメで、初体験の連中が無事な理由も俺にはわからないぞ。
そのまま、信じられないぐらいぎゃんぎゃん泣かれた。周りの教授陣も唖然としている。ちょっとやそっと待ったぐらいじゃ泣き止まない。
……ひょっとして俺はこれを止めないといけないのか? 周りを見ても誰一人止めようとする者がいない。
紳士は女性を泣かせてはならない、とある。しかし、どうしたら泣き止むのか、俺には皆目見当がつかない。
ヒントを求めてクラウディアを見る。しかしクラウディアも目を点にしていてわかりかねているようだ。
何かないのか? シュンカは知識欲の塊だ。そう、例えばさっき騒いでいた魔力結晶なんかどうだ? あれはきれいだし女には効果があるだろう。それに、俺は男だ。女に対して責任がある。
そうと決まれば早い。両手で思いっきり魔力を集中する。強く小さく全力で勢いよくだ。一点に集めた魔力を小さい水晶の様に固める。
「シュンカ、だまってこれを受け取れ」
結晶は自ら淡く光を放つ。あたりは静かに静寂に包まれており、シュンカの嗚咽だけが聞こえるような状態だ。
無理やりシュンカの手を取る。強引に手渡す。受け取らせないわけはない。
「こ、これはなんです」
「お前らが言っていた魔力結晶だ。お前が望めばつくり方を教えてやる」
「ほ、本当に?」
ぐしゃぐしゃの泣き顔をどうにか落ち着かせる。その隙に、「明日一日、俺はクラウディアにくっつくからな」と俺の要求だけを飲み込ませる。
ふふ、ふはははは、これでいい。全ては俺の思うがままだ。この後は長居無用、連中の動揺が収まる前にこの場を立ち去るのだ。
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