魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第二十七話 悪魔で鬼なシヲウル

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 暗い暗い、闇の底から意識を引き上げる。
 もがくように手足を動かし、床を支えにして体を起こす。
 これだけで体力を持っていかれる。それでも早く立ち上がらないといけない。
 高笑いしながら玉座に座る人を見る。
 
「ああ、ジブリルか、くくくっ、見ろこいつらの無様な姿を」

 促されてカテイナとクラウディアを見る。二人共うずくまってピクリとも動かない。

「なにをなされたのですか?」
「ああ、コネクトペインで痛みを共有させてな。あれだ。あの男を女にするやつ。物理魔法“女の子になぁれ♪”って奴だ」
「クラウディアさんは女の子ですが?」
「くくっ、まあ聞け。カテイナと二倍の痛みの共有をさせてな。男の金玉は二つあるし、一個無くなったら二個分、つまり男をやめるときの衝撃を与えてやった。女の生涯において絶対に味わうことのない痛みをぶち込んでやった。見せてやりたかったぞ。蒼白になって、苦痛に歪み、絶望の底でもがく姿……ぷ、くはははっ、笑いが止まらん」
「それでは――」
「いいぞ、見逃してやる。本来なら、私に剣を向けたのだから、くびり殺してやるところだが、十分に留飲は下がった」

 ほっと胸をなでおろす。
 あとはカテイナのことだ。

「カテイナ様は?」
「あぁ? 回復魔法でけがは治したぞ。一応、どれほど馬鹿でも私の後継者だからな」
「よかった……」

 その言葉に鼻を鳴らされた。このお方は怖い方だ。逆らうことさえ自分には想像できない。
 それでも深々と頭を下げて感謝の意を示す。

「さて、これでお前らが来た目的も完了だな? 私がオリギナに送ってやる」
「あ、それはカテイナ様にお願いしようと思うのですが」
「カテイナは魔力を使えん。新しい首輪で細工を施した。オリギナの連中が何やら企んでいたからな。簡単に利用などさせてやるものか」

 そう言いながらゲートを開く。
 倒れている二人の服をつかんで適当にゲートの中に放り込んでいる。

「じゃあな、ジブリル。私の息子をよろしく頼む。手を焼くようだったら私を呼べ」
「わかりました。シヲウル様もお元気で」

 言葉を交わしてゲートをくぐる。ゲートの先はオリギナ大使館、私の居室だ。
 私が通れば即座にゲートが締まる。
 先に送られた二人は同じ姿勢で動く気配がない。
 私は呼び鈴を鳴らすと二人をベッドに運ぶための手はずを整えた。

……

 目を開ける。まだ日は高い。飛び起きて、反射的にパンツの中を確認する。無事だ。どれほど記憶をさかのぼっても、急所を握られた後の記憶がない。
 この俺であれば、絶対に何があったか覚えているはずなのに……とんでもないことがあったはずなのに全く記憶がない。
 思い出そうとしてもふっつり途切れている。何が起きたんだ!?

「あ、お目覚めですか?」
「ジブリル! 良かった。ここはお前の部屋か?」

 その言葉に頷いている。
 俺もなんだか体の奥の緊張が解けた気がした。
 落ち着いて、あたりを見回す。この言葉は慎重に発しないといけない。

「お、鬼母は?」
「シヲウル様は、ここにはおられません。ですが言伝があります。
 カテイナ様は魔法を使えません」

 恐怖に駆られて首に手を当てる。案の定、首輪がしてある。バタバタと首輪の手ごたえを確かめているとジブリルに手鏡を渡された。
 真剣に首輪を見る。良かった! 目や口、耳は無い!
 心底、深いため息が出た。恐怖からの解放されたのだから当然と言える。

「こいつの対象は俺だけか?」
「そうなります。クラウディアさんは二日前に戻られましたよ」
「……えっ?」

 ちょっと待て、二日前? 俺は二日以上寝ていたのか?

「カテイナ様は三日倒れておられました」
「三日だと!? どういうことだ!?」
「……覚えておられませんか?」
「覚えてない! なにがあった!」
「ジブリルめには説明できません。気絶していましたから、詳細はシヲウル様に聞いてください」

 これは嘘だ。こいつは純正天使、嘘がつけない。正面から堂々と嘘をつけないんだ。俺を目の前にして顔をそむけた。だが、問い詰めたところで答えは変わらないだろう。
 だが、シヲウルに聞くのはなしだ。なぜか知らんが、聞いてはならない気がする。
 クラウディアを捕まえよう。

「それより、おなか減りましたでしょう? お食事を用意いたします」
「あ ああ、わかった。お前の手料理だろうな?」
「もちろん、腕によりをかけますよ」

 この言葉に自然と笑みこぼれる。そして、安心したからか思いっきり腹が鳴った。

「ジブリル、いっぱいおいしいのを出してくれよ」
「ええ、体にいい物を沢山出しますね」

 そう言って、にこやかに部屋を出ていく。きっと台所だ。
 俺も少し手伝うかぁ~。俺だって成長したのだから。
 この夜、大使館にて俺の復活パーティがささやかに行われた。
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